ケイ酸肥料効果で水稲の倒伏と品質を向上!野菜への施用と種類

ケイ酸肥料の効果を最大限に引き出す方法を知りたくありませんか?水稲の倒伏防止や野菜の品質向上、病害虫対策としての使い方まで詳しく解説します。あなたの圃場に合った施用方法とは?

ケイ酸肥料の効果

ケイ酸肥料の導入メリット
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水稲の倒伏防止と品質アップ

茎葉を硬く丈夫にし、台風や風雨による倒伏を防ぎます。受光態勢が良くなり登熟歩合が向上します。

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病害虫・ストレスへの抵抗力

「シリカ層」を形成し、いもち病や害虫の侵入を物理的にガード。高温や乾燥などのストレス耐性も強化します。

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野菜の収量増と根の活性化

キュウリやイチゴなどの野菜でも光合成を促進。根の酸化力を高め、土壌からの養分吸収をスムーズにします。

ケイ酸で水稲の倒伏を防ぎ収量と品質を向上させる働き

 

農業の現場において、特に水稲栽培で「ケイ酸」が重要視される最大の理由は、作物の物理的な強化にあります。ケイ酸(SiO₂)は、植物の根から吸収されると、道管を通って地上部へと運ばれ、最終的に葉や茎の表皮細胞に沈着します。このプロセスによって形成されるのが「クチクラ・シリカ二重層」と呼ばれる強固なガラス質の層です。

 

参考)ケイ酸の特徴|肥料として期待できる効果を解説 | コラム |…

この二重層が形成されることで、イネの茎葉は非常に硬く、丈夫になります。具体的なメリットとして、以下の点が挙げられます。

 

  • 耐倒伏性の向上: 茎が太く硬くなることで、台風や強風、あるいは窒素過多による徒長で発生しやすい「倒伏」を物理的に防ぐことができます。倒伏は収穫作業の効率を著しく低下させるだけでなく、穂発芽や品質低下の直接的な原因となるため、これを防ぐことは収量確保に直結します。

    参考)肥料の基礎知識②~ケイ酸の役割と施用法~ - アグリポートW…

  • 受光態勢の改善: 葉がピンと直立することで、太陽の光が株元まで届きやすくなります。これにより、群落全体の光合成効率が高まり、登熟(米粒が実ること)が促進されます。特に密植栽培や多肥栽培においては、下葉への光遮蔽が防げるため、効果が顕著に現れます。

    参考)https://www.zennoh.or.jp/operation/hiryou/pdf/qa_keisankouka.pdf

  • 登熟歩合と千粒重の向上: 光合成が活発になることで、デンプンの蓄積がスムーズに行われます。結果として、空籾(しいな)が減り、一粒一粒が充実した重いお米(千粒重の増加)になります。これが最終的な収量アップに大きく貢献するのです。

    参考)旨くて売れる米作りの極意 〜ケイ酸を知ろう!〜

また、近年の研究では、ケイ酸が水稲の「玄米品質」にも良い影響を与えることがわかっています。ケイ酸を十分に吸収したイネは、体内の窒素代謝が適正に保たれ、玄米中のタンパク質含有率が低下する傾向があります。一般的に、お米はタンパク質含有率が低いほど粘りがあり、食味が良いとされています。つまり、ケイ酸肥料の施用は、単に「倒れなくする」だけでなく、「美味しいお米を作る」ための隠れた必須条件とも言えるのです。

 

参考)ケイカル

さらに、ケイ酸は植物体内での水の生理作用にも関わっています。蒸散作用を適切に調節する働きがあり、猛暑日などの過酷な環境下でも、水分不足による萎れを防ぎ、光合成能力を維持する効果が期待できます。気候変動により夏場の高温化が進む現代の農業において、ケイ酸の役割はこれまで以上に重要度を増しています。

 

参考)ケイ酸で作物の抵抗性を高めよう!種類と効果的な使い方

ケイ酸が光合成を促進し病害虫やストレスへの耐性を強化

ケイ酸がもたらす効果の中で、近年特に注目されているのが「複合的なストレス耐性」の強化です。植物は生育過程で、病原菌や害虫といった「生物的ストレス」と、高温、低温、乾燥、塩害といった「非生物的ストレス」の両方にさらされます。ケイ酸はこれらすべてのストレスに対して、防御壁としての役割と、生理機能を調整する役割の両面で植物を守ります。

