高温耐性米は、暑い登熟期の白未熟粒を減らす有力な選択肢ですが、食味、倒伏、病害、熟期まで一括して優れるわけではありません。例えば、にじのきらめきは山梨県の平坦地試験でコシヒカリより収量・整粒比率に優れましたが、高冷地では同じ優位性は見られませんでした。既存の品種一覧を地域試験で絞り、水管理・施肥・適期収穫を組み合わせて選びます。地域と評価項目を分けた比較、耐暑品種にも必要な水管理。

高温耐性米を選ぶときは、登熟期に白未熟粒が出にくいことと、収穫時期、収量、食味、倒伏、病害への強さを分けて確認します。にじのきらめきの育成資料でも、耐倒伏性は強、縞葉枯病には抵抗性ですが、白葉枯病はやや弱とされています。『暑さに強いから病気にも倒伏にも強い』とはまとめられません。にじのきらめきの特性別評価。
| 品種名 | 育成元・熟期の比較 | 高温品質・食味と別に確認する点 |
|---|---|---|
| にじのきらめき | 農研機構。育成地の新潟県上越市ではコシヒカリとほぼ同時に出穂し、成熟は4〜5日遅い。 | 高温登熟性に優れ、食味はコシヒカリ並。短稈で倒伏に強いが、白葉枯病常発地では対策が必要。育成資料 |
| つきあかり | 農研機構。上越ではコシヒカリより出穂約1週間、成熟約2週間早く、あきたこまちとほぼ同熟期。 | 高温登熟性やや強でも腹白が出る場合がある。食味はコシヒカリと同等以上だが、玄米外観品質はあきたこまちと同等かやや劣る。品種特性 |
| なつほのか | 鹿児島県農業開発総合センター。長崎県の普通期試験では、あさひの夢とほぼ同熟期の早生の晩。 | 背白粒が少なく食味はヒノヒカリ並。ただし、あさひの夢より稈長が長く、いもち病・多肥による倒伏への対策が必要。長崎県の比較 |
| きぬむすめ | 農研機構九州沖縄農業研究センター。日本晴熟期で、育成資料ではコシヒカリより約1週間晩生。 | 良質・良食味でも高温障害を回避する作期は必要。和歌山県では早植え区で収量・整粒率が低下した。品種資料、作期試験 |
| 新之助 | 新潟県農業総合研究所作物研究センター。育成地2011〜2015年標肥試験でコシヒカリより出穂7日、成熟8日遅い。 | 高温登熟性強、食味良好、耐倒伏性やや強。一方、葉いもちやや弱・穂いもち弱、障害型耐冷性弱。育成報告 |
これらは異なる地域・方法の評価をまとめた一覧で、全国一律の順位表ではありません。つや姫、雪若丸、元気つくし、にこまるなどの候補も残し、実際の導入は地域の比較試験と栽培体系で絞ります。にこまるでは、高温に強くても中山間地の低温下で充実不足が生じたため、長崎県がより早生のなつほのかを選定した経緯があります。品種交代を検討した背景。
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導入の利点を具体的に確かめるには、同じ試験地・作期・施肥条件で比較します。山梨県の試験は、にじのきらめきとコシヒカリを同じ地域内で比べ、平坦地と高冷地で結果が違うことを示しています。
| 試験条件 | にじのきらめき | コシヒカリ |
|---|---|---|
| 平坦地・本所、2019〜2022年平均:出穂/成熟 | 8月9日/9月20日 | 8月7日/9月17日 |
| 同条件:収量 | 659kg/10a | 598kg/10a |
| 同条件:倒伏程度、0無〜5甚 | 0.0 | 2.6 |
| 同条件:整粒比率 | 76.7% | 69.4% |
| 高冷地・岳麓、2020〜2022年平均:収量 | 711kg/10a | 707kg/10a |
| 同高冷地条件:整粒比率 | 85.0% | 87.4% |
本所は6月第1半旬移植、基肥窒素5kg/10a・追肥2kg/10a。岳麓は5月第6半旬移植、基肥窒素8kg/10a・追肥2kg/10aです。整粒比率は穀粒判別器で測定しています。各場所内の品種比較を読み、場所間の差を品種だけの効果としないでください。県は耐冷性の弱さも踏まえ、県内平坦地〜中間地、おおむね標高750mまでを対象とし、高冷地の作付けを避けるとしています。山梨県の試験条件と地域適応。
白未熟粒も同じ資料の別集計で確認できます。本所のうち出穂後14日間の日平均気温26℃以上で経過した各18試験区では、にじのきらめき/コシヒカリの順に、整粒77.5/64.6%、乳白粒3.3/6.5%、基部未熟粒4.3/12.2%でした。これは高温条件を抽出した集計で、上表の全期間平均とは分けて読みます。また、玄米外観の数値であり食味点ではありません。同資料表2。
