農山漁村 とは 定義 役割 課題 と 持続可能性

農山漁村とは何かを整理しながら、農業従事者の現場目線で役割や課題、これからの可能性をどう捉え直せるのでしょうか?

農山漁村 とは 定義 と 役割

農山漁村とは何かを一望する
🌾
農村・山村・漁村を合わせた暮らしの場

農山漁村とは、農村・山村・漁村を合わせた地域であり、都市と対になる「むら」の総称として位置づけられています。農業や林業、漁業を生業とする人々の生活と、生産の場が重なっていることが大きな特徴です。

🌊
食料と多面的機能を支える土台

農山漁村は食料の供給だけでなく、水資源の保全、土砂災害の防止、景観や文化の維持など多面的機能を担う場として評価されています。これらの機能は都市住民も含めた国民全体の暮らしを静かに支えています。

🏡
地方創生と新たなしごとのフロンティア

近年は六次産業化や地域資源を活かした観光、移住・二地域居住などを通じて、農山漁村が地方創生の重要なフィールドとして位置づけられています。多様な担い手が関わることで、新しいビジネスや暮らしの形が生まれつつあります。

農山漁村 とは 基本定義 と 特徴



農山漁村とは、主に農業を生業とする人々が日常生活を営む「農村」、林業を担う「山村」、漁業を中心とする「漁村」を合わせた用語であり、日本の行政文書でもこの定義が広く用いられています。都市のような大規模な人口集中や産業集積よりも、自然環境と密接に結びついた暮らしと生業が存在する空間として理解することができます。農家や林業者、漁業者の住居と生産現場が地続きであることが多く、生活空間そのものが地域資源として働く点が特徴です。
また、農山漁村の定義は市町村の規模や人口だけでは区切れず、「主に農林漁業に関わる人々が暮らしているか」という生業と生活の実態から捉える必要があるとされています。そのため、一見すると都市的な機能を持つ小都市でも、周辺の農地や海と密接に結びつき、農山漁村としての性格を持つケースも少なくありません。農業従事者にとっては、自分の圃場だけでなく、集落・山・海を含めた「一体の生活圏」として捉える視点が重要になります。


参考)https://www.ued.or.jp/wp-content/uploads/2024/09/NO-14.pdf

日本では、農山漁村は「都市に対置される村落」とも説明され、土地利用や景観だけでなく、地域社会のつながりや共同作業を通じて維持されてきました。水路や農道、里山や漁港の環境管理など、個々の農家ではなく集落単位で支える仕組みが根付いており、この共同行為が農山漁村の基盤を形づくっています。農業従事者にとって、こうした社会的なインフラをどう維持・継承するかは、経営と同じくらい重要なテーマになりつつあります。


参考)農山漁村の価値をあらためて考える - 全国町村会

農山漁村 とは 多面的機能 と 生活環境

農山漁村は食料を生産する場であると同時に、水源涵養や洪水・土砂災害の防止、地球温暖化の緩和など、いわゆる多面的機能を発揮する地域として位置づけられています。内閣府の世論調査でも、国民は農山漁村に対して「食料を生産する場」「地域の人々が働き生活する場」「水資源を蓄え災害を防ぐ場」といった役割を期待しており、都市住民もその恩恵を受けていることが示されています。これらの機能は市場で価格がつきにくいですが、国土保全や水環境の維持などに大きく寄与していると評価されています。
生活環境の面では、農山漁村は静かな環境や豊かな自然だけでなく、地域コミュニティのつながりが濃い空間であるとされています。一方で、医療・福祉・交通などの日常生活サービスへのアクセスが課題になることも多く、生活が維持できる仕事や交通手段の確保が移住や定住促進の条件として重視されています。農業従事者にとっても、農業所得だけでは生活が成り立たない場合に、観光、加工品づくり、兼業などを組み合わせて生計を構築するケースが少なくありません。


