集落営農の補助金を活用し連携と法人化へ!令和7年度の新制度

集落営農で補助金はどう使う?令和7年度からの新制度や法人化、連携のメリットを徹底解説。地域計画との関わりや、コミュニティ維持に活かす意外な視点まで、集落の未来を守るための情報を網羅しました。あなたの集落はどう動く?

集落営農が補助金を活用して目指すべき連携と未来

集落営農×補助金 活用ガイド
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連携・合併の加速

令和7年度新設の「連携促進事業」でビジョン策定から合併経費までをカバー

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法人化のメリット

設立費用の25万円支援や税制優遇、対外的な信用力向上を実現

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地域計画との一体化

「目標地図」への位置づけが受給の鍵。地域ぐるみの合意形成が必須に

集落営農の連携と合併に向けたビジョンづくり支援と補助金

 

令和7年度(2025年度)から、農林水産省は新たに「集落営農連携促進等事業」をスタートさせます。これは、個々の集落営農組織が単独で存続することが難しくなっている現状を踏まえ、近隣の組織との「連携」や「合併」を強力に推進するためのものです。これまでも組織化を支援する補助金はありましたが、新制度では「将来のビジョンづくり」そのものに定額の助成が出る点が大きな特徴です。具体的には、集落の境界を越えて広域的に連携するための話し合いや、合併に向けた新組織の設計図を描くための会議費、専門家謝金などが対象となります。

 

参考)集落営農連携促進等事業:農林水産省

なぜ今、連携が必要なのでしょうか。多くの集落営農は「オペレーターの高齢化」という深刻な壁に直面しています。単独の集落ではトラクターを運転できる人がいなくなり、機械更新の資金も賄えないケースが増えています。この補助金は、そうした「撤退戦」になりがちな議論を、前向きな「統合戦略」へと転換させるための起爆剤として設計されています。ビジョンづくりだけでなく、そのビジョンを実現するための具体的な取り組み(高収益作物の試験栽培や販路開拓など)にも定額の支援が用意されており、計画倒れを防ぐ仕組みになっています。

また、この事業は既存の「集落営農活性化プロジェクト促進事業」の後継として位置づけられていますが、より「広域化」に重点が置かれています。例えば、A集落とB集落が共同で機械を利用するための調整会議や、将来的に一つの法人に統合するための定款作成費用などが支援されます。重要なのは、単に機械をシェアするだけでなく、経営そのものを一体化させる「強い連携」を目指すことです。補助金を申請するためには、市町村やJAなどの関係機関と密に連携し、地域全体でどのような農業構造を目指すのかという「青写真」を共有することが、採択への最短ルートとなります。

参考リンク:農林水産省「集落営農連携促進等事業」の詳細と令和7年度の最新情報

集落営農の法人化を強力に後押しするメリットと対象経費

集落営農を任意組織から「法人」へと移行させることは、補助金活用における最大のキーポイントの一つです。令和7年度の支援策でも、信用力向上に向けた組織の法人化に必要な経費として、定額25万円の支援が明記されています。これは設立登記にかかる登録免許税や、司法書士への報酬、印鑑作成代などに充当できるため、実質的な持ち出しなしで法人化をスタートできる可能性が高いです。しかし、補助金による初期費用の補填以上に重要なのが、法人化によって得られる中長期的な「経営上のメリット」です。

まず税制面での優遇が挙げられます。任意組織(人格なき社団)のままでは、代表者個人に課税されるリスクや、資産の共有に関するトラブルがつきまといます。一方、農事組合法人や一般社団法人として法人化すれば、構成員への従事分量配当を経費として計上できるため、法人税の負担をコントロールしやすくなります。特に消費税に関しては、簡易課税制度の活用や、設備投資を行った年度の消費税還付など、法人ならではの節税策が講じやすくなります。機械や施設の導入に補助金を使った場合、その後の減価償却費も経営計画に組み込めるため、財務体質が強化されます。

 

参考)集落営農の法人化|アグリウェブ

さらに、法人化は「対外的な信用力」を劇的に高めます。補助金の申請要件として「法人であること」や「法人化を目指していること」が求められるケースは年々増えています。また、金融機関からの融資を受ける際も、個人保証に頼らない融資枠(スーパーL資金など)を活用しやすくなります。集落営農が法人格を持つことは、単なる手続き上の変更ではなく、集落の農業を「家業の集合体」から「地域企業」へと脱皮させるための必須条件と言えます。補助金を活用してハードルを下げつつ、この脱皮を図ることが、次世代への承継をスムーズにします。

 

参考)令和7年度補助金等の逆引き事典(農業)

参考リンク:集落営農の法人化による税制メリットと組織形態の選び方

集落営農の人材確保と高収益化を実現する具体的な支援策

集落営農の最大の悩みである「人手不足」と「収益性の低さ」を解決するため、補助金メニューには具体的な経費支援が盛り込まれています。特筆すべきは、取り組みの中核となる人材を確保するための雇用経費支援です。具体的には、候補となる若者等を雇用するための経費として、年間上限100万円(定額)が助成される枠組みがあります。これは、集落内の後継者に給与を支払う原資として使えるほか、地域外からの「地域おこし協力隊」や「就農希望者」を受け入れる際のインセンティブとしても機能します。オペレーター不足に悩む集落にとって、人件費の直接補填は即効性のある支援です。

 

