登録品種検索で農林水産省データベースと海外持出制限の調べ方

栽培している苗が登録品種か把握していますか?種苗法違反は重い罰則の対象です。農林水産省データベースでの調べ方や海外持出制限、家庭菜園のルールを解説します。あなたは正しくリスク管理できていますか?

登録品種の検索

登録品種の検索

登録品種検索の重要ポイント
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正確なデータベース活用

農林水産省の公式PVP検索を利用し、品種名や出願番号から最新の権利状況を確認する手順が不可欠です。

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海外持出と栽培地制限

改正種苗法により、海外への持ち出し禁止や栽培地域の制限が設定された品種の確認が義務化されました。

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自家増殖と許諾のルール

家庭菜園であっても、登録品種の無断増殖は原則禁止です。正規の許諾や表示義務を正しく理解しましょう。

登録品種検索で農林水産省データベースの調べ方と品種登録一覧

農業従事者や園芸店経営者にとって、取り扱う種苗が「登録品種」であるか、それとも「一般品種」であるかを見極めることは、コンプライアンス経営の根幹に関わる極めて重要な業務です。特に2021年の種苗法改正以降、権利関係の確認ミスによるトラブルは増加傾向にあり、正確な情報収集能力が求められています。

 

登録品種の有無を調べるために最も信頼性が高く、かつ必ず参照すべきなのが、農林水産省が運営する「品種登録データ検索(PVP検索)」です。インターネット上の不確かな情報や、古いカタログの情報を鵜呑みにせず、必ず一次情報を確認する習慣をつけましょう。

 

ここでは、具体的なデータベースの活用手順と、検索時に陥りやすい落とし穴について詳細に解説します。

 

  • 正式名称(カタカナ)での検索

    品種登録は基本的にカタカナで行われます。流通名(ブランド名)と正式な品種名が異なるケースが多々あるため、パッケージの裏面や納品書に記載されている正式名称を確認してから検索窓に入力してください。流通名でヒットしないからといって「登録されていない」と判断するのは尚早です。

     

  • 「出願公表」と「登録」の違いを理解する

    データベースのステータスには「出願公表中」と「登録」があります。出願中であっても、仮保護の対象となる場合があるため、権利が発生している可能性があります。「登録されていない=自由に使って良い」とは限らない点に注意が必要です。

     

  • 農作物・花卉の区分フィルタリング

    検索対象が膨大であるため、農作物や観賞用植物といったカテゴリー区分を適切に設定することで、同名の別品種との混同を避けることができます。

     

農林水産省のデータベースは頻繁に更新されています。特に新しい品種や、権利期間が終了した品種の情報は日々変動するため、苗の仕入れや増殖計画を立てる直前に再検索することをお勧めします。

 

また、検索結果には「育成者権の消滅日」も記載されています。これが記載されている場合、権利期間が満了しているか、登録料未納などで権利が消失していることを意味します。しかし、商標権が別途設定されている場合もあるため、品種登録の権利切れだけで判断せず、商標データベースとのクロスチェックも行うのがプロフェッショナルとしてのリスク管理です。

 

農林水産省 品種登録データ検索(PVP検索):このリンク先では、品種名や作物名から登録品種の現状、育成者権の存続期間などを直接検索できます。

登録品種検索でわかる海外持出制限と家庭菜園の増殖許諾

改正種苗法において最も大きなインパクトを与えたのが、登録品種の「海外持出制限」と「栽培地域制限」です。日本の優良な品種が海外へ無断で流出し、産地化されて逆輸入されることで国内農業が打撃を受ける事態を防ぐため、開発者(育成者権者)は利用条件を設定できるようになりました。

 

「登録品種 検索」を行う際は、単に登録されているかどうかだけでなく、以下の「利用制限条項」が付与されているかを必ず確認しなければなりません。

 

  • 海外持出禁止(輸出制限)

    この制限がついている品種は、種子や苗だけでなく、場合によっては収穫物の一部も含めて海外への持ち出しが法律で禁じられています。インバウンド需要でお土産として販売する場合や、越境ECを行う場合も注意が必要です。

     

  • 国内栽培地域の指定

    「北海道限定」「長野県内のみ」といったように、栽培できる地域が特定されている場合があります。知らずに指定地域外で栽培した場合、育成者権の侵害となり、差止請求や損害賠償の対象となります。

     

また、農業関係者だけでなく、趣味で植物を育てる一般消費者、いわゆる「家庭菜園」のユーザーに対しても、正しい知識の啓蒙が必要です。

 

かつては自家増殖(採種や株分け、ランナーによる増殖)は原則自由と誤解されがちでしたが、登録品種に関しては、家庭菜園であっても育成者権者の許諾が必要な場合があります。特に、イチゴやサツマイモなどの栄養繁殖性植物は、購入した苗から無限に増やすことが可能ですが、これを無断で行うことは、法改正により厳密には制限の対象となり得ます。

 

農業ビジネスを行う者は、顧客に対して「この苗は登録品種であり、増殖には制限がある」という事実を正確に伝える説明責任があります。

 

  • 正規ルートでの購入証明

    苗を購入した際のレシートやタグは、正規の許諾を得て入手したことの証明になります。これらを保管しておくことの重要性を啓蒙しましょう。

     

  • 譲渡の禁止

    家庭菜園で増えすぎた苗を、近所の人に配ったり、フリマアプリで販売したりする行為は、登録品種であれば明白な法律違反(育成者権侵害)となります。

     

検索結果画面で「海外持出制限」の有無を確認し、その情報を販売時のPOPやECサイトの商品説明欄に明記することは、トラブルを未然に防ぐための必須事項です。

 

