糖度センサー仕組み測定原理と精度

糖度センサーが糖分だけでなく塩分や酸も測定してしまう仕組みをご存知ですか?光の屈折や近赤外線を利用した測定原理から、農業現場で活用するための精度管理まで、知っておくべき知識を詳しく解説します。正確な糖度測定のコツを学びませんか?

糖度センサー仕組み測定原理

糖度計が実は糖分だけを測っていないこと知ってますか


この記事の3つのポイント
🔬
屈折式糖度センサーの原理

光の屈折率と臨界角を利用して固形物濃度を測定する仕組みで、糖以外の塩分や酸も数値に影響します

📡
近赤外線式センサーの特徴

果実を傷つけず糖が吸収する特定波長の光で測定しますが、温度差で0.8度程度の誤差が発生するため注意が必要です

測定精度を保つコツ

校正を週1回実施し温度を揃えることで、±0.2%の精度を維持できます


糖度センサーの屈折式測定原理とプリズムの役割


糖度センサーの屈折式測定では、光の屈折現象を利用して液体中の固形物濃度を計測しています。水や空気の中をまっすぐ進む光が、濃度の異なる液体と接すると進行方向を変える性質を応用したものです。具体的には、測定プリズム面にサンプルを載せ、プリズム内部から光を照射すると、サンプルとの境界面で光が屈折または全反射します。


この全反射が起きる最小の角度を臨界角と呼び、この臨界角の位置がサンプルの濃度によって変化することを検出しているのです。受光器では明るい部分と暗い部分の境界線として観測され、その境界線の位置から屈折率を算出します。つまり、プリズムは単なる透明な部品ではなく、光の屈折現象を正確に捉えるための精密な光学素子として機能しているわけです。


ただし、この原理には重要な注意点があります。測定しているのは糖分そのものではなく、液体中の「すべての固形物」の濃度だということです。どういうことでしょうか?果汁にはクエン酸や塩分、アミノ酸なども含まれており、これらすべてが光の屈折率に影響を与えます。


結果として、糖度計が表示する数値は「Brix値(ブリックス値)」と呼ばれる固形物全体の濃度なのです。


つまり本当の糖分だけの濃度ではありません。


果物や野菜では固形物の大半が糖分であるため、実用上は糖度の目安として十分機能しますが、酸味の強いレモンなどでは糖度計の数値が高くても甘く感じない現象が起こります。


この測定原理を理解すると、品質管理においては糖度だけでなく酸度も合わせて測定する重要性が見えてきます。酸と糖のバランスを示す「糖酸比」を確認することで、本当の美味しさを数値化できるのです。


A&D社の糖度計測定原理の詳細解説(プリズムと臨界角の関係図付き)


糖度センサーの近赤外線方式と波長吸収の仕組み

近赤外線を利用した糖度センサーは、非破壊で果実の内部品質を測定できる画期的な技術です。この方式では、果実の表面に近赤外線(波長約700~2500nm)を照射し、果実内部を透過または反射してきた光をセンサーで検出します。糖分子は特定の波長帯、特に1400~1450nmと1900~1950nmの光を吸収しやすい性質を持っているため、これらの波長の吸収量を測定することで糖度を推定する仕組みです。


具体的な測定プロセスでは、ベルトコンベア上を流れる果実に光を当て、反対側に設置されたダイオードアレイセンサーで透過光のスペクトルを測定します。果実の赤道部(最も太い部分)に光を照射するのが一般的です。取得したスペクトルデータを、あらかじめ作成しておいた検量線(実測糖度と光吸収パターンの関係式)に当てはめることで、瞬時に糖度を算出できます。


非破壊測定の最大のメリットは、測定後の果実をそのまま出荷できる点にあります。屈折式糖度計では果汁を絞る必要があり、1個ずつ破壊しなければなりませんでした。これは大量の果実を扱う選果場では大きな課題でした。


しかし、近赤外線方式なら果実を傷つけずに数秒で測定が完了し、全数検査も可能になります。大規模産地の選果場では、1時間あたり数千個の果実を糖度選別しているところもあります。


