中山間地域 補助金の中心となる中山間地域等直接支払制度は、急傾斜地など生産条件が不利な農地を維持し、農業と農村の継続を支えるために創設された国の制度です。 この制度は平成12年度にスタートし、平成27年度からは「農業の有する多面的機能の発揮の促進に関する法律」に基づく安定的な措置として継続されており、単年度の事業ではなく長期的な地域維持政策として位置づけられています。 対象となるのは、過疎化・高齢化が進みやすい中山間地域等で、集落ぐるみで農用地を保全する取り組みに対して、農地の面積に応じて交付金が支払われる仕組みです。
中山間地域 補助金の特徴は、「作物の出来」ではなく「農地を維持・管理する活動」自体を評価する点にあります。 例えば、耕作放棄地にならないように一定の作付けや草刈りを継続すること、共同で水路を管理することなどが協定に明記され、その履行を前提に交付が行われます。 また、農地の維持だけでなく、地域の景観保全や防災機能、次世代への引き継ぎといった「多面的機能」を支える役割も重視されており、単なる収入補填ではない点が他の補助金との大きな違いです。
参考)中山間地域等直接支払制度/京丹後市
農業者にとっては、機械投資や規模拡大を目的とした補助金と比べると「目立ちにくい制度」ですが、実際には中山間地域の営農継続に必要な基礎収入として機能しており、集落営農組織や地域運営組織の立ち上げ・維持を下支えしているケースも多く見られます。 このため、他の設備系補助金を検討する前に、自分の農地が中山間地域等直接支払の対象になるかどうかを確認することが、資金調達の第一歩になります。
参考)中山間地域等直接支払制度 - 愛媛県庁公式ホームページ
中山間地域 補助金の対象となるには、まず「地域」と「農地」の両方が条件を満たしている必要があります。 地域については、特定農山村法など複数の法律で指定された中山間地域や、都道府県知事が特認した区域が該当し、市町村や都道府県のホームページに対象地区が一覧で示されている場合が多くあります。 農地については、農業振興地域内の農用地区域にある一団の農用地で、一定規模以上(例えば1ヘクタール以上など)のまとまりが求められるのが一般的です。
交付の前提として、農業者が個々に申請するのではなく、集落などの単位で「集落協定」を締結し、5年以上営農を継続することが確実であることが条件に挙げられています。 この協定には、どの農地を対象とするか、誰がどの作業をいつ行うかといった活動内容に加え、体制整備や担い手育成など前向きな活動を盛り込むことで、交付単価が満額になるケースもあります。 実際、京丹後市では「農業生産活動等の継続」のみの場合は交付単価の8割、これに加え「体制整備のための前向きな活動」を行うと10割交付とする運用が示されています。
参考)中山間地域等直接支払制度|滋賀県ホームページ
交付単価は、田か畑か、地形が急傾斜地か緩傾斜地かといった条件で細かく設定されています。 例えば和歌山県の例では、急傾斜地の畑(傾斜度15度以上)には10アール当たり11,500円、緩傾斜地の田(勾配100分の1以上)には10アール当たり8,000円、緩傾斜地の畑(傾斜度8度以上)には10アール当たり3,500円が基本単価として示されています。 さらに、5年間の基本的な活動のみ行う場合は上記単価の8割となるなど、活動内容に応じて増減する仕組みがあります。
参考)https://www.pref.tokushima.lg.jp/file/attachment/183388.pdf
中山間地域 補助金を活用するには、まず自分の集落や所属する営農組織が対象地域に含まれているかを、市町村の担当窓口やホームページで確認するのが出発点になります。 市町村は中山間地域等直接支払交付金の事業計画を認定する立場にあり、交付金の受け方や必要書類、締め切りなど実務的な情報は、最寄りの市町村に問い合わせるよう農林水産省も案内しています。 すでに地域で協定が結ばれている場合、新たに農地を編入できるかどうかも市町村の判断となるため、個人だけで動くよりも、集落の代表者や営農組織と連携して相談することが実務上の近道です。
申請フローの一般的な流れとしては、対象農地の確認→集落協定案の作成→集落内での合意形成→市町村への協定申請・事業計画の認定→毎年度の活動報告・実績報告と続きます。 協定案の作成では、「農業生産活動の継続」だけを最低限書いて提出してしまう例もありますが、体制整備や担い手育成、交流活動などを具体的に盛り込むことで、交付単価を満額に近づけられる可能性があります。 一方で、活動を盛り込みすぎて実行が追いつかなくなると、報告時に負担が増えたり、評価が下がるリスクもあるため、実行可能性とのバランスが重要です。
参考)https://www.maff.go.jp/j/nousin/tyusan/siharai_seido/pdf/02_torikumi_h140628.pdf
農業者がつまずきやすいポイントとしては、(1)対象地域の線引きが分かりにくいこと、(2)集落内での合意形成に時間がかかること、(3)事務作業の負担感が大きく感じられること、がよく挙げられます。 中には、中山間地域であっても「特認地域」として別枠で認められる可能性があるのに、その制度を知らずに諦めてしまっているケースもあります。 また、交付金は農地面積に応じて支払われるため、耕作放棄地の復旧や農地集積といった取り組みを並行して進めると、数年後の交付額が大きく変わる可能性がある点も見落とされがちなポイントです。
参考)https://www.pref.niigata.lg.jp/uploaded/attachment/296267.pdf
