鳥獣被害対策の鍵は電気柵や罠の設置と補助金活用

農作物を荒らす鳥獣被害に悩んでいませんか?被害を減らすための対策や、電気柵や罠の設置にかかる費用、利用できる補助金制度について詳しく解説します。動物の学習能力を逆手に取った意外な対策とは?
鳥獣被害対策のポイント
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敵を知ることから

足跡や食痕から加害獣を特定し、最適な対策を選ぶことが重要です。

電気柵と環境管理

柵の設置だけでなく、周囲の藪払いなど環境整備で侵入を防ぎます。

💰
補助金の活用

導入費用を抑えるため、自治体の補助金制度を賢く利用しましょう。

鳥獣被害の対策

鳥獣被害対策の第一歩は加害獣の痕跡と特定

 

効果的な鳥獣被害対策を行うためには、まず「誰が」畑を荒らしているのかを正確に特定することが不可欠です。動物によって行動パターンや苦手なものが異なるため、相手を間違えると対策の効果が全く出ないこともあります。特定の手がかりとなるのが、畑に残された「足跡」と「食痕」です。
例えば、イノシシの足跡には、蹄(ひづめ)の後ろに「副蹄(ふくてい)」と呼ばれる小さな突起の跡がつくことがありますが、これはシカの足跡には見られない特徴です。また、食痕においても違いがあります。シカは植物の繊維をきれいに噛み切るため切り口が鋭利ですが、イノシシは噛みちぎるように食べるため、切り口が粗雑になる傾向があります。サルの場合は、食べ散らかした跡が残りやすく、足跡も人間の子供の手に似た形状をしているため、比較的見分けやすいと言えます。
スイカやメロンなどの果実的野菜の場合、中身が空洞になるようにくり抜かれていたらアライグマの可能性が高く、単に突っつかれたような跡であればカラスの仕業であることが多いです。このように、現場に残された痕跡を「フィールドサイン」として読み解くことが、無駄な出費を抑え、最短で被害を食い止めるための第一歩となります。まずはスマートフォンなどで被害状況を撮影し、自治体の担当窓口や専門家に相談する際の資料として残しておきましょう。

鳥獣被害対策に有効な電気柵の設置と侵入防止

加害獣が特定できたら、物理的に農地への侵入を防ぐ柵の設置を検討します。中でも電気柵は、動物に電気ショックという「痛み」を与えることで、「この場所は危険だ」と学習させ、心理的なバリアを形成する非常に有効な手段です。しかし、ただ設置するだけでは効果を発揮しません。正しい設置とメンテナンスが命となります。
電気柵の効果を維持するためには、電線に草木が触れないように管理することが最も重要です。草が電線に触れるとそこから電気が地面に逃げてしまい(漏電)、動物が触れた際の衝撃が弱まってしまいます。動物は痛みが少ないとわかると、電気柵を恐れなくなり、強引に突破するようになります。これを防ぐため、柵の周囲には防草シートを敷くなどの対策が推奨されます。防草シートは草刈りの手間を省くだけでなく、漏電リスクを大幅に減らすことができます。
また、柵の高さや段数も動物の種類に合わせる必要があります。イノシシ用であれば鼻の高さに合わせて低い位置に線を張る必要がありますが、シカの場合は飛び越えられないよう高い位置まで線を張る必要があります。さらに、電気柵は24時間通電しておくことが推奨されます。「夜しか来ないから」と昼間に電源を切ってしまうと、賢い動物たちは「昼間は安全だ」と学習し、明るいうちに侵入を試みるようになります。24時間365日、「触れたら痛い」という恐怖感を維持し続けることが、侵入防止の鉄則です。

