元肥とは、作物を植え付ける前にあらかじめ土に施しておく肥料のことです。基肥や原肥とも呼ばれ、植物の初期生育に必要な栄養を供給する重要な役割を果たします。元肥は生育初期に株を成長させるため、肥料効果が長く続く緩効性肥料や遅効性肥料が基本的に使用されます。
有機肥料は、油かすや魚粉、鶏糞など植物性または動物性の有機物を原料にした肥料です。元肥として使われる代表的な有機肥料には以下のような種類があります。
参考)肥料の種類一覧|原料や成分、効果、使い方、形状による種類につ…
有機肥料は微量要素や糖質、アミノ酸も含んでおり、土壌中の微生物の栄養源となります。土質改良効果があり、保水性を高める働きもあります。ただし、鶏糞は炭素率が低いため肥料効果は高いものの、土壌改良効果はあまり期待できません。
参考)今年は有機肥料に挑戦しよう 鶏糞・牛糞・油かすの特徴
化成肥料は鉱物などの無機物を原料として、化学的方法により製造された肥料です。元肥には速効性ではなく、緩効性肥料や遅効性肥料を選ぶことが重要です。
参考)有機肥料とは? 化学肥料との違いについて|マイナビ農業
化成肥料の中でも元肥に適しているのは以下のタイプです。
緩効性肥料は施肥後じわじわと成分が溶け出し、2~6ヶ月程度以上の長期間効果が続きます。土にまいて1週間ほどで効果が出始め、環境にもやさしい肥料と言えます。有機入り化成肥料のように、有機質が混入された肥料もおすすめです。
参考)緩効性肥料とは? 種類やおすすめの使い方・与え方を紹介します…
元肥を選ぶ際は、窒素(N)・リン酸(P)・カリウム(K)の三大要素のバランスを考える必要があります。肥料袋に表示されている「8-8-8」などの数字は、それぞれの成分が8%ずつ含まれていることを示します。
参考)肥料の三要素とは?効果から選び方までを徹底解説 - アグリス…
元肥には植物の伸長を促進するリン酸が窒素・カリウムよりも多いもの、またはすべて同じくらいの配合量のものが適しています。具体的には以下のような比率が推奨されます。
| N(窒素) | P(リン酸) | K(カリウム) |
|---|---|---|
| 8 | 8 | 8 |
| 8 | 12 | 8 |
| 10 | 18 | 7 |
| 4 | 14 | 5 |
リン酸は植物が取り込みにくい栄養素のため、カルシウムやマグネシウムを含む苦土石灰も元肥として混ぜておくとよいでしょう。ただし、石灰と有機肥料を同時に施用するとアンモニアガスが発生するリスクがあります。
野菜の種類によって必要な施肥量は異なりますが、家庭菜園では1㎡あたり窒素・リン酸・カリウムそれぞれ20g前後が一般的な目安とされています。鶏糞を元肥として使う場合は、1㎡あたり300g~500gを目安に施します。
参考)鶏糞(鶏ふん)とは? 野菜向けの有機肥料の使い方を解説します…
元肥の与え方には、全層施肥や溝施肥などさまざまな方法があります。全層施肥は肥料を土全体に混ぜ込む方法で、ダイコンやニンジンなどの根菜類に適しています。根が肥料に直接当たると可食部が変形する可能性があるため、根菜類では全層施肥が推奨されます。
施用タイミングは肥料の種類によって異なります。有機質肥料は微生物による分解が必要なため、植え付けの2~3週間前に施すのが一般的です。一方、化成肥料は速やかに水に溶けて土に馴染むため、植え付けの1週間前位に施すのが適当です。
参考)肥料をまくタイミングは? - 家庭菜園Q&A 肥料編
種まきの際に元肥を加えるかどうかは状況によって異なります。畑などの広い場所に直接種をまく場合は元肥を施した土を使ってかまいませんが、育苗箱などの狭い場所では肥料濃度が高くなりすぎないよう注意が必要です。
元肥を適切に使わないと、作物の生育不良や収穫量の減少を招く可能性があります。よくある失敗例として、肥料の与えすぎがあります。市販の野菜栽培用土には既に栄養素が含まれている場合が多く、追加で元肥を施すと栄養過多になり、虫が湧いたり野菜が枯れたりする恐れがあります。
参考)家庭菜園でのよくある失敗例
また、肥料の配合比率を無視した施用も問題です。有機質肥料や堆肥を与えているから養分不足はないという思い込みが作柄を悪くすることがあります。特に苦土(マグネシウム)が不足しているケースが多く見られます。
参考)土作りの名人に聞いた、ありがちな失敗から知る有機肥料の使い方…
施肥量の計算ミスも失敗の原因となります。作物の肥料必要量は、施肥量と肥料に含まれるチッソ成分の割合から計算する必要があります。例えば8%の窒素を含む肥料50gには4gの窒素が含まれることを理解し、必要量を正確に算出することが大切です。
参考)家庭菜園向け 元肥(肥料)の施肥量基準 目安 - ちょび田舎…
さらに、混ぜてはいけない肥料の組み合わせにも注意が必要です。前述のように石灰と有機肥料を同時に施用するとアンモニアガスが発生し、作物に悪影響を及ぼす可能性があります。
「元肥」とは?適した肥料の種類と撒くタイミング - 農家web
元肥の基本的な考え方と適切な肥料の種類について詳しく解説されています。
もっと知りたい肥料! vol2 元肥・追肥ってなに?種類や与え方 - ハイポネックス
元肥と追肥の違い、それぞれに適した肥料の種類や与え方について実用的な情報が掲載されています。
緩効性肥料、遅効性肥料、速効性肥料の特徴と違い - 農家web
肥料の効き方のタイプ別に特徴と使い分けを詳しく解説しています。