徒長とは?野菜の苗が伸びる原因と対策!復活テクニックも解説

徒長とは何か、その原因と対策を徹底解説。日照不足や水分、肥料のバランスが崩れるとなぜ苗がひょろひょろになるのか?科学的なメカニズムやDIFなどのプロの技術、失敗した苗の復活方法まで詳しく紹介します。あなたの苗は大丈夫ですか?
徒長とは?野菜の苗が伸びる原因と対策!復活テクニックも解説
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徒長のメカニズム

日照不足や高温、窒素過多が引き起こす生理障害。植物ホルモンと光質の関係を理解しよう。

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放置するリスク

病害虫に弱くなり収穫量が激減。ひょろひょろ苗は定植後の生存率も低下する。

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復活とリカバリー

深植えや断根挿し木など、品目に応じた裏技で失敗した苗を強力な苗に再生させる。

徒長 とは

徒長 とは
農業や家庭菜園において「徒長(とちょう)」とは、植物の茎が不健全に細長く伸びてしまう現象を指します。一般的に「もやしっ子」のような状態と形容され、節と節の間(節間)が間延びし、茎が太くならずに上へ上へと伸びてしまう状態です。これは単に背が高くなる「生長」とは明確に区別されるべき生理障害の一種であり、植物が何らかの環境ストレスや不適切な管理に対して示したSOSサインでもあります。
健全な苗であれば、茎は太くがっしりとしており、葉の色は濃く、節間は詰まっています。しかし徒長した苗は、茎が白っぽく弱々しくなり、葉の色も薄くなる傾向があります。風や雨などの物理的な刺激に対して極端に弱く、自重を支えきれずに倒伏してしまうことも珍しくありません。この現象は、発芽直後の双葉の段階から、育苗中、さらには定植後の生育初期に至るまで、あらゆる段階で発生する可能性があります。
徒長は決して「成長が早い」わけではありません。植物体内の細胞が縦方向に無理やり引き伸ばされているだけであり、細胞壁は薄く、組織は軟弱になっています。そのため、病原菌が侵入しやすく、アブラムシなどの害虫にも狙われやすくなります。結果として、花つきが悪くなったり、実が小さくなったりと、最終的な収穫量や品質に甚大な悪影響を及ぼします。

徒長の主な原因と発生メカニズム


徒長を引き起こす原因は一つではなく、光、水、温度、栄養といった複数の環境要因が複合的に絡み合っています。これらが植物の生理バランスを崩したとき、植物は「生存本能」として徒長を選択します。それぞれの要因について、植物生理学的な視点から詳しく掘り下げてみましょう。

  • 日照不足(光量不足)
    最も一般的かつ直接的な原因です。植物は光合成によってエネルギーを作り出しますが、光が足りない環境下に置かれると、「もっと光の当たる場所へ出よう」として、エネルギーを茎の伸長に優先的に配分します。これはジャングルなどで他の植物の陰になった個体が、生き残るために背を伸ばそうとする生存戦略の名残です。特に、室内の窓辺やベランダの陰、密植により隣の葉と重なり合っている環境では、強烈な徒長圧がかかります。
  • 水分の過剰供給
    水を与えすぎると、植物の細胞内の圧力(膨圧)が高まり、細胞が膨張しやすくなります。土壌が常に湿っている状態では、根が水を求めて伸長する必要がなくなり、地上部の茎葉ばかりが茂るようになります。特に夜間に土壌水分が多いと、植物は呼吸によって消費するはずのエネルギーを使わず、余ったエネルギーを伸長成長に回してしまいます。メリハリのない水やりは、軟弱な細胞を作り出す最大の要因です。
  • 窒素肥料の過多
    肥料、特に「葉肥(はごえ)」と呼ばれる窒素成分が多すぎると、植物は栄養生長(茎や葉を大きくする成長)に偏りすぎます。窒素はタンパク質を作る重要な要素ですが、過剰になると細胞分裂が異常に促進され、細胞壁が十分に硬化しないまま次々と新しい細胞が作られてしまいます。これにより、見た目は緑が濃く大きく見えても、中身がスカスカの徒長苗が出来上がります。これを「窒素過多による暴れ」とも呼びます。
  • 高温環境(特に夜温の高さ)
    温度管理も極めて重要です。植物は昼間に光合成で糖分を作り、夜間にその糖分を使って呼吸し、体を構成する成分へと変換します。しかし、夜間の温度が高すぎると呼吸による消費が激しくなり(呼吸消耗)、貯蔵養分が浪費されます。この消耗戦の中で、植物は生存を優先して茎を伸ばす反応を示します。特に昼と夜の温度差が小さい環境では、徒長のリスクが跳ね上がります。

徒長(とちょう) | 農業資材の紹介サイト - 農材ドットコム
※上記リンクでは、農業資材の観点から徒長の基本的な定義と、発生しやすい環境条件について簡潔にまとめられています。

徒長した苗の具体的なデメリット

「少しくらい背が高くても大丈夫だろう」と徒長を甘く見てはいけません。徒長した苗をそのまま定植して栽培を続けることは、その後の管理労力を増大させ、最終的な成果を損なう多くのデメリットを抱え込むことになります。プロの農家が「苗半作(なえはんさく)」と言って苗作りを重視するのは、徒長苗がもたらす負の連鎖を知り尽くしているからです。

  • 病害虫に対する抵抗力の低下
    徒長した植物の表皮組織は非常に薄く、クチクラ層(ワックス層)の発達も不十分です。これは、人間で言えば皮膚が薄く傷つきやすい状態と同じです。ウイルスを媒介するアブラムシやコナジラミなどの吸汁害虫にとって、徒長した柔らかい茎葉はご馳走であり、口針を容易に突き刺すことができます。また、うどんこ病灰色かび病などのカビ(糸状菌)の胞子も、薄い細胞壁を突破して容易に侵入します。
  • 物理的な脆弱性と倒伏
    茎が細くひょろひょろとしているため、物理的な強度が著しく不足しています。定植時の植え付け作業で茎が折れてしまったり、定植後の強い風や雨で簡単に倒れてしまったりします。一度倒伏した植物は、起き上がろうとしてエネルギーを浪費し、茎が曲がって維管束(水や養分の通り道)が圧迫されるため、その後の生育が停滞します。支柱を立てるなどの余計な手間が増える原因にもなります。
  • 定植後の活着不良と生育遅延
    徒長苗は地上部の大きさに比べて、地下部の根の張りが貧弱であることがほとんどです(T/R比のバランスが崩れている状態)。そのため、畑やプランターに植え付けた後、土壌から水分や養分を吸収する力が弱く、新しい環境に根付く(活着する)までに時間がかかります。この活着の遅れは、収穫時期の遅れや、初期収量の減少に直結します。

苗が徒長したらどうすればいいの?原因と対策を解説します
※徒長苗が抱える生理的な弱点や、それによって引き起こされる病害虫リスクについて詳細に解説されています。

徒長を防ぐための環境管理とDIF

徒長を防ぎ、がっしりとした「ずんぐり苗」を育てるためには、植物が置かれている環境を徹底的にコントロールする必要があります。基本的な管理から、プロの生産者が実践する高度な技術まで、効果的な対策を紹介します。
まず基本となるのは「水やり」と「日当たり」の管理です。育苗期の水やりは、「夕方には土の表面が乾いている」状態を目指すのが鉄則です。朝にたっぷりと水を与え、日中の光合成で水を消費させ、夜間は土壌水分を低く保つことで、植物の徒長を物理的に抑制できます。また、苗同士の葉が触れ合わないように十分な間隔を空ける「鉢広げ(スペーシング)」も重要です。隣の苗の影を感じさせないことで、競争による伸長を防ぎます。
そして、より専門的で効果の高い技術として「DIF(ディフ)」という温度管理手法があります。DIFとは「Difference(差異)」の略で、昼の温度と夜の温度の差(DIF = 昼温 - 夜温)を利用して草丈をコントロールする技術です。

  • 正のDIF(+DIF):昼の温度が夜より高い状態。一般的に植物の伸長を促進します。
  • 負のDIF(-DIF):昼の温度を夜より低くする、または昼と夜の温度差をなくす状態。これが徒長抑制に劇的な効果を発揮します。

特に、日の出前後の数時間を夜温よりも低い温度で管理する、あるいは昼間の温度を極力上げないように管理することで、植物の茎の伸長を強力に抑えることができます。家庭菜園の育苗ボックスなどでヒーターを使用している場合、夜間の温度を上げすぎないこと、そして日中は早めに換気をして温度を下げることで、この「負のDIF」に近い環境を作り出し、薬剤を使わずに徒長を抑えることが可能です。
昼夜温度差処理(DIF)による花き苗の生育制御 - 農研機構
農研機構による研究成果で、DIF(昼夜温度差)を用いた植物の伸長制御に関する科学的データと実証結果が示されています。

