キヌヒカリ 特徴 栽培と良食味安定技術

キヌヒカリの特徴を押さえつつ、栽培のポイントや収量・食味を安定させる実践技術をまとめました。あなたの圃場ではどこから改善しますか?

キヌヒカリ 特徴 栽培の実践ポイント

キヌヒカリ栽培の全体像
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品種特性と適地

良食味・多収だが、いもち病に弱いなどの弱点もあるため、適地選定と基本技術の徹底が重要になります。

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施肥と水管理の勘どころ

窒素過多を避け、浅水~間断かん水を組み合わせることで、倒伏防止と登熟歩合の向上を両立させます。

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病害虫対策と環境配慮

いもち病・カメムシ類などの防除に加え、中干し延長によるメタン発生削減など環境対応も視野に入れた管理が求められます。

キヌヒカリ 特徴と適した栽培地帯の考え方

 

キヌヒカリはコシヒカリ由来の良食味系統で、つやのある外観と粘りすぎないバランスの取れた食感が特徴の早生品種です。平坦~中間地(おおむね標高300m以下)に適し、近畿・関東を中心に広く普及しており、栽培暦が整備されているため技術を学びやすい点も大きな利点です。
成熟期は早生~中生の位置づけで、近畿の一例では田植え5月上旬、出穂7月下旬、成熟8月下~9月中旬とされ、二期作や転作体系にも組み込みやすい熟期帯です。一方で穂発芽しやすい性質を持つため、出穂後に長雨が続く地域ではコンバイン収穫のタイミングを逃さない収穫計画が重要になります。

 

参考)https://www.pref.nara.jp/secure/261432/04kinuhikari.pdf

耐倒伏性はコシヒカリより強く、草丈もやや短いため、適正な施肥であれば倒伏リスクは低く多収が狙える反面、窒素過多や過湿条件では急激に草丈が伸びるケースも報告されています。特に有機物を多く投入している圃場や、転作跡地では地力を過大評価しない設計が求められます。

 

参考)実用化技術等(平成2年)

キヌヒカリ 特徴を活かす栽培暦と田植え時期調整

キヌヒカリの栽培暦は地域ごとの指導資料が充実しており、滋賀県の栽培こよみでは田植え5月3日基準、出穂7月27日、成熟8月27日と、猛暑期前に登熟の山場を迎える設計になっています。奈良県資料でも9月中旬成熟の早生として平坦・中間地への適応が示されており、高温障害が懸念される地域では「登熟盛期を8月下旬~9月上旬に合わせる田植え時期調整」が一つの目安になります。
栃木県の試験では早植え条件でも穂数や総籾数を適正範囲に収めることで、10aあたり640~680kgの収量を確保できると報告され、穂数380~400本/㎡が安定多収の目安とされています。晩植条件では穂数340~350本/㎡・総籾数約2.8万粒/㎡程度が適当とされ、時期によって「穂数型」か「籾数型」かの発想を切り替えることが重要です。

 

参考)https://www.agrinet.pref.tochigi.lg.jp/nousi/seikasyu/seika11/sep_011_5_1_03.pdf

早植え・晩植いずれの場合も、「移植時期が変われば施肥配分と栽植密度も見直す」という考え方がキヌヒカリでも有効で、疎植栽培に関する和歌山県の資料では株間を広げて苗箱枚数や労力を削減しつつ、収量性を維持する例が示されています。気象変動が大きい近年では、慣行の田植え日を鵜呑みにせず、地域の試験データと自身の圃場の経験値をすり合わせることがリスク分散につながります。

 

参考)https://www.pref.wakayama.lg.jp/prefg/070100/070109/gaiyou/001/nougyoushikenjyou/noushinews/d00206295_d/fil/137-2suitou.pdf

キヌヒカリ 特徴を踏まえた施肥設計と倒伏・登熟対策

施肥設計では「良食味・多収だが、いもち病と過剰窒素に弱い品種」として扱うのがポイントで、奈良県の指針では10aあたり窒素成分8~9kg程度を目安とし、穂肥を施用しない前提の設計も示されています。滋賀県の栽培こよみでは、基肥窒素2.8kg/10a程度と控えめに設定し、稲わら還元や転作跡地では基肥を20~50%減量するなど、土壌中の窒素供給力を加味した調整が推奨されています。
倒伏防止の観点では、深耕15cm以上で根を深く張らせること、中干しを適期に実施して過繁茂を抑えつつ根の健全化を図ることが重要です。中干し期間を慣行より約1週間延長することで、収量に大きな影響を与えずに水田からのメタン発生量を約30%削減できたという試験事例もあり、環境対策と理にかなった生育制御が両立できる点は意外と見落とされがちなポイントです。

