着色促進剤の効果と使用方法

果実の着色不良に悩む農業従事者のため、着色促進剤の種類や正しい使い方、適切な散布時期について徹底解説します。収益アップのヒントも満載、あなたはもう試しましたか?

着色促進剤の効果と使い方

着色始期を過ぎてから散布すると効果がありません


この記事のポイント
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着色促進剤の役割

アブシジン酸やエチレンなど植物ホルモンを利用した薬剤が、果実の色素成分アントシアニンの生成を促進し、高温による着色不良を改善します

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コストと効果のバランス

アブサップ液剤は100ml約12,000円と高価ですが、飛び玉が出たタイミングでの100倍希釈散布により、確実な着色向上効果が期待できます

散布タイミングの重要性

着色始期から着色開始2週間後が散布適期で、時期を逃すと効果が大幅に低下するため、果房の状態観察が収益を左右します


着色促進剤とは果実の成熟を助ける植物成長調整剤

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着色促進剤は、ブドウやリンゴなどの果実が本来持つ着色能力を引き出すための植物成長調整剤です。近年の温暖化により、夏季の高温が続くと果実の着色不良が頻発しています。夜間の温度が高いと、果実は光合成で得たエネルギーを呼吸活動に多く使ってしまい、着色に使うエネルギーが不足してしまうのです。


これが基本です。


着色促進剤は、この問題を解決するために開発されました。主な有効成分はアブシジン酸とエチレンの2種類で、どちらも植物が自然に持っているホルモンです。アブシジン酸は果皮の色素成分であるアントシアニンの生成を直接促進し、エチレンは果実全体の成熟を早めることで着色を進めます。


市場では「アブサップ液剤」(アブシジン酸含有)や「エスレル10」(エチレン発生剤)などの製品が流通しています。アブサップ液剤は2023年に国内で販売が開始された比較的新しい製品で、チリやオーストラリアでは2009年から使用実績があります。100ml容量で約12,000円から15,000円と高価ですが、確実な着色向上効果が確認されています。


エスレル10は天然の植物ホルモン「エチレン」の作用をそのまま現すホルモン剤で、着色促進だけでなく熟期促進、摘果促進、落葉促進など多面的な利用が可能です。価格はアブサップ液剤より手頃ですが、用途に応じた使い分けが必要になります。


つまり選択が重要です。


農業現場では、これらの着色促進剤を効果的に使用することで、出荷規格に合わない着色不良果を減らし、収益の向上につなげることができます。ただし使用方法を誤ると、期待した効果が得られないばかりか、果実品質の低下を招く可能性もあるため、正確な知識が求められます。


住友化学のアブサップ液剤詳細情報ページでは、登録内容や使用方法の詳細を確認できます。


着色促進剤の種類とそれぞれの成分の特徴

着色促進剤には大きく分けて2つのタイプがあり、それぞれ作用メカニズムが異なります。第一のタイプはアブシジン酸系で、代表的な製品が「アブサップ液剤」です。有効成分である(2Z,4E)-5-(1S)-1-ヒドロキシ-2,6,6-トリメチル-4-オキソシクロヘキサ-2-エン-1-イル-3-メチルペンタ-2,4-ジエン酸が10.0%含まれており、ブドウ本来の力を引き出して色素成分アントシアニンの生成を高めます。


アブシジン酸は植物ホルモンの一種で、ブドウの着色開始期に果皮内で自然に増加する物質です。低夜温で着色が促進された果皮ではアブシジン酸含量が高く、逆に高夜温で着色が抑制された果皮では含量が低いことが研究で明らかになっています。外部からアブシジン酸を補うことで、高温環境下でも着色を促進できるわけですね。


第二のタイプはエチレン発生剤で、「エスレル10」や「日産エスレル10」がこれに該当します。有効成分はエテホンで、散布後1から2日以内に植物体内でほとんどが分解してエチレンを発生します。エチレンは果実の成熟を総合的に促進するホルモンで、着色だけでなく熟期促進、離層形成促進、倒伏軽減など広範囲の利用が可能です。