作業効率が劇的に向上するということですね。


ただし、この方式にも弱点があります。糖以外の成分、特に水分や酸、果実の硬さなども光の吸収に影響するため、測定精度は屈折式の±0.2%に対して±0.5度程度とやや劣ります。また、果実の温度が測定精度に大きく影響し、温度1℃の変化で約0.8度の糖度誤差が生じることが知られています。このため、樹上で測定する際は、果実と測定器の温度を十分に馴染ませることが重要です。朝方や日没時など温度変化の激しい時間帯は特に注意が必要です。


品種ごとに検量線を作成する必要があるのも、近赤外線方式の特徴です。りんごみかんでは果肉の構造や成分が異なるため、同じ検量線は使えません。


農研機構による近赤外分光法の果実糖度測定技術解説(PDF)


糖度センサーの測定精度に影響する温度と校正

糖度センサーの測定精度を左右する最大の要因が温度です。液体の温度と濃度は反比例の関係にあり、温度が1℃変化すると約0.1度のBrix値誤差が発生します。糖度が高い試料ほどこの影響は大きくなり、糖度20度のメロンでは温度変化の影響がさらに顕著に現れます。このため、多くのデジタル糖度計には自動温度補正(ATC)機能が搭載されており、測定範囲内(一般的に0~45℃)であれば自動的に補正が行われます。


しかし、ここに落とし穴があります。自動温度補正が機能するのは、測定器本体と試料の温度が同じ場合だけです。畑から採ってきたばかりの高温の果実を、冷房の効いた室内で冷たい測定器で測ると、正確な測定はできません。測定前には試料と測定器を同じ環境に30分以上置き、温度を馴染ませる必要があります。


温度だけでなく、定期的な校正(キャリブレーション)も精度維持には欠かせません。屈折式糖度計は長期間使用すると、プリズム面の微細な傷や汚れの蓄積により、徐々に測定値がずれていきます。


校正は純水を使って行うのが基本です。


測定プリズム面を純水で洗浄し、数滴垂らして測定ボタンを長押しすると、糖度0度に自動調整されます。


使用頻度にもよりますが、週1回程度の校正が推奨されています。農繁期で毎日測定する場合は、さらに頻度を上げるとよいでしょう。校正をサボると、知らない間に±1度以上の誤差が蓄積し、出荷基準を満たさない果実を誤って出荷してしまうリスクがあります。購入者からのクレームにつながる可能性もあるため、校正は品質保証の観点からも重要です。


また、測定時に気泡が混入すると大きな誤差の原因になります。液体サンプルを測定プリズムに垂らす際は、気泡が入らないようゆっくりと滴下し、プリズム面全体をサンプルで覆うようにしてください。気泡があると光が正しく屈折せず、実際より低い数値が表示されてしまいます。


複数台の糖度計を使用している場合は、同じサンプルで各機器の測定値を比較する相互校正も有効です。機器間の誤差を把握しておくことで、測定結果の信頼性を高められます。


測定誤差を小さくすることが基本です。


糖度センサーで測定できる農作物とBrix値の目安

糖度センサーは果物だけでなく、野菜や農産物の品質評価に幅広く活用されています。一般的な果物のBrix値を見ると、いちごは平均8~12度、みかんは10~14度、りんごは13~15度程度です。ぶどうは品種によって幅があり、巨峰やシャインマスカットでは18~20度と高い数値を示します。特に甘いとされるメロンでは、高級品種で15~18度、最高級のものでは20度を超えることもあります。


これらの数値を覚えておくと、出荷時の品質基準設定に役立ちます。例えば、糖度13度以上を「特秀品」、11度以上を「秀品」といった具合に、等級分けの指標として利用できるわけです。消費者も糖度表示を見て購入を判断する時代になっており、高糖度果実は市場価値が上がる傾向にあります。


野菜でも糖度測定は有効です。トマトは一般的に4~6度ですが、フルーツトマトと呼ばれる高糖度品種では8~10度以上になります。スイートコーンは16~18度、さつまいもの焼き芋では30~40度にもなり、これは果物よりもはるかに高い数値です。とうもろこしやさつまいもの甘さは格別ということですね。


ただし、Brix値が高ければ必ず美味しいとは限りません。レモンやグレープフルーツは糖度10~11度ありますが、酸味が強いため甘く感じません。これは前述の通り、糖度計が糖以外の成分も測定しているためです。本当の美味しさを評価するには、糖度と酸度を組み合わせた「糖酸比」を計算する必要があります。糖酸比が10以上になると、人間の舌は甘いと感じやすくなるとされています。