育成地での『15%程度多収』は全国の増収保証ではありません。収穫分散も出穂日ではなく成熟日で考え、水利、乾燥施設、病害防除を含めて導入します。にじのきらめきはコシヒカリより短稈ですが、過剰施肥は倒伏と食味低下を招くと育成元が明記しています。育成地の収量比較と施肥上の制約。
高温耐性は水管理を省く理由にはなりません。農研機構が2018〜2021年に新潟・群馬・岐阜で調べたにじのきらめきは、コシヒカリより高温時の整粒歩合低下が緩やかでしたが、出穂後20日間平均28℃以上では70%を下回る例もありました。穂が葉の中に隠れ、周囲の葉の蒸散で冷却されやすい可能性が示されており、水分供給を断ってよいという結果ではありません。高温回避性と限界。
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高温時の玄米外観品質と炊飯米の食味は別に測ります。白未熟粒が少ないことは外観品質の利点ですが、それだけで粘り・硬さ・香りや販売先の好みに対する優位を確定しません。にじのきらめきの育成資料は、玄米外観品質、収量、食味、耐倒伏性、病害抵抗性をそれぞれ別の表で評価しています。育成段階の評価項目。
つきあかりはこの区別が分かる例です。育成元は食味をコシヒカリと同等以上、炊飯4時間保温後も同等以上としています。一方、玄米外観品質はコシヒカリより良くても、同熟期のあきたこまちと同等かやや劣り、腹白が出る場合があります。『料理向けだから粘りが弱い』と根拠なく特徴付けるより、保温条件を含む試食結果と玄米品質を分けて説明します。つきあかりの外観・保温後食味。
新之助の高温評価も食味試験とは別です。2014〜2015年に人工気象室で昼32℃・夜24.5℃、出穂から積算気温950℃まで処理した試験では、整粒歩合は新之助75.9%、コシヒカリ52.1%でした。これは気象室の玄米評価で、一等米比率や食味順位ではありません。同じ育成報告は通常の栽培試験から炊飯米の食味を別途評価しています。新之助の高温検定と食味試験。
地域試験の読み方にも注意が必要です。山梨県のにじのきらめきの官能評価は、あさひの夢を0とする9回の試験平均です。玄米タンパク質の測定や穀粒判別器の整粒比率と混ぜず、基準品種と評価法を付けたまま読みます。山梨県の評価方法。
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KINCHO園芸 殺虫剤 オルトランDX粒剤 1kg 浸透移行性 アブラムシ コガネムシ幼虫地域適応は県名だけで決まりません。平坦地の高温を避けるために成熟を遅らせると、中山間地では登熟後半の低温に当たる場合があります。長崎県では、にこまるは高温に強い一方、熟期が遅く中山間地域で充実不足が見られたため、より早生のなつほのかを選定しました。なつほのかは鹿児島県育成ですが、導入判断を支えたのは長崎県内の比較試験です。育成地と導入先の試験を分けて読む実例。
長崎県の2018年度適地比較は、なつほのか、にこまる、ヒノヒカリを1kmメッシュで評価しました。主に1990〜2009年の気温と品種別生育予測式を使い、高温だけでなく低温を避けられる出穂期間から移植可能期間を求めています。なつほのかは広い範囲が適地となりましたが、適地内にも高温の危険期間が含まれるため、いつ植えても安全という地図ではありません。圃場単位では実測気温、水利、共同乾燥施設も合わせるよう求めています。適地マップの作成条件と使い方。
候補名として、一覧の5品種に加え、こしいぶき、つや姫、雪若丸、元気つくし、にこまる、さがびより、くまさんの力も残します。ただし、名前を挙げることと、この地域への導入を推奨することは別です。各候補について同じ地域の試験と栽培資料をそろえてから比較します。
今後の育種で注目できる具体例は、にじのきらめきで示された高温回避性です。農研機構は、穂が葉に遮られ、蒸散による冷却を受けやすい性質が高温時の品質維持に関わる可能性を示し、高温耐性と高温回避性を組み合わせる育種の方向を示しています。未確認の『スーパーライス』を約束するのではなく、どの特性を強める研究かを区別して見ることが重要です。高温回避性を育種へつなげる研究。