作付面積と米品種の関係を俯瞰すると、まず押さえたいのが主食用米の全国作付面積と、その内訳を占める主要品種のシェアです。 令和7年産水稲の主食用作付面積は約136.7万haと推計され、そのうちうるち主食用米の品種別構成を見ると「コシヒカリ」が単独で約3割強を占める状況が続いています。
一般財団法人日本穀物検定協会が公表する「水稲の品種別作付動向」によれば、令和6年産うるち米(醸造用米・もち米を除く)で最も作付が多かった品種はコシヒカリで、その作付割合は32.6%でした。 令和5年産でもコシヒカリは33.1%で首位を維持しており、2位の「ひとめぼれ」(約8%台)、3位の「ヒノヒカリ」(約8%前後)を大きく引き離れています。
参考)https://www.komenet.jp/pdf/R05sakutuke.pdf
同じ調査では、うるち米の作付上位10品種で全体の約7割(69.6%)、上位20品種で約8割(79.6%)を占めることが示されており、登録品種が約1,000ある中で実際に主食用として作付されているのは約300品種、その中でもごく一部に作付が集中している構図が鮮明です。 これは、銘柄米のブランド力と販売面での安心感の裏返しでもありますが、同時に市場・気候リスクが特定品種に集中しているとも言えます。
参考)お米の産地銘柄とブレンド米の進化:農林水産省
日本穀物検定協会「令和6年産 水稲の品種別作付動向」では、コシヒカリの主要産地として新潟・茨城・栃木などが挙げられ、各県の主食用米の中で6~7割をコシヒカリが占める地域も少なくありません。 一方で、東北では「あきたこまち」「つや姫」、北海道では「ななつぼし」「ゆめぴりか」、西日本では「ヒノヒカリ」「きぬむすめ」など、地域ごとに“第二の主力品種”が育ってきており、全国的なコシヒカリ偏重の中にも、地域多様化の動きが見られます。
参考)「お米品種」作付割合 令和5年産 - 五ツ星お米マイスターの…
こうした背景から、農家として作付面積を決める際には「市場で売りやすい定番品種」と「地域に根ざした次世代品種」のバランスをどう取るかが、収益とリスク分散の両面で重要なテーマになっています。ブランド力・収量・耐病性・高温耐性・作業性など複数の軸で品種を評価し、自分の圃場の土壌・気候と販売先のニーズを照らし合わせる視点が欠かせません。
「水稲の品種別作付動向」資料は、全国と都道府県別の品種順位や作付割合が一覧されており、自分の地域の位置づけを確認するのに有用です。
作付面積と米品種の関係は、全国平均だけでなく地域別に見ると、さらに実務的なヒントが見えてきます。 例えば兵庫県のデータでは、令和6年産の主食用米作付面積は約2万8,045haで、そのうち「コシヒカリ」が約1万2,772ha、「キヌヒカリ」が4,249ha、「ヒノヒカリ」が6,421ha、「きぬむすめ」が2,528haと、4品種だけで主食用作付の9割近くを占めています。
同じ兵庫県内でも、但馬・丹波地域ではコシヒカリ、播磨ではキヌヒカリ・ヒノヒカリ・きぬむすめ、阪神ではコシヒカリとキヌヒカリ、淡路ではキヌヒカリが主力とされ、地域の気候・土壌・出荷先の違いに応じて品種構成が分かれています。 これは、県単位だけでなく二次・三次の地域区分単位で見ても、適応品種とニーズが違うことを示しており、「県の奨励品種だから」と一律に決めるのではなく、自分の販売先や水管理条件、機械更新計画も含めた“ローカルな経営判断”が重要であることを物語っています。
参考)兵庫県/兵庫のお米
三重県の「米に関する資料」では、市町別の作付面積・収穫量、奨励品種の変遷などが整理されており、平野部では多収系・コシヒカリ系、山間部では冷害に強い品種など、地域の気象リスクと品種選定の関係が読み取れます。 奈良県の稲作資料でも、主要品種の面積推移が公開されており、コシヒカリ系からヒノヒカリ系へのシフトが進んだ時期や、その後の高温年を受けた品種入れ替えの流れが確認できます。
参考)三重県|農産園芸:米に関する資料
意外なポイントとして、酒造好適米やもち米も含めた「米全体の作付面積」を見ると、主食用うるち米の減少を、酒米や加工用米が一部補っている地域もあります。 例えば兵庫県では、主食用米の減少傾向に対して酒米(酒造好適米)の作付面積が5,000~5,600ha規模で推移しており、「山田錦」などの高付加価値品種を軸にした戦略が、主食用米の価格低迷を緩和する役割を果たしています。
