単管パイプのジョイントの種類を徹底解説!農業に最適な選び方

単管パイプのジョイントの種類で悩んでいませんか?農業用途に特化した選び方や、意外と知られていない「電食」による腐食リスクまで詳しく解説。あなたの農作業に最適な金具が見つかりますように。

単管パイプのジョイントの種類

基礎知識 クランプとジョイントの決定的な違い

 

農業現場で単管パイプを組む際、まず理解しておかなければならないのが「クランプ」と「ジョイント」の機能的な違いです。多くの人がこれらを混同して使用していますが、本来の役割は明確に異なります。

 

クランプ(単管クランプ)の特徴
クランプは、パイプ同士を重ねて外側から締め付ける金具です。

 

  • メリット: 強度が非常に高い。パイプの長さを厳密に計算しなくても、重ね代(オーバーラップ)を調整することで現場での微調整が効く。安価で入手しやすい。
  • デメリット: 突起物が多くなるため、ビニールハウスのフィルムを破いたり、作業着を引っ掛けて転倒事故につながるリスクがある。見栄えが無骨になる。
  • 農業での使い所: ビニールハウスの主要構造部、力が強くかかる筋交い、絶対の外れてはいけない基礎部分。

ジョイント(差し込み金具など)の特徴
ジョイントは、パイプの端と端をつないだり、パイプの中に差し込んで連結したりする金具です。

 

  • メリット: 接続部分がフラットになるため、ビニールを傷つけにくい。突起が少なく、作業中の安全性が高い。完成した構造物の見栄えが良い。
  • デメリット: クランプに比べて引張強度が低い場合がある。パイプの切断寸法を「ミリ単位」で計算する必要がある(差し込み深さを考慮するため)。
  • 農業での使い所: 果樹棚(トレリス)、農具小屋の棚、防獣柵、ハウスの妻面やドア周りなど、人が頻繁に触れる場所。

参考リンク: クランプとジョイントの強度や用途の違いについて詳細な比較表があります(大和鋼管工業)
農業従事者がこれらを選ぶ際は、「強度が最優先される骨組み」にはクランプを、「作業性や安全性、被覆材への優しさが優先される場所」にはジョイントを使うという使い分け(ハイブリッド工法)が最も合理的です。全てをジョイントで作ろうとするとコストが跳ね上がり、全てをクランプで作ると作業性が悪くなります。

 

プロの定番 ボンジョイント・直線ジョイントの種類の解説

建設現場や足場資材として古くから使われている、いわゆる「プロ仕様」のジョイントには、主に以下の3種類があります。これらはホームセンターでも入手しやすく、農業用ハウスの補強などでも頻繁に使用されます。

 

1. ボンジョイント(C型ジョイント)
最も一般的な「パイプ同士を直線につなぐ」ための金具です。

 

  • 構造: パイプの中に挿入し、ボルトを締めると内部で金具が広がり(圧着され)、パイプを内側から固定します。
  • 注意点: 「足場使用不可」です。あくまでモノを掛ける棚や、荷重がそれほどかからない柵などに使います。人が乗るような構造物には絶対に使用してはいけません。農業用としては、柵の延長などに便利です。

2. 直線ジョイント(ピン付き用)
「ピン付き単管パイプ」専用のジョイントです。

 

  • 構造: パイプの両端にあるピン穴に、ジョイントの突起をカチッとはめ込んで固定します。
  • メリット: ボルト締めが不要で、引っ張り強度が非常に高い。抜ける心配がほぼありません。
  • 農業での活用: 強風を受ける防風ネットの支柱など、絶対に抜けてはいけない箇所の連結に最適です。ただし、ピン付きパイプを用意する必要があります。

3. マルチジョイント(ロックジョイント)
ボンジョイントの「圧着固定」と、直線ジョイントの「ピン固定」の両方の機能を持つ上位モデルです。

 

  • 特徴: 揺れや振動に強く、ガタつきが少ないのが特徴です。
  • デメリット: 価格が他のジョイントの2〜3倍することもあります。コストにシビアな農業経営では、よほどの強度が必要な箇所(例えば重機が出入りするゲートの補強など)に限定して使うのが賢明です。

これらの「直線につなぐ」ジョイントは、長尺のパイプを買わずに、短いパイプをつないで長いスパン(間隔)を作りたい時によく使われます。しかし、つなぎ目はどうしても強度が落ちるため、強風荷重がかかるハウスのアーチ部分などでは、極力ジョイントを使わずに1本のパイプを使うか、補強を入れるのが鉄則です。

 

DIY・農業 かん太・LABOなど「差し込み式」の種類の魅力

近年、農業DIYで爆発的に普及しているのが、「かん太」や「LABO」といったブランドに代表される「差し込み式(インサート式)ジョイント」です。これらは従来の足場用金具とは一線を画し、自由な設計を可能にします。

 

差し込み式ジョイントの特徴

  • 豊富な形状: 3方向(コーナー)、4方向、5方向、ヒンジ(蝶番)、取っ手、キャスター接続用など、数百種類が存在します。これにより、従来のクランプでは難しかった「複雑な形状の農具棚」や「開閉式のゲート」、「可動式の選別台」などが簡単に作れます。
  • 固定方法: 六角レンチでイモネジ(止めねじ)を締めるだけで固定できます。専用工具が不要で、誰でも簡単に施工可能です。

農業における具体的な活用シーン

  • 果樹棚(キウイ、ブドウなど):

    従来のクランプだと、収穫時に頭や腕を突起にぶつける事故が多発しましたが、差し込み式ジョイントなら表面が滑らかなので安全です。また、棚の高さを微調整しやすいのもメリットです。

     

  • 選果場の作業台:

    自分の身長や作業スタイルに合わせた「オーダーメイドの作業台」を安価に作れます。キャスターを付ければ移動も楽々で、掃除もしやすくなります。

     

  • 簡易休憩所・日除け:

    ハウスの横にちょっとした休憩スペースを作る際、意匠性の高いジョイントを使えば、カフェのようなおしゃれな空間を作ることも可能です。モチベーション向上につながります。

     

参考リンク: LABO金具の「止めねじ」がなぜ強力に固定できるのか、その構造的秘密が解説されています(単管DIYランド)
ただし、これらの便利なジョイントにも弱点があります。それは「水抜き」の問題です。パイプの中に金具を差し込むのではなく、パイプを金具に差し込むタイプ(袋状になっているもの)の場合、雨水が溜まると内部から錆びる原因になります。屋外で使用する場合は、水抜き穴がついているタイプを選ぶか、ドリルで小さな穴を開けておく工夫が必要です。

 

見落とし厳禁 異種金属による「電食」とジョイントの種類の関係

これは多くの農家さんが見落としがちですが、非常に重要な「独自視点」の情報です。単管パイプとジョイントを組み合わせる際、「素材の相性」を間違えると、驚くべき速さで腐食(サビ)が進行します。これを「電食(異種金属接触腐食)」と呼びます。

 

電食とは何か?
異なる種類の金属が水(雨水や結露)を介して接触すると、微弱な電流が流れ、イオン化傾向の高い方の金属がボロボロに溶けてしまう現象です。

 

農業現場で起きやすい「最悪の組み合わせ」

  • 亜鉛メッキの単管パイプ × ステンレス製のボルト/ビス

    「錆びないように」と思って高価なステンレスのボルトを使う農家さんがいますが、これは逆効果になることがあります。亜鉛とステンレスが接触すると、亜鉛側(パイプやジョイント本体)が犠牲になって急速に腐食します。

     

  • アルミ製ジョイント × 鉄製パイプ

    軽量化のためにアルミ製のジョイントを使う場合も要注意です。屋外で雨ざらしになると、接点から白い粉を吹いて腐食が始まります。

     

