ごま葉枯病に効く農薬!散布方法から予防まで徹底解説
この記事でわかる!ごま葉枯病対策の3つのポイント
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症状と原因
初期症状の見分け方から、病気が広がるメカニズムまで詳しく解説します。
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農薬の選び方と使い方
効果的な登録農薬の種類、散布のベストタイミングを学び、防除効果を最大化します。
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総合的な予防策
農薬だけに頼らない!土壌管理や品種選びなど、持続可能な予防方法を紹介します。
ごま葉枯病の症状と発生原因【初期症状を見逃さない】
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ごま葉枯病は、主に葉や穂に発生する稲の病気です。その名の通り、まるで黒ゴマを振りかけたような、黒褐色の小さな斑点が現れるのが特徴です 。この初期症状を見逃してしまうと、病気はあっという間に圃場全体に広がり、収量や品質の低下に直結するため、日々の観察が非常に重要になります。
主な症状
- 葉の症状:最初は下位の葉に、黒色で楕円形の小さな斑点が現れます。病気が進行すると、斑点は2~3mmのゴマ粒ほどの大きさになり、周囲が黄色く変色した輪紋を伴うようになります 。重症化すると葉全体が枯れ上がり、光合成が阻害されてしまいます。
- 穂の症状:出穂期以降に感染すると、穂首やもみに黒い条線や不鮮明なシミが現れます。特に穂首が侵されると、栄養が穂全体に行き渡らなくなり、稔実不良や青米、胴割れ米の原因となり、米の等級を著しく下げてしまいます 。
- 苗の症状:育苗箱の段階で発生することもあります。葉がねじれたり、生育が著しく悪くなったりした場合は注意が必要です。激しい場合には苗が枯死することもあります 。
発生原因と伝染経路
ごま葉枯病の主な発生源は、病原菌が付着した種もみや、前年に感染した稲わらです 。これらの発生源から病原菌の胞子が飛散し、周辺の稲に感染を広げていきます。特に、以下のような条件が揃うと発生しやすくなります。
- 土壌条件:砂質土壌で肥料持ちが悪く、養分が流亡しやすい「秋落ち」する水田や、長年の稲作で土壌が疲弊し、根腐れが起きやすい老朽化水田で多発する傾向があります 。
- 栄養状態:生育期間中に窒素が切れたり、カリウム、ケイ酸、鉄、マンガンなどの特定のミネラルが不足したりすると、稲の抵抗力が弱まり、発病を助長します 。
- 気象条件:高温で乾燥した天候が続くと、病原菌の胞子が飛散しやすくなり、感染が拡大します。
初期症状を早期に発見し、適切な対策を講じることが、被害を最小限に抑える鍵となります。
農林水産省の病害虫図鑑では、様々な病気の写真を確認できます。ご自身の圃場の症状と比較する際の参考にしてください。
農林水産省 植物防疫所>病害虫図鑑
ごま葉枯病に効果のある登録農薬の種類と選び方
ごま葉枯病の防除には、登録農薬の適切な使用が不可欠です。しかし、ただ闇雲に散布するだけでは十分な効果は得られません。ここでは、効果的な農薬の種類と、選び方のポイントについて詳しく解説します。
ごま葉枯病に有効な農薬は、主に以下の系統に分類されます。
- QoI剤(ストロビルリン系):病原菌の呼吸を阻害することで効果を発揮します。予防効果に優れており、胞子の発芽や菌糸の伸長を初期段階で抑えます。代表的な成分には「アゾキシストロビン」などがあります。
- DMI剤(トリアゾール系):病原菌の細胞膜の生合成を阻害し、その増殖を抑えます。予防効果に加えて治療効果も期待できるため、発病初期の散布にも有効です。成分には「プロピコナゾール」や「ジフェノコナゾール」などがあります。
- SDHI剤(カルボキサミド系):病原菌のエネルギー生産を阻害します。幅広い病害に効果を示し、近年多くの混合剤に採用されています。
- その他:古くから使われている「マンゼブ」などの保護殺菌剤も、予防効果が期待できます 。また、「プロベナゾール」のように、稲自体の病害抵抗性を高める作用を持つ薬剤もあります 。
農薬選びの3つのポイント
- 作用性の異なる薬剤を組み合わせる(ローテーション散布):毎年同じ系統の農薬を使い続けると、その農薬が効かない「薬剤耐性菌」が出現するリスクが高まります 。これを防ぐため、作用性の異なる系統の薬剤を年間防除体系に組み込み、順番に使用する「ローテーション散布」を徹底しましょう 。例えば、「1回目はQoI剤、2回目はDMI剤」といった具合です。
- 育苗箱処理剤と本田散布剤を使い分ける:省力化の観点から、育苗箱に施用するタイプの粒剤は非常に有効です。これにより、本田での初期発生を長期間抑制できます。その後、本田での発生状況に応じて、穂ばらみ期以降に茎葉散布剤を追加することで、より確実な防除が可能になります。
- 混合剤を有効活用する:ごま葉枯病だけでなく、いもち病や紋枯病など、他の病害も同時に発生することがよくあります。複数の有効成分を含む混合剤を選ぶことで、一度の散布で幅広い病害虫を同時に防除でき、労力とコストの削減につながります。
農薬を使用する際は、必ずラベルに記載されている使用時期、使用回数、希釈倍率などの使用基準を遵守してください。地域の防除暦やJAの指導も参考に、自身の圃場に最適な防除計画を立てることが重要です。
農薬の登録情報は、農薬工業会のウェブサイトで検索できます。使用する農薬がごま葉枯病に適用があるか、事前に確認しましょう。
農薬工業会>農薬登録情報検索システム
ごま葉枯病の農薬散布!効果を最大化する時期と方法
ごま葉枯病の農薬散布は、タイミングが最も重要です。効果を最大限に引き出すためには、「いつ」「どのように」散布するのかを正しく理解しておく必要があります。ここでは、防除の关键となる散布時期と、効果的な散布方法について解説します。
散布のベストタイミングは「穂ばらみ期~穂揃い期」
ごま葉枯病は、特に穂に感染すると米の品質に致命的なダメージを与えます。そのため、穂を保護するための散布が防除の中心となります。最も重要な散布時期は「穂ばらみ後期(出穂の約5~7日前)から穂揃い期(全体の8~9割が出穂した時期)」です 。
- 1回散布の場合:穂ばらみ後期から出穂期にかけての散布が一般的です。この時期に散布することで、出穂してくる穂を病原菌の感染から守ります。
- 2回散布の場合:より確実な防除を目指すなら、穂ばらみ後期と穂揃い期の2回散布が推奨されます 。特に、葉での発病が多い場合や、長雨などで感染リスクが高いと予想される場合は、2回散布を基本と考えましょう。
育苗箱施用剤を使用している場合でも、薬剤の効果が切れてくる生育後期には感染のリスクが高まります。圃場をこまめに見回り、発生状況に応じて追加の茎葉散布を検討してください。
散布方法のポイント
農薬の効果をしっかり発揮させるためには、散布方法にも工夫が必要です。
- 十分な散布量を確保する:農薬が稲の株元や下位葉までしっかりかかるように、十分な水量で散布することが大切です。特に、密植している圃場では、薬液が内部まで届きにくいので注意が必要です。
- 無人ヘリやