圃場と農場の違いとは?農業経営の定義や土地管理の環境を解説

圃場と農場の違いを正確に理解していますか?実は農業経営においてこの定義の使い分けは重要です。本記事では土地の管理や施設の整備、生産環境の違いから法律上の扱いまで徹底解説します。あなたの農業用語、正しく使えていますか?
圃場と農場の違いとは?農業経営の定義や土地管理の環境を解説
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圃場(ほじょう)の定義

作物を栽培する特定の「土地」そのものを指す言葉。水田や畑がこれに該当します。

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農場(のうじょう)の定義

圃場に加え、倉庫や作業場、経営機能まで含んだ「農業生産の拠点全体」を指します。

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使い分けのポイント

「場所」としての栽培地なら圃場、「組織・施設」を含めた経営体なら農場を使います。

圃場と農場の違い

農業における圃場と農場の定義と使い分け


農業の世界では「圃場」と「農場」という言葉が頻繁に使われますが、この二つの違いを明確に理解している人は意外と少ないかもしれません。結論から言えば、圃場は「作物を育てる土地そのもの」を指し、農場は「農業経営を行う施設全体」を指すという大きな違いがあります。


具体的に見ていきましょう。「圃場(ほじょう)」とは、実際に稲や野菜、果樹などが植えられている田んぼや畑のことです。あくまで栽培を行う「場所」にフォーカスした用語であり、土壌や作物の生育環境そのものを指す場合に多く使われます。例えば「圃場の水はけが悪い」「圃場整備を行う」といった使い方が一般的です。


参考)圃場(ほじょう)の意味や読み方 わかりやすく解説 Webli…

一方、「農場(のうじょう)」はより広い概念を持ちます。圃場が含まれることはもちろんですが、それに加えてトラクターなどの農機具を収納する格納庫、収穫した作物を保管・選別する作業小屋、さらには農業経営を行うための事務所や人の居住空間までを含んだ「システム全体」を意味します。つまり、農場はひとつの「生産工場」や「経営体」としてのニュアンスが強い言葉なのです。


参考)3分で簡単にわかる圃場と農場の違い!農園との違いも農家ライタ…

この使い分けは、日常会話だけでなく、行政の手続きや補助金の申請などでも重要になります。例えば、土地改良区の事業などは主に「圃場」を対象としますが、大規模な農業法人の設立や融資の話になると「農場」としての経営規模や設備投資が議論の対象となります。


参考)https://www.maff.go.jp/j/wpaper/w_maff/r2/pdf/1-6_yougo.pdf

  • 圃場:水田、畑、果樹園、牧草地など、作物が育つ土地のみ。
  • 農場:圃場+関連施設(倉庫、選果場、畜舎、管理棟など)+経営機能。

このように整理すると、ニュースや専門書を読む際にも文脈が理解しやすくなるでしょう。


農林水産省 用語の解説(農業経営体の定義や耕地面積の基準について詳しく記載されています)

栽培環境と施設管理の視点から見る違い

「環境」や「管理」という視点でも、両者の違いは際立ちます。圃場の管理といった場合、主眼は「土と作物」に向けられます。土壌のpH調整、肥料の散布、除草作業、水路のメンテナンスなど、植物が育つための物理的な環境を整えることが中心です。ここでは自然環境との対話が不可欠で、気象条件や地形に大きく左右されます。


参考)圃場(ほじょう)

対して、農場の管理となると「ビジネスと効率」の視点が必要になります。どの圃場で何をどれくらい作るかという作付け計画(生産管理)、作業員のシフト調整(労務管理)、農機具のメンテナンスや減価償却(資産管理)、収支のバランス(経営管理)など、多岐にわたるマネジメントが求められます。


参考)農場 - Wikipedia

近年注目されているスマート農業においても、この視点の違いは現れます。「圃場センサー」といえば土壌水分や気温を測るデバイスですが、「農場管理システム」といえば、複数の圃場のデータを統合し、作業指示や出荷予測を一元管理するクラウドサービスを指すことが多いです。つまり、圃場は「現場」、農場は「組織」という捉え方もできるでしょう。


特に施設園芸(ハウス栽培など)の場合、ハウスそのものは「圃場」の一部とも言えますが、ボイラー室や養液タンク、制御盤などが組み合わさったハイテクな環境は、もはや一つの巨大な「農場」システムとして機能しています。このように、技術の進歩とともに両者の境界線が物理的にも機能的にも密接に関わってきているのが現状です。


