セルトレイ サイズ 選び方 と 72穴 128穴 200穴 の 規格

セルトレイでの育苗はサイズ選びが成功の鍵です。72穴や128穴、200穴の違いや、野菜ごとの適合サイズ、培土のコスト計算まで徹底解説します。あなたの栽培に最適なトレイは見つかりましたか?
セルトレイサイズ選びの極意
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穴数の違い

72穴は長期育苗、128穴は汎用、200穴はプロ向け。

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標準規格の秘密

稲作育苗箱と共通サイズで管理が効率化。

💰
コスト管理

穴数による培土量の差が経営に直結します。

セルトレイ の サイズ

セルトレイ の サイズ
農業の現場において、育苗工程は「苗半作(なえはんさく)」と呼ばれるほど、その後の収量や品質を決定づける極めて重要なプロセスです。その育苗成功のカギを握るのが、適切な資材の選定です。特に「セルトレイ(プラグトレイ)」のサイズ選びは、根の健全な発達、定植作業の効率、そして経済性に直結するファクターとなります。しかし、ホームセンターや農業資材店には、72穴、128穴、200穴、さらには288穴や448穴といった多種多様な規格が並んでおり、初心者のみならず、経験ある生産者であっても、新しい品目に挑戦する際にはどのサイズを選択すべきか迷うことが多いものです。

 

セルトレイのサイズといっても、単に穴の数が違うだけではありません。1セルあたりの土の容量(培土量)、セルの深さ、隣り合う苗との株間(ピッチ)、そしてトレイ全体の厚みや材質など、考慮すべき要素は多岐にわたります。例えば、土の量が少なければコストは下がりますが、水管理がシビアになり、老化苗(根詰まりを起こした苗)になるリスクが高まります。逆に、土の量が多ければ苗はのびのびと育ちますが、資材コストとスペース効率が悪化します。このように、セルトレイのサイズ選定は、栽培する野菜の種類、経営規模、育苗期間、そして定植方法(手植えか機械定植か)とのバランスを考慮した高度な意思決定が必要なのです。

 

本記事では、農業関係者および本格的な家庭菜園ユーザーに向けて、セルトレイのサイズに関する専門的な知識を深堀りしていきます。表面的な穴数の違いだけでなく、根鉢形成のメカニズムや、意外と見落とされがちな「トレイの色」による温度管理、そして長期的なコストパフォーマンス計算まで、現場ですぐに役立つ実践的な情報を提供します。これを読めば、あなたの農場に最適な一枚が見つかり、育苗レベルが一段階アップすること間違いありません。

 

セルトレイ 72穴 128穴 200穴 の 違い と 選び方

 

セルトレイを選ぶ際に最も基本的かつ重要なのが「穴数」の選択です。一般的に流通しているサイズは72穴、128穴、200穴の3種類が主流ですが、それぞれの特性を深く理解することで、育苗の失敗を未然に防ぐことができます。ここでは、それぞれの規格が持つ物理的な特徴と、それが植物の生理にどう影響するかを詳細に解説します。

 

     

  • 72穴(6列×12列):初心者にも安心の大容量タイプ
    72穴トレイは、1セルあたりの培土量が約35ml~40mlと比較的多く確保されています。土の量が多いということは、それだけ水分と養分を多く保持できる「バッファー(緩衝能)」が大きいことを意味します。水やりのタイミングが多少遅れても枯れにくく、根が広がるスペースも十分にあるため、育苗期間が長引いても根詰まり(根巻きによる老化)を起こしにくいのが最大のメリットです。育苗日数が30日を超えるような果菜類トマト、ナス、ピーマンなど)や、葉が大きく広がるブロッコリーなどの長期育苗に向いています。また、手植えでの定植を行う場合、しっかりとした大きな根鉢ができるため、移植時の活着が良いのも特徴です。デメリットとしては、面積あたりの苗数が少ないため、大量育苗には広いスペースが必要になる点です。
  • 農業現場で最も普及している「標準サイズ」と言えるのが128穴です。1セルあたりの容量は約18ml~20ml程度となります。このサイズは、苗の生育スピードとスペース効率のバランスが絶妙に設計されています。レタス、キャベツ、ハクサイなどの葉物野菜において、本葉3~4枚程度で定植するサイクルに最適化されています。多くの全自動移植機はこの128穴規格を基準に設計されていることが多く、機械定植を導入している農家にとっては必須のサイズです。ただし、72穴に比べて土の量が半分程度になるため、乾燥スピードが速くなります。夏場の高温期などは朝夕の灌水管理に注意が必要であり、定植適期を逃すとすぐに肥料切れや老化苗になってしまうため、計画的な作付けが求められます。