農業者目線で言えば、
・県や市町の「主要品種の面積推移」を見て、どの品種が伸びているか・縮んでいるかを把握する。
・JAや集落内の作付構成を確認し、「周辺と揃えた方が有利な品種」と「敢えて差別化したい品種」を整理する。
・酒米・加工用米・飼料用米など、主食用以外の需要米の作付比率も踏まえて、全体の作付面積をポートフォリオとして設計する。
といったステップを踏むことで、作付面積と品種構成を「単年の相場」ではなく「数年スパンの経営戦略」として組み立てやすくなります。
各県の農産園芸担当課のページには、市町別の作付面積や奨励品種資料がまとまっており、地域ごとの戦略立案に参考になります。
近年の品種別作付動向で見逃せないのが、「高温登熟性に優れた品種」「高温耐性品種」の作付比率がじわじわと高まっている点です。 農林水産省の資料や民間レポートでは、20年程度のスパンで品種別作付面積を追うと、高温に弱い従来品種の割合が減少し、つや姫・きぬむすめ・ななつぼし・ゆめぴりかなど、比較的高温条件でも品質を維持しやすい品種のシェアが増加傾向にあることが示されています。
ノムラ総研のレポート「コメの品種から見る温暖化の進展と今後の農業の姿」では、温暖化の進行に伴い、東北・北陸などでも高温登熟リスクが顕著になり、「つや姫」「きぬむすめ」といった品種の作付面積比率が上昇している事例が紹介されています。 農林水産省の「米をめぐる状況について」(令和6年12月)でも、主食用作付面積に占める高温耐性品種の割合が統計的に整理され、今後さらに導入拡大が求められると指摘されています。
参考)https://www.nomuraholdings.com/jp/sustainability/sustainable/services/fabc/report/report20240611103028/main/0/link/File75007313.pdf
実務的には、
・既存の主力品種(例:コシヒカリ)を完全にやめるのではなく、登熟リスクの高い圃場/低い圃場で品種を分ける。
・高温に弱い圃場には高温耐性品種を試験的に導入し、3~5年かけて収量・品質・販売面のデータを蓄積する。
・高温耐性品種の導入とセットで、出穂期の水管理(深水・間断かん水)や施肥設計(窒素過多を避ける)を見直し、「品種×栽培技術」でリスク分散を図る。
といった考え方が現実的です。
1956~2000年の作付面積から主要品種の変遷を追った農研機構の研究では、どの品種も「普及→ピーク→減少→消滅」というライフサイクルをたどることが示され、2000年にはコシヒカリの作付面積が54.7万haに達して最大となったことが報告されています。 現在もコシヒカリは最大品種ですが、作付割合は少しずつ低下しており、「ポスト・コシヒカリ時代」を見据えた品種入れ替えが静かに進んでいるとも言えます。
参考)https://www.naro.go.jp/publicity_report/publication/archive/files/7-2.pdf
この観点から、農家としては、
・「10年後に自分の地域の主力品種が何になっているか」を、県やJAの方針だけでなく自分の目と販路で考える。
・高温年と冷夏年の両方で、各品種の品質・等級・価格を比較する自家データを残す。
・高温耐性だけでなく、いもち病・穂発芽・倒伏性なども含めた“総合耐性”を見て品種を選ぶ。
といった独自の評価軸を持つことが、将来のリスクを抑えるポイントになります。
温暖化と品種転換の関係を整理したレポートは、品種ごとの高温耐性評価や、地域別の作付シフトの実例がまとまっており、長期の作付計画を考える際の参考になります。
ノムラ総研「コメの品種から見る温暖化の進展と今後の農業の姿」
作付面積と品種の議論では、主食用うるち米だけに目が行きがちですが、現場の経営を考えると、酒造好適米・加工用米・飼料用米といった「需要米」の位置づけも無視できません。 近年の「米をめぐる状況」に関する農林水産省資料では、飼料用米など新規需要米の作付拡大や、備蓄米・加工用米の作付動向が整理されており、主食用の減少を補う多面的な需要構造が示されています。
酒造好適米に限っても、登録品種は100以上に及び、そのうち全国的に作付面積が大きいのは「山田錦」「五百万石」「美山錦」「雄町」といった限られた品種です。 兵庫県の場合、山田錦を中心とする酒米作付面積が約5,000~5,600ha規模で推移し、主食用米の作付減少の中でも重要な収益源となっています。