法律や整備事業における用語の扱い

行政や法律の世界では、この用語の定義がさらに厳密になります。国の公共事業である「圃場整備事業」は、田畑の区画を整理し、用水路や農道を整えることを指します。これはあくまで「土地の生産性向上」を目的としており、個々の農家の経営体(農場)そのものを支援するのとは少しニュアンスが異なります。


参考)農業土木事業|事業案内|新潟市中央区 豊和建設株式会社

法律上、「農地」という言葉もよく使われますが、これは基本的に圃場と同じ意味合いで使われることが多いです。農地法などの法律では、土地の権利関係や転用規制が主な関心事となります。一方で、畜産経営などに関連する法律や基準では、防疫(病気の予防)の観点から「農場」という単位が重視されます。「農場HACCP」などの衛生管理基準は、個々の飼育スペースだけでなく、農場全体での衛生管理を求めています。


  • 圃場整備:土地の形状変更、水利施設の改良などハード面の整備。
  • 農場HACCP:生産工程全体の衛生管理、記録、改善などソフト面も含めた管理。

また、農業法人として登記する場合や、認定農業者の申請を行う際には、「経営」の視点が問われるため、「農場」としてのビジョンや計画書が必要になります。補助金の種類によっても、土地(圃場)に対するものなのか、機械・施設(農場機能)に対するものなのかで申請区分が異なるため、この「違い」を意識しておくことは実務上も非常に大切です。


参考)https://www.maff.go.jp/j/syokuiku/taikenn/attach/pdf/kigyou-4.pdf

生産規模と作業効率化への影響

生産規模の拡大を目指す際、圃場と農場のバランスをどう考えるかは経営の鍵を握ります。「規模拡大」というと、単に圃場(作付面積)を増やすことだと考えがちですが、それだけでは失敗する可能性があります。圃場が増えれば、移動時間や作業量も増えるため、それを支える農場機能(機械の能力、保管スペース、人の配置)も同時に強化しなければならないからです。


例えば、飛び地で点在する小さな圃場をたくさん集めても、移動ロスが大きく作業効率は上がりません。これを解消するために行われるのが圃場整備による「大区画化」です。しかし、一度に収穫できる量が増えれば、今度はそれを乾燥・調製する農場の設備(乾燥機や選果ライン)がボトルネックになる可能性があります。


「圃場の能力」と「農場の能力」はセットで向上させる必要があるのです。

項目 圃場の拡大による課題 農場機能による解決策
作業時間 移動や作業時間の増大 大型機械の導入、作業場の集約
品質管理 収穫適期の分散、バラつき 冷蔵設備の導入、選果システムの自動化
労務管理 作業員の負担増 休憩所の整備、シフト管理システムの導入

このように、圃場での生産活動をバックアップする農場の機能が整って初めて、効率的な農業経営が可能になります。成功している大規模農家は、美しい圃場だけでなく、整理整頓された機能的な農場(作業拠点)を持っていることが共通点として挙げられます。


参考)農場について

農場HACCP認証における圃場衛生管理の重要性

あまり知られていない視点ですが、食品安全の国際基準であるHACCP(ハサップ)の考え方を農業に導入する際、圃場と農場の連携は極めて重要な意味を持ちます。一般的にHACCPは加工場(農場内の施設)の話だと思われがちですが、実はその前段階である「圃場」でのリスク管理が製品の安全性を決定づけます。


例えば、圃場で使用した農薬の記録、野生動物の侵入防止柵の設置、収穫コンテナを地面に直接置かないルール作りなどは、すべて「農場全体の衛生管理」の一部として機能します。圃場は「汚染リスクの入り口」であり、農場施設は「汚染拡大の防止砦」という独自の関係性があるのです。


特に輸出を目指す農業経営者にとって、グローバルGAPなどの認証取得は必須となりつつあります。ここでは、圃場の土壌管理から、農場内のトイレの手洗い設備に至るまで、一貫した「清潔さ」と「トレーサビリティ(追跡可能性)」が求められます。


「綺麗な野菜は、綺麗な農場から」と言われますが、これは単なる見た目の話ではありません。圃場というオープンな環境のリスクを、農場というシステムでどうコントロールするか。この高度な管理能力こそが、これからの「強い農業」の条件と言えるでしょう。ただ作物を作る場所(圃場)から、安全な食品を製造・管理する場所(農場)への意識転換が、現代の農業者には求められています。




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