     

  • 200穴(10列×20列):プロフェッショナル向けの省スペース設計
    200穴は、1セルあたりの容量が約10ml~12mlと非常に小さくなります。このサイズの最大の目的は「高効率化」と「コスト削減」です。同じ面積で72穴の約3倍近くの苗を作ることができるため、ネギやタマネギ、あるいはレタスなどの大量生産を行う大規模農家で重宝されます。特にタマネギ苗のような細い苗や、若苗定植を前提とした品目に適しています。しかし、土の量が極端に少ないため、環境変化の影響をダイレクトに受けます。晴天時には数時間で土が乾燥してしまうため、底面給水システムや自動灌水装置などの設備が整っていないと管理は困難です。また、肥料切れも早いため、液肥による追肥管理が必須となります。栽培技術に自信のある「プロ向け」のサイズと言えるでしょう。

タキイ種苗株式会社|セルトレイ栽培の基本とコツ
初心者向けの解説ですが、72穴が管理しやすい理由や底面給水の活用について触れられており、基礎知識の確認に有用です。

 

参考)https://www.takii.co.jp/info/news_220324.html

トレイを選ぶ際は、「自分の灌水管理能力」と「定植までの日数」を天秤にかけることが重要です。忙しくて頻繁に水やりができない兼業農家の方などは、迷わず72穴や大きめのサイズを選ぶことが、失敗しないための安全策となります。

 

セルトレイ サイズ 別 の 野菜 育苗 適合 リスト

「どの野菜にどのトレイを使えばいいのか?」という疑問は、多くの生産者が抱える悩みです。野菜の根の張り方(直根性かひげ根か)、初期成育のスピード、そして定植時の苗の大きさによって、最適なサイズは厳密に異なります。ここでは、主要な品目ごとに推奨されるセルトレイサイズを具体的な理由とともにリストアップします。これを参考に、作物の生理生態に合った「快適な家(セル)」を用意してあげましょう。

 

表:野菜別推奨セルトレイサイズと選定理由

野菜品目 推奨サイズ(穴数) 選定理由とポイント
トマト・ナス・ピーマン 72穴(または50穴) 育苗期間が60日前後と長いため、128穴では早期に根詰まりを起こします。72穴でじっくり根を張らせるか、さらに大きなポリポットへの「鉢上げ」を前提とした初期育苗にのみ128穴を使うのが一般的です。
キャベツ・ブロッコリー 128穴 最もスタンダードな組み合わせです。本葉3〜4枚での定植にジャストサイズです。ただし、春作などで育苗期間を延ばして大苗にしたい場合は、72穴を選択することで定植後の活着を早める戦略も有効です。
レタス・ハクサイ 128穴 〜 200穴 初期成育が早く、若苗定植が基本のため小さいセルでも対応可能です。夏場の高温期育苗では、蒸れを防ぐために200穴よりも128穴の方が風通しが良く、病気のリスクを下げられます。
ネギ・タマネギ 200穴 〜 288穴 根が縦に長く伸びる性質があり、また大量の苗を必要とするため、小容量の高密度トレイが経済的です。専用の「チェーンポット」を使わない場合、セルトレイ育苗では200穴以上が主流です。
トウモロコシ・枝豆 72穴 〜 128穴 直根性で移植を嫌うため、根が回る前に若苗で定植する必要があります。128穴で本葉2枚程度で素早く定植するか、72穴で根鉢をしっかり作って崩れないように植えるかの二択になります。根鉢形成を優先するなら72穴が安全です。
カボチャ・ズッキーニ 50穴 〜 72穴 種自体が大きく、双葉も巨大に展開するため、128穴では隣の苗と葉が重なり合い「徒長(ひょろ長く伸びること)」の原因になります。十分な株間を確保できる72穴以下、できれば50穴やポリポットが推奨されます。

野菜の生理的特性を無視して小さなセルトレイを使うと、地上部ばかりが伸びて根が貧弱な「徒長苗」になりがちです。特にウリ科(カボチャ、キュウリなど)は葉の展開が早いため、サイズ選びを間違えると隣同士で光を奪い合い、品質が著しく低下します。「迷ったらワンサイズ大きいトレイ」を選ぶことが、健全な苗作りへの近道です。