 

参考)https://www.mdpi.com/2073-4395/14/6/1141/pdf?version=1716801465

まず、病害虫に対する防御メカニズムについて詳しく見ていきましょう。

 

  • 物理的なバリア機能: 前述した「クチクラ・シリカ二重層」は、鎧のように葉の表面を覆います。これにより、イネの天敵である「いもち病」菌の侵入糸が細胞内に侵入するのを物理的に阻止したり、「ウンカ」や「ヨコバイ」などの害虫が口針を刺すのを困難にしたりします。農薬に頼りすぎずに病害虫の被害を抑えることができるため、減農薬栽培を目指す上でも非常に有効です。

    参考)ケイ酸で稲を守る!倒伏&高温障害を防ぐ効果と肥料の使い方を徹…

  • 誘導抵抗性の発現: ケイ酸は植物体内でシグナル伝達に関与し、病原菌の攻撃を受けた際に、植物自身の防御システムを素早く作動させる「プライミング効果」があるとも言われています。これにより、紋枯病やごま葉枯病などの発生も抑制されることが報告されています。

    参考)ケイ酸の特徴と効果、肥料の種類と簡単で効果的な使い方

次に、環境ストレス(非生物的ストレス)に対する効果です。特に「高温・乾燥障害」への対策としてケイ酸は極めて有効です。

 

  • 水分の利用効率向上: ケイ酸を十分に吸収した葉は、気孔からの過剰な蒸散を抑える能力が高まります。これにより、土壌が乾燥している時期や、日中の気温が極端に高い時間帯でも、植物体内の水分ポテンシャルを高く保つことができます。結果として、高温障害による白未熟粒の発生(お米が白く濁る現象)を軽減する効果が期待できます。

    参考)果菜類

  • 塩害の軽減: 塩類濃度が高い土壌や、海岸近くの圃場においても、ケイ酸はナトリウムの過剰吸収を抑制し、根の機能を保護する働きがあることが示唆されています。これは、根の細胞膜の安定性を高めることに関連していると考えられています。

    参考)https://www.mdpi.com/2075-1729/13/2/448/pdf?version=1675586663

さらに、光合成能力の維持・向上も見逃せません。葉が直立して受光量が増える「形態的な変化」に加え、ケイ酸自体が葉緑素(クロロフィル)の分解を抑制し、老化を遅らせる効果があるという報告もあります。収穫直前まで葉が青々として機能し続ける(登熟期の葉色が保たれる)ことは、デンプンを穂に送り続けるために不可欠です。このように、ケイ酸は植物を「硬くする」だけでなく、内部から「元気にする」ための生理活性物質のような働きも担っています。

 

参考)https://www.mdpi.com/2223-7747/13/2/207/pdf?version=1704967083

ケイ酸の野菜への施用効果と根の酸化力を高めるメリット

ケイ酸肥料といえば「イネ専用」というイメージが強いかもしれませんが、実は多くの畑作物や野菜類にも優れた効果を発揮します。特に、ウリ科(キュウリ、メロン、カボチャ)、ナス科トマト、ナス)、イチゴ、ネギ類などは、イネほどではないもののケイ酸を好んで吸収する植物です。これらの野菜栽培において、ケイ酸は地上部の強化だけでなく、「地下部(根)」の環境改善に大きな役割を果たします。

 

参考)もみ殻に多く含まれるケイ酸について。ケイ酸が野菜に与える効果…

野菜栽培におけるケイ酸のメリットを深掘りしてみましょう。

 

  • うどんこ病の抑制: キュウリやイチゴ栽培で頭を悩ませる「うどんこ病」は、葉の表面に菌が繁殖する病気です。ケイ酸を施用して葉の表面を硬くコーティングすることで、菌糸の侵入や伸長を阻害し、発病を抑える効果が実証されています。実際に、養液栽培の現場では、培養液にケイ酸カリウムを添加することで病害防除を行っている事例も増えています。
  • 光合成と品質の向上: 葉が厚く丈夫になることで、ハウス栽培など光線量が不足しがちな環境でも、効率よく光をキャッチできるようになります。これにより、果実の肥大が良くなり、糖度や着色などの品質向上が期待できます。また、果実自体の皮も丈夫になり、輸送中の傷みや日持ちの向上にも寄与します。​

