光センサー糖度計は、果実表面に近赤外線などの光を当て、その反射光や透過光の強さから内部の糖度(可溶性固形分:Brix)を推定する仕組みです。
糖は特定の波長の光を吸収しやすい性質を持っており、その吸収度合いの変化を電気信号として捉え、あらかじめ作成した検量線(校正式)に当てはめて糖度に換算します。
非破壊タイプの糖度計では、LEDやハロゲンランプなどの光源と、果実から戻ってきた光を電圧に変える光センサー、そして演算処理を行うマイコンが一体化した構造が一般的です。
参考)https://www.resona-fdn.or.jp/data_files/view/1254/mode:inline
小型ハンディ機では、果実の表面に密着させて測定し、数秒以内にディスプレイに糖度が表示されるため、収穫現場や選果ラインで多量のサンプルを連続的に測定できます。
参考)PAL-光センサー
測定方式には、大きく分けて「透過光式」と「反射光式」があり、透過光式は果実を貫通した光を測るため、内部全体の情報を得やすい一方で、装置がやや大掛かりになります。
参考)https://patents.google.com/patent/JP2517858B2/ja
反射光式は表面近傍から戻る光を利用するため、小型化しやすくハンディタイプの多くが採用していますが、果皮の厚さや色の影響を受けやすく、作物ごとの丁寧なキャリブレーションが重要です。
参考)https://ipsj.ixsq.nii.ac.jp/record/229558/files/IPSJ-Z85-4J-02.pdf
意外なポイントとして、同じ果実でも測定する位置によって精度が変わることが知られており、柑橘類などでは赤道部(中央付近)を測る方が茎側よりも安定した値が得られると報告されています。
参考)https://www.aomori-itc.or.jp/_files/00047388/best100_38.pdf
また、近赤外線を用いた非破壊測定は果皮の厚さや水分量、温度の影響も受けるため、機器メーカーは波長の選択や温度補正アルゴリズムを工夫して実用的な精度を確保しています。
参考)https://www.mdpi.com/1424-8220/20/20/5883/pdf
ハンディ型の光センサー糖度計では、近赤外線LEDを複数波長で発光させ、その反射強度の組み合わせから糖度を計算する「マルチスペクトル方式」を採用した事例もあり、装置の小型化とコスト低減が同時に進んでいます。
参考)製品の特徴|非破壊測定器 おいし果|千代田電子工業株式会社
こうした光学的な手法は、もともと果実の品質評価や可溶性固形分の推定を目的に研究されてきた可視・近赤外分光技術を、農家が持ち運べるレベルまで落とし込んだ応用例といえます。
参考)甘さを科学する!糖度測定技術の仕組みと農業への活用 &#82…
非破壊糖度計の精度は、開発段階で多数の果実を破壊測定して得た糖度値と、光センサー出力の関係を統計的に解析して作られたモデルに大きく依存します。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC7914666/
そのため、新品種や新しい栽培条件に適用する際には、一定数のサンプルで実測値と非破壊値の差を確認し、場合によってはローカルな補正係数を設定することが推奨されます。
光センサー糖度計の測定理論や、近赤外線による吸光度測定の基本について詳しく解説している技術資料です。
光センサー糖度計の最大のメリットは、果実を切ったり搾ったりせずに糖度が測れるため、商品ロスをほとんど出さずに品質管理ができる点です。
従来の破壊型測定では、出荷できない検査用サンプルが一定数必要でしたが、非破壊測定なら測った実をそのまま出荷・販売できるため、特に高単価な果実ほど経済的な効果が大きくなります。
市販のハンディタイプ非破壊糖度計では、1個あたり0.5〜数秒程度で測定が完了し、果実を持ったまま片手操作できるモデルもあり、現場の作業性を大きく向上させています。
参考)近赤外線 非破壊式野菜くだもの品質チェッカー F-750
選果機組み込み型の光センサーでは、ベルトコンベア上を流れる果実を自動で連続測定し、糖度ランクごとに自動選別することで、均一な品質のロットを大量に揃えられる仕組みも普及しつつあります。
参考)“三井ブランド”のフルーツ光センサは…
一方で、非破壊糖度計の精度は、破壊型の屈折計に比べると「標準誤差で0.5〜1.0度程度」といった目安で示されることが多く、品目によってはバラつきが大きくなることもあります。
参考)果物の甘さを手軽にチェック糖度計非破壊ガイド
特にマンゴーなど内部構造が複雑な果実では、ある機種で標準誤差0.7度程度とされており、実際の糖度±0.7度の範囲に約7割の測定値が入る精度と説明されています。
参考)お客様の声