参考)https://www.maff.go.jp/j/nousin/nouson/bi21/pdf/nousan_gyoson_sasshi.pdf

あまり知られていない点として、農山漁村の「美しさ」は景観だけでなく、土や水の匂い、せせらぎや潮騒の音、農作業を通じて感じる手触りや味覚など、五感に訴える要素を含めたものとして整理されていることが挙げられます。こうした五感の体験は、農業者にとっては当たり前の環境ですが、都市住民から見ると非常に魅力的な資源であり、教育旅行やグリーンツーリズムの重要なコンテンツになっています。今後の農業経営では、この「五感に訴える価値」をいかにストーリーとして伝え、収益化につなげるかが鍵となります。


参考)https://www.kouryu.or.jp/ohrai/library/jdr02800000lqid3-att/jdr02800000lqigj.pdf

農山漁村 とは 持続可能性 と 振興施策

農山漁村の持続可能性を高めるため、国や自治体はさまざまな振興施策を展開しており、その代表例が「農山漁村振興交付金」や「農山漁村経済・生活環境創生プロジェクト」です。これらの施策では、地域資源を活用した新商品・サービスの開発、6次産業化の推進、加工・販売施設の整備といった取り組みを支援し、農林漁業者の所得向上や雇用の創出をめざしています。単なる補助金ではなく、地域間交流拠点や観光コンテンツの整備など、外部とのつながりを強めるプロジェクトも重視されている点が特徴です。
また、総務省などが関係府省庁と連携して進める「農山漁村経済・生活環境創生プロジェクト」では、地方銀行や企業、NPOなど多様な主体が関わり、農山漁村の課題解決モデルを形成していく官民共創の枠組みが設けられています。具体的には、ビニールハウスの温度センシングなどのIoT技術の導入や、土壌の保水・保肥力を高める技術による収量・生産性向上といった案件が挙げられており、スマート農業と地域づくりを結びつける動きが進んでいます。こうした取り組みは、農業従事者の現場の負担軽減と同時に、地域としての競争力を高める狙いがあります。


参考)https://www.soumu.go.jp/main_content/001031380.pdf

持続可能性の観点からは、人口減少・高齢化が進む中山間地域で、集落営農や共同活動を通じて水田農業や里山管理を維持している事例が注目されています。中山間地直接支払制度の活用により、傾斜地の棚田や山間部の農地を守っている地域も多く、こうした制度をどう経営戦略の一部として位置づけるかが重要です。単に補助を受けるだけでなく、地域の担い手育成や外部人材の受け入れと組み合わせることで、長期的な営農体制を設計していく視点が求められます。

農業従事者にとっての実務的なポイントとしては、これらの振興施策を「個別経営の支援」ではなく、「集落や地域としての事業」として組み立てることで、補助率や採択可能性が高まるケースが多いことが挙げられます。加工施設や直売所、観光拠点などの整備を、単一の農家で抱え込むのではなく、法人化や協議会方式などで共同運営することで、リスク分散と人材の確保につながります。このような視点で公募要項を読み解き、地域の仲間と一緒に計画づくりを進めることが、持続可能な農山漁村づくりの実践的な第一歩となります。


参考)https://www.soumu.go.jp/main_content/001009850.pdf

農山漁村 とは 農業従事者目線 の 働き方 と しごとづくり

農山漁村に住む人々の所得源を見ると、農林漁業だけでなく、会社勤め、地域での起業、ペンションや飲食店などの自営業、観光関連の仕事など、多様な働き方が組み合わさっていることが世論調査から読み取れます。農業従事者にとっても、作物の販売収入に加えて、体験型観光、加工品の販売、農家レストラン農泊などを組み合わせることで、年間を通じた収益の安定を図る事例が増えています。特に、収穫体験や名物料理、自然観察などのメニューは、都市住民が農山漁村に求めるアクティビティとして人気が高いとされています。
意外なポイントとして、農山漁村における「ワザ」の継承が、今後のしごとづくりの核になり得るという視点があります。全国町村会の論考では、農山漁村の価値を「人間論的価値」と表現し、世代を超えて受け継がれてきた自然を活用する技術や知恵そのものが、農山漁村の本来的な資産であると指摘しています。例えば、用水路の水配り、斜面地での畦づくり、山の手入れときのこ管理、沿岸での資源管理といった多様なスキルは、教科書だけでは身につかないものであり、体験プログラムや研修、動画コンテンツとしても価値を持ちます。

