定植とは?活着を促す手順と老化苗の対策やドブ漬けの裏技

定植の成功率を劇的に高めるためのプロの技術を知りたくありませんか?苗の選び方から活着を促す水やり、老化苗のリカバリー法まで、農業現場で役立つ定植の全知識を網羅しました。

定植とは

定植とは

定植の成功プロセス概要
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定植の定義と適期

育苗した苗を最終的な栽培場所へ植え替える作業。天候と苗の状態を見極める眼力が必要。

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活着促進の裏技

「ドブ漬け」や「根洗い」など、プロが実践する根の伸長を爆発的に促すテクニック。

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失敗回避のポイント

老化苗の扱いと浅植えの徹底。初期生育のつまずきを防ぐ具体的な対策法。

定植とは?移植との違いや適期と順化


定植(ていしょく)とは、農業や園芸において、ポットやセルトレイ育苗した苗を、最終的に収穫する圃場(畑やハウス)に植え替える作業のことを指します。単に場所を移す「移植」とは異なり、植物にとって「終の棲家」を決める重要なイベントです。この工程での成否が、その後の生育スピード、病害虫への抵抗力、そして最終的な収量に直結するため、農業現場では播種(種まき)以上に神経を使う作業と言われています。


定植の最大の目的は、管理のしやすい小さなスペースで幼苗期を集中的に保護・育成し、厳しい環境である本圃場でも耐えうる強い個体に仕上げてから送り出すことにあります。直まき栽培と比較すると、育苗期間中に圃場を別の作付けに利用できるため、土地の利用効率(回転率)が上がるという経営的なメリットもあります。


しかし、温室育ちの苗をいきなり過酷な露地環境に出すと、環境変化のショックで生育が停滞したり、最悪の場合は枯死してしまいます。そこで重要になるのが「順化(じゅんか)」というプロセスです。


  • 温度順化: 定植の数日前から育苗ハウスのサイドを開け、外気温(特に夜間の低温)に慣れさせます。
  • 光順化: 遮光資材を徐々に外し、直射日光の強さに葉を適応させます。
  • 水分順化: 灌水を控えめにし、植物体内の水分含有率を下げて細胞液の濃度を高めることで、耐寒性や耐乾性を向上させます。

定植の「適期」を見極めることもプロの技術です。一般的には「若苗(わかなえ)」での定植が推奨されます。例えばトマトやナスなどの果菜類では、第一花房の蕾が見え始めた頃がベストタイミングとされますが、作型や品種によって微調整が必要です。早すぎれば寒さや風で傷み、遅すぎれば「老化苗」となり根の活力が失われます。


定植作業を行う時間帯や天候も重要です。


  • 曇天または無風の夕方: 蒸散が抑えられ、夜間の間に根が水分を吸収できるため、活着がスムーズになります。
  • 晴天の午前中: 強い日差しと風で葉から水分が奪われ、萎れの原因になります。夏場の定植では特に避けるべきです。

サカタのタネによる定植の基本的な定義と使用例の解説です。


「定植(ていしょく)」とは - サカタのタネ
参考)「定植(ていしょく)」とは|タネ(種)・苗・園芸用品は【サカ…

定植の概念とプロセス、成長段階に応じた作業の重要性についての解説です。


定植とは-健康な植物成長のスタート
参考)定植とは-健康な植物成長のスタート

定植の基本手順と根鉢を崩さないコツ

定植作業において最も注意すべきは、植物の命綱である「根」を傷つけないことです。ポットの中で形成された根と土の塊である「根鉢(ねばち)」を崩さずに植え付けることが、定植成功の鉄則です。根鉢が崩れると、細根(さいこん)と呼ばれる水分や養分を吸収する重要な毛細根が断裂し、定植後の吸水能力が著しく低下します。これを防ぐための具体的な手順を解説します。


1. 定植前の十分な灌水(重要)
定植を行う数時間前に、ポット苗に対してたっぷりと水をやります。これは、苗に水分を蓄えさせるだけでなく、根鉢の土を湿らせて凝集力を高め、ポットから抜く際に土が崩れるのを防ぐためです。乾燥した状態で抜くと、土がボロボロと崩れ落ち、根がむき出しになってしまいます。


2. 植え穴の準備
圃場にマルチを張り、栽植密度に合わせて植え穴(植え穴)を掘ります。穴の深さと大きさは、ポットのサイズと全く同じか、わずかに浅いくらいが理想です。穴が深すぎると通気性が悪くなり、浅すぎると乾燥しやすくなります。また、植え穴の中にも事前に水を注ぎ、土壌水分を高めておく「予備灌水」を行うと、定植後の活着が非常に良くなります。


3. ポットからの引き抜き
ここが最重要ポイントです。決して茎(地際部)を引っ張ってはいけません。茎を引っ張ると、根と茎の接合部に力がかかり、維管束が損傷する恐れがあります。


