日本の年平均気温は過去100年で約1.30℃上昇しており、夏の猛暑日や真夏日の増加、短時間強雨の頻度増加が観測されています。
この「じわじわ上がる平均」と「ドカンと来る極端気象」が組み合わさることで、作物が本来想定していた気候パターンから外れ、開花・結実や肥大のタイミングが狂いやすくなります。
地球温暖化で空気中に含める水蒸気量が増えるため、大雨と干ばつの「振れ幅」が大きくなりやすいと指摘されています。
参考)地球温暖化は私たちの暮らしにどう関わっているの? その原因や…
結果として、同じ圃場でも「ある年は長雨で根が傷む」「別の年は干ばつでしおれる」といった、対策の難しい気象リスクが増えています。
水稲では、北海道・東北の一部では適度な昇温で収量増加が期待される一方、関東以西では高温登熟による白未熟粒の増加や千粒重の低下で収量・品質ともに悪化する可能性が指摘されています。
極端な高温年には、収量が今世紀半ばに頭打ちとなり、対策を取らない前提では世紀末には現在の約80%程度に落ち込むシミュレーションも報告されています。
果樹では、リンゴやウンシュウミカンなどで着色不良や糖度低下が報告され、従来の栽培適地が北上・高地化していくと見込まれています。
露地野菜でも高温により結球不良や品質低下、集中豪雨による根傷みや病害多発が増えており、トマト・レタス・ブロッコリーなど多くの品目で影響が確認されています。
参考)農業でも地球温暖化対策が必要?脱炭素化への取り組み、対策を解…
温暖化は基本的に農業にリスクをもたらしますが、寒冷地では生育期間が長くなることで作付体系の多様化や収量増加の余地があるとされています。
また、大気中の二酸化炭素濃度は産業革命前に比べて約1.5倍になっており、このCO2肥料効果により光合成が促進され、適切な条件下では作物の生育にプラスに働く面もあると議論されています。
ただし、このプラス効果は高温障害や水ストレス、病害虫被害が抑えられていることが前提であり、現場では「高温で品質が落ちる」「病害虫が増える」といったマイナスの方が実感として先に現れるケースが多いとされています。
参考)https://japr.or.jp/wp-content/uploads/shokucho-shi/55/shokucho_55-09_04.pdf
そのため、「温暖化=悪」か「温暖化=有利」かという二択ではなく、地域ごと・作物ごとにプラスとマイナスを丁寧に見極め、栽培品目や技術を組み替えることが重要になります。
参考)広報誌「NARO」
栽培技術の面では、播種・定植・収穫時期の前倒しや後倒しで「一番暑い時期」を避けること、遮光資材やマルチ、かん水の見直しなどでストレスを緩和する対応が紹介されています。
例えば畑作では、雨量増加に備えて排水性を高める暗渠整備や畝立てを行うことで、豪雨時の根腐れや土壌流亡を抑える効果が期待されています。
さらに、病害虫の世代回数増加に備え、発生予測情報や短期予報を活用して防除タイミングを最適化することも重要です。
品種選定では、高温耐性・病害耐性の高い品種や、将来の気候を見越した早生・晩生の組み合わせなど、「適地適作」の考え方をアップデートすることが求められています。
気候変動への適応策と温室効果ガス削減を組み合わせれば、単なる被害軽減にとどまらず、「環境配慮型のブランド価値」や「カーボンクレジット収入」の可能性も開けると指摘されています。
例えば、水田での中干しの工夫や水管理改善、堆肥の適正施用などでメタン・一酸化二窒素の排出を減らしつつ、吸収量の増加分をクレジット化する取り組みが国内外で検討されています。
また、ソーラーシェアリングのように、圃場上部で太陽光発電を行いながら日射をコントロールする技術は、「高温対策」「安定収入源」「地域の再エネ供給」の三つを同時に満たす可能性があります。
こうした取り組みを進めるには、単独の農家だけでなく、集落営農やJA・自治体、バイヤーなどと連携して、地域単位での適応・緩和戦略を描くことが鍵になります。
参考)https://www.env.go.jp/policy/kenkyu/suishin/kadai/syuryo_report/h26/pdf/S-8-1(6).pdf
地球温暖化が農林水産業に与える影響と、日本で検討されている適応策・技術を体系的に整理した公的レポートです(全体像の理解に役立ちます)。
農林水産省農林水産技術会議事務局「地球温暖化が農林水産業に与える影響と対策」