 

農林水産省|野菜のセル成型苗育苗技術
各野菜品目におけるセル成型苗の技術指針が詳細に記載されています。プロ農家向けの技術マニュアルとして非常に権威性があります。

 

参考)https://www.yanmar.com/media/news/2025/01/16010843/k_cabbage04_2501.pdf

セルトレイ 規格 と 外寸 が 水稲用育苗箱 に 合う 理由

日本の農業資材において、セルトレイの「外寸」にはある共通の規格が存在します。メーカーが異なっても、多くのセルトレイの外寸は約280mm × 545mm(または300mm × 590mm前後)に設定されています。このサイズ設定には、日本の稲作文化と密接な関係がある「合理的な理由」が隠されています。

 

実は、一般的なセルトレイのサイズは、稲の苗を作るための「水稲用育苗箱(稚苗箱)」の内寸にぴったり収まるように設計されています。これには現場作業において極めて大きなメリットがあります。

 

  1. 運搬の利便性と強度補強

    薄いプラスチックで作られたセルトレイ(特に安価な使い捨てタイプ)は、土と水を含んだ状態で片手で持ち上げると、その重みで折れ曲がったり、割れてしまったりすることがあります。しかし、頑丈なプラスチック製の水稲用育苗箱を「アンダートレイ(受け皿)」として下に敷くことで、強度が劇的に向上します。これにより、一度に複数のトレイを重ねて運搬したり、トラックの荷台に安定して積載したりすることが可能になります。

     

  2. 底面給水と排水性の確保

    水稲用育苗箱にセルトレイをセットすることで、簡易的な「底面給水システム」を構築できます。育苗箱に水を溜めれば、セルの底穴から毛細管現象で均一に水を吸い上げさせることが可能です。逆に、地面に直置きしたくない場合(病原菌の侵入防止や、根が地面に活着するのを防ぐ「断根」目的)にも、育苗箱がスペーサーの役割を果たし、通気性と排水性を確保してくれます。

     

  3. 資材の有効活用

    多くの農家にとって、田植えが終わった後の水稲用育苗箱は、次の春まで倉庫で眠るだけの資材です。これを野菜の育苗に流用できる規格にすることで、新たな資材投資を抑えつつ、既存の設備を有効活用できるのです。

     

やまむファーム|育苗箱とセルトレイの活用法
育苗箱とセルトレイを組み合わせた実際の運用方法や、土詰めのコツが写真付きで解説されており、規格の一致が現場でどう活きるかが分かります。

 

参考)家庭菜園向け「苗作り・育苗」のコツ

このように、セルトレイのサイズ規格は単なる数値ではなく、日本の農業システム全体の中で最も効率よく運用できるように計算された「黄金比」なのです。購入の際は、手持ちの育苗箱にジャストフィットするかどうかを確認することをお勧めします。特に海外製の安価なトレイを購入する場合、微妙にサイズが合わず育苗箱に入らないというトラブルが多発していますので、JIS規格やJA全農規格に準拠したものを選ぶのが無難です。

 

セルトレイ 育苗 コスト を 削減 する 培土 量 の 計算

農業経営において、資材コストの削減は利益率を上げるための直接的な手段です。セルトレイ育苗において、意外と無視できないのが「培土(培養土)」のコストです。「たかが土」と思うかもしれませんが、数千、数万株単位で苗を作る場合、セルのサイズによる土の量の差は、数万円単位のコスト差となって跳ね返ってきます。ここでは、具体的な数字を用いて、サイズごとの培土コストをシミュレーションしてみましょう。

 

前提条件として、市販の高品質な育苗用培土(40リットル入り、約1,200円とする)を使用し、1万株の苗を生産すると仮定します。

 

  • 72穴トレイの場合

    1セルあたりの容量:約40ml
    1万株に必要な土の総量:10,000株 × 40ml = 400,000ml(400リットル)
    必要な培土の袋数:400L ÷ 40L/袋 = 10袋
    総培土コスト:10袋 × 1,200円 = 12,000円

  • 128穴トレイの場合

    1セルあたりの容量:約20ml
    1万株に必要な土の総量:10,000株 × 20ml = 200,000ml(200リットル)
    必要な培土の袋数:200L ÷ 40L/袋 = 5袋
    総培土コスト:5袋 × 1,200円 = 6,000円