  • 人差し指と中指で苗の株元(地際)を挟むように持ちます。
  • ポットを逆さまにします。
  • ポットの底穴を軽く押すか、側面を優しく揉んで、根鉢を滑り出させます。
  • 重力を利用して、手の上に根鉢を乗せるイメージです。

4. 植え付け(鎮圧)
根鉢を植え穴に入れたら、周囲の土を寄せて隙間を埋めます。この時、根鉢の上面が畝の表面と同じ高さ、あるいはわずかに高くなるように調整します。土を入れた後は、株元の周りを手で軽く押さえて「鎮圧」します。


鎮圧の目的は、根鉢と圃場の土を密着させ、毛管現象による地下からの水分上昇を確保することです。ただし、強く押しすぎると土中の空気が抜けて根酸欠(酸素不足)になるため、「強すぎず弱すぎず」の加減が職人技となります。


農材ドットコムによる定植の概要と、苗床から本圃場へ移す際の手順詳細です。



参考)
定植(ていしょく)
​ 定植(ていしょく) | 農業資材の紹介サイト - 農材ドットコム
Weiblio辞書による定植の定義と、本植としての位置づけについての解説です。


「定植」の意味や使い方 わかりやすく解説 Weblio辞書
参考)「定植」の意味や使い方 わかりやすく解説 Weblio辞書

定植後の活着を左右する水やりと管理の重要性

定植作業が終わったら、直ちに「水やり(灌水)」を行います。これを農業用語で「活着水(かっちゃくすい)」と呼びます。この最初の水やりには、単に水分を補給するだけでなく、物理的な重要な役割があります。それは「土と根の接着剤」としての役割です。


定植直後の土壌内部には、根鉢と畑の土の間に目に見えない空洞(エアポケット)が無数に存在しています。根は空気中では水分を吸収できず、すぐに乾燥して死滅してしまいます。たっぷりと水を与えることで、水と一緒に細かい土の粒子が隙間に流れ込み、エアポケットを埋めてくれます。これにより、根が圃場の土壌と物理的に接続され、毛細管現象によって地下水分を吸い上げられるようになります。これを「水極め(みずぎめ)」や「ドロ締め」と呼ぶ地域もあります。


活着水のポイント:

  • 量はたっぷりと: 1株あたり500ml〜1リットル以上が目安です。「根まで届くように」ではなく、「畝の下から水が染み出るくらい」与えます。
  • ジョウロのハス口を使う: ホースから直接強い水流を当てると、せっかく埋めた土がえぐれて根が露出してしまいます。優しいシャワー状の水流で、土を落ち着かせます。

定植後の管理と「活着」のサイン
定植から数日〜1週間程度は、根がまだ機能していないため、最も枯れやすい時期です。日中の強い日差しで萎れが見られる場合は、寒冷紗(かんれいしゃ)などで一時的に遮光したり、風除け(キャップやあんどん)を設置して蒸散を抑えます。


苗の中心部(成長点)から新しい葉が展開し始め、葉の色が濃くなり、朝方に葉先から水滴(溢液現象)が出ているようなら、無事に「活着」したサインです。活着が確認できたら、次は根を深く張らせるために、あえて水やりを控えて土壌表面を乾かし気味に管理します。これにより、根は水を求めて地中深くまで伸長していきます。


農業屋による「活着」の詳細解説と、定植後の不良原因についての記事です。


活着とは?定植作業後におきる不良の原因と対策を考える - 農業屋
参考)活着とは?定植作業後におきる不良の原因と対策を考える - 農…

自然農法における定植時の水やり技術と活着のコツについての動画解説です。


【自然農】強い日差しから苗を守る 定植の「裏技」

【独自視点】定植時の「根洗い」とドブ漬けの裏技

教科書通りの定植ではうまくいかない場合や、さらに収量を伸ばしたいプロ農家が実践している「裏技」があります。ここでは、一般的にはタブーとされることもある意外なテクニックと、科学的根拠に基づいたブースト方法を紹介します。


1. 活着促進の切り札「ドブ漬け」灌注
通常、定植時の水やりは植え付け後に行いますが、「ドブ漬け」は植え付けるのポット苗を、薬液の入ったバケツに丸ごと沈める方法です。


  • 方法: バケツに水を用意し、規定倍率に希釈した「発根促進剤(コリン、フルボ酸など)」や「液体肥料」、あるいは「殺虫殺菌剤」を混ぜます。そこにポット苗を気泡が出なくなるまで完全に浸漬させます。
  • メリット: 根鉢の内部まで均一に水分と薬剤が行き渡ります。定植直後の根はダメージを受けて吸水力が落ちていますが、ドブ漬けすることで根の周囲に高濃度の有用成分を保持させたまま植え付けることができ、初期生育のロケットスタートが可能になります。特にアブラムシ対策の殺虫剤(粒剤)などは、土に混ぜるよりドブ漬けで吸わせる方が効果が高い場合があります。

2. 常識破りの「根洗い」定植
通常は「根鉢を崩さない」のが鉄則ですが、特定の条件下ではあえて根鉢の土を全て水で洗い流し、根を裸にしてから植える「根洗い定植」という手法があります。