この「ワザ」を軸にしたビジネスとしては、次のような展開が考えられます。

  • 農業体験や山仕事体験、漁業体験を組み合わせた研修プログラムの開発
  • 地域独自の栽培技術や加工法をブランド化した高付加価値商品の販売
  • 技能継承を目的としたインターンシップや弟子入り制度の整備
  • オンライン講座や映像教材としての「農山漁村のワザ」の発信

こうした取り組みは、若い担い手の呼び込みや外部人材との協働のきっかけにもなり、結果として地域全体の活力向上につながります。
さらに、農山漁村では「むら業・山業・海業」という概念が提示されており、農業・林業・漁業だけでなく、地域の生活や文化、自然環境を活かした仕事全体を視野に入れることが提案されています。これは、農作業以外の地域活動やサービスも含めて「仕事」として再評価し、報酬や役割の仕組みを整える考え方です。農業従事者が地域のコーディネーターとして、都市住民や企業、行政をつなぐ役割を担うことで、自らの農業経営にも新しい価値を取り込むことができます。

農山漁村 とは 農業従事者 が デザインする 未来像(独自視点)

検索上位の情報では、農山漁村は「守るべき場」「支援の対象」として語られることが多いものの、農業従事者自身が「デザイナー」として未来像を描く視点はあまり強調されていません。しかし、実際の現場では、圃場整備や作付け、用水管理、獣害対策、景観づくりなど、日々の判断の積み重ねが農山漁村の姿を大きく変えています。ドローンやセンシング技術の導入も、単に作業効率化にとどまらず、「どんな景観を残すか」「どの作物で地域を特徴づけるか」といったデザインの一部と見ることができます。
農業従事者が未来の農山漁村をデザインするうえで、次のような観点が重要になります。


参考)https://www.maff.go.jp/j/nousin/soutyo/binosato_gaidorain/pdf/004p019s1.pdf

  • 土地利用のデザイン:水田、畑、草地、林地をどう配置し、どの景観や生態系を維持・創出するか
  • しごとのデザイン:農業・林業・漁業に加え、観光、教育、福祉などをどう組み合わせるか
  • 暮らしのデザイン:移住者や次世代が住み続けたくなる住まい・コミュニティ・サービスをどう整えるか
  • 関係人口のデザイン:都市住民や企業、学生などと、どの距離感・頻度で関わってもらうか

これらは行政計画や学術研究にも登場するテーマですが、最終的には現場の農業従事者の意思と行動によって具体化されます。
意外な視点として、「農山漁村のインパクト可視化」という考え方も出てきています。これは、農山漁村での取り組みがもたらす環境・社会・経済への効果を数値や指標として見える化し、企業の参入や投資を後押しする試みです。環境負荷の低減や地域雇用の創出、文化の継承度合いなどを定量化することで、金融機関や企業が農山漁村への参画を判断しやすくする狙いがあります。農業従事者が自らの経営や地域活動のインパクトを把握し、説明できるようになると、補助金だけに頼らない新しい協働や資金調達の道が開けてきます。

このように、「農山漁村とは何か」を定義として理解するだけでなく、「自分たちがどんな農山漁村をつくりたいか」という問いに置き換えることで、日々の営農や集落活動の意味が変わってきます。農業従事者が主体的に未来像を描き、行政や企業、都市住民を巻き込みながら実践を重ねることこそが、農山漁村の持続可能性と魅力の源泉になるのではないでしょうか。

農山漁村の定義や役割の整理にあたり、農林水産省のガイドラインは基本的な考え方や政策の方向性を理解するのに有用です(定義や多面的機能、振興施策の詳細を知りたい方向け)。


農林水産省「美しい農山漁村づくりの基本理念」
農山漁村の価値や人間論的な視点、集落営農の現実などを深掘りした論考は、現場目線でのヒントを得る際に参考になります(価値やワザの部分の参考リンク)。


全国町村会「農山漁村の価値をあらためて考える」




農家が教える 草を生やす農業: カバークロップ、リビングマルチ、草生栽培で異常気象に強い畑