農林水産省 改正種苗法について:改正法のポイントや、海外流出防止措置、自家増殖の取り扱いについて詳細なQ&Aが掲載されています。

登録品種検索における種苗法の表示義務と苗の譲渡違反

登録品種を譲渡(販売)する場合、種苗法に基づいた適切な「表示」を行うことが義務付けられています。これは、種苗業者や農家だけでなく、ホームセンターや道の駅、さらにはインターネットオークションを利用する個人にも適用されるルールです。

 

「登録品種 検索」で該当品種であることを確認した後、具体的にどのようなアクションを取るべきか、表示義務の観点から深堀りします。

 

登録品種(または出願中の品種)の種苗を販売・譲渡する際には、以下の情報を荷姿(パッケージ、ラベル、添付書類など)に表示しなければなりません。

 

  1. 「登録品種」である旨の表示

    文字で「登録品種」と記載するか、PVPマーク(PVPの文字を丸で囲んだマーク)を表示する必要があります。

     

  2. 品種登録の番号(または出願番号)

    どの品種であるかを特定するための番号です。

     

  3. 海外持出制限や栽培地域制限がある場合はその旨

    「海外持出禁止(公示(農水省HP)参照)」などの文言で、利用者に制限事項を伝える義務があります。

     

もし、これらの表示を怠ったり、虚偽の表示を行ったりした場合、種苗法違反として刑事罰(懲役や罰金)の対象となる可能性があります。特に近年は、フリマアプリやオークションサイトでの個人間取引においても、農林水産省によるパトロールが強化されています。「知らなかった」では済まされないのが、知的財産のルールです。

 

また、農業現場でよくあるケースとして、「余った苗の譲渡」があります。

 

  • 隣の農家への「お裾分け」のリスク

    「今年は苗を作りすぎたから」といって、登録品種の苗を近隣の農家に譲渡する行為。たとえ無償であっても、育成者権者の許諾を得ずに増殖した苗を他者に譲渡することは権利侵害にあたります。

     

  • 接ぎ木苗の台木

    台木として使用する品種が登録品種である場合も同様に注意が必要です。台木用の種子を購入し、自家増殖して接ぎ木販売する場合、台木の育成者権処理が適正に行われているか確認が必要です。

     

これらのリスクを回避するためには、常に最新の登録情報を検索し、自社が取り扱うすべての品種について「権利ステータス」を一覧化した管理台帳を作成することをお勧めします。

 

確認項目 対応アクション
品種登録の有無 PVP検索でステータスを確認
海外持出制限 「有」の場合、ラベルに制限事項を明記
栽培適地 指定地域外への販売をブロックする体制構築
許諾契約の内容 増殖販売が可能か、契約書を再確認

農林水産省 登録品種の表示について:種苗法に基づく具体的な表示義務のガイドラインや、ラベルの記載例が図解されています。

登録品種検索で見落としがちな育成者権の存続期間と期限切れ

多くの農業関係者が「登録品種 検索」を行う主な動機は、「権利を侵害しないため」という守りの姿勢によるものでしょう。しかし、一歩進んだ視点として、「育成者権の期限切れ」を戦略的にリサーチすることも、経営上のメリットにつながります。これは、検索結果の上位記事ではあまり深く触れられていない、独自かつ重要な視点です。

 

育成者権は永久に続くものではありません。原則として、品種登録の日から25年(果樹や木本性植物などは30年)で権利期間が満了します。また、期間満了前であっても、育成者権者が毎年の登録料を納付しなかった場合、権利は途中で消滅します。

 

権利が消滅した品種は「パブリックドメイン(公有)」の状態に近づき、基本的には誰でも自由に以下のことが行えるようになります。

 

  • 許諾なしでの増殖

    権利が切れているため、自家増殖して苗を増やしたり、その苗を販売したりする際に、育成者へのロイヤリティ支払いや許諾契約が不要になります。

     

  • 栽培の自由度向上

    地域制限や輸出制限といった育成者権に基づく制約がなくなります(※ただし、相手国の検疫条件等は別問題です)。

     

検索データベースを活用して「権利消滅日」を確認することは、コスト削減や新しい商品開発のチャンスを探る「攻めのリサーチ」となり得ます。

 

⚠️ 期限切れ品種を扱う際の重大な注意点
ただし、育成者権が切れているからといって、完全に無法地帯になるわけではありません。以下の点には細心の注意が必要です。

 

  1. 商標権は別物

    品種としての育成者権が切れていても、その品種の「ブランド名(販売名)」が商標登録されている場合があります。例えば、「品種名A」の権利が切れていても、「ブランド名B」で販売する場合、商標権者の許可なく「ブランド名B」を使用すれば商標法違反になります。

     

    • 対策: 特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)で商標検索を併用する。
  2. 「品種登録されていた旨」の表示

    登録期間が終了した品種であっても、種苗を販売する際には「登録品種であったこと」を表示することが望ましいとされる場合があります(消費者の誤認を防ぐため)。

     

  3. 契約による縛り

    過去に交わした栽培契約書などで、育成者権の存続にかかわらず独自の契約期間や制限が設けられている場合があります。契約法上の義務は、知的財産権の消滅とは別個に存在する可能性があります。

     

データベース検索で「育成者権の消滅日」欄に日付が入っている場合、その日付の翌日から権利は及ばなくなります。これらを活用し、コストパフォーマンスの良い「一般品種(元・登録品種)」を戦略的に作付け計画に組み込むのも、賢い農業経営の一つと言えるでしょう。

 

検索においては、「登録品種」だけでなく、「登録が抹消された品種」のリストも閲覧可能です。過去の名品種を再評価し、自由に増殖・販売できるラインナップとして復活させることは、他社との差別化戦略としても有効です。