そして、非常に重要なのが「根の酸化力」への影響です。

 

根は呼吸をしており、土壌中の酸素を使ってエネルギーを生み出し、養分を吸収しています。しかし、排水不良の畑や、有機物の分解で酸素が欠乏した土壌では、根が窒息状態になり「根腐れ」を起こしやすくなります。また、酸素不足の状態では、土壌中の鉄やマンガンが還元され、植物にとって有害な過剰吸収を引き起こすこともあります。

 

ケイ酸は、根の表面から酸素を放出する能力(酸化力)を高める働きがあります。根の周囲に酸素の供給ゾーンを作ることで、有害な還元物質(硫化水素など)を無毒化し、根を守ります。これを「秋落ち」(生育後半に根が弱り、急激に収量が落ちる現象)の防止と呼びますが、これは水稲だけでなく、長期取りの野菜栽培においても非常に重要です。

 

参考)施肥方法

根が健全であれば、カルシウムやマグネシウム、微量要素などのミネラル吸収もスムーズになります。特に施設園芸の連作圃場など、塩類集積や土壌環境の悪化が懸念される場所こそ、ケイ酸肥料による「根の保護」と「土壌環境の改善」が安定生産のカギとなります。

 

ケイ酸肥料の種類とケイカルなどの使い方のポイント

ケイ酸を供給できる肥料にはさまざまな種類があり、それぞれの特徴(溶けやすさ、アルカリ分、副成分など)を理解して使い分けることが、コストパフォーマンス良く効果を出す秘訣です。ここでは代表的なケイ酸肥料の種類と、効果的な使い方について解説します。

主なケイ酸肥料の種類と特徴

種類 主な特徴 溶けやすさ 適した用途
ケイ酸カルシウム(ケイカル) 最も一般的。スラグ(鉱石のカス)が原料。アルカリ分を含み、酸性土壌の改良も兼ねる。 緩効性(ゆっくり溶ける) 土作り、元肥
熔成ケイ酸リン肥(ようりん等) リン酸とケイ酸、苦土、石灰を同時に補給できる。火山灰土壌の改良に強い。 緩効性 元肥、追肥
ケイ酸カリウム(水溶性ケイ酸) 水に溶けやすく、速効性が高い。葉面散布剤や液肥として利用されることが多い。 速効性 追肥、緊急時の対策
多孔質ケイ酸資材(シリカゲル等) 表面積が大きく、保肥力改善効果も高い。高濃度で純度の高いケイ酸を供給可能。 中~速効性 高品質栽培、特殊土壌
籾殻くん炭 天然由来の資材。ケイ酸含有率は高いが、結晶化しており吸収されにくい場合もあるため、長期的な土作り向き。 非常に遅効性 土壌改良

効果的な使い方のポイント

  1. 土作りとしての「元肥」施用:

    ケイ酸の基本は「土壌中の有効態ケイ酸」のレベルを底上げすることです。そのためには、作付け前の耕起時に、ケイカルなどの資材を10アールあたり100kg〜200kg程度(土壌分析に基づいて調整)施用するのが一般的です。ケイカルはアルカリ性資材であるため、土壌pHが低い(酸性)圃場の矯正にも役立ちます。ただし、pHが高すぎる場合は、アルカリ分を含まない資材を選ぶ必要があります。

     

    参考)https://www.shk-net.co.jp/wp/wp-content/uploads/2019/04/potassium-silicate_reference01.pdf

  2. 効かせたい時期に合わせた「追肥」:

    水稲の場合、ケイ酸が最も必要になるのは、茎葉が繁茂し始める「幼穂形成期」から「出穂期」にかけてです。この時期にケイ酸が不足すると、倒伏リスクが高まり、いもち病にかかりやすくなります。元肥で十分な量が施用できなかった場合や、生育後半のスタミナ切れ(秋落ち)が心配な場合は、吸収されやすい「水溶性ケイ酸」を含む肥料や、流し込み施肥ができる液状のケイ酸資材を追肥として活用しましょう。

     

    参考)https://www.clion.co.jp/esteck/agriculture/

  3. 「可給態ケイ酸」に着目する:

    肥料袋に書かれている「全ケイ酸」の量だけでなく、植物が実際に利用できる「可給態ケイ酸(クエン酸可溶性など)」の含有量をチェックすることが大切です。鉱物由来の硬いケイ酸は、土壌に入ってもなかなか溶け出しません。スラグ系肥料などは、製造工程で急冷処理などを施して、植物が吸収しやすいガラス質(非晶質)の状態に加工されています。

  4. 地域や土壌条件とのマッチング:

    火山灰土壌や砂質土壌、老朽化した水田では、もともと土壌中のケイ酸が不足していることが多いため、多めの施用が推奨されます。逆に、河川からの水が豊富な地域では、灌漑水から天然のケイ酸が供給されている場合もあります。無駄なコストを抑えるためにも、数年に一度は土壌診断を行い、自分の畑の「ケイ酸供給力」を把握してから施肥設計を立てるのがベストです。

     

    参考)https://www.semanticscholar.org/paper/a9cf61ebd4957bafd6951579128e56f6f44cdcb9

ケイ酸が食味を改善し未消化窒素を減らす独自の効果

最後に、一般的な「丈夫にする」という効果とは異なる視点から、ケイ酸が農産物の「味」や「安全性」にどう貢献しているかについて解説します。これは、近年の高品質・良食味米コンクールなどで上位を目指す生産者の間では常識になりつつあるテクニックですが、一般的にはまだあまり深く知られていない独自視点の情報です。

 

その鍵となるのが、「未消化窒素の低減」というメカニズムです。

 

植物は成長のために窒素を吸収しますが、曇天が続いたり、窒素肥料をやりすぎたりすると、吸収した窒素がタンパク質へと合成されきれず、「硝酸態窒素」やアミドの状態で植物体内に滞留してしまうことがあります。これを「未消化窒素」と呼びます。野菜において硝酸態窒素が多すぎると、えぐみや苦味の原因となったり、葉色が濃くなりすぎて病害虫を誘引したりします。水稲においては、玄米中のタンパク質濃度が高まり、炊飯した際のご飯の粘りや甘みが損なわれ、食味が低下する最大の要因となります。

ケイ酸には、この窒素代謝を正常化し、スムーズにする働きがあると考えられています。

 

  • 光合成促進による同化作用の強化: ケイ酸によって受光態勢が改善され、葉緑体の機能が維持されると、光合成が活発になります。光合成で作られた炭水化物(エネルギー)が豊富にあれば、植物は吸収した窒素を効率よくアミノ酸やタンパク質に作り変えることができます。結果として、植物体内の過剰な「浮いた窒素」が消費され、作物が健全な状態に戻ります。
  • 食味スコアの向上: 実際、ケイ酸肥料を適切に追肥した水稲では、玄米タンパク質含有率が下がり、食味計のスコア(アミロースやタンパク質、水分のバランス)が向上したというデータが数多く報告されています。「コシヒカリ」などの良食味品種において、そのポテンシャルを最大限に引き出すためには、窒素コントロールだけでなく、ケイ酸による代謝のサポートが不可欠なのです。​
  • 鮮度保持と栄養価: 未消化窒素が少ない野菜は、腐敗しにくく、冷蔵庫での日持ちが良い傾向があります。また、過剰な窒素によるえぐみが減ることで、野菜本来の甘みや旨味が際立ち、子供でも食べやすい味になります。

つまり、ケイ酸肥料を使うことは、生産者にとっては「作りやすさ(倒伏防止・多収)」のメリットがあり、消費者にとっては「美味しさ・日持ちの良さ」というメリットにつながる、まさにWin-Winの資材と言えるのです。単なる「土壌改良材」としてではなく、「味の調整役」としてケイ酸を再評価し、栽培計画に積極的に組み込んでみてはいかがでしょうか。

 

参考リンク:肥料の基礎知識②~ケイ酸の役割と施用法~(水稲における具体的なメリットと施肥設計について解説)
参考リンク:水稲への効果 | 開発肥料株式会社(けい酸加里肥料による根張り向上や品質改善の詳細データ)
参考リンク:ケイ酸の特徴|肥料として期待できる効果(生物的・非生物的ストレスへの耐性メカニズム)

 

 


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