 

参考)https://www.maff.go.jp/j/seisan/kankyo/ondanka/attach/pdf/index-163.pdf

穂肥については、キヌヒカリの倒伏性の強さを活かして穂肥重点・深層追肥で多収を狙う技術も福井県の試験で示されており、出芽苗立率が高く、施肥反応が緩慢なため、適切なタイミングでの追加施肥により収量を伸ばせることが報告されています。一方で、乳熟期以降の「実肥」は品質低下を招くため絶対に施用しないよう注意が促されており、後半は登熟環境の確保に専念することが求められます。

キヌヒカリ 特徴から見た水管理・病害虫防除と環境配慮

水管理では、代かき時の水を少なめにし、浅水を基本としながら出穂後30日間は間断かん水を行うことで、根の活力維持と登熟歩合の向上が図れるとされています。硬化期にはやや深水にするなど生育ステージに応じた水位調整を行い、圃場が乾きすぎると玄米品質が低下するため、特に乳熟期~黄熟期にかけての極端な干ばつは避ける必要があります。
害虫では、いもち病に弱い性質があるため、いもち病常発地での作付けは避け、種子消毒と適正な防除暦の徹底が強く推奨されています。葉いもち・穂いもちの発生を抑えるためには、多窒素を避けるだけでなく、過繁茂を防ぎ風通しを良くする栽植管理も重要で、ウンカ類や斑点米カメムシ類についても発生予察に基づき登録薬剤を的確に散布することが求められます。

環境配慮の観点では、前述の中干し期間の延長によるメタン排出削減に加え、深水や掛け流しを避けることで、水資源の節約と養分溶脱の抑制が可能です。こうした取り組みは、温暖化影響が顕在化する中で、将来的に「環境配慮型栽培」の加点や契約栽培条件に組み込まれる可能性もあり、早めに対応しておくことで販売面での差別化にもつながると考えられます。

キヌヒカリ 特徴を活かした疎植・機械化と次世代型経営への応用

疎植栽培は、条間は従来通りで株間を広げることで育苗箱枚数や移植作業時間を削減しつつ、1株あたりの茎数を増やして収量を維持する技術であり、和歌山県のキヌヒカリ事例では労力軽減とコスト削減の効果が期待できると報告されています。キヌヒカリは倒伏性が比較的強く、施肥反応も緩やかなことから、疎植との相性が良い品種の一つと評価されています。
また、耐倒伏性を活かしつつ全量基肥型肥効調節肥料や一発肥を組み合わせることで、穂肥散布等の作業回数を減らし、省力化と施肥ムラの抑制が可能になります。こうした資材を使う場合でも、キヌヒカリでは「穂肥を増やしすぎない」「実肥は入れない」という原則は共通で、元肥・穂肥トータルの窒素量8kg/10a前後を一つの基準として、圃場の地力や前作を見ながら微調整する考え方が重要です。

 

参考)水稲キヌヒカリ等耐倒伏性品種の穂肥として、「住友軽量一発

今後は、高温登熟性に優れたキヌヒカリ熟期の新品種が各地で開発されており、高温年でも玄米品質を落としにくい系統の実証試験も進められています。既存のキヌヒカリ栽培で培った施肥・水管理技術は、こうした後継品種にも応用可能であり、「今の圃場条件にキヌヒカリでどこまで精度を高められるか」を突き詰めることが、次世代品種へのスムーズな移行にも直結していくと考えられます。

 

参考)https://hyogo-nourinsuisangc.jp/wp/wp-content/uploads/2024/04/224-03.pdf

キヌヒカリの基本的な栽培カレンダーと品種特性を詳しく確認したい場合は、滋賀県JAグループが公開している「キヌヒカリ栽培こよみ」が、田植え日から収穫・乾燥調製までの具体的な管理の目安を知るうえで非常に有用です。

 

参考)https://ja-lakeshiga.or.jp/files/agriculture/koyomi/kinuhikari.pdf

キヌヒカリ 栽培こよみ(滋賀県JA)

 

 


新米 白米 キヌヒカリ 5kg 滋賀県産 令和7年 80