一方で、酒米は登熟期の気象条件や倒伏リスク、粒の大きさゆえの収穫・乾燥の難しさなど、主食用米とは異なる栽培上の注意点があり、作付面積を増やすには設備・労力・技術の面での準備が欠かせません。 また、契約栽培が前提となるケースも多く、酒蔵との信頼関係や長期的な取引見通しがなければ、急な増反はリスクが大きくなります。
飼料用米や加工用米については、飼料用米の生産者の作付規模を調べた農林水産省資料によると、全水稲の作付面積が15ha以上の大規模経営体が生産者の約5割を占める一方、10ha未満の中小規模でも一定割合が取り組んでいるとされています。 これは、補助単価や輪作体系、機械・乾燥設備の稼働率などを踏まえた上で、飼料用米を「主食用の価格変動をならす調整弁」として位置づけている経営が多いことの表れと言えます。
参考)https://www.maff.go.jp/j/seisan/kikaku/attach/pdf/kome_siryou-267.pdf
農家として作付面積と品種構成を考える際には、
・主食用うるち米(定番品種+地域ブランド)
・酒造好適米(契約栽培・プレミアム市場)
・加工用米(米粉・中食・外食向け)
・飼料用米(補助を含めた収益と作業負担)
の4カテゴリーを意識し、それぞれのリスク・手間・販売条件を整理した上で、経営全体のポートフォリオとして何割ずつ配分するかを検討するのが現実的です。
国の「米をめぐる状況について」資料は、主食用・非主食用の作付面積構成や、飼料用米の作付規模分布などが図表で整理されており、経営戦略を考えるうえでの前提情報として役立ちます。
最後に、検索上位ではあまり語られない「現場データを活かした独自の作付面積・品種戦略」の視点を考えてみます。作物統計や品種別作付動向は、全国・都道府県・市町村レベルでの平均像を示してくれますが、実際の収益や作業負担は、圃場ごとの条件や経営の事情によって大きく変わります。
e-Statに公開されている「作物統計調査」や農業資源調査、各県の市町村別作付面積データをGISや表計算ソフトで重ねると、自分の集落や農業集落コード単位で「周囲と比べてどの品種が多いか」「どの作付規模帯が多いか」が可視化できます。 また、土地利用データや気候データと組み合わせれば、
・冷えやすい谷地形の圃場では、出穂期が遅めの品種を避ける。
・高温リスクの高い中山間地域の南向き斜面では、高温耐性品種+深水管理の組み合わせを優先する。
・出荷先ごとに求められる銘柄を把握し、集荷ロットを組みやすい品種に作付面積を寄せる。
といった、“圃場ごとに最適な品種”を割り振る作戦が立てやすくなります。
参考)https://www.maff.go.jp/j/shokusan/komesangyou_ikenkoukan/attach/pdf/ikenkoukan-77.pdf
意外な活用法として、
・自分の過去10年分の等級・タンパク値・整粒歩合・収量を品種・圃場別に並べる。
・気象庁のデータや地域の気象観測値を重ね、猛暑年・冷夏年・多雨年にどの品種が安定したかを見る。
・その結果を、国・県・JAの品種評価や「高温耐性」「病害抵抗性」の一般評価と照らし合わせる。
といった“ローカル実験”を行うことで、統計が示す平均像と自分の圃場の違いを定量的に把握できます。
参考)データベース
さらに、作付面積を単に「前年踏襲」で決めるのではなく、
・販売先(直販・業務用・集荷業者)ごとに求められる数量と銘柄を毎年ヒアリングする。
・「単価はやや低いが安定出荷できる品種」「高単価だがリスクの高い品種」を組み合わせ、収益の“ベース”と“上振れ要因”を分ける。
・スマート農業技術(圃場センサー・水管理の自動化など)を導入する圃場から、高付加価値品種や栽培難度の高い品種に切り替えていく。
といった中長期の設計を行うことで、「作付面積×米品種」を自分の経営目標に沿った形にチューニングしていけます。
こうしたデータ活用の入り口として、政府統計ポータルサイトの作物統計や農業資源調査データは、無料かつ機械可読な形式で提供されており、自作ツールやスクリプトで処理しやすい点も技術に強い農業者にとっては大きなメリットです。

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