コメリなどのホームセンターで農業用資材を選ぶ際、特に夏場の高温対策として欠かせないのが「遮光ネット」です。しかし、店頭には多種多様なネットが並んでおり、「どれを選べば良いのか」「自分の作物にはどの遮光率が適しているのか」と迷ってしまう農業関係者の方も多いのではないでしょうか。
単に日差しを遮れば良いというわけではなく、作物の光合成に必要な光量を確保しつつ、葉焼けや高温障害を防ぐバランスが求められます。特にコメリのような大手農業資材店では、プロ仕様から家庭菜園向けまで幅広いラインナップが揃っているため、それぞれの特性を理解しておくことが失敗しない購入の鍵となります。ここでは、農業の現場で実際に役立つ選定基準と、コメリで取り扱われている製品の傾向を踏まえた基礎知識を深掘りしていきます。
コメリのPB(プライベートブランド)商品や取り扱いメーカー品は、価格と性能のバランスが考慮されているものが多く、コストを抑えたい農家にとって強力な味方となります。次項からは、具体的な選び方やおすすめの商品について詳しく解説していきます。
コメリで販売されている農業用遮光ネットには、非常に多くのバリエーションがあります。これらを適切に使い分けるためには、「遮光率」「色」「素材・織り方」の3つの軸で考える必要があります。
まず「遮光率」ですが、これはネットがどれくらい光を遮断するかを示す数値です。一般的に、軟弱野菜(ホウレンソウやレタスなど)の育苗期には50%〜70%程度の高めの遮光率が選ばれることが多いです。一方で、定植後の作物や、ある程度の光量を必要とする果菜類では30%〜40%程度の軽い遮光が好まれます。コメリの店舗では、パッケージに大きく遮光率が表示されているため、まずはこの数値を確認しましょう。あまりに遮光率が高すぎると、作物が徒長(ひょろひょろと伸びてしまうこと)する原因となるため注意が必要です。
次に「色」の選択です。これが意外と見落とされがちなポイントです。
そして「素材・織り方」です。コメリでよく見かけるのは「ラッセル編み」と「カラミ織り」です。ラッセル編みは、網目が結節されていないため、ハサミで自由にカットしてもほつれにくいという利点があります。サイズ調整が必要な現場では非常に便利です。一方、耐久性を重視するならポリエチレン製の強力な平織りタイプが良いでしょう。
コメリドットコムなどのオンラインストアでは、店舗にないサイズ(例えば幅2m×長さ50mなどの長尺物)も取り扱っていることがあります。大量に必要な場合は、ネット注文で店舗受け取りにすると送料が節約できるため、農業経営のコストダウンにつながります。
製品選びに迷った際は、以下のリンク先のような情報も参考にすると良いでしょう。
コメリの公式通販サイトでは、遮光ネットのスペック詳細や在庫状況が確認でき、店舗受け取りサービスを利用することで送料を節約できます。
遮光ネットの効果を最大限に発揮するためには、「張り方」が極めて重要です。特にプロの農業現場では、単管パイプを骨組みとして利用し、堅牢な日除け棚を作成するケースが多いです。コメリは資材館が充実しており、単管パイプや固定具(クランプ、パッカー)を一括で揃えられるのが強みです。
単管パイプを使って遮光ネットを張る際の最大のメリットは、「高さの確保」と「通気性の維持」です。ネットを作物に直掛け(ベタ掛け)すると、熱がこもってしまい、かえって高温障害を引き起こすリスクがあります。単管パイプで枠組みを作り、作物から少なくとも50cm以上、できれば1m以上離してネットを展張することで、風通しが良くなり、気化熱による冷却効果も期待できます。
具体的な張り方の手順とコツは以下の通りです。
また、意外と知られていないテクニックとして、「可動式にする」という方法があります。単管パイプにカーテンレールのような仕組み(ワイヤーを張ってリングを通すなど)を取り付け、曇りの日や朝夕はネットを開けられるようにしておくと、作物の生育にとって理想的な光環境を作り出せます。固定式にしてしまうと、日照不足になる梅雨時期などに剥がす手間が発生するため、設置段階で開閉のしやすさを考慮しておくと後の管理が楽になります。
単管パイプの施工方法や必要な部材については、以下のリンクも参考になります。
自分で単管パイプを組む際の基礎知識や、安全な施工方法、必要なクランプの種類などが詳しく解説されています。
遮光ネットを設置する際、ネットそのものの性能と同じくらい重要なのが、ネットを固定するための「パッカー」や「クリップ」などの留め具です。これらは単なる洗濯バサミのようなものではなく、農業用ネットの展張に特化した機能を持っています。コメリの売り場に行くと、非常に多くの種類の留め具が並んでいますが、それぞれの特性を理解して選ぶことが、強風対策や作業効率化につながります。
まず「パッカー(ハウスパッカー)」についてです。これはパイプハウスのアーチパイプや直管パイプにフィルムやネットを固定するための円筒形のクリップです。
次に「クリップ(吊り具・アイクリップ)」です。これはネットの端(耳)を挟んで、ロープやワイヤーに引っ掛けるための道具です。
さらに、コメリでは「マイカ線」や「ハウスバンド」を留めるための専用フックも販売されています。これらを組み合わせることで、台風シーズンでも飛ばされない強固な遮光設備を作ることができます。