徒長苗の復活とリカバリー方法

万が一、苗が徒長してしまっても諦める必要はありません。野菜の種類や徒長の程度によっては、適切なリカバリー処置を行うことで、通常の苗と同等、あるいはそれ以上に強く育てることができます。

  • 深植え(胚軸埋め込み)
    トマト、ナス、キュウリ、ピーマンなどのナス科やウリ科の野菜に有効な最もポピュラーな方法です。徒長して伸びてしまった茎(胚軸)の部分を、定植時に土の中に深く埋め込んでしまいます。これらの植物は、茎から不定根(ふていこん)と呼ばれる根を出す性質が強いため、土に埋まった茎から新しい根が生えてきます。これにより、根の量が増えて養水分吸収能力が向上し、地上部のぐらつきも解消されます。「徒長した分だけ根が増える」とポジティブに捉えることができる強力なリカバリー術です。ただし、接ぎ木苗の場合は、接ぎ木部分を土に埋めないように注意が必要です。
  • 斜め植え・寝かせ植え
    深植えが難しい浅いプランターなどの場合、茎を斜め、あるいは横に寝かせて土に埋める方法です。原理は深植えと同じですが、地温の高い浅い部分に根が広がるため、初期生育が良くなるメリットもあります。トマト栽培では意図的に行われることもあるテクニックです。
  • 断根挿し木(胚軸切断挿し木法)
    さらに過激ですが、効果の高い方法として、徒長した苗の根を切り落とし、茎を土に挿して発根させる「断根挿し木」があります。ブロッコリーやキャベツ、マメ科の野菜、キュウリなどで実践されています。一度根を断つことで植物に強烈なストレスを与え、生き残るために太い根を再生させようとする力を引き出します。成功すれば、徒長が解消されるだけでなく、病気に強い苗に生まれ変わりますが、湿度管理など発根までのケアには技術を要します。

これらの方法は、いずれも植物の再生能力を利用したものです。ただし、極端に弱りきった苗や、茎が腐り始めているような苗では成功率が低くなるため、実施する際は苗の状態をよく観察してから行ってください。
徒長かな?と感じたら。~原因と対策方法まとめ~ | 施設園芸.com
※徒長してしまった後の具体的な対処法や、事前の防止策が実用的な視点でまとめられています。

徒長を科学する:光質とフィトクロム

なぜ植物は、隣に他の植物がいるとそれを察知して徒長するのでしょうか?また、なぜ日陰だと伸びるのでしょうか?この現象をより深く理解するための鍵は、植物が持つ「目」とも言える光受容体タンパク質フィトクロムと、光の質(波長)にあります。これは一般的な栽培マニュアルにはあまり書かれていない、植物生理学の深層です。
太陽の光には、「赤色光(Red)」と「遠赤色光(Far-Red)」という波長が含まれています。
植物の葉は、光合成のために「赤色光」を吸収し、光合成に使えない「遠赤色光」はそのまま透過(または反射)させます。つまり、植物の葉が生い茂った木陰や、苗が密集している場所では、赤色光が遮られ、相対的に「遠赤色光の割合が高い(R/FR比が低い)光」が届くことになります。
植物の体内にあるフィトクロムは、この「赤色光」と「遠赤色光」のバランスを敏感に感知しています。
「周りに遠赤色光が多い=近くにライバル植物がいる、または日陰である」と判断すると、フィトクロムは植物ホルモン(ジベレリンなど)に指令を出し、茎を伸ばしてライバルよりも高い位置で光を浴びようとする「避陰反応(ひいんはんのう)」を引き起こします。これが、密植や日照不足で徒長が起こる真のメカニズムです。
この性質を逆手に取った対策も存在します。例えば、遠赤色光をカットする特殊な農業用フィルムを使用したり、反射シートを使って株元に十分な赤色光を当てたりすることで、植物に「ここは競争のない開けた場所だ」と錯覚させ、薬剤を使わずに徒長を抑制し、矮化(わいか・ずんぐりとさせること)させることが可能です。単に「光を当てる」だけでなく、「どのような質の光を当てるか」を意識することは、徒長制御の究極のテクニックと言えるでしょう。
自然光の赤色光/遠赤色光光量子束比を変化させる植物成長制御
※赤色光と遠赤色光の比率(R/FR比)が植物の伸長成長に与える影響について詳述された学術論文です。




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