参考)https://www.soumu.go.jp/main_content/000950934.pdf

収益化の面では、「高収益作物の導入」がキーワードになります。水稲単作では経営が厳しいため、野菜や果樹、加工用作物などの高収益作物への転換を進めるための「試験栽培」や「販路開拓」の経費も支援対象です。例えば、水田を活用したブロッコリーや枝豆の試作、直売所向けの新商品開発にかかる種苗費や資材費、パッケージデザイン料などが該当します。これまで「米作り」しかしてこなかった組織が、複合経営に乗り出す際のリスクを、補助金が肩代わりしてくれる形です。

また、これらの取り組みを支える「機械・施設」の導入にも支援があります。「農地利用効率化等支援交付金」などを活用すれば、高価な汎用コンバインや、野菜移植機、スマート農業機器(ドローンや自動操舵システム)の導入費用の負担を大幅に軽減できます。重要なのは、単に機械を買うだけでなく、「誰が」「どの作物を」「どれだけ作って」利益を出すのかという事業計画とセットで申請することです。補助金は「買い物チケット」ではなく、「事業投資の呼び水」として使う視点が、高収益化への近道となります。

 

参考)農地利用効率化等支援交付金(令和7年度):農林水産省

参考リンク:農地利用効率化等支援交付金の詳細と令和7年度の公募スケジュール

集落営農が地域計画の目標地図に位置づけられるための要件

補助金を活用する上で、令和7年度以降絶対に避けて通れないのが「地域計画(旧・人・農地プラン)」との整合性です。これからの農業補助金、特に「農地利用効率化等支援交付金」などのハード事業は、法制化された地域計画の「目標地図」に位置づけられた経営体でなければ、原則として受け取ることができません。これは、国が「将来誰がこの農地を耕すのか」を明確にしたエリアに資金を集中投下する方針を固めたためです。つまり、集落営農組織が補助金をもらうためには、まず地域での話し合いに参加し、「この地域の農地は我々が担う」という合意を取り付け、地図上に明記される必要があります。

この「目標地図への掲載」は、単なる手続き以上の重みを持ちます。地域計画は、10年後の農地利用の姿を描くものであり、そこに名を連ねることは「地域農業の主役」としての責任を負うことを意味します。要件としては、認定農業者や認定新規就農者、そして「集落営農組織」が含まれますが、組織の場合は「将来的に法人化すること」が条件となるケースが多いです。現状が任意組織であっても、数年以内の法人化行程表を提出することで要件を満たすことができる場合もあるため、諦めずに市町村の農政課と相談することが重要です。

また、地域計画の策定プロセス自体が、集落営農の再編を促す場にもなっています。隣接する集落同士で「どちらがどの農地を引き受けるか」を調整する中で、自然と「組織の統合」や「業務提携」の話が持ち上がることが期待されています。補助金はこの調整プロセスを円滑にするための「潤滑油」です。逆に言えば、地域計画を無視して独自の拡大路線を歩もうとしても、国の支援は受けられず、孤立するリスクがあります。「補助金が欲しいから計画を作る」のではなく、「地域を守る計画があるから補助金が下りる」という順序を理解しておくことが、採択率を高めるポイントです。

 

参考リンク:地域計画と集落営農の関わり・目標地図への位置づけ要件について

集落営農の補助金を地域コミュニティ維持の「生活インフラ」へ

多くの記事では「農業経営の強化」に主眼が置かれますが、集落営農の補助金活用にはもう一つ、非常に重要な「裏テーマ」があります。それは、集落営農組織を農業だけでなく、生活支援や環境保全を行う「地域運営組織(RMO)」へと進化させるための資金源として活用する視点です。過疎化が進む地域では、集落営農が唯一の「動ける組織」である場合が多く、草刈りや水路掃除といった多面的機能支払交付金の活動だけでなく、高齢者の見守りや買い物支援、除雪などを担うことが期待されています。

 

参考)https://www.bunka.go.jp/tokei_hakusho_shuppan/tokeichosa/pdf/hasshin_katsuyo_guidebook.pdf

実は、農業系の補助金の中にも、こうした「地域全体の維持」に資する要素が含まれています。例えば、多面的機能支払交付金は、農地周りの環境保全活動に対して支払われますが、この活動を通じて集落の共同作業(出役)を維持し、住民同士のつながりを保つ効果があります。また、集落営農が法人化して事務機能を強化すれば、自治会や公民館活動の事務局を代行することも可能になり、集落全体の「自治機能」を補完できます。補助金で導入した軽トラックや草刈り機を、営農以外の地域行事にも(規定の範囲内で)活用することで、住民全体の利便性を向上させることも考えられます。

 

参考)令和7年度【農林水産省】概算要求まとめ(2025年度)

「儲からないから解散する」と考えるのではなく、「集落の生活インフラを維持するために、赤字にならない程度に営農を続け、補助金で活動費を補う」という逆転の発想も、これからの時代には必要です。農業の利益だけでなく、補助金を含めた「地域の総収入」を最大化し、それを原資に集落というコミュニティを存続させる。そうした広い視野(ビジョン)を持って補助金を申請する組織は、審査員からも「地域に不可欠な存在」として高く評価される傾向にあります。集落営農は、単なる農業会社ではなく、地域を支える「公共財」としての側面を、補助金活用を通じて強化していくべきです。

 

 


やってよかった集落営農: ホンネで語る実践20年のノウハウ (〈1〉)