酒造好適米は現在、農林水産省に100種類以上が登録されていますが、実際の生産は上位品種に集中しています。令和5年産の生産量では、山田錦が約39,549トンで全体の36.9%を占め、圧倒的な首位となっています。
参考)https://www.meimonshu.jp/modules/xfsection/html/gallery2/memo/seishu/mm0_shuzoukoutekimai.html
次いで五百万石が約27,078トン(23.1%)、美山錦が約7,838トン(7.0%)と続き、この上位3品種だけで全体の約70%を占めるという状況です。4位以降は雄町が約2,886トン、愛山、八反錦、出羽燦々などが続きますが、生産量は大きく下がります。
参考)全国の酒造好適米トップ10!
主要な酒造好適米の生産量と特徴は以下の通りです。
参考)兵庫県/兵庫の酒米
酒造好適米の栽培は気候条件や土壌特性に大きく左右されるため、各都道府県では地域に適したオリジナル品種の開発が進められています。
参考)【豆知識】新品種も続々と誕生!100品種以上もある日本各地の…
兵庫県では山田錦が4,610haで栽培され、他に兵庫夢錦(54ha)、兵庫北錦(46ha)、五百万石(121ha)が主な品種として栽培されています。特に播州地域の三木市や加東市の特A地区は、夏の気温の日較差が大きく、酒米栽培に必要な栄養素を含んだ豊かな土壌を持つことから、最高品質の山田錦が育つ理想的な環境となっています。
参考)日本酒造りにとって「良い米」とは - 求められる特徴と格付け…
東北地方では各県が独自品種を開発しており、青森県では華想い、古城錦、華吹雪、豊盃、岩手県では吟おとめ、吟ぎんが、結の香、宮城県では蔵の華、秋田県では秋田酒こまち、秋の精、吟の精などが栽培されています。
参考)酒米(酒造好適米)の都道府県別一覧
北陸・中部地方では、新潟県の越淡麗(山田錦と五百万石の交配品種)、長野県の美山錦、石川県の石川門などが代表的です。
西日本では、熊本県の華錦、愛媛県の松山三井、山形県の出羽燦々などが地域特産の酒造好適米として栽培されています。
参考)日本酒「楯野川」
酒造好適米は食用米と比較して栽培が難しく、農家にとって高い技術力が求められる作物です。その主な理由として、稲穂の背丈が高く(山田錦で約80cm程度)、穂も長いため倒伏しやすい特徴があります。
参考)日本酒を脅かすもの② ~酒米作り編~
栽培条件として重要なのは以下の4つです:
参考)姫路の地酒
また、酒造好適米は密生しやすいことから害虫被害を受けやすく、病気にも弱い傾向があります。山田錦は特に病気や害虫、風にも弱く、酒米の中でも作るのが難しい品種とされています。
参考)日本酒を造るお米って?食べるお米とは違う「酒造好適米」を知ろ…
水管理も重要で、出穂後の高気温は心白発現に影響するため、温度管理と水管理の工夫が必要です。一般的に、中干しによる茎数コントロールや、幼穂形成期の生育量管理が大粒・豊満な米粒を作るために重要です。
参考)https://okomeno-tawaragura-ask.jp/trade/saibaitext09.pdf
秋田県農業試験場の「秋田酒こまち」栽培技術資料
酒造好適米の具体的な栽培方法、施肥量、生育診断値などの詳細な技術情報が記載されています。
酒造好適米と食用米には、醸造適性を高めるための明確な違いがあります。以下の表で主な違いを比較します:
参考)https://reika-sake.com/blogs/contents/sake-rice
| 比較項目 | 酒造好適米 | 食用米 |
|---|---|---|
| 粒の大きさ | 大きい(千粒重26~27g程度) | 小さい〜中くらい |
| 心白の有無 | あり(発現率70%程度) | ほとんどなし |
| タンパク質含有量 | 低め(雑味が出にくい) | 高め |
| 精米適性 | 高く、高精白に耐える | 精米すると崩れやすい |
| 吸水性 | 高い | 低い |
| 栽培難易度 | 高い(倒伏しやすい) | 相対的に容易 |
| 収量 | 少ない(約500kg/10a) | 多い |
| 価格 | 高い | 安い |
参考)https://chibasake.com/blogs/topics/5186
粒の大きさは特に重要で、酒造好適米は精米の過程で割れにくく、歩留まりが良いという特徴があります。吟醸酒の場合は米粒を40%以上、大吟醸では50%以上削るため、大粒で割れにくいことが必須条件となります。
心白とは米の中心部の白濁している部分で、内部は隙間が多く光が乱反射するために白く見えます。この心白部分はでんぷんが多く、雑味のもととなるたんぱく質や脂質の含有量が少ないため、心白だけを削り出して日本酒を造ると雑味の少ないすっきりとした味わいになります。
参考)酒造りに適したお米の条件「心白(しんぱく)」とは?【専門用語…
さらに、心白は吸水時に亀裂を生じやすく、水分を含んだ内側に菌糸が入り込んでお米を溶かす酒造りに適した構造となっています。
参考)“食米”と“酒米(酒造好適米)”の違いは? – …
SAKE TIMESの心白解説記事
心白の形状(点状型、線状型、眼状型)など、より詳しい特徴について専門的な説明があります。
心白は酒造好適米の最も重要な特性の一つですが、その発現には遺伝的要因と環境要因の両方が関わっています。一般的に、幅が大きく長/幅比の小さい円粒の品種ほど大きな心白が発現しやすい傾向があります。
参考)https://www.nrib.go.jp/data/kouen/pdf/39kou08.pdf
心白発現率は品種によって異なり、山田錦では約70%程度とされています。しかし、同じ品種でも栽培環境によって心白の発現状況は大きく変化します。出穂後の高気温は心白発現に影響を与えるため、温度管理が重要となります。
参考)https://www.okomeno-tawaragura-ask.jp/azemichinisshi/2024/04/-2.html
品質管理における重要なポイントとして、登熟を揃えることと乾燥調整に注意することが挙げられます。心白の形成を左右する水管理は特に重要で、出穂前後の水管理が適切でないと、心白未熟粒の発生や心白発現率の低下につながります。
参考)酒米の栽培方法や栽培適地について教えてください
また、酒造好適米の醸造適性を高めるためには、以下の要素が求められます:
参考)https://www.sbj.or.jp/wp-content/uploads/file/sbj/9801/9801_biomedia_5.pdf
特に醸造現場では、整粒歩合が高く(未熟粒が少ない)、胴割粒が少ないことも重要な品質基準となります。
参考)https://www.pref.hokkaido.lg.jp/fs/1/1/6/4/9/7/0/2/_/%E5%8C%97%E6%B5%B7%E9%81%93%E9%85%92%E9%80%A0%E5%A5%BD%E9%81%A9%E7%B1%B3%E6%A0%BD%E5%9F%B9%E3%83%9E%E3%83%8B%E3%83%A5%E3%82%A2%E3%83%AB.pdf
国税庁醸造研究所の心白発現の遺伝に関する研究資料
心白発現のメカニズムや遺伝的要因について、科学的な視点から詳しく解説されています。