高温耐性品種の米一覧と温暖化対策!収量と品質を保つ品種の特徴

近年の猛暑は、大切に育てたお米の品質を脅かしています。この記事では、地球温暖化に対応するために開発された高温耐性品種の米を一覧でご紹介します。収量と品質を維持するための品種選びや栽培のコツについて、一緒に考えてみませんか?

高温耐性品種の米の一覧

高温耐性品種で未来の農業を守る
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品質低下リスクの軽減

猛暑による白未熟粒などの発生を抑え、お米の等級と価値を維持します。

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安定した収量の確保

厳しい気候条件下でも収量が落ちにくく、安定した経営基盤を築けます。

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新たなブランド価値の創造

環境変化に対応した米として、消費者への新しいアピールポイントになります。

高温耐性品種の米一覧とそれぞれの特徴

 

地球温暖化の影響で、お米の品質低下が全国的な問題となっています。特に登熟期の高温は、玄米が白く濁る「白未熟粒」などを引き起こし、お米の等級を下げてしまいます 。この課題に対応するため、農研機構や各都道府県の農業試験場では、高温に強いお米の品種開発が積極的に進められています 。これらの「高温耐性品種」は、暑い夏でも品質や収量を維持しやすいのが大きな特徴です 。
以下に、現在注目されている主な高温耐性品種とその特徴をまとめました。品種ごとに耐性の強さや栽培のしやすさ、食味などが異なるため、ご自身の地域や経営方針に合った品種を選ぶ際の参考にしてください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

品種名 主な栽培地 特徴 食味
にじのきらめき 関東・東海以西 倒伏に強く、コシヒカリ比で15%以上の多収性を持つ 。縞葉枯病への抵抗性もあるため栽培しやすい 。 粒が大きく、粘りが強く甘みがある。コシヒカリと同等の極良食味と評価されている 。
つきあかり 東北・北陸 コシヒカリより早く収穫できる早生種。倒伏に強く、収量性も高い。カレーや丼ものなど、様々な料理に合う。 あっさりとした味わいながら、うま味も感じられる。炊き上がりのつやが美しい。
なつほのか 九州地方 高温登熟性が「極強」と評価されており、猛暑でも品質が安定している。ヒノヒカリに代わる品種として期待されている 。 粘りと硬さのバランスが良く、しっかりとした粒感を楽しめる。
きぬむすめ 西日本 草丈が短く倒れにくいため栽培しやすい。品質・収量ともに安定している。作付面積も広い人気品種 。 つややかで白く美しい炊き上がり。粘りが強く、食味も良好。
新之助 新潟県 新潟県が開発したブランド米。成熟期がコシヒカリより遅く、高温でも高品質を維持できる 。 大粒でコクと甘みが豊か。冷めても硬くなりにくく、お弁当やおにぎりにも向いている。

この他にも、「つや姫」「雪若丸」「元気つくし」「にこまる」など、多くの優れた高温耐性品種が開発されています 。

 

参考)稲の高温耐性品種の導入を検討してみませんか/つくば市公式ウェ…

参考情報として、農林水産省が公開している高温耐性品種に関する資料が役立ちます。品種の育種目標や普及状況について詳しく解説されています。

 

高温耐性品種の育種と普及 - 農林水産省

高温耐性品種を導入するメリットとデメリット

高温耐性品種の導入は、温暖化時代を乗り切るための有効な手段ですが、メリットだけでなくデメリットも理解した上で検討することが重要です。

 

メリット

     

  • 品質・収量の安定化: 最大のメリットは、登熟期の高温による白未熟粒や胴割れ米の発生を抑え、品質の低下を防げる点です 。これにより、1等米比率が向上し、農業収入の安定化に繋がります 。
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  • 作期の分散: コシヒカリなどの主力品種とは収穫時期が異なる品種を導入することで、収穫作業が集中するのを避けられます。労働力の分散が可能になり、作業効率の向上が期待できます。
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  • 新たな販路の開拓: 「地球温暖化に対応したお米」として、環境意識の高い消費者へのアピールが可能です。地域の新たなブランド米として育成し、差別化を図ることで、新たな販路を開拓できる可能性があります 。

デメリット

     

  • 栽培技術の転換: これまで栽培してきた品種とは、肥料をやる量やタイミング、水の管理方法などが異なる場合があります。例えば、「にじのきらめき」は倒伏に強いものの、コシヒカリよりも稈長が長いため、施肥量には注意が必要です 。新しい品種の特性を理解し、栽培マニュアルを確認する必要があります。
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  • 種子の価格と入手性: 新しい品種や人気の品種は、種子の価格が従来のものより高かったり、入手が困難だったりする場合があります。事前にJAや種苗店に確認することが不可欠です。
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  • 消費者からの知名度: コシヒカリやあきたこまちといった有名品種に比べると、新しい品種はまだ知名度が低いことが多いです。そのため、販売する際には、食味の魅力や栽培のこだわりなどを積極的に伝え、価値を理解してもらう努力が求められます。

高温耐性品種の栽培における注意点と対策

高温耐性品種の能力を最大限に引き出すためには、品種の特性に合わせた栽培管理が不可欠です。ただ植えるだけでは、期待した効果が得られないこともあります。

 

💧 水管理の徹底
登熟期の高温対策として、水管理は非常に重要です。稲は根から水分を吸収し、葉から蒸散することで体温を調節しています。田んぼの水が不足するとこの機能が弱まり、高温障害を受けやすくなります。