日本の農業分野における気候変動の影響と適応策、作物別の最新知見がまとまっている解説ページです(具体的な影響事例と対策メニューの確認に有用です)。
国立環境研究所 気候変動適応情報プラットフォーム「温暖化で作物の収量は減る?増える?」
出穂・開花期は、イネが一生のうちで最も多くの水を必要とする時期であり、この期間の水切れは障害不稔や登熟不良の大きな原因になるため、圃場を常時湿らせておく水管理が前提となる。
中干し終了後から出穂前後にかけては湛水を基本とし、特に出穂前後各1週間は深水管理とすることで、根圏の水分と温度を安定させ、穂ばらみから開花までのストレスを抑えられる。
具体的な水深の目安として、出穂後10日間は5~6cm程度の浅めの湛水とし、低温時は10cm前後の深水で保温、高温時はやや浅水+頻繁な通水によって稲体と地温を冷やし、白未熟粒や胴割粒を防ぐことが推奨されている。
出穂期から登熟最盛期までの約20日間は、圃場の水を切らさず、2~3cm程度の湛水状態を保つことで籾の肥大とデンプン蓄積が安定し、玄米の充実度が高まる。
参考)稲作の水管理とは?生育時期ごとの方法と台風対策まで解説 - …
この時期に足跡がくっきり残るほど乾かないよう、田面の足型に水が残る程度を一つの目安にし、土壌の乾き具合と天候を見ながら間断かん水の入水タイミングをこまめに調整することが現場での実践ポイントとなる。
参考)http://www.ja-echizentakefu.or.jp/agri/pdf/agri_information201207.pdf
一見すると「常時湛水」が安全に思えるが、過度な深水を長期間続けると根の呼吸が阻害されて酸素不足になりやすく、倒伏リスクが高まるため、深水は「低温対策」や「フェーン対策」に限定して短期間集中的に行う意識が重要である。
参考)稲作における水管理|稲編|農作業便利帖|みんなの農業広場
寒冷地では、幼穂形成期から穂ばらみ期にかけて低温が予想される場合、幼穂が水面下になるよう深水とする「保温深水」が障害不稔の軽減に有効とされており、出穂期までの前段階から一連の水管理として意識する必要がある。
参考)https://www.ja-f-mirai.or.jp/agriculture/pdf/prevention_date202407_01.pdf
暖地や高温年では逆に圃場が乾きやすく、強い日射で地温が上がりやすいため、湛水深をやや浅めに保ちつつ、間断かん水の頻度を増やして「水を動かす」ことで、根への酸素供給を確保しながら冷却効果も得ることができる。
参考)イネ出穂後の管理について~出穂後の水管理と病害虫について~|…
特にフェーンが発生しやすい地域では、出穂期から登熟期にかけてフェーン予報が出た段階で事前に水を十分ためておき、熱風の影響を受ける時間帯に深水・多頻度通水で稲体を冷やすことが褐変籾の多発を抑えるうえで現実的な対策になる。
参考)http://www.ja-echizentakefu.or.jp/agri/pdf/agri_information201407.pdf
出穂期以降の水管理は、収量や品質だけでなく、倒伏や病害虫の発生とも密接に関係しているため、「水深」「水を入れるタイミング」「水を切るタイミング」の3つをセットで考えることが重要になる。
参考)https://www.zennoh.or.jp/ty/einou/high_quality_rice/pdf/production_001_05.pdf
一筆ごとに土質や排水性、これまでの施肥量が異なるため、同じ地域・同じ品種であっても、教科書どおりの水深や期間ではなく、自分の圃場の特性に合わせて細かく調整することで、同じ水管理期間でも結果に大きな差が出てくる。
参考)水稲の分げつ期~出穂期の管理~水管理と追肥~|技術と方法|ア…
出穂期の水管理は、単なる「水を張る・抜く」の作業ではなく、気象と土壌と稲体の状態を読み取りながら、日々の微調整で収量と品質の両立を図る「微気象のコントロール」として捉えると、管理の精度が一段上がる。
この部分は、出穂期前後の水深目安と湛水・深水・間断かん水の考え方を整理するうえで参考になる資料です。
出穂・開花期に低温(日平均気温20度以下)が続くと障害不稔が増加しやすく、穂の内部で花粉がうまく形成されず、見た目はそろっていても中身のない籾が増えてしまうため、この時期の低温対策として深水管理による保温が極めて重要になる。
幼穂形成期の低温は耐冷性を下げる影響があり、減数分裂期(出穂約12日前)の低温は直接障害不稔を引き起こすとされていることから、この前後では水深を15~20cm程度まで上げて幼穂の位置より水面を高く維持するのが基本とされている。
