点滴潅水システムにおいて、最も頻繁に発生し、かつ致命的なトラブルが「目詰まり」です。これは単に水が出なくなるだけでなく、生育ムラを引き起こし、収量低下に直結します。目詰まりの原因は大きく分けて物理的、化学的、生物学的要因の3つに分類され、それぞれの対処法が異なります。
参考)https://www.pseco.co.jp/knowledge/drip_clogging_physical
これらの管理を怠ると、システム全体の交換が必要になり、多大な労力とコストがかかることになります。単に「水を撒く」以上の化学的・物理的な知識と管理が必要となる点が、大きなハードルと言えるでしょう。
参考リンク:点滴灌水チューブの目詰まり対策(物理的な要因とフィルター選定)
点滴潅水は、従来の畝間潅水やスプリンクラーと比較して、初期導入費用が高額になる傾向があります。ポンプ、液肥混入機、ディスクフィルター、圧力調整弁、そして何千メートルにも及ぶ点滴チューブなど、システムを構成する部材が多岐にわたるためです。
「水やりの手間が省ける」というメリットに対して、これらのコストが見合うかどうかを厳密に計算する必要があります。特に低単価な作物を栽培している場合、コスト回収に長い年月を要する可能性があるため、費用対効果のシミュレーションは必須です。
参考リンク:灌漑方式のメリット・デメリットとコストに関する基礎知識
点滴チューブやシステム構成部品の「寿命」は、使用環境に大きく左右されます。カタログスペック通りの耐用年数が期待できないケースも多く、予期せぬトラブルで交換を余儀なくされることがあります。
長持ちさせるためには、使用後にチューブ内の残渣をフラッシング(高圧洗浄)で排出する作業も必要です。これらを怠ると、高価な「高耐久チューブ」を買っても、数年で使い物にならなくなってしまいます 。
参考)301 Moved Permanently
参考リンク:点滴チューブの洗浄方法と維持管理の実践マニュアル(青森県)
これは一般的にはあまり語られない、点滴潅水特有の重大なリスクです。点滴潅水は「必要な部分にだけ水をやる」技術ですが、これが土壌中の塩分(肥料成分)の動きに特殊なパターンを作り出します。
参考)https://soil.en.a.u-tokyo.ac.jp/jsidre/search/PDFs/09/09004-31.pdf
「節水」や「肥料削減」というメリットの裏側にある、こうした土壌物理性の変化を理解し、時折多めの水で塩類を洗い流す(リーチング)などの対策を講じないと、原因不明の生育不良に悩まされることになります。
参考リンク:乾燥地における塩類集積メカニズムと対策技術(JIRCAS)
点滴潅水は、ただホースを並べれば良いというものではありません。均一に水を配るためには、水理学的な計算に基づいた適切な施工が求められます。
システムが複雑になればなるほど、トラブルが起きた際の原因特定(どのバルブが壊れたのか、どこで漏水しているのか)が難しくなり、対応に時間を取られることになります。DIYで安易に導入すると、こうした設計・施工の落とし穴にはまることが多いのです 。
参考)https://www.zennoh.or.jp/members/pdf/gijyutu_3-07d.pdf
参考リンク:全農式点滴灌水キットQ&A(目詰まりや施工に関する疑問)