  • 200穴トレイの場合

    1セルあたりの容量:約12ml
    1万株に必要な土の総量:10,000株 × 12ml = 120,000ml(120リットル)
    必要な培土の袋数:120L ÷ 40L/袋 = 3袋
    総培土コスト:3袋 × 1,200円 = 3,600円

この試算から分かるように、72穴から128穴に変更するだけで、培土コストは半減します。200穴にすれば、72穴の約3分の1以下にまで圧縮できます。さらに、トレイ自体の枚数も変わるため、加温育苗をする場合のハウス内の燃料代(暖房スペースの削減)や、運搬の手間賃(人件費)も含めると、コスト差はさらに拡大します。

 

ただし、ここで重要なのは「コスト削減だけを目的にサイズを小さくしてはいけない」ということです。前述したように、土の量が減れば管理は難しくなり、苗の品質が低下するリスクがあります。「安物買いの銭失い」ならぬ「土ケチりの苗失い」になっては本末転倒です。まずは128穴で安定生産できる技術を確立し、その上でさらなるコストダウンを目指して200穴に挑戦するというステップアップが、経営的には最も健全なアプローチと言えます。

 

新潟県農業普及センター|ブロッコリー栽培マニュアル
PDF資料内で、128穴トレイに必要な培土量の計算や、実際の施肥設計についての詳細なデータが公開されており、コスト計算の信頼できる根拠となります。

 

参考)https://www.pref.niigata.lg.jp/uploaded/attachment/375340.pdf

セルトレイ の 色 と 材質 が 与える 根鉢 への 影響

最後に、多くの解説記事ではあまり触れられない「独自視点」として、セルトレイの「色」と「厚み・材質」が苗の生育に与える影響について深堀りします。サイズ選びと同じくらい、実はこの要素が育苗の成否を分けていることがあります。

 

1. 「黒」vs「白」:色の違いによる温度コントロール
セルトレイには一般的な黒色のほかに、白色やシルバーのものが存在します。この色の違いは、地温(根圏温度)に大きな影響を与えます。

 

  • 黒色トレイ:太陽光の熱を吸収し、地温を上昇させます。春先や冬場の寒い時期の育苗には、根の伸長を促進する黒色が適しています。しかし、真夏の育苗ではトレイ内部が高温になりすぎ、根が焼けて傷んでしまうリスクがあります。
  • 白色トレイ:太陽光を反射し、地温の上昇を抑えます。夏場のレタスやキャベツ育苗など、高温対策が必要な時期には白色トレイを使うことで、根のストレスを軽減し、健全な根鉢を形成することができます。プロ農家は、季節によってトレイの色を使い分けています。

2. トレイの「厚み」と根の巻き方
セルトレイには、ペラペラの薄いタイプ(ワンウェイ・使い捨て推奨)と、厚手で硬いタイプ(長期間再利用可能)があります。

 

  • 薄手タイプ:安価ですが、持ち運びでたわみやすく、土が割れる原因になります。また、セルの内壁が滑らかなものが多く、根が壁面に沿ってぐるぐると回る「ルーピング(根巻き)」が発生しやすい傾向があります。極端な根巻きは、定植後の根の広がりを阻害します。
  • 厚手・専用設計タイプ:高価ですが、耐久性が高く10年以上使えるものもあります。特筆すべきは、セル内部に「リブ(突起)」加工が施されている製品が多いことです。このリブが根のルーピングを防止し、根を下方向へ素直に誘導します。これにより、定植後の活着が圧倒的に早い「高品質な根鉢」が形成されます。初期投資はかかりますが、歩留まり向上と再利用回数を考慮すれば、長期的には厚手タイプの方がコストパフォーマンスが良い場合も多いのです。

日本農業新聞|セルトレイの種類と使い分け
タキイ種苗の「根巻防止セルトレイ」など、機能性トレイの規格詳細が確認できます。リブ加工がどのように根に作用するかの理解が深まります。

 

参考)https://www.takii.co.jp/material/product/009/

「サイズ」だけでなく、「色」や「構造」までこだわってセルトレイを選ぶこと。これこそが、他者と差をつけるプロの育苗技術の第一歩です。まずは季節に合わせてトレイの色を変えてみることから始めてみてはいかがでしょうか。それだけで、夏場の苗の生存率が劇的に変わるかもしれません。

 

 


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