一方、出穂後の高温(日平均27度以上)が続くと白未熟粒や胴割粒が増えやすくなり、見かけの収量は確保できても一等米比率が下がるため、高温期には間断かん水の間隔を狭めて毎日でも通水し、地温と穂温を少しでも下げる工夫が求められる。
高温対策として有効なのは、深水で水温を下げるというよりも、新しい水を頻繁に入れて動かすことで、温まった水を入れ替えつつ、稲体の蒸散を助ける点にあるため、「水深よりも水の動き」を意識した水管理が効果的である。
フェーンが予想される場合、フェーンの吹き出し前にやや深水気味にしておき、熱風が当たる時間帯には水を切らさないようにすることで、稲体内部の温度上昇を和らげ、籾の褐変や登熟障害の発生を抑えることができる。
参考)稲作生産情報 第6号 - 農なび青森 農業従事者向け
特に出穂期から登熟初期にかけてのフェーンは、穂の表面が急激に乾燥し、花粉や受精にダメージを与えるため、フェーンが終わったあとも間断かん水の頻度を高く保ち、稲体へのダメージを回復させる意識が重要になる。
高温・低温双方のリスクを同時に考えると、「冷害年には深水で守り、猛暑年には水を動かして冷やす」という二つのモードを、予報と現地の体感をもとに早めに切り替えていく柔軟性が出穂期 水管理には求められる。
日平均気温だけでなく、夜間の気温や風向きも確認し、高温の熱帯夜が続く場合には、夕方から夜にかけて通水することで、夜間に穂と地表を冷やす「ナイトクーリング」のような効果も期待できる。
逆に、昼間の気温は低いが夜間に放射冷却で冷え込む場合には、夕方のうちにやや深水にしておき、夜間の急な冷え込みから幼穂や穂を守るといった、1日の中での水深調整も有効なテクニックとなる。
この部分は、出穂期前後の低温・高温・フェーンと水管理の関係を整理する際に役立つ講習会資料です。
出穂後の落水時期は、収量と品質を左右する重要なポイントであり、湿田では出穂後20~25日、乾田では出穂後30~35日を目安にし、早期落水を避けることが推奨されている。
落水が早すぎると、登熟途中で水分供給が不足し、籾の充実が不十分な屑米が増えるだけでなく、急激な土壌乾燥によって胴割米が発生しやすくなり、見た目はしっかりしていても精米時の割れやすさが問題になる。
逆に落水を遅らせすぎると、倒伏リスクの上昇や収穫作業の遅れ、湿害による根の劣化を招き、結果として収量・品質ともにマイナスとなるため、「早すぎず遅すぎない落水」の見極めが欠かせない。
出穂後20日間は登熟最盛期であり、この間に水を切らさず2~3cm程度の湛水を維持することで、玄米の大きさと充実度が決まり、その後の10~15日間でデンプンの蓄積が完了していくとされている。
この期間に間断かん水を2~3日おきに行い、猛暑日や熱帯夜が続く場合には毎日でも通水することで、白未熟粒や胴割粒の発生を抑えつつ、稲体の活力を保ったまま登熟を進めることができる。
収穫5~7日前には落水して土壌表面をある程度乾かし、コンバインの作業性を確保するとともに、根の切れや倒伏を誘発しない程度の「ほどよい乾き」を目指すことが、現場実務に直結した水管理のゴールとなる。
参考)水稲の中間管理
出穂期 水管理と品質の関係をもう一歩踏み込んで見ると、水の切り方や落水のタイミングによって、同じ品種・同じ施肥条件でも、一等米比率や食味値に明確な差が出ることが各地の試験研究で報告されている。
特に高温年には、登熟期間の後半まで軽い湛水または飽水管理を続けることで、白未熟粒の増加を抑えられることが示されており、「予定どおりの日にちで一律に落水する」のではなく、その年の気温推移を見ながら落水を遅らせる判断も必要になる。
一方、冷涼な年や過湿気味の圃場では、出穂後30日を待たずに浅水→飽水→軽い落水へと段階的に切り替え、根の健全性を保つことで、収穫前の倒伏や排水不良による黄化を防げるなど、「年と圃場ごとの調整」が品質安定の鍵となる。
この部分は、出穂後の水管理と落水タイミングが品質に与える影響を解説した実務的な情報源です。
出穂期から成熟期までの水管理は、病害虫の発生動向とも密接に関係しており、常時深水で風通しが悪い状態が続くと、紋枯病やいもち病など湿り気を好む病害が広がりやすくなるため、圃場の水面と葉層の間にできるだけ隙間をつくる意識が重要になる。
逆に極端な水切れや急激な落水は、株元周辺の湿度が乱高下し、ストレスを受けた株に二次的な病害が入りやすくなることから、病害対策としても「急な深水・急な落水」を避ける緩やかな水管理が望ましい。