 

     

  • 間断かんがい: 稲刈りの直前まで田んぼの土が湿った状態を保つように、1~2日おきに水を入れる「間断かんがい」や「走り水」を実践しましょう 。
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  • 深水管理: 水をやや深めに張ることで、地温の上昇を抑える効果も期待できます。ただし、かけ流しは用水が豊富な地域に限られるため、水利慣行には注意が必要です 。

🌱 土づくりと肥料設計
健康な稲を育て、根をしっかりと張らせることも高温耐性を高める上で重要です。

 

     

  • 土づくり: 堆肥などを利用して、保水力と通気性の良い土づくりを心がけましょう。深耕して根が深く張れる環境を整えることも、白未熟粒の抑制に繋がります 。
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  • ケイ酸の施用: ケイ酸は、稲の組織を硬くし、病気や倒伏への抵抗力を高めるだけでなく、高温への耐性も向上させます 。
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  • 適切な追肥: 出穂後の栄養状態(特に窒素)が重要です。ただし、肥料が多すぎると過剰に茂って倒伏したり、食味が落ちたりする原因にもなります。品種の特性に合わせた適切な施肥設計が求められます。

地域の気候や土壌の条件は様々です。栽培を始める前には、最寄りの農林事務所や普及センター、JAに相談し、地域に合った栽培暦や技術指導を受けることを強くお勧めします 。

 

参考)暑さに負けない米づくり対策 – 茨城県農業再生協…

高温耐性品種と食味の関係性!美味しいお米は作れる?

「高温に強いお米は、味が落ちるのではないか?」という懸念を持つ方もいるかもしれません。確かに、高温障害はデンプンの蓄積を妨げ、お米の食味を低下させる一因となります 。しかし、近年の品種開発では、高温耐性だけでなく「食味」も極めて重視されています。
驚くべきことに、多くの高温耐性品種が、食味の最高ランクである「特A」評価を獲得しています 。例えば、「にじのきらめき」は、その開発段階から「コシヒカリ」と同等レベルの極良食味であることが確認されています 。また、山形県の「つや姫」や佐賀県の「さがびより」なども、高温耐性と優れた食味を両立させたブランド米として高い評価を得ています 。

 

参考)高温耐性品種が存在感を示した今年の米の食味ランキング

食味は単一の指標ではなく、「粘り」「硬さ」「甘み」「香り」など様々な要素で構成されます。高温耐性品種の中には、「つきあかり」のように、粘りが控えめでカレーや炒飯、丼ものなどに合う特性を持つ品種もあります。これは、従来のコシヒカリ一辺倒だった市場に、新たな選択肢を提供するものと言えるでしょう。消費者のライフスタイルや食の好みが多様化する中で、料理に合わせてお米を選ぶ楽しみを提案できるのも、新しい品種の魅力の一つです。

 

意外と知られていませんが、お米の最終的な食味は、品種のポテンシャルだけでなく、収穫後の乾燥や調製の仕方によっても大きく左右されます。どんなに優れた品種でも、急激な乾燥は胴割れ米の原因となり、食感を損ないます。高温耐性品種の美味しさを最大限に引き出すためには、品種のポテンシャルを信じ、収穫から消費者の口に届くまでの全ての工程で丁寧な作業を心がけることが、何よりも重要なのかもしれません。

 

地域別で見るおすすめの高温耐性品種と今後の開発動向

高温耐性品種は、その特性から特定の地域で普及が進む傾向にあります。ここでは、地域ごとにおすすめの品種と、今後の開発動向についてご紹介します。

 

地域別の主な普及品種

     

  • 新潟県: 「こしいぶき」は、コシヒカリよりも収穫が早く、猛暑でも品質が安定していることから広く作付けされています。近年は、より食味を追求した「新之助」も注目を集めています 。
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  • 山形県・宮城県: 「つや姫」は、高温耐性と卓越した食味でブランドを確立しました。同じく山形県で開発された「雪若丸」は、しっかりとした粒感でつや姫とは異なる魅力を持ちます 。
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  • 西日本(鳥取、島根、岡山など): これまで「ヒノヒカリ」が主力でしたが、高温による品質低下が問題となり 、後継品種として「きぬむすめ」や「にこまる」の作付けが急速に拡大しています 。
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  • 九州: 暑さが厳しい九州では、早くから高温耐性品種の開発が進められてきました 。「元気つくし」(福岡)、「さがびより」(佐賀)、「なつほのか」(鹿児島など)、「くまさんの力」(熊本)といった各県のオリジナル品種が競い合っています 。

今後の開発動向:ゲノム編集技術への期待
将来的には、さらに革新的な技術が米の品種改良を加速させると期待されています。その一つが「ゲノム編集技術」です。この技術を使えば、従来の方法よりも遥かに速く、狙った特性だけを改良することが可能になります。例えば、病気に強く、高温にも耐え、かつ収量も多いといった、複数の優れた特性を併せ持つ「スーパーライス」の開発も夢ではありません。

 

気候変動は今後さらに深刻化すると予測されています。私たち農業従事者は、こうした最新の科学技術の動向にも目を向け、変化に対応していく柔軟な姿勢が求められています。常に情報をアップデートし、持続可能な米作りを目指していくことが、未来の食料安全保障に繋がるのです。

 

 


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