同じ薬剤を3回以上使うと効かなくなります
吸汁性害虫は植物の汁を針のような口で吸い取り、植物の生育を著しく阻害する害虫の総称です。代表的な種類としてアブラムシ類、カイガラムシ類、コナジラミ類、アザミウマ類、ハダニ類が挙げられます。これらの害虫は体長が数ミリ程度と非常に小さく、発見が遅れがちになる点が厄介です。
被害の形態は大きく分けて二つあります。一つ目は直接的な吸汁被害で、新芽の展開不良、茎の伸長阻害、葉の変形や黄化、花の奇形などが現れます。特にアブラムシは繁殖力が非常に高く、1匹のメスが無性生殖で1日に数匹の幼虫を産むため、わずか数週間で数千匹に増殖することもあります。
つまり早期発見が重要です。
二つ目の被害はウイルス病の媒介です。吸汁性害虫がウイルスに感染した植物を吸汁すると、体内にウイルスを保持し、次に健全な植物を吸汁する際にウイルスを伝播させます。トマト黄化葉巻ウイルス(TYLCV)やキュウリモザイクウイルス(CMV)など、アブラムシやコナジラミが媒介するウイルス病は、一度発病すると治療法がなく、感染株は廃棄せざるを得ません。
これは使えそうです。
さらに、コナジラミやカイガラムシは甘露と呼ばれる排泄物を大量に出します。この甘露の上にすす病菌が繁殖し、葉や果実が黒いすすで覆われたような状態になるすす病を引き起こします。すす病は光合成を阻害し、商品価値を著しく低下させる原因となります。
吸汁性害虫は年間を通じて発生しますが、特に4月から6月、9月から10月の気温が20~25℃になる時期に大量発生しやすい傾向があります。施設栽培では冬場でも温度が保たれているため、周年発生のリスクがあることにも注意が必要です。
発生初期なら問題ありません。
病害虫ナビ 薬剤の選び方(住友化学園芸)では、害虫の種類別に適切な薬剤選定方法が詳しく解説されています。
吸汁性害虫の駆除には、害虫の生態や発生状況に応じた薬剤選択が極めて重要です。薬剤は作用機構によっていくつかのタイプに分類されます。
浸透移行性薬剤は吸汁性害虫駆除の主力となる薬剤です。有効成分が根や葉から吸収され、植物の維管束を通じて全身に移行するため、葉裏や新芽の奥など散布液が直接かかりにくい場所に潜む害虫も効果的に駆除できます。代表的な成分としてアセタミプリド、イミダクロプリド、ジノテフラン、クロチアニジンなどのネオニコチノイド系があります。これらは2~3週間効果が持続するため、省力的な防除が可能です。それで大丈夫でしょうか?
オルトラン粒剤やオルトラン水和剤に含まれるアセフェートは、高い浸透移行性を持ち、アブラムシ類、アザミウマ類などの吸汁性害虫から、ヨトウムシ、アオムシなどの食害性害虫まで幅広く防除できます。土壌処理では根から吸収され、葉面散布では葉の表裏に浸透して効果を発揮します。
トランスフォームフロアブルはスルホキシイミン系の殺虫剤で、アブラムシ類、カイガラムシ類、コナジラミ類に卓越した効果を示します。試験では20種以上のアブラムシ種すべてに高い殺虫効果が確認されており、既存薬剤に抵抗性を持つ系統にも有効です。散布後に展葉した新葉にも効果が及ぶ浸達性を持つため、生育中の作物を継続的に保護できます。
厳しいところですね。
モベントフロアブルは有効成分スピロテトラマトを含み、双方向の浸透移行性が特徴です。通常の浸透移行性薬剤は導管を通じて上方向にのみ移行しますが、モベントは篩管を通じて下方向にも移行するため、根から吸収させて地上部全体を保護することも、葉面散布で根部まで成分を届けることも可能です。アブラムシ類、コナジラミ類、アザミウマ類に加え、ハダニ類やサビダニ類にも効果があります。
接触型薬剤は薬液が直接害虫に付着することで効果を発揮します。ピレスロイド系のペルメトリンやビフェントリンは速効性が高く、散布直後から害虫をノックダウンします。ただし、浸透移行性がないため散布できなかった場所の害虫には効果がなく、効果の持続期間も短めです。
即効的な駆除が必要な場面で使用します。
フロニカミドを含むウララDFは、吸汁阻害作用によってアブラムシの吸汁活動を速効的に停止させます。アブラムシが衰弱して茎葉から脱落するまでに数日かかりますが、吸汁活動は直ちに阻止されるため、ウイルス病の媒介を防ぐ効果が高い点が大きな特長です。
薬剤選択では有効成分の作用機構(IRAC番号)に注意が必要です。同じ系統の薬剤を連用すると害虫に薬剤抵抗性が発達し、効果が低下します。異なる系統の薬剤をローテーションで使用することで、抵抗性の発達を遅らせることができます。
〇〇に注意すれば大丈夫です。
浸透移行性とは?(グリーンジャパン)では、浸透移行性薬剤の仕組みとメリットが分かりやすく解説されています。