精度を確保するためのポイントとして、品種ごとの専用モデルやキャリブレーションを利用すること、測定温度の影響を抑えること、複数箇所を測って平均値をとることなどが挙げられます。
参考)製品を探す PAL-光センサー
たとえばある非破壊糖度計では、同じ果実を数カ所測定して平均値をその個体の糖度とみなす運用方法が推奨されており、局所的なムラによる誤差を減らす工夫がされています。
参考)当てるだけで測定可能!PAL光センサーメロンの活用事例
また、近赤外線方式の非破壊糖度計は、糖度だけでなく熟度や色、内部障害の有無などと合わせて総合的に評価できる機種もあり、「甘さ」だけでなく「食味全体」を見える化したい現場で重宝されています。
参考)トマト(ミニトマト)に最適な選別機を解説!|選果機おすすめナ…
青果物の「甘味」「うま味」「ジューシー感」など、人が感じる官能評価を光センサーのスペクトル情報と組み合わせ、AIで推定する研究も進んでおり、糖度計は単なる数字測定器から「おいしさ診断ツール」へと進化しつつあります。
参考)非破壊でトマトのおいしさを計測、農研機構がAI活用した光セン…
現場での使い勝手や経済性まで含めたメリットを整理すると、光センサー糖度計は「ロス削減」「作業効率化」「ブランド価値向上」の3点を同時に支えるインフラに近い存在になりつつあるといえます。
参考)「おいしさ」を見える化! 青果物の付加価値を高める、フルーツ…
特に、糖度保証付きの高付加価値販売や、ギフト用高級フルーツの選別などでは、「甘さの見える化」がそのまま単価アップやクレーム減少につながるため、投資対効果がわかりやすい領域です。
参考)選果機メーカー特集【果物内部の「質」が見える光センサー製品を…
屈折計を使った従来の糖度測定は、果汁の屈折率から糖度を求める方法で、プリズム上に果汁を載せて入射光の屈折角度を検出し、その変化を糖度に換算しています。
液体中の糖分濃度が高くなるほど屈折率が大きくなり、臨界角が変化することを利用した仕組みで、安価で高精度な測定ができることから、今も加工食品や飲料の品質管理で広く使われています。
一方、光センサー糖度計は、果汁ではなく果実そのものに光を当てて反射・透過光を測定し、近赤外域の吸光度などから糖度を推定するため、試料を搾る必要がありません。
参考)糖度計の原理や使い方を徹底解説 - 計測コム
その代わり、光が通る経路に皮や果肉内の細胞構造が入り込むため、屈折計に比べると「糖度以外の要因」の影響を受けやすくなり、キャリブレーションモデルの質が精度を大きく左右します。
両者の特徴を整理すると、次のようになります。
| 項目 | 屈折計糖度計 | 光センサー糖度計(非破壊) |
|---|---|---|
| 測定方法 | 果汁の屈折率から糖度を算出。 | 近赤外線などの反射・透過光から糖度を推定。 |
| サンプル | 果実を切り、搾汁が必要。 | 果実そのものを測定し、破壊しない。 |
| 精度の傾向 | 絶対値の精度が高く、基準器として利用されることも多い。 | 標準誤差0.5〜1.0度程度が目安で、品種や条件に依存。 |
| コスト | 比較的安価で、数万円以下のモデルも多い。 | 非破壊タイプは高価で、果実別モデルは10万円以上になることが多い。 |
| 用途 | 検査用サンプルの詳細分析、加工・飲料の品質管理に最適。 | 出荷用果実の全数検査、ランク分け、ブランド化に向く。 |
実務上は、屈折計でロットの代表値を精密に把握しつつ、光センサー糖度計で個体ごとのバラつきを確認する「併用」スタイルを採る産地も増えています。
参考)お客様の声【PAL-光センサー】
光センサーで糖度ランク別に箱詰めし、その一部を屈折計で抜き取り検査することで、非破壊測定値と実測値の整合性を常にモニタリングする運用が現実的です。
また、非破壊糖度計は導入コストこそ高いものの、高級フルーツの糖度保証やギフト用の厳選出荷など、1個あたりの付加価値が高い用途では投資を短期間で回収しやすいとされています。
参考)非破壊測定器 おいし果|千代田電子工業株式会社
逆に、加工向けや業務用でロット単位の平均糖度がわかれば十分な場合には、屈折計を中心に据える方がシンプルでコスト効率も良く、作目・販路に応じた使い分けが鍵となります。
参考)糖度計を使って作物の品質管理!農家へおすすめの商品と使い方
市販の光センサー糖度計には、リンゴ・ナシ・モモ・ブドウ・ミカン・メロンなど、作物ごとに校正式と波長帯を最適化した専用モデルが多数ラインナップされています。
たとえば、あるメーカーのPAL-光センサーシリーズでは、干し芋や小玉スイカ、香酸柑橘など非常にニッチな作物向けのモデルまで用意されており、品目特化によって精度と使い勝手を両立させています。
リンゴでは、近赤外線を用いた非破壊糖度測定の研究が古くから進んでおり、光センサーによる測定値と実際の糖度の関係を詳細に解析した事例が複数報告されています。