  • 対象: トマトやイチゴなど、不定根が出やすい作物。または、ポット内で根が回りすぎて「根詰まり」を起こしている苗。
  • メカニズム: ポット内の古い土や老化した根を取り除くことで、植物に強い刺激(ストレス)を与えます。すると植物は危機を感じて、新しい白い根(新根)を爆発的に出そうとします。また、ポット土と圃場土の土質の違いによる「水分移動の断絶(キャピラリーバリア)」を解消し、最初から圃場の土に馴染ませることができます。
  • 注意点: リスクが高い方法です。根洗い後は極端に乾燥に弱くなるため、定植直後は曇天の日を選び、絶対に乾燥させない徹底的な水分管理が必要です。成功すれば、通常栽培よりも圧倒的に太い茎と強い樹勢が得られます。

3. 老化苗に対する「根切り」
育苗期間が長引いてポットの中で根が茶色く変色し、ぐるぐると回ってしまった「老化苗」。これをそのまま植えても、新しい根が出てこず、いつまでも活着しません。


この場合、あえて根鉢の下3分の1程度をハサミで切り落としたり、手で底面を十字に引き裂いてから定植します。傷ついた組織から植物ホルモン(オーキシンなど)が分泌され、発根が誘導されます。


糸島新聞社による失敗しない定植のコツとして、ドブ漬けや水やりの技術を紹介しています。


失敗しない苗の定植 - 糸島新聞社
参考)失敗しない苗の定植

YouTube動画での根張りと活着を良くするための定植前灌注(ドブ漬け)解説です。


【そんなに凄いの!?】根張りと活着を良くする定植前灌注。資材 ...

定植で失敗する老化苗と浅植えの重要性

定植作業での失敗は、その後のリカバリーに多大な労力を要します。特に初心者が陥りやすい二大失敗要因が「老化苗の定植」と「植え付け深さのミス」です。これらを理解し、適切に対策することで、失敗の確率は大幅に下がります。


1. 老化苗(ろうかなえ)の弊害と見分け方
苗半作(なえはんさく)」という言葉がある通り、苗の出来が収穫の半分を決めます。しかし、忙しさや天候不順で定植の適期を逃すと、苗は「老化」します。


  • 症状: 葉の色が薄くなり(肥料切れ)、下葉が黄色く枯れ落ちる。茎が硬く木質化する。ポットの底穴から根が茶色く飛び出している。
  • なぜダメなのか: 老化苗はすでに「栄養成長(体を大きくする時期)」から「生殖成長(子孫を残す時期)」へスイッチが切り替わっていることが多いです。これを定植しても、体を大きくする前に花や実をつけようとしてしまい、株が小さいうちに成長が止まってしまいます(芯止まり)。
  • 対策: 購入苗の場合は、葉の緑が濃く、節間が詰まった若々しい苗を選びます。もし自家育苗で老化させてしまった場合は、前述の「根切り」を行ったり、液体肥料を葉面散布して樹勢を回復させてから定植します。

2. 浅植え vs 深植え:作物の生理に合わせる
「とりあえず深く植えておけば倒れない」と考えるのは危険です。作物の種類によって、適切な深さは厳密に決まっています。


  • 浅植えが推奨されるケース(多くの野菜):
    • ナス、ピーマン、キュウリなどの果菜類や、ハクサイなどの葉菜類。
    • 理由: 根は呼吸しています。地表近くは酸素が豊富で地温も高いため、浅く植えることで初期の発根が良くなります。深植えしすぎると、茎の部分が常に湿った土に埋まることになり、「苗立枯病(なえたちがれびょう)」などの土壌病害に感染しやすくなります。特に接木苗(つぎきなえ)の場合、接合部を土に埋めてしまうと、台木の意味がなくなり穂木から根が出てしまうため、必ず接合部は地上に出します。
    • Web情報: 浅植え定植によって収量が増加し、病気が減るという検証結果も報告されています。
  • 深植えが許容される・推奨されるケース:
    • トマト、ネギ、キャベツ(徒長した場合)。
    • トマトは茎から不定根が出やすいため、徒長した苗を斜めに寝かせて植えたり、深植えして茎から発根させて根量を増やすテクニックがあります。ネギは白い部分を長くするために溝に深く植えます。

    3. 風と寒さへの対策
    定植直後の苗は、まだ根が張っていないため、強風で振り回されると株元に隙間ができ、根が切れたり乾燥したりします。これを防ぐために、定植と同時に「仮支柱」を立てて茎を固定することが重要です。特に風の強い春先の定植では、肥料袋を行灯(あんどん)のように囲って風除けにする工夫も有効です。


    サカタのタネによる、苗が育たない原因としての老化や対策についての詳しい解説です。


    【第18回】苗が育たない悩みと老化について - サカタのタネ 園芸通信
    参考)【第18回】苗が育たない悩みと老化について|初心者さんもやっ…

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