中山間地域 補助金は、単に草刈りや畦の補修だけでなく、地域ごとに工夫した使い方が積み重ねられてきました。 秋田県の事例では、交付金を活用して自己施工による用排水路整備を行い、農作業の効率化とコスト削減を同時に実現した取り組みが紹介されています。 同じく秋田県では、棚田オーナー制度や企業との協力による交流イベントを展開し、中山間地域の景観を生かした高付加価値型農業や観光との連携にも交付金が間接的に役立っているとされています。
国がまとめた取組事例集では、害獣防除施設にかかる経費の約3分の1を交付金で賄い、残りを地域で負担することで、イノシシやシカによる被害を抑えつつ、農地の維持意欲を高めた事例もあります。 さらに、法面や山裾の草刈りを個人ではなく集落全体で共同作業として行うことで、高齢化した農家でも無理なく作業を続けられる体制づくりに交付金を充てたケースも報告されています。 新潟県などでは、交付金の加算や県独自事業を組み合わせ、空き家をリフォームした「お試し居住施設」を整備して都市部からの移住希望者を呼び込むなど、地域の人材確保にまで踏み込んだ活用も見られます。
参考)https://www.soumu.go.jp/main_content/000834027.pdf
あまり知られていない使い道として、「集落協定をきっかけに地域運営組織づくりを進める」という動きがあります。 農村型地域運営組織の形成を支援する補助金では、中山間地域の複数集落が連携して情報共有や研修、情報発信を行う全国的なプラットフォーム整備が支援対象とされており、単なる農地維持から一歩進んだ「地域経営」の入り口として位置づけられています。 こうした仕組みを組み合わせることで、中山間地域 補助金を足がかりに、交流拠点の整備や空き校舎の活用、地域内通貨の導入など、より広い地域づくりを構想することも現実味を帯びてきます。
参考)「「令和6年度農山漁村振興交付金(中山間地農業推進対策(農村…
中山間地域 補助金だけでは、トラクターやハウスの導入といった大規模投資を賄うのは難しいため、他の農業補助金との組み合わせが実務上のポイントになります。 例えば、農業用機械の導入や施設整備については、農業経営基盤の強化や省力化を目的とした補助金が別枠で用意されており、中山間地域の農家でも要件を満たせば利用可能です。 一方で、中山間地域等直接支払は農地保全に対する継続的な収入源として位置づけられるため、「固定費を補うベース」として意識すると資金計画が立てやすくなります。
近年は、農山漁村振興交付金の中で「中山間地農業推進対策」など、地域運営組織の形成や情報発信、研修などソフト面を支援するメニューも整備されています。 令和6年度の農村型地域運営組織形成伴走支援では、全国を対象に、各地域の取組に関する情報・知見の蓄積や研修、情報発信などを行うプラットフォーム整備に対して上限4,000万円の支援が設定されていました。 こうした大型の交付金は公募期間が短く、公募要領の読み込みも必要なため、日頃から市町村や県の担当者、JA、農業普及指導センターなどと情報交換しておくことが採択への近道になります。
意外なポイントとして、総務省や内閣府などが所管する「交付金活用事例」も、中山間地域の農業者にとって参考になる情報を含んでいます。 例えば、中山間地域交流拠点整備計画のように、学校再編で生じた空き校舎を地域運営組織が拠点として活用し、農業体験や直売所、ワーケーション受け入れなど複合的な事業を展開している例があります。 このような事例と中山間地域等直接支払制度の事例集をあわせて読むことで、「農地保全+交流・観光+移住促進」を組み合わせた自分たちの地域の将来像を描きやすくなります。
中山間地域 補助金をめぐる環境は、人口減少や気候変動、鳥獣被害の深刻化など、制度創設時とは異なる課題にさらされています。 その一方で、ドローンやリモートセンシング、オンライン会議などのデジタル技術が、これまで「人手と時間」に頼っていた集落協定の運営やモニタリングを変えつつあります。 例えば、ドローンで撮影した圃場の画像を共有し、耕作放棄の兆候や草刈りの実施状況を可視化すれば、年1回の目視確認に頼っていた点検作業を効率化し、高齢の農家でも負担なく参加しやすい体制を整えられます。
独自の視点として注目したいのは、「中山間地域等直接支払の協定を、地域のデータ蓄積と発信の枠組みとして再設計する」という考え方です。 具体的には、交付金で整備した農道や水路、害獣防除柵の位置情報を地図上に整理し、「どこに、誰の手で、どれだけ維持管理のコストがかかっているか」を見える化することで、将来の後継者や移住希望者に対しても、地域の実情と魅力をセットで伝えられます。 また、事例集に掲載されているような棚田オーナー制度や交流拠点づくりの情報を、自分たちの活動報告としてオンラインで発信すれば、観光や教育、企業のサステナビリティ投資など、農業以外の分野からの連携の糸口にもなります。
農業者個人として今から準備できることは、(1)自分の農地がどの区分(急傾斜・緩傾斜、田・畑)でどれくらいの交付単価になるか把握すること、(2)集落協定の内容を読み直し、次期対策で見直したい点や追加したい活動をメモしておくこと、(3)地域内でデータや情報を共有する簡単な仕組み(ノート、SNS、クラウドストレージなど)を試行しておくこと、の3つです。 こうした小さな準備の積み重ねが、次の制度見直しや新たな補助金公募のタイミングで「一歩先に動ける集落」となるための差につながっていきます。
中山間地域等直接支払制度の制度概要や最新のお知らせ、全国の事例集がまとめられている公式情報です。
農林水産省|中山間地域等直接支払制度
参考)中山間地域等直接支払制度:農林水産省
各都道府県の対象地域や単価、活動事例などの詳細を知りたい場合の入り口として役立ちます。
滋賀県|中山間地域等直接支払制度 活動事例集
中山間地域を含む農業全般で活用できる最新の補助金情報を用途別に整理した解説です。
農業で活用できる補助金・助成金の紹介【2025年版】
参考)【2025年最新版!】農業で活用できる補助金・助成金の紹介!…