ポータブル分光センサーを使ってリンゴの可溶性固形分を推定する研究では、900nm前後を含む複数波長を組み合わせることで、現場利用に耐える精度の予測モデルが構築できることが示されています。
柑橘類では、可視〜近赤外のハイパースペクトルカメラや、VNIR(400〜1000nm)のイメージングを使って糖度や酸度を同時に推定する試みが行われており、選果ラインでの迅速な内部品質評価に応用されています。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10935418/
また、トマトやミニトマトに特化した光センサー選果機では、糖度・酸度・熟度・内部障害などを一括で測定し、家庭用電源で稼働する小型装置も紹介されています。
ブドウやイチゴなど、粒が小さい果実では、光が十分に透過しない、房全体のばらつきが大きいといった課題がありますが、スペクトル解析やマシンラーニングを組み合わせて糖度推定精度を高める研究が進行中です。
参考)スペクトル解析デモ事例 ぶどうの糖度測定 - ケイエルブイ
こうした技術動向を踏まえると、「光センサー糖度計をどう選ぶか」は、単に価格や測定レンジだけでなく、自分の作物に対する専用モデルや、今後の研究・製品展開の方向性も含めて考える必要があります。
参考)糖度計 - メーカー・企業8社の製品一覧とランキング
実際に機種を選ぶ際のポイントを、農家目線で整理すると次のようになります。
特に、複数品目を少量ずつ作っている農家にとっては、「すべての品目に専用機を導入する」のは現実的ではないため、まずは主力品目用に1台導入し、その作物で投資を回収してから他品目への展開を検討する段階的な戦略も有効です。
一方、大規模産地やJA・共選場では、選果機一体型の光センサーを導入し、地域全体のブランド化と販売戦略に組み込む例も見られ、補助事業を活用してイニシャルコストを抑えるケースもあります。
参考)光センサー選果機を【半額以下】の価格で買う方法とは
果実ごとの非破壊糖度計の特徴や、専用モデルのラインナップを一覧で確認したい場合に便利なメーカー公式ページです。
近年の研究では、光センサー糖度計や選果機から得られるスペクトル情報に、AIや機械学習を組み合わせて糖度や官能評価を高精度に推定する取り組みが加速しています。
トマトでは、可搬型光センサーをベースに開発した装置にAIを組み合わせ、「甘味」「うま味」「ジューシー感」「かたさ」など人が感じるおいしさ指標を非破壊で数値化する技術が公表されています。
柑橘類では、糖度・酸度の測定値だけでなく、気温や降水量、日射量といった気象データを組み合わせてAIモデルを作成し、収穫年の糖度を高精度に予測する実証プロジェクトが行われています。
参考)人工知能(AI)で糖度を予測、温州ミカンの栽培管理に役立てる…
この研究では、過去数年分の栽培データと品質データをまとめて学習させることで、従来提案されていた予測手法よりも高い精度で翌年の糖度を予測できたと報告されています。
参考)農家の熟練の技を定量化。AIを活用した上手な水やりで甘いトマ…
さらに、ハイパースペクトルカメラや可視・近赤外イメージングと機械学習を組み合わせ、トマトやミカンの糖度・硬さ・クロロフィル含量など複数の品質指標を同時に推定する研究も増えています。
参考)301 Moved Permanently
これらの技術は、果実1個1個のスペクトルデータを時系列で蓄積し、「どのタイミングで収穫すれば狙った糖度帯に収まるか」を逆算するためのツールとして、将来的にスマート農業の中核に組み込まれていく可能性があります。
参考)進化するスマート農業——仮想空間で行う「農作業」
実務レベルでも、光センサー糖度計で計測した糖度と、圃場の環境センサー(温度・湿度・日射量・土壌水分など)のデータをクラウドに集約し、AIで解析して栽培管理にフィードバックする試みが紹介されています。
参考)農業におけるセンシング技術の活用事例特集!スマートセンシング…
たとえば、水分ストレスとトマトの甘さの関係を定量化し、灌水のタイミングをAIに提案させる研究では、「熟練農家のカン」を数値モデルとして再現する方向性が模索されています。
参考)センシング技術によって得られる利点。ロボット、AI、センシン…
個々の農家レベルでも、次のようなワークフローで光センサー糖度計データの活用範囲を広げることが考えられます。
こうしたデータ連携を前提にすると、光センサー糖度計は単なる「測定器」ではなく、圃場のデジタルツインを作るための入り口として位置づけることができます。
糖度やおいしさのデータが蓄積されればされるほど、AIの予測精度も高まり、栽培リスクの見える化や高付加価値出荷の戦略立案に役立つため、小規模農家でも少しずつデータを貯めていく価値は十分にあるといえるでしょう。