また、出穂期 水管理を誤って過湿状態を長引かせると、根が浅く軟弱になり、収穫前の台風や強風で倒伏しやすくなるため、登熟後半では適度な間断かん水と落水によって根を鍛え、土と根の「くっ付き具合」を高めておくことも重要である。
病害虫の面では、出穂後はカメムシ類の加害による斑点米のリスクが高まるため、水管理だけでなく、畦畔の草刈りや圃場周辺の環境整備も合わせて行う必要があり、水深を調整しつつ薬剤散布や見回りの作業性を確保することも実務上のポイントとなる。
イネの根は、出穂期以降に水を切らさずに管理すると、登熟前半までは活力を維持しやすいが、過度な湛水と酸欠状態が続くと根が黒変して機能を失いやすく、結果として後半の登熟力が落ちてしまうため、根の色や匂いに注意を払うことが大切である。
現場では、畦畔から田面を見たときに、稲株がしっかり立ち、株元にほどよい空気感があるかどうかを観察し、「ぬかるみすぎ」「乾きすぎ」の両極端を避ける目視・足裏感覚が、病害虫と倒伏の双方を抑える実践的な指標となる。
出穂期 水管理と病害虫の関係については、地域の普及センターや県の農業技術サイトが発行する「出穂期の防除情報」や「現地栽培指導会資料」に、気象条件とあわせた具体的な注意点がまとめられていることが多い。
こうした資料では、水管理と薬剤散布のタイミングを連動させることや、圃場ごとの病害履歴に応じた重点管理の考え方が紹介されており、自分の田んぼの症状と照らし合わせながら水深や落水タイミングを調整するヒントが得られる。
結果として、出穂期の水管理は「水だけ」の話ではなく、病害虫管理・倒伏対策・作業計画を一体で考えるべき総合管理であり、これらをセットで設計することで、限られた労力の中でもリスクを分散させた栽培が実現できる。
この部分は、出穂後の水管理と病害虫防除・栽培管理を組み合わせて解説した技術情報です。
近年は、出穂期 水管理にも水位センサーや自動給水装置、土壌水分センサーなどのICT技術が導入され始めており、気象と連動させた自動入水・自動落水によって、夜間や不在時でも一定の水深を維持できる環境が整いつつある。
こうしたシステムでは、出穂期には「水深5cm」「最低水深2cmを切ったら自動入水」などの条件を設定し、高温が続く期間だけ間断かん水の頻度を高めるプログラムを組むことで、手作業では難しいきめ細かな水管理を実現できる。
センサーのデータを蓄積していくと、「出穂後何日目にどの程度の水深を維持していた年が一等米比率が高かったか」といった、自分の圃場に特有の勝ちパターンを数値として把握できるようになり、経験とデータを組み合わせた精密な水管理が可能となる。
また、ドローンや衛星画像を活用して水稲の生育状況(葉色・群落のムラ)を可視化し、出穂期に生育の遅れた部分や過繁茂の部分を把握することで、圃場内のゾーンごとに水管理の強弱をつける「ゾーン管理」の考え方も実践事例が増えつつある。
たとえば、圃場の低い場所で過湿になりやすいゾーンでは、出穂後の深水期間を短めにし、早めに間断かん水へ移行する一方で、乾きやすい高い場所では、水深をやや深めに設定して水切れを防ぎ、圃場内の生育差を水管理で補正するような運用が考えられる。
スマートフォンから水位や給水状況を随時確認できる仕組みを導入すれば、高温年に「今日の夜だけ深水」「明日は早めに落水」といった細かな指示を遠隔で出せるため、兼業農家や広域分散した圃場を持つ農家にとっても、労力を増やさずに水管理の精度を高める手段となる。
一見すると大掛かりな設備投資に思えるが、水管理の自動化は、出穂・登熟期の見回り回数を減らしつつ、水切れや過湿のリスクを下げる「保険」としての意味合いも大きく、特に近年の異常高温や集中豪雨が増える環境下では、リスク管理の一手段として検討する価値が高い。
小規模な導入としては、まず水位センサーだけを設置し、スマートフォンで「今、どの圃場が水切れに近いか」を把握できるようにするだけでも、出穂期の緊張する時期の見回り効率が上がり、水の優先順位をつけやすくなるというメリットがある。
こうしたICTやセンサーのデータに、自分の経験や感覚を重ね合わせていくことで、「いつ・どれだけ水を動かすか」という判断の裏付けが強まり、出穂期 水管理の再現性を高めた営農計画が立てられるようになるのではないだろうか。
この部分は、水田の水管理におけるスマート農業技術やセンサー活用の事例を紹介している情報源です。
Agri Switch「稲作の水管理とは?生育時期ごとの方法と台風対策まで解説」