土壌汚染 ガイドライン 環境省というキーワードの中心にあるのが、「土壌汚染対策法」と、その運用方法を示した「土壌汚染対策法に基づく調査及び措置に関するガイドライン(改訂第2版)」です。 土壌汚染対策法は、特定有害物質による汚染状況の把握と、人の健康被害の防止を目的としており、そのための調査・指定・措置の枠組みを定めています。 ガイドラインはこの法律を「どう現場で使うか」を細かく解説するマニュアルであり、調査項目や測定方法、対策工法の選び方まで標準的な考え方を示しています。
土壌汚染対策法の対象となる土地は、原則として工場跡地やガソリンスタンド跡地など、特定施設の使用履歴がある土地や一定規模以上の形質変更を行う土地です。 一方、多くの農地は直接この法律の対象外ですが、農地の隣接地に工場跡地がある場合など、拡散リスクのあるケースでは農業者にも影響が及ぶため、ガイドラインの考え方を知っておくと、自治体や土地所有者との協議の際に有利に働きます。 また、土壌汚染対策法では、汚染の程度に応じて「要措置区域」や「形質変更時要届出区域」に区分し、それぞれで求められる管理内容(掘削除去、封じ込め、立入制限など)が異なります。
参考)環境基準等の設定に関する資料集
ガイドラインの意外なポイントとして、すべての汚染を「完全に除去する」ことだけを前提としていない点があります。 例えば、人が立ち入らない工業専用地域であれば、掘削除去よりも封じ込めや舗装など、利用形態に応じたリスク管理型の対策が推奨されるケースがあります。 この考え方は、農地に隣接する汚染地の扱いを検討する際にも「どこまでリスクを許容し、どう区画・利用を分けるか」という発想につながります。
参考)土壌汚染対策法の概要
土壌汚染対策法に関する環境省のガイドライン本文と解説
環境省「土壌汚染対策法に基づく調査及び措置に関するガイドライン(改訂第2版)」
農業者にとって重要なのは、土壌汚染 ガイドライン 環境省だけでなく、「農用地土壌汚染防止法」との違いを押さえることです。 農用地土壌汚染防止法は、カドミウムなど一部の特定有害物質に汚染された水田などの農用地を対象に、知事が「農用地土壌汚染対策地域」を指定し、対策計画に基づき客土などの措置を行う仕組みです。 これは、もともと米のカドミウム汚染問題への対応として整備された制度であり、農産物の安全と農家の営農継続を両立させることが大きな目的です。
農用地土壌汚染防止法に基づく対策では、国や自治体が対策費用の大部分を負担する客土事業などが実施されてきましたが、対策地域に指定されると作付制限や作物転換が求められることが多く、収入構造の見直しが必要になる場合があります。 一方、土壌汚染対策法は土地利用の安全性を重視する枠組みで、汚染土地所有者や原因者に対策義務が課されることが基本となっており、農用地土壌汚染防止法とは目的もプレーヤーも異なります。 農地が工場跡地の転用などで汚染している場合には、両方の法律が視野に入りうるため、どの法体系で判断されているのかを行政窓口で確認しておくとトラブル防止につながります。
参考)ひょうごの環境 :: 法令・告示・通知等と土壌汚染関係の基準
意外な点として、農用地土壌汚染防止法の対象物質は限られているため、例えばヒ素や六価クロムなど、工業由来の汚染が農地に及んだ場合には、土壌汚染対策法の枠組みで議論されることが多いという実務上のギャップがあります。 また、近年は、農地であっても過度の施肥によるリンや窒素の蓄積が、水質汚濁や温室効果ガスの発生につながる「別種の土壌問題」として注目されており、農林水産省がGAPの教材などで、土壌診断と適正施肥の重要性を強く打ち出しています。 こうした「化学物質汚染」と「栄養塩の過多」という2つの軸を意識すると、自分のほ場で何をチェックすべきかが明確になります。
参考)https://www.kagoshima-env.or.jp/cms/wp-content/uploads/2021/11/e670b94de1be74b03a51938d8ab67461.pdf
農用地土壌汚染防止法と関連資料(環境省)
環境省「農用地土壌汚染防止法について(法律、政令、省令、通知)」
土壌汚染 ガイドライン 環境省において重要なのが、環境基準・調査方法・対策工法の具体的な中身です。 土壌の環境基準は、カドミウム、鉛、ヒ素などの特定有害物質について、人が一生涯にわたりその土地で生活することを想定し、健康リスクが無視できる範囲となるよう設定されています。 これらの基準は「溶出量基準」と「含有量基準」の2本立てで、地下水への溶け出しや、土壌粒子を経由した摂取リスクを評価するために使われます。
調査の流れは、一般に「履歴調査」「表層土壌のスクリーニング調査」「詳細調査」という段階を踏むよう整理されています。 履歴調査では地図・航空写真・登記簿・事業報告書などから、過去に有害物質を扱う施設が存在したかを確認し、汚染の可能性が高いエリアを絞り込みます。 その後、地形や地下水の流向を踏まえたサンプリング計画を立て、一定間隔のグリッドや、排水溝周辺など高リスク地点を優先して試料採取を行うのが一般的です。