これは使えそうです。


さらに、亜リン酸カリウムを主成分とする葉面散布肥料も着色促進効果があります。「サンカラー」や「リンクエース」などの製品は、分子量が小さい亜リン酸が葉面から速やかに吸収され、糖度アップや着色向上に効果を発揮します。カリ成分の補給により、果実への養分転流が促進され、着色が改善されるのです。


ジャスモン酸を主成分とした「ジャスモメート液剤」も注目されています。エチレンによる成熟促進とは別の経路でアントシアニンの生合成を活性化し、リンゴの着色を促進します。散布樹の果実品質は自然収穫果実と比較しても糖度や酸度に変化がないため、品質を維持しながら着色を改善できます。


このように、着色促進剤は作物や目的に応じて使い分けることが重要です。ブドウには主にアブシジン酸系やエチレン発生剤、リンゴにはジャスモン酸系、柑橘類にはエチレン発生剤とジベレリンの併用が一般的に推奨されています。


着色促進剤の正しい散布時期と希釈濃度

着色促進剤の効果を最大限に引き出すには、散布時期と希釈濃度の正確な管理が不可欠です。アブサップ液剤の場合、散布適期は「飛び玉」が出てきたタイミング、つまり果房に数粒ほど色が入ってきた着色始期です。具体的には着色始期から着色開始2週間後までが使用可能期間とされています。この時期を逃すと効果が大幅に低下するため、毎日の圃場観察が収益を左右します。


希釈濃度は100倍から200倍の範囲で使用しますが、濃度が高いほど着色効果が高い傾向にあります。住友化学では100倍希釈を推奨しており、1果房あたり2mlから10mlを散布します。熊本県の試験では、着色始期にアブシジン酸液剤1000ppm(100倍希釈相当)を果房に散布することで明確な着色促進効果が認められています。


ただし注意が必要です。


アブシジン酸は紫外線によって分解されやすいため、薬液は毎回新しいものを作り、当日中に散布しなければなりません。前日に作った薬液を翌日使用すると、有効成分が分解して効果が得られない可能性があります。また、散布液量が多すぎると果粒の汚れや果粉の溶脱が生じるため、果房から滴る程の液量は避けるべきです。


エスレル10の場合、作物によって使用時期と濃度が大きく異なります。ブドウの着色促進では着色開始前から着色期に200ppmから500ppm液を散布し、カキでは富有の着色開始前に50倍液を散布します。濃度を間違えると、着粒過多による裂果、果実着色の遅れ、糖度低下などの問題が発生するため、使用目的や作型によって正確に使い分ける必要があります。


散布方法も重要なポイントです。電動スプレーやハンドスプレーで果房に直接散布するのが基本で、スピードスプレーヤでの散布は避けるべきです。散布ムラがあると効果が不均一になり、一部の果房だけ着色が進まない事態も起こります。


均一散布に努めましょう。


岡山県の研究では、「ピオーネ」にS-ABA液剤を散布する際、散布量は5ml/房、その後袋かけを行う方法が最も着色促進に効果的であることが示されています。このように、散布後の管理方法も合わせて検討することで、より確実な効果が期待できます。


熊本県農業研究センターの試験結果ページでは、実際の散布方法と効果が詳しく紹介されています。


着色促進剤の散布で注意すべき失敗例とリスク

着色促進剤の使用には、知っておくべき失敗例とリスクが存在します。最も多い失敗は散布時期の誤りで、着色始期を過ぎてから散布しても期待した効果が得られません。特にアブサップ液剤は着色開始前の限られた期間にしか効果を発揮しないため、「もう少し様子を見よう」と判断を先延ばしにすると、散布適期を完全に逃してしまいます。


濃度設定の誤りも深刻な問題を引き起こします。規定濃度より薄い液を散布すると効果が不十分で、着色不良果を減らせません。逆に濃すぎる液を散布すると、果実が軟らかくなったり脱粒性が高くなったりする薬害が発生します。鹿児島県の研究では、S-ABA液剤の散布液量が多すぎると果粒の汚れや果粉の溶脱が生じることが報告されています。


エスレル10の使用では、さらに注意が必要です。異常な高低温、多雨、乾燥などの異常気象が続く時期に散布すると、落果や異常果の発生を助長する恐れがあります。また、散布後の降雨により効果が流れ落ちる可能性もあるため、天候を見極めた散布が求められます。


