光合成の仕組みとは?高校生物で学ぶ反応や化学式と場所の解説

高校生物で習う光合成の仕組み、覚えていますか?葉緑体で行われる反応式やチラコイド、カルビン・ベンソン回路の複雑な過程をわかりやすく解説します。農業の現場でも役立つ、植物の生理生態を改めて学び直してみませんか?

光合成の仕組みと高校生物で学ぶ反応

光合成の仕組みと高校生物で学ぶ反応

光合成の仕組みと高校生物
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全体の流れ

光エネルギーを化学エネルギーへ変換し有機物を合成する

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明反応の役割

チラコイドで光を受け取りATPとNADPHを作り出す

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暗反応の役割

ストロマでATPとNADPHを使い二酸化炭素を固定する

農業に従事されている皆様であれば、「光合成」という言葉は日常的に意識されていることでしょう。しかし、「高校生物で習った詳細な仕組み」となると、明反応や暗反応、ATPやNADPHといった専門用語が複雑に絡み合い、記憶が曖昧になっている方も多いのではないでしょうか。作物の生育を最大化するためには、植物体内で何が起きているのか、そのミクロなメカニズムを理解することが非常に有益です。


光合成とは、一言で言えば「光エネルギーを利用して、二酸化炭素と水から有機物(炭水化物)を合成する反応」です。この過程は、単に物質を作るだけでなく、太陽の光エネルギーを生物が利用可能な「化学エネルギー」の形に変換して貯蔵するという、エネルギー代謝の根幹を成すものです。


高校生物のレベルでは、光合成は大きく二つの段階に分けて理解されます。


  • チラコイドでの反応(明反応): 光が必要な段階。水を分解し、酸素を発生させると同時に、エネルギー通貨であるATPと還元力を持つNADPHを生成します。
  • ストロマでの反応(暗反応): 光が直接は不要な段階(ただし明反応の産物は必要)。ATPとNADPHを利用して、二酸化炭素を還元し、有機物を合成します。

この二つの反応系が巧みに連携することで、植物は無機物から自身の体を作る材料を生み出しています。この基礎的な流れを押さえた上で、それぞれの詳細なステップを見ていくことが、栽培管理のヒントを見つける第一歩となります。


高校生物の教科書に準拠した、光合成の全体像を表す化学反応式は以下の通りです。


6CO2+12H2O+光エネルギーC6H12O6+6O2+6H2O6CO_2 + 12H_2O + \text{光エネルギー} \rightarrow C_6H_{12}O_6 + 6O_2 + 6H_2O6CO2+12H2O+光エネルギー→C6H12O6+6O2+6H2O
この式は、単に「二酸化炭素と水からグルコースと酸素ができる」という結果だけでなく、水分子がどのように利用され、再生成されるかという循環も含んでいます。


光合成の仕組みと葉緑体の場所や構造


光合成が行われる「場所」について、解像度を上げて理解しましょう。植物細胞の中にある葉緑体がその舞台ですが、葉緑体ならどこでも良いわけではありません。葉緑体は二重の膜(外膜と内膜)に包まれた構造をしており、その内部にはさらに特徴的な構造が存在します。


主な構造は以下の2つです。


  • チラコイド: 扁平な袋状の構造。これらが層状に重なったものを「グラナ」と呼びます。チラコイドの膜(チラコイド膜)には、光合成色素(クロロフィルなど)や電子伝達系に関わるタンパク質が埋め込まれており、ここで「光エネルギーの吸収」と「電子の移動」が行われます。
  • ストロマ: チラコイドの間を満たしている基質部分。ここには多数の酵素が存在しており、二酸化炭素を取り込んで有機物を合成する回路(カルビン・ベンソン回路)が稼働しています。

農業の現場で「葉の色が濃い・薄い」と判断する場合、それは主に葉緑体内のチラコイド膜にあるクロロフィルの密度を見ています。マグネシウムや窒素が欠乏するとクロロフィルが作れず、光エネルギーを十分に捕捉できなくなるため、光合成速度が低下し、生育不良につながります。


葉緑体の構造を知ることは、施肥設計や環境制御の理解にも直結します。例えば、強光阻害が起きている場合、チラコイド膜上の光化学系タンパク質がダメージを受けている状態です。逆に、CO2施用を行っても温度が低すぎれば、ストロマ内の酵素活性が上がらず、光合成速度は頭打ちになります。場所と機能のリンクは非常に重要です。


文部科学省の学習指導要領に基づく解説サイト。生物基礎と生物の違いなど。


高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 理科編 理数編

光合成の仕組みとチラコイドでの化学反応式

ここでは、光合成の第一段階であるチラコイドでの反応(明反応)について、少し深く掘り下げます。この反応の主目的は、「光エネルギーを化学エネルギー(ATP)と還元力(NADPH)に変換すること」です。


反応のプロセスは以下のステップで進行します。


  1. 光化学系IIでの光受容: チラコイド膜にある「光化学系II」というタンパク質複合体が光エネルギーを吸収します。
  2. 水の分解: 集められたエネルギーを使って、水分子(H₂O)が分解されます。ここで酸素(O₂)が発生し、水素イオン(H⁺)と電子(e⁻)が取り出されます。農業において「植物が酸素を出す」というのは、まさにこの瞬間の出来事です。
  3. 電子伝達系: 水から取り出された電子は、膜上のタンパク質を次々とリレーのように移動していきます。この移動に伴うエネルギーを使って、ストロマ側の水素イオンがチラコイド内腔へ汲み上げられます。
  4. ATPの合成: チラコイド内腔に溜まった水素イオンが、濃度勾配に従って膜の外(ストロマ側)へ流れ出る勢いを利用し、ATP合成酵素がATPを作り出します。これは水力発電のタービンと同じ原理です。
  5. NADPHの生成: 電子伝達系の最終地点である「光化学系I」で再び光エネルギーを受け取り、最終的にNADP⁺に電子と水素イオンを渡してNADPHを生成します。

この反応を化学反応式風にまとめると以下のようになります(簡略化しています)。


12H2O+12NADP++18ADP+18Pi6O2+12NADPH+18ATP12H_2O + 12NADP^+ + 18ADP + 18Pi \rightarrow 6O_2 + 12NADPH + 18ATP12H2O+12NADP++18ADP+18Pi→6O2+12NADPH+18ATP
この段階で重要なのは、「光がなければ絶対に反応が進まない」という点と、「温度の影響は比較的受けにくい(光化学反応が主体のため)」という点です。冬場の低温時でも、晴天であればチラコイドでの反応は進みます。しかし、後述するストロマでの反応が低温で滞ると、行き場を失ったエネルギーが活性酸素を生み出し、葉焼け(光阻害)の原因となります。


このプロセスを知っていると、遮光ネットの使い時や、曇天からの急な晴天時に植物が受けるストレスの正体(過剰な光エネルギーによる活性酸素の発生)がイメージしやすくなります。


光合成の仕組みとカルビン・ベンソン回路の流れ

次に、ストロマでの反応(暗反応)、すなわちカルビン・ベンソン回路について解説します。チラコイドで作られたATP(エネルギー)とNADPH(還元力)を使い、二酸化炭素(CO₂)から糖を合成する工場のような場所です。


この回路は、名前の通りぐるぐると回る反応系で、大きく3つの段階に分かれます。


  1. 炭酸固定: 気孔から取り込まれたCO₂が、RuBP(リブロース二リン酸という物質と結合します。この反応を触媒するのが、地球上で最も多いタンパク質と言われる酵素ルビスコ(RuBisCO)です。これにより、C3植物ではPGA(ホスホグリセリン酸)という物質ができます。
  2. 還元: ATPのエネルギーとNADPHの還元力を使い、PGAがGAP(グリセルアルデヒドリン酸)に変換されます。このGAPこそが、糖(グルコースなど)の元となる物質です。
  3. RuBPの再生: 生成されたGAPの一部は糖の合成に使われますが、残りの大部分はATPを使って再びRuBPに戻り、次のCO₂を受け入れる準備をします。

化学反応式で表すと以下のようになります。


6CO2+12NADPH+18ATPC6H12O6+12NADP++18ADP+18Pi+6H2O6CO_2 + 12NADPH + 18ATP \rightarrow C_6H_{12}O_6 + 12NADP^+ + 18ADP + 18Pi + 6H_2O6CO2+12NADPH+18ATP→C6H12O6+12NADP++18ADP+18Pi+6H2O
この回路の特徴は、多数の酵素反応で成り立っている点です。つまり、温度の影響を非常に強く受けます。温度が低すぎると酵素の動きが鈍くなり、CO₂固定速度が低下します。逆に温度が高すぎると、ルビスコの機能が低下したり、呼吸による消耗が増えたりします。


また、ルビスコという酵素は非常に量が多いのですが、実は反応速度があまり速くありません。そのため、植物は大量の窒素をルビスコの合成に投資しています。葉色の濃さ(窒素レベル)が光合成能力に直結するのは、このルビスコの量を確保するためでもあるのです。


ハウス栽培などでCO₂施用を行う場合、このカルビン・ベンソン回路の回転数を上げることが目的となります。しかし、光(ATPとNADPHの供給)が不足していたり、温度が不適切だったりすると、CO₂濃度だけ上げても効果は限定的です。すべての要因がバランスよく整って初めて、回路はフル回転します。


光合成研究の歴史やカルビン・ベンソン回路の詳細な発見経緯について。


日本光合成学会

光合成の仕組みと高校では習わない光呼吸の関係

ここでは、高校生物の範囲を少し超えつつも、農業生産に深く関わる「意外な情報」として、光呼吸(ひかりこきゅう)について解説します。これは「呼吸」という名前がついていますが、ミトコンドリアで行われる通常の呼吸とは全く別物です。


実は、先ほど紹介した酵素ルビスコには、致命的な弱点があります。それは、「CO₂だけでなく、O₂(酸素)とも反応してしまう」という性質です。


  • カルボキシラーゼ反応(正常): RuBP + CO₂ → 光合成が進む
  • オキシゲナーゼ反応(エラー): RuBP + O₂ → 光呼吸

ルビスコが誤って酸素と結合してしまうと、せっかく作った有機物を分解し、CO₂を放出してしまうプロセスが作動します。これを光呼吸と呼びます。光合成でCO₂を固定したいのに、逆にCO₂を捨ててしまうため、農業的には「無駄な反応」「生産ロスの原因」と見なされがちです。


光呼吸が起こりやすい条件は以下の通りです。


  • 高温: 温度が上がると、ルビスコはCO₂よりもO₂と反応しやすくなります。
  • 乾燥: 乾燥して気孔が閉じると、葉の中のCO₂濃度が下がり、相対的にO₂濃度が上がるため、ミスが起きやすくなります。
  • 強光: 光合成が活発になりすぎてO₂濃度が高まった時。

一見すると「植物の設計ミス」のように思える光呼吸ですが、近年の研究では、「過剰な光エネルギーを熱として安全に逃がす安全弁の役割」「窒素代謝との関連」も指摘されており、単なる無駄ではない可能性も示唆されています 。


しかし、農業生産の視点では、夏場の高温・乾燥時に収量が落ちる原因の一つはこの光呼吸です。C4植物(トウモロコシやサトウキビなど)は、CO₂を濃縮する特別な仕組みを持っており、この光呼吸をほとんど起こさないため、高温・強光下でも高い生産性を誇ります。私たちが扱う作物がC3植物(イネ、小麦、大豆、多くの野菜)なのかC4植物なのかを意識することは、高温対策を考える上で非常に重要です。


この「光呼吸」という現象を知ることで、なぜ夏場のハウス換気が重要なのか、なぜ水ストレスが収量減に直結するのか(気孔閉鎖→CO₂不足→光呼吸増大)というロジックが、より深く理解できるはずです。




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