参考)https://www.env.go.jp/water/dojo/gl_ex-me/pdf/01_chpt1.pdf
対策のメニューとして、ガイドラインや環境省資料では、以下のような工法が整理されています。
興味深い点として、近年の議論では「土地利用に応じたリスク管理型対策」を採用することで、従来よりも大幅にコストを削減できた事例が紹介されています。 例えば、将来も工業用地として使い続ける場所では、将来の居住を前提とした厳しい基準まで浄化せず、工場敷地内の動線と汚染エリアをうまく分離することで、安全を確保するアプローチがとられています。 農地に隣接する土地でも、「人が立ち入らない緩衝帯」としての活用を前提にした設計を行えば、過剰な除去対策を避けつつリスクを抑えられる可能性があります。
土壌汚染に係る環境基準(重金属等)
鹿児島県環境保全協会「土壌の汚染に係る環境基準について」
土壌汚染 ガイドライン 環境省が直接対象とするのは主に工業系の土地ですが、そこで示される「リスク評価」と「対策選択」の考え方は、農業現場のリスク管理にも応用できます。 例えば、工業用地では、土地を住宅地として使う場合と比べて、許容できるリスク水準や求められる対策レベルが異なり、それに応じてコストの低い工法が選択されます。 同様に、農地でも「人が頻繁に立ち入る作業スペース」「ほとんど立ち入らない棚田の端」「家畜が長時間滞在する放牧地」など利用の仕方によって、優先的にリスクを下げるべき場所は変わります。
具体的には、次のようなアプローチが考えられます。
参考)https://www.env.go.jp/council/content/i_08/900430851.pdf
参考)https://www.pref.saitama.lg.jp/documents/27897/597846.pdf
興味深い技術として、「ファイトレメディエーション(植物による修復)」が挙げられます。 これは、金属をよく吸収する植物(ヒマワリ、カラシナなど)を汚染土壌に栽培し、収穫・除去を繰り返すことで、ゆっくりと土壌中の有害物質濃度を下げていく方法です。 すぐに環境基準を満たすわけではありませんが、長期的に見れば対策コストを抑えつつ、農地としての機能を維持する可能性があり、一部の研究機関や自治体で実証が進められています。
参考)国内ニュース|環境展望台:国立環境研究所 環境情報メディア
また、農業者自身ができる「汚染を増やさないための予防策」も重要です。過剰な化学肥料や家畜ふん堆肥の連用により、リンや窒素が土壌に蓄積し、水質汚濁や温室効果ガスの発生につながることが報告されており、適正施肥の指針に沿って投入量を管理することが求められます。 定期的な土壌診断を行い、pH、有効態リン、CEC(陽イオン交換容量)などを把握しておけば、将来土壌汚染が疑われた際にも、「いつから・どの程度変化したのか」を説明する材料になり、原因者との責任分担を話し合う際の重要な根拠になります。
参考)https://www.maff.go.jp/j/seisan/gizyutu/gap/attach/pdf/online_kensyu-15.pdf
農地の土壌汚染と植物を用いた修復技術
埼玉県農業技術研究センター「土壌汚染と農産物 ~植物を用いた農地の修復技術の実用化に向けて~」
土壌汚染 ガイドライン 環境省は法律や技術の解説にとどまりません。実務的には、農地の周辺に工場跡地や再開発予定地がある場合、農業者がどのように情報を集め、交渉していくかという「情報戦略」の視点が重要になります。 例えば、土壌汚染対策法に基づく調査結果や要措置区域の指定状況は、多くの自治体でホームページや閲覧室で公開されており、自分の圃場の上流・上手にある土地の履歴や汚染状況を確認することができます。 また、環境省や都道府県が作成した土壌汚染のパンフレットやQ&Aには、住民説明会で使われる基本資料がまとめられているため、これを事前に読み込んでおくことで、事業者や行政との話し合いの場で、専門用語に惑わされずに議論できます。
交渉の場面で役立つポイントとして、次のような点が挙げられます。
あまり知られていない点として、環境省は土壌汚染分野で「優良な土壌環境事業者」の育成・認定に関する予算事業を実施してきており、自治体や公共事業で一定の品質を確保する取り組みが行われています。 農業者が対策事業者を選定する立場にあるケースは多くありませんが、相談を受けた際に「どのような資格や実績を持つ事業者なのか」を確認する視点を持っておくと、過剰な工事や不適切な処理による二次被害を防ぐことにつながります。
最後に、土壌汚染に関する情報は、環境省だけでなく国立環境研究所や地方自治体のサイトにも豊富に蓄積されています。 特に国立環境研究所の解説ページでは、土壌の役割や汚染メカニズムが図解付きで説明されており、農業者が根本から理解するうえで役立つ教材となります。 こうした資料を日常的にチェックしておくことが、いざというときに農地と経営を守る大きな武器になるのではないでしょうか。
土壌の基礎と汚染の解説(国立環境研究所)
国立環境研究所「3.土壌」