台木接ぎ木の方法と選び方から相性

台木と穂木を組み合わせる接ぎ木は、病害虫に強く収量の高い苗を作る農業技術として重要です。しかし、失敗しないためには台木の特性や時期、相性を理解する必要があります。あなたは台木選びで失敗していませんか?

台木接ぎ木とは

台木接ぎ木とは

この記事でわかること
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台木接ぎ木の基礎

台木と穂木の役割、接ぎ木のメリット・デメリットを理解できます

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接ぎ木の方法と時期

切り接ぎや芽接ぎなど種類別の方法と最適なタイミングがわかります

成功のポイント

台木の選び方、相性の見極め方、失敗原因の回避方法を学べます

台木と穂木の基本的な役割


接ぎ木とは、土台となる植物(台木)に目的の品種(穂木)をつなぎ合わせる技術です。台木は根を持ち、穂木に栄養と水分を供給する役割を担います。この組み合わせにより、台木の持つ強健な性質と穂木の優れた品質の両方を活かすことができます。


参考)台木(だいぎ)

台木には生育が旺盛で丈夫な植物を選ぶのが基本です。例えばブドウ栽培では、フィロキセラという害虫に強い台木を使用することで、ヨーロッパ系品種の栽培が可能になりました。一方、穂木は収穫したい果実の品種や、咲かせたい花の種類を選びます。


参考)園芸知識:接ぎ木

接ぎ木が成功するかどうかは、台木と穂木の形成層をいかに密着させるかにかかっています。形成層とは樹皮と木質部の間にある薄い細胞層で、この部分が接合することで台木と穂木が一体化します。


参考)【写真で解説】農家が教える接ぎ木の方法 簡単なやり方はこれだ…

台木接ぎ木のメリットと抵抗性

接ぎ木の最大のメリットは、病害虫への抵抗性を高められることです。例えば、青枯病に強い抵抗性台木「台ちから」を使ったかぐらなんばんの接ぎ木栽培では、発病株率が大幅に減少することが確認されています。


参考)かぐらなんばん接ぎ木技術 - 新潟県ホームページ

トマトやナスでは、青枯病、疫病、根腐萎凋病などの土壌病害に対して抵抗性を持つ台木を利用した接ぎ木栽培が一般的です。抵抗性台木を用いた接ぎ木トマトは、発病株から土壌への病原細菌の移動を減少させる効果もあります。


参考)【作物別】台木におすすめの種類と選び方、その役割をご紹介

連作障害の回避も重要なメリットです。同じ場所で同じ作物を続けて栽培すると起こる連作障害を、台木の力で軽減できます。また、台木の生育特性により、収穫量が増加したり、低温伸長性が向上したりする効果も期待できます。


参考)接ぎ木苗の落とし穴!? 台木選びで失敗しないための完全ガイド…

台木接ぎ木の注意点とデメリット

接ぎ木には注意すべき点もあります。まず、台木と穂木の相性(接ぎ木親和性)が重要です。相性が悪いと、接合部の組織が癒合しにくく、生育不良や枯死の原因になります。例えば、クリの「岡山3号」はシバグリ台木ではほとんど伸びないことが知られています。


参考)接ぎ木親和性(つぎきしんわせい)

接ぎ木苗は一般的な苗に比べて価格が高い傾向があります。また、すべての病気に強いわけではなく、台木によって耐性を持つ病気の種類が異なります。定植時には、穂木が土に近くなりすぎないよう注意が必要です。穂木から根が張ると、病害が直接入り込んでしまい、台木の効果が失われてしまいます。


参考)接ぎ木苗の選び方|作り方やメリット・デメリットも紹介

矮性台木を使用する場合、枯れやすく老化しやすいというデメリットがあります。根が水分を吸収する能力が小さくなるため、栽培管理には特別な配慮が求められます。


参考)【接ぎ木】なぜ矮性台木はダメなのか?デメリットを話す. | …

台木接ぎ木の主な方法と種類

接ぎ木には用途や作物に応じて様々な方法があります。最も基本的なのが「切り接ぎ」で、台木の上部を切って切り込みを入れ、穂木を差し込んで固定します。この方法は果樹栽培で広く使われています。