化学農薬だけに頼らない防除手段として、天敵昆虫やダニを利用した生物防除が注目されています。天敵は害虫を捕食または寄生することで個体数を抑制し、薬剤抵抗性の心配がない持続的な防除を実現します。
タバコカスミカメは農薬登録された天敵昆虫で、アザミウマ類とコナジラミ類の防除に優れた効果を発揮します。成虫と幼虫の両方が害虫を捕食し、1頭あたり1日に数十頭の害虫を食べる高い捕食力を持ちます。興味深いのは、タバコカスミカメは害虫がいない環境でも植物を吸汁して生存できる点です。これにより、害虫発生前から圃場に定着させて予防的に利用できます。
結論は使えるということです。
スワルスキーカブリダニはアザミウマ類、コナジラミ類、チャノホコリダニなどの防除に有効な天敵ダニです。体長0.5mm程度と非常に小さく、葉の表面や裏面を徘徊しながら害虫の卵や幼虫を捕食します。高温多湿を好む性質があり、施設栽培の夏場に特に活躍します。製剤は徐放性ボトルタイプが主流で、設置するだけで約4~6週間にわたって成虫が放出され続けます。
ククメリスカブリダニはアザミウマ類の防除に特化した天敵で、スワルスキーより低温域で活動できるため、春先や秋口の防除に適しています。アザミウマの1齢幼虫を好んで捕食し、早期発見と組み合わせることで高い防除効果が得られます。
コレマンアブラバチとアブラバチ類はアブラムシ類の体内に卵を産み付け、幼虫がアブラムシの体内で成長して最終的に殺します。寄生されたアブラムシはマミー(寄生蜂の蛹)と呼ばれる茶色の殻になり、ここから新たな成虫が羽化して次のアブラムシに寄生します。気温15~25℃の範囲で活動が活発になります。
意外ですね。
天敵利用の注意点として、即効性がないことが挙げられます。天敵が害虫を捕食または寄生して個体数を減少させるまでに数日から10日間程度かかります。また、害虫より天敵の方が増殖速度が遅いため、害虫密度が高い状態で導入しても十分な効果が得られません。害虫発生初期の低密度時に天敵を放飼することが成功の鍵です。
さらに、化学農薬との併用には慎重な配慮が必要です。多くの殺虫剤は天敵にも影響を与えるため、天敵に影響の少ない選択性農薬を使用するか、農薬散布と天敵放飼のタイミングをずらす必要があります。IPM(総合的病害虫管理)の考え方に基づき、物理的防除、耕種的防除、生物的防除、化学的防除を組み合わせた体系的な防除計画を立てることが重要です。
天敵による防除コストは化学農薬よりも高くなる傾向がありますが、薬剤散布の労力削減、残留農薬の低減、環境負荷の軽減といったメリットがあります。特に有機栽培や特別栽培、輸出向け農産物の生産では、天敵利用が大きな価値を持ちます。
天敵でアブラムシ退治(農研機構)では、研究機関が開発した天敵利用技術の詳細が紹介されています。
駆除よりも予防が重要というのが害虫管理の基本原則です。吸汁性害虫の侵入や増殖を未然に防ぐことで、薬剤使用量を大幅に削減し、労力とコストを節約できます。
物理的防除の代表が防虫ネットの設置です。施設の開口部に目合い0.4~0.8mm程度の防虫ネットを展張することで、外部からの害虫侵入を効果的に遮断できます。アザミウマ類の防除には赤色防虫ネットが特に有効で、赤色光は昆虫の視覚を撹乱し、施設内への侵入を抑制する効果があります。ただし、目合いが細かいほど通気性が低下するため、換気扇の増設や開口面積の拡大で対応する必要があります。
黄色粘着板はアブラムシ類、コナジラミ類、アザミウマ類が黄色に誘引される性質を利用した捕獲資材です。施設内に設置することで、侵入してきた成虫を捕獲するとともに、発生密度のモニタリングにも活用できます。目安として10a あたり20~30枚程度を植物の草丈に合わせて設置します。粘着板に捕獲された虫の種類と数を定期的に確認することで、薬剤散布の適期判断に役立ちます。
マルチフィルムの活用も有効です。シルバーマルチや白黒マルチは太陽光を反射し、アブラムシ類やアザミウマ類の飛来を忌避する効果があります。特に定植直後の幼苗期に効果が高く、この時期の害虫侵入を防ぐことでウイルス病の感染リスクを大幅に低減できます。
〇〇が条件です。
耕種的防除では、まず圃場周辺の雑草管理が重要です。多くの吸汁性害虫は雑草で増殖し、そこから作物に移動してきます。圃場内外の雑草を定期的に除去することで、害虫の供給源を断つことができます。ただし、刈り取りのタイミングが悪いと、雑草から一斉に害虫が作物に移動する逆効果になる場合もあるため、注意が必要です。
施設栽培では、栽培終了後の蒸し込み処理が効果的です。夏季の高温期に施設を密閉し、内部温度を50℃以上に上昇させることで、施設内に残存する害虫や卵を死滅させることができます。この処理により次作の初期害虫密度を大幅に低減できます。
痛いですね。
作物の健全な生育管理も予防の基本です。窒素過多の施肥は新芽を軟弱にし、吸汁性害虫が好む環境を作ります。適正な施肥管理と、適度な水やり、十分な採光と通風により、作物自体の抵抗性を高めることが可能です。
近年注目されているのが、植物が発する揮発性物質を利用した天敵誘引技術です。植物は害虫に加害されると特定の香り物質を放出し、その害虫の天敵を引き寄せる性質があります。この仕組みを人工的に再現する研究が進んでおり、将来的には天敵をより効率的に圃場に定着させる技術として実用化が期待されています。
発生初期の早期発見も予防に含まれます。週1~2回程度、作物の新芽、葉裏、茎などを丁寧に観察し、わずかな害虫でも見逃さない習慣をつけることが大切です。初期段階なら手作業での除去や局所的な薬剤散布で対応でき、圃場全体への蔓延を防げます。
駆除の成否を分けるのは、正しい知識に基づいた実践です。よくある失敗パターンを理解し、それを回避することが確実な防除につながります。
最も多い失敗が薬剤抵抗性の発達です。同じ系統の薬剤を繰り返し使用すると、生き残った個体が増殖して薬剤が効かなくなります。農研機構の調査では、ネオニコチノイド系薬剤に対する抵抗性を持つアブラムシやコナジラミが全国的に確認されています。対策としては、作用機構(IRAC番号)の異なる薬剤を3~4種類選定し、計画的にローテーション散布することです。例えば、ネオニコチノイド系(IRAC 4A)→ピリジンアゾメチン系(IRAC 9B)→スルホキシイミン系(IRAC 4C)という順番で使用します。
散布タイミングの誤りも効果低下の原因です。多くの農家が害虫を目視で確認してから散布しますが、その時点ですでに個体数が増えており、完全駆除が困難になっています。浸透移行性薬剤は予防散布が基本で、害虫発生前または発生初期の低密度時に散布することで最大の効果を発揮します。定植時の粒剤処理や、発生しやすい時期(4~6月、9~10月)の前に予防散布を行うのが理想的です。
散布方法の不備も見逃せません。吸汁性害虫の多くは葉裏に潜むため、葉の表面だけに散布しても十分な効果が得られません。噴霧器のノズルを下から上に向け、葉裏にもしっかり薬液がかかるよう丁寧に散布することが重要です。また、希釈倍率を守らず薄めすぎる、または濃くしすぎるのも問題です。規定倍率を守ることが効果と安全性の両立につながります。
つまり丁寧さが大事です。
カイガラムシの防除では成虫になってからの散布が失敗の典型例です。成虫は硬いロウ質の殻で覆われており、薬剤が浸透しにくくなります。カイガラムシの防除適期は1齢幼虫の孵化期で、多くの種類では5~7月頃がこの時期にあたります。卵のうの発生ピークから20~30日後が散布適期となるため、前年の発生状況から予測して適期を逃さないことが肝心です。
天敵利用の失敗では、害虫密度が高い状態での導入が最も多いパターンです。害虫が既に蔓延している圃場に天敵を放しても、増殖スピードの差から天敵が圧倒されてしまいます。天敵は予防資材として、害虫発生前または発生初期に導入し、長期的に圃場に定着させることで効果を発揮します。
環境条件への配慮不足も問題です。薬剤散布は早朝または夕方の涼しい時間帯に行うのが基本で、日中の高温時に散布すると薬害のリスクが高まります。また、強風時や降雨前の散布は効果が低下するため避けるべきです。湿度が高い夕方の散布では、薬液が葉面に長時間残留し、かえって病害を誘発する可能性もあります。風の少ない朝6~9時頃が最適な散布時間帯です。
記録の不足も改善すべき点です。いつ、どの薬剤を、どの濃度で散布したかを記録していないと、同じ系統の薬剤を連用してしまったり、使用回数制限を超えてしまったりします。防除日誌をつけて、散布履歴を管理することが確実な防除計画につながります。
ウイルス病対策との連携も忘れてはなりません。吸汁性害虫はわずかな吸汁でもウイルスを媒介するため、害虫密度が低くてもウイルス病が発生することがあります。フロニカミドのような吸汁阻害剤を使用する、感染株を早期に抜き取って隔離する、ウイルスフリー苗を使用するなど、複合的な対策が必要です。
〇〇するだけで十分です。
コスト意識も重要です。高価な薬剤や天敵を多用すればコストが膨らみ、経営を圧迫します。一方、安価な薬剤だけに頼ると抵抗性の発達を招きます。防除の効果、コスト、環境への影響、労力のバランスを考慮した総合的な判断が求められます。
殺虫剤抵抗性にどう対処すべきか(農研機構)では、抵抗性害虫の現状と対策が詳しくまとめられており、防除計画立案の参考になります。