農業生産者にとって、自分の作物の糖度データを蓄積することは重要な財産になります。品種ごと、栽培方法ごと、収穫時期ごとの糖度変化を記録しておくと、最適な収穫タイミングの判断材料になります。また、施肥管理や灌水管理の効果を数値で確認できるため、栽培技術の改善にもつながります。データに基づいた栽培管理が可能になるわけです。


測定対象によっては専用の糖度計が必要な場合もあります。非破壊式の光センサー糖度計は、果実の種類ごとに専用機種があり、すいか用、メロン用、桃用といった具合に分かれています。これは、果実の大きさや果肉の構造、色素の影響などが異なるため、それぞれに最適化された検量線が必要だからです。


アタゴ社の果実・野菜の糖度一覧表(品目別の標準Brix値)


糖度センサー選定時の独自視点での農業現場活用法

農業現場で糖度センサーを導入する際、カタログスペックだけでは見えてこない実践的なポイントがあります。まず考えるべきは「破壊式と非破壊式のどちらが本当に必要か」という点です。一見すると非破壊式が便利に思えますが、価格は屈折式の5~10倍もします。小規模な直売所経営や家族経営の農家では、数万円の屈折式糖度計で十分な場合も多いのです。


屈折式糖度計を選ぶ場合、測定範囲に注目してください。果物用なら0~32度、高糖度トマトや濃縮ジュースも測定するなら0~53度の広範囲タイプが必要です。安価な製品は測定範囲が狭く、高糖度の作物には対応できないことがあります。


1度でも範囲外だと測定不可です。


また、デジタル式とアナログ式の選択も重要です。アナログ式(覗き込んで目盛りを読むタイプ)は1万円以下で購入できますが、個人差による読み取り誤差が±0.5度程度発生します。複数のスタッフで測定する場合、この誤差が品質管理の妨げになることがあります。デジタル式なら誰が測っても同じ数値が表示されるため、測定者による誤差がありません。


非破壊式糖度計を導入する場合は、測定対象の果実に合った専用機種を選ぶことが絶対条件です。「万能型」を謳う製品もありますが、実際には果実ごとに検量線が異なるため、精度が犠牲になります。りんご農家ならりんご専用機、トマト農家ならトマト専用機を選ぶのが正解です。最高級品を目指すなら、専用機一択ということですね。


糖度測定データの活用方法も工夫次第で大きく変わります。単に出荷判定に使うだけでなく、圃場ごと、樹ごとのデータを蓄積して「糖度マップ」を作成すると、栽培管理の改善点が見えてきます。例えば、圃場の南側と北側で糖度に2度の差があれば、日照条件の違いが原因だと推測できます。対策として、北側エリアの摘果を強化したり、反射マルチを敷いたりすることで、圃場全体の品質を底上げできます。


さらに、糖度データを販売促進に活用する方法もあります。商品ラベルに「糖度保証○度以上」と明記したり、直売所のPOPに「本日の糖度○度」と表示したりすると、消費者の購買意欲が高まります。数値による品質の見える化は、価格競争から脱却し、品質で勝負するための強力な武器になります。


顧客からの信頼獲得につながるのです。


一方で、糖度測定の落とし穴にも注意が必要です。果実の測定部位によって糖度は大きく変動します。りんごなら太陽側と影側で2~3度の差があり、トマトなら果頂部と果肩部で異なります。測定位置を統一しないと、データの比較ができません。作業マニュアルに「赤道部の太陽側を測定」といった具体的な手順を記載し、誰が測っても同じ結果になるよう標準化することが重要です。


糖度計のメンテナンスも見落としがちなポイントです。使用後は必ず純水で洗浄し、柔らかい布で水分を拭き取ってください。果汁が残ったまま放置すると、プリズム面に汚れが固着し、測定精度が低下します。特に酸性の強い果汁は、プリズム面を腐食させる可能性もあります。


測定後の清掃を習慣化すれば大丈夫です。




DiFluid デジタル糖度計 Bluetooth内蔵 IP67防水構造 Brix0-32% 【日本語仕様】ポケット糖度計 測定器 果物や野菜、醤油やソースなどの糖度測定に 屈折計 温度自動補正 アプリと連携 (0~32%(±0.2精度))