参考)一木先生のリンゴ講座 第19回「リンゴの接ぎ木と台木」 - …

「芽接ぎ」は台木の樹皮を剥ぎ、穂木の芽を含む部分を密着させる方法です。春だけでなく、工夫次第で時期を広げることも可能です。「割り接ぎ」は台木の中心に切り込みを入れて穂木を挿入する方法で、トマトやキュウリ、スイカで用いられます。


参考)1本の樹でカンキツ100品種! 多品種接ぎ木で、楽しみすぎ果…

「呼び接ぎ」は、穂木と台木の根がついた状態で断面同士を密着させる方法です。どちらにも根がついているため失敗する可能性が低く、初心者に適しています。「挿し接ぎ」はナスで一般的に使われ、台木に穂木を直接挿し込む方法です。


参考)https://www.takii.co.jp/tsk/y_garden/spring/point03/index.html

形成層を多く露出させる「変形切り接ぎ」という方法もあり、穂木と台木の太さに差があっても形成層を合わせやすいという利点があります。

台木接ぎ木における病害虫抵抗性の実例

病害虫抵抗性の実例として、ピーマンの台木用品種「台パワー」があります。この台木は疫病および青枯病に強い抵抗性を持ち、激発圃場での試験では発病株率を7%に抑えることができました(慣行台木では51%)。


参考)http://jppa.or.jp/archive/pdf/67_10_42.pdf

ナスでは台木の種類によって低温伸長性や収量が異なるため、作型やほ場での発生病害に応じて品種を選ぶ必要があります。メロンではつる割病菌に対する抵抗性を持つ台木品種が育成されており、レース1、2yに対応したものが利用できます。


参考)302 Found

ブドウではテレキ5BBやテレキ8Bという台木が圧倒的人気を誇り、耐病性や早熟性などの特性が評価されています。リンゴでは矮化栽培のために中間台を用いた接ぎ木も行われており、台木・中間台・穂木の三層構造にすることで樹高をコントロールします。


参考)果樹栽培において台木選択はとても重要

カンキツ類では、深根性のユズの根を根接ぎして樹勢を強める方法が用いられます。このように、作物や目的に応じて適切な台木を選択することが、病害虫対策の成功につながります。

新潟県農業総合研究所のかぐらなんばん接ぎ木技術の研究成果
青枯病抵抗性台木の効果と失敗しない接ぎ木苗の作り方について詳しく解説されています。


農研機構の青枯病抵抗性台木に関する研究
抵抗性台木が病原細菌の土壌への移動を減少させるメカニズムが説明されています。


台木接ぎ木の時期とタイミングの選び方

接ぎ木の時期は植物の種類や地域の気候によって異なりますが、一般的には春と秋が最適です。春は樹液の流動が始まる3月下旬から4月にかけてが絶好のタイミングで、この時期は樹液が活発に流れ、接合部の癒合が促進されます。


マンゴーの接ぎ木では3月が最も活着率が高く、次いで9月です。逆に6月と12月は活着率が低いため避けるべきです。温度範囲としては15~30℃が適しており、気温が低すぎるとカルスの成長がうまく進みません。


参考)接木方法 - 宮古島産マンゴーならおまかせください。 マンゴ…

秋の接ぎ木は、来シーズンの成長に備えて行う良いタイミングです。この時期は成熟した台木を選び、夏に成長した接ぎ穂を使用すると高い成功率が期待できます。地域によって気候が異なるため、暖かい地域では冬の終わりから春、寒冷地では春の遅めの時期や初夏が適しています。


参考)最適な接ぎ木タイミングを見極める

クリの接ぎ木適期は4月中旬から下旬(県最北部では4月下旬から5月上旬)とされています。作業は日陰で風が当たらない場所で行い、よく切れる新品の安全カミソリを使うことが推奨されます。


参考)https://www.pref.okayama.jp/uploaded/life/704331_6311834_misc.pdf

台木と穂木の相性を見極める接ぎ木親和性

接ぎ木親和性とは、台木と穂木の相性の良さを指します。親和性が高いと接合部の組織が癒合しやすくなり、活着率が向上します。しかし、同じ二種類の植物の組み合わせでも、台木と穂木を入れ替えることで成功したり失敗したりすることがあります。


参考)接ぎ木 失敗原因

相性の問題は、穂木側の傷口で十分な細胞分裂が起こるかどうかに関係しています。例えば、タバコを穂木として接ぎ木した場合は成功しても、大豆を穂木とした場合には細胞分裂が不十分で失敗することがあります。