痛いですね。


経済的リスクも無視できません。アブサップ液剤は100mlで約12,000円から15,000円と高価で、1ヘクタールの圃場で使用する場合、相当な費用負担になります。散布タイミングを誤って効果が得られないと、この投資が無駄になってしまいます。また、JA購買と通販サイトでは価格差が数千円あることも報告されており、購入先の選択も慎重に行う必要があります。


収穫後の残留農薬基準を超えるリスクも存在します。特にエスレル10(エテホン)は、収穫間近に使用した場合、残留農薬基準を超える可能性があるため、規制上の監視が厳しくなっています。住友化学の研究によれば、ブドウやブルーベリーなどの着色促進を目的とした使用では、使用時期の厳守が不可欠です。


混用に関する失敗例も報告されています。アルカリ性薬剤との混用やカルシウム剤との混用では、タンク内で結合して沈殿することがあります。また、高温時の散布は避けるべきで、薬害発生のリスクが高まります。展着剤の使用についても、液肥の葉面散布には展着剤は不要で、むしろ肥焼けを起こしやすくなるため注意が必要です。


これらのリスクを回避するためには、製品ラベルの記載内容を正確に守り、散布前に必ず圃場の状態を確認することが大切です。天候予報を確認し、散布後数日間は晴天が続く時期を選ぶことで、効果を安定させることができます。


着色促進剤以外で果実の着色を改善する栽培技術

着色促進剤に頼らない栽培技術も、果実の着色改善に大きな効果があります。


最も基本的な方法は、着果量の調整です。


1本の樹木に実らせる果実の数を適正に保つことで、1粒あたりに行き渡る養分が増え、着色が向上します。ブドウでは環状剥皮処理という技術も効果的で、幹の一部の樹皮を剥ぐことで葉の光合成物質を剥皮箇所より上部で転流させ、果実の着色を良好にします。


水分管理の最適化も重要な技術です。着色開始期からは水やりを控えめにし、土壌をやや乾燥気味に保つことで、果実への糖分の蓄積が促進され、着色が改善されます。岡山県の研究では、7月上旬以降の着色期に土壌乾燥処理(pF3.3でかん水)を行うことで、「ピオーネ」の果実着色が向上し、収穫時期がやや早まることが示されています。


これは無料です。


夕方の潅水作業も効果的な対策です。高温乾燥期にマイクロスプリンクラー灌水点滴潅水を夕方に実施することで、夜間の気温上昇を抑え、果実が着色に使うエネルギーを確保できます。夜温が1度から2度下がるだけで、着色の進み方に大きな差が出ることが確認されています。


葉面散布による栄養補給も見逃せません。カリ剤の散布、具体的には硫酸カリウムの0.2%から0.3%液を着色開始期から7日から10日おきに散布すると、果実への糖分転流が促進されます。亜リン酸含有液肥も効果的で、正リン酸に比べて分子量が小さいため葉面からの吸収が高く、糖度アップと着色向上を同時に実現できます。


日当たりを良くして光合成を促すことも基本中の基本です。適切な摘葉や枝の整理により、果房への日光到達を改善すると、光合成が活発になり着色が進みます。ただし摘葉のタイミングを誤ると収量減や品質低下に直結するため、正しい時期の見極めが必要です。


高温耐性のある品種への転換も長期的な対策として有効です。温暖化が進む中、従来品種での着色確保が年々難しくなっているため、高温条件下でも着色しやすい新品種の導入を検討する価値があります。ただし品種転換には数年の準備期間と投資が必要なため、計画的な実施が求められます。


収穫後の着色改善技術も開発されています。農研機構が開発した「果実発色促進装置」は、青色LEDを用いた面光源により、収穫後のブドウやリンゴの果皮着色を向上させる技術です。アントシアニン蓄積に最適な光条件と温度条件を冷蔵貯蔵庫内で保持でき、出荷前の最終調整として活用できます。


農研機構の果実発色促進装置の紹介ページでは、装置の仕組みと実施例が詳しく解説されています。


これらの技術を組み合わせることで、着色促進剤の使用量を減らしながら、安定した着色を実現することが可能になります。コスト削減と環境負荷低減を両立できるわけですね。