鳥獣被害対策にかかる費用と使える補助金の申請

本格的な鳥獣被害対策には、柵の資材費や設置工事費、あるいは捕獲用の罠の購入費など、決して安くはない費用がかかります。例えば、金属製の金網柵は耐久性が高い一方で、1メートルあたりの単価が高額になる傾向があります。こうした経済的な負担を軽減するために、国や多くの自治体では手厚い補助金制度を用意しています。
多くの自治体では、電気柵や防護柵の購入費用の2分の1から、場合によっては全額を補助する制度を設けています。例えば、高知市のように上限20万円まで補助する事例や、塩尻市のように狩猟免許の取得費用(初心者講習費や診断書料など)を全額または一部補助するケースもあります。狩猟免許を取得すれば、自分で罠を仕掛けて加害獣を捕獲することが可能になり、地域全体の被害減少に貢献できるため、自治体も積極的な支援を行っています。
補助金を申請する際には、いくつかの注意点があります。まず、購入前に申請が必要なケースがほとんどであり、「既に購入したもの」は対象外となることが多いです。また、補助金の交付には「費用対効果」の説明が求められることがあり、例えば3戸以上の農家が共同で設置する場合などは、被害防止計画に基づいた合理的な設置計画が必要になります。申請書類の作成は複雑な場合もあるため、早めに役場の農林課や鳥獣対策係に問い合わせ、予算が尽きる前に手続きを進めることをお勧めします。

鳥獣被害対策の未来を担うドローンとICT技術

近年、過疎化や高齢化に伴い、見回りや檻の確認といった作業の負担軽減が課題となっています。そこで注目されているのが、ICT(情報通信技術)やドローンを活用した「スマート鳥獣対策」です。これらは単なる省力化だけでなく、これまで見えなかった野生動物の動きを可視化する強力なツールとなっています。
最新の取り組みでは、赤外線カメラを搭載したドローンを使って夜間の山林を空撮し、シカやイノシシがどこに潜んでいるか、どのルートを通って農地に接近しているかを特定する調査が行われています。これにより、闇雲に罠を仕掛けるのではなく、動物の通り道(獣道)をピンポイントで狙うことが可能になり、捕獲効率が飛躍的に向上します。
また、罠にICTセンサーを取り付けることで、捕獲があった瞬間に管理者のスマートフォンに通知が届くシステムも普及し始めています。これにより、毎日の見回りにかかる労力を大幅に削減できるほか、捕獲された動物を長時間放置することによるストレスや肉質の低下を防ぐ効果も期待できます。青森県深浦町などの先進地では、こうした技術を複合的に活用し、地域全体でデータを共有して対策を行うことで、成果を上げています。

鳥獣被害対策で盲点となる動物の学習と環境管理

鳥獣被害対策において、多くの人が見落としがちなのが「動物の学習能力」と「環境管理」の関係です。柵や罠といった物理的な道具に頼りがちですが、実は動物たちは「見通しの悪い場所」や「隠れられる場所」を好んで移動ルートに選びます。つまり、畑の周りに藪(やぶ)や耕作放棄地が放置されていると、それが動物たちにとっての「安全な隠れ家」となり、侵入を助長してしまうのです。
これを防ぐための最も基本的かつ重要な対策が「藪払い」です。畑の周辺数メートルの草を刈り取り、見通しを良くするだけで、動物たちは「身を隠せない」という心理的な不安を感じ、農地に近づきにくくなります。これは「バッファゾーン(緩衝地帯)」の整備と呼ばれ、物理的な柵の効果を何倍にも高める効果があります。実際に、柵を設置しても被害が止まらないケースの多くで、柵のすぐそばまで藪が迫っており、動物が安心して柵の弱点を探せる状況になっていることが報告されています。
また、カラスなどの鳥類は、仲間の行動を見て危険を学習する能力が高いことが知られています。逆に言えば、一度「この畑は安全だ」「この電気柵は痛くない」と学習されてしまうと、その情報は仲間内で共有され、被害が拡大してしまいます。中途半端な対策は、かえって「対策を突破できるスーパー害獣」を育成することになりかねません。物理的な遮断だけでなく、彼らの「安心感」を奪う環境づくりこそが、長期的な被害防止の鍵を握っています。

 

 


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