トマトでは、深根性で強勢の「TTM-081」台木と相性が良い穂木品種があり、土壌が肥沃な場合や青枯病がよく出る圃場では「グリーンセーブ」を使用するなど、条件に応じた組み合わせが推奨されています。


参考)https://www.takii.co.jp/tsk/bn/pdf/2015_ws_007_012.pdf

カンキツ類では、1本の樹に100品種もの接ぎ木を行う多品種接ぎ木の事例もあり、穂木と台木の太さに大きな差があっても形成層を合わせる技術が開発されています。相性を考慮しながら、適切な接ぎ木方法を選ぶことが成功の鍵です。

タキイ種苗の台木と穂木のベストな組み合わせ提案資料
各作物に適した台木と穂木の相性について具体的な品種名を挙げて解説されています。


台木接ぎ木の失敗原因と成功のコツ

接ぎ木の失敗原因として最も多いのは、形成層の位置がずれることです。接ぎ芽と台木の形成層が一致しないと活着しません。わずか0.3mmのずれでも失敗につながるため、正確な位置合わせが必要です。


参考)講習会の補足 - 関西ばら会

穂木の乾燥も失敗の大きな原因です。切り口が乾燥すると細胞が死滅し、癒合できなくなります。作業は日陰で風が当たらない場所で行い、接ぎ木後は保湿を徹底することが重要です。刃物は常に清潔に保ち、正確なカットを行う必要があります。


参考)初心者もプロ並み接木マスターの秘訣

穂木と台木の削り方や合わせ方も成功を左右します。根元までしっかり押し込むことで形成層の接地面積が大きくなり、成功率が上がります。接ぎ木テープやクリップでしっかりと固定し、接合部が動かないようにすることも大切です。


参考)https://kateide-saien.com/?mode=f24

台木から出る芽(台芽)の管理も重要です。台木の葉や芽をそのままにしておくと、台木が栄養を消費してしまい、穂木の生育が悪くなります。接ぎ木後は定期的に台芽を除去し、穂木に栄養を集中させる管理が必要です。


参考)大失敗した接木の話

失敗原因 対策
形成層のずれ 0.3mm単位での正確な位置合わせ、拡大鏡の使用
穂木の乾燥 日陰での作業、保湿処理の徹底、作業時間の短縮
切り口の不衛生 清潔な刃物の使用、作業前の消毒
相性の問題 実績のある組み合わせの選択、事前の情報収集
不適切な時期 15~30℃の気温範囲、植物の生育サイクルに合わせた実施

台木接ぎ木における特殊な技術と応用例

接ぎ木には基本的な方法以外にも、特殊な技術や工夫があります。えんぴつ削りを使ったナシの簡単な接ぎ木方法では、穂木調整を容易にし、台木の剥皮方法を工夫することでテープによる固定作業を省略できます。


参考)https://www.pref.shimane.lg.jp/industry/norin/gijutsu/nougyo_tech/kenyui/kenkyu_seika/tokimeki/368.data/368.pdf

根接ぎは、台木の根に穂木の根を接ぐ方法で、栽培樹の根が病害虫被害を受けた場合や、老齢木の樹勢増強に用いられます。カンキツ類では深根性のユズの根を根接ぎして樹勢を強める事例があります。

高接ぎは既存の樹の高い位置で接ぎ木を行う技術で、品種更新に利用されます。カキでは主枝基部への腹接ぎによる更新方法が研究されており、環状はく皮やはく皮逆接ぎによって更新枝を早期に拡大させる技術が開発されています。


参考)302 Found

サボテンの接ぎ木では、維管束連絡に対するオーキシンの役割が研究されており、ホルモンを利用した接ぎ木技術の応用が進んでいます。ブルーベリーでは接ぎ木挿しという方法があり、台木栽培のスペースが不要で、接ぎ木部分を地表近くにできるというメリットがあります。


参考)https://www.semanticscholar.org/paper/0360e6713861a79f6d7093d118ec1413e648130e

多品種接ぎ木では、1本の樹に複数の品種を接ぐことで、限られたスペースで多様な果実を楽しむことができます。カンキツ類では100品種を1本の樹に接ぐ事例もあり、趣味の園芸として人気が高まっています。




カネコ種苗 台木用トマト「リリーフエース」のタネ