意外な落とし穴として、「パッカーの色と劣化」があります。一般的に青やオレンジ色のパッカーが目立ちますが、これらは紫外線で劣化しやすい傾向があります(数年で割れます)。最近では耐候性を高めた黒色や、UV剤入りの透明・白色のパッカーも登場しています。少し単価が高くても、交換の手間を考えると高耐久タイプを選ぶのが賢い選択です。
農業経費を削減したいと考える際、100円ショップ(ダイソーやセリアなど)の園芸用品コーナーは魅力的に映ります。実際、ダイソーでも遮光ネットは販売されており、家庭菜園レベルであれば十分に使える商品もあります。しかし、本格的な農業利用や、コメリで販売されているような業務用製品と比較した場合、明確な違いが存在します。ここでは、プロの視点からコメリ製品とダイソー製品を比較し、使い分けの基準を提案します。
| 比較項目 | コメリ(農業用・業務用) | ダイソー(100円〜300円商品) |
|---|---|---|
| サイズ | 幅2m×50mなど、長尺や広幅が豊富 | 幅1m×2mなど、ベランダ・小規模向けが中心 |
| 耐久性 | 耐候性剤入りのものが多く、数年単位で使用可能 | ワンシーズン(ひと夏)での使い捨てが前提 |
| 遮光率 | 30%〜90%まで細かく選べる | 45%〜75%程度で、選択肢は少ない |
| 端の処理 | ハトメ加工やほつれ止めが堅牢 | 切りっぱなしや、簡易的なハトメのみ |
| 素材 | ポリエチレンの密度が高く、破れにくい | 繊維が細く、強い力がかかると裂けやすい |
1. サイズと規格の違い
決定的な違いはサイズです。農業現場では、幅2m以上、長さ数十メートルが必要になることが一般的です。ダイソーの商品は最大でも2m×2m程度が多く、畑全体を覆うには何枚も繋ぎ合わせる必要があります。繋ぎ目が増えれば、そこから風が入り込んだり破れたりするリスクが高まり、作業効率も著しく低下します。コメリのロール巻き(原反)を購入し、必要な長さにカットして使う方が、結果的に坪単価が安くなるケースも少なくありません。
2. 耐久性とUV対策
コメリで扱う農業用ネットは、屋外で長期間日光にさらされることを前提に作られており、強力なUV剤(紫外線吸収剤)が練り込まれているものが多いです。一方、100均のネットは、ひと夏経過するとボロボロと崩れてプラスチック片が土に混ざってしまうことがあります。農地へのマイクロプラスチック残留を防ぐ観点からも、長期使用する場所には耐久性の高いコメリ製品(特に日本製や有名メーカー製)を選ぶべきです。
3. 遮光の質の差
単に「暗くする」だけであれば100均のネットでも機能しますが、農業用ネットは「通気性」と「光の拡散」も考慮されています。コメリで売られている「ダイオ化成」などのメーカー品は、編み方が工夫されており、熱気がこもりにくくなっています。安価なネットは目が詰まりすぎて風通しが悪く、ネットの下が高温多湿になり病気が発生する原因になることもあります。
独自の活用視点:使い分けの推奨
すべてを高級なネットにする必要はありません。以下のような使い分けがコストパフォーマンスを最大化します。
結論として、農業を生業とする場合や、ある程度の規模で家庭菜園を行う場合は、初期投資が多少かかってもコメリで専用資材を購入する方が、買い替えの手間や廃棄物の処理、そして何より作物の出来栄えにおいてメリットが大きいと言えます。
最後に、検索上位の記事にはあまり書かれていない、少しマニアックですが効果的な「温度管理の裏技」を紹介します。遮光ネットは「上にかけるもの」という固定観念がありますが、実はそれ以外の使い方でハウスや圃場の環境を劇的に改善できる場合があります。
1. 「サイド張り」と「マルチ下敷き」
通常、遮光ネットは天井部分(天窓)に張りますが、西日が強く当たるハウスの側面(サイド)だけに遮光ネットを張るという方法があります。これにより、光合成に必要な午前中の光は確保しつつ、ハウス内温度を急上昇させる午後の強烈な西日だけをカットできます。
また、意外な使い方として、黒の遮光ネットを「マルチフィルムの下」や「通路」に敷くという方法があります。防草シートの代用としての役割に加え、地温の過剰な上昇を抑える効果があります。特に夏場の地温上昇は根痛みの原因になりますが、遮光ネットは水を通すため、雨水を利用しながら地温コントロールが可能です。
2. 二重張り(ダブルシェード)の活用
遮光ネットを1枚張るのではなく、遮光率の低いネット(30%〜40%)を2層にする方法です。
3. ミスト装置との併用による気化熱冷却
コメリでも販売されている簡易的なミストノズル(水道ホースにつなぐタイプ)を、遮光ネットの「直下」または「上」に設置します。
遮光ネット単体では「温度上昇を防ぐ」ことしかできませんが、水と組み合わせることで「温度を下げる」積極的な冷房装置へと進化します。
4. 収穫後の乾燥・調整作業エリアの確保
農業用遮光ネットは、作物だけでなく「人間」や「収穫物」のためにも使えます。コメリで単管パイプと遮光ネットを購入し、畑の隅に簡易的な休憩所兼、収穫物の仮置き場を作ります。収穫直後の野菜は直射日光に当たると数分で品温が上がり、鮮度が落ちてしまいます。遮光率70%〜90%の濃い影を作ることで、出荷までの品質保持に大きく貢献します。これを「予冷」の第一歩として活用するのは、プロ農家の知恵です。
これらのテクニックは、コメリで入手できる資材だけで十分に実践可能です。単に「日陰を作る」道具としてだけでなく、総合的な環境制御ツールとして遮光ネットを見直してみると、作物の品質向上につながる新しい発見があるはずです。