対策方法

  1. 同素材で揃える: 鉄(亜鉛メッキ)のパイプには、鉄(亜鉛メッキ)のジョイントとボルトを使うのが基本です。これが最も安価で、かつ電食リスクが低いです。
  2. 絶縁する: どうしても異種金属を使いたい場合(例:強度の関係でステンレスボルトを使いたい場合など)は、金属同士が直接触れないように「樹脂製のワッシャー」「ゴムパッキン」を挟み込みます。
  3. ドブメッキ(溶融亜鉛メッキ)を選ぶ: 沿岸部の農地や、肥料(酸性・アルカリ性)が飛散する環境では、通常の電気メッキ(キラキラしたもの)ではなく、ドブメッキ(表面がざらついたグレーのもの)のジョイントを選ぶと、耐食性が格段に上がります。

参考リンク: 異種金属腐食(電食)のメカニズムと、絶縁による具体的な対策方法が詳しく解説されています(ダイコー)
「せっかく作った棚が2年でボロボロになった...」という失敗の多くは、この電食が原因です。特に肥料や農薬を使う農業現場は、金属にとって過酷な環境です。ジョイント選びは「形」だけでなく「素材」にも着目してください。

 

台風対策 農業用ハウスで使うべきジョイントの種類の選び方

農業経営にとって最大のリスクの一つが「台風」です。単管パイプで作ったハウスや倉庫が風で倒壊するかどうかは、実はジョイントの選び方と施工精度に大きく左右されます。

 

「抜け防止」が生命線
強風時、パイプには想像を絶する「引き抜き荷重(引っ張られる力)」がかかります。

 

  • 差し込み式(イモネジ固定)の限界:

    イモネジだけで留まっているDIY用ジョイントは、繰り返しの振動でネジが緩みやすい傾向があります。台風が予想される地域では、ハウスの主要構造(柱や梁)には、差し込み式ではなく「クランプ」または「貫通ボルトを通せるジョイント」を使用してください。

     

  • 筋交い(ブレス)の重要性:

    どんなに高価なジョイントを使っても、四角形の構造は横からの力に弱いです。必ず「斜めのパイプ(筋交い)」を入れてください。この筋交いの固定には、角度が自由に変えられる「自在クランプ」を使います。ここをケチって簡易的なジョイントで済ませると、ハウス全体がねじれて倒壊します。

     

地中部分のジョイント処理
パイプを地面に打ち込んで基礎にする場合、地中の水分でジョイントが最も早く錆びます。

 

  • 対策: 地面と接する部分、および地中に入る部分にはジョイントを使わないでください。1本の長いパイプを打ち込むのが鉄則です。もし長さが足りず地中で継ぎ足す必要がある場合は、必ず「防食テープ」をジョイント周りに分厚く巻き付け、土壌中の水分やバクテリアから遮断してください。

「遊び」をなくす施工テクニック
ジョイントの中にパイプを差し込む際、数ミリの隙間(遊び)があると、風の振動でガタガタと揺れ、金属疲労を起こします。

 

  • 対策: ジョイントを締める際は、ハンマーで叩いて奥までしっかりと密着させ、その状態でネジを締め込んでください。「入ったからOK」ではなく「突き当たった感触」を確認することが、台風に負けない強い構造物を作るコツです。

参考リンク: 自分でできるパイプハウスの強靭化マニュアル。筋交いやクランプの適切な配置が図解されています(神栖市・農林課)
単管パイプは、適切なジョイントを選び、正しく施工すれば、プロが建てた鉄骨ハウスに匹敵する強度を出せます。コスト削減と防災の両立を目指し、最適な金具を選んでください。

 

単管パイプジョイントの種類と選び方
🛠️
クランプ vs ジョイント

強度の「クランプ」、安全・美観の「ジョイント」。適材適所の使い分けがプロの技。

💡
差し込み式の魅力

「かん太」などは種類豊富でDIYに最適。ただし主要構造部は強度不足に注意。

電食(サビ)に注意

ステンレスと亜鉛メッキの混用はNG。同素材で揃えるか絶縁対策を忘れずに。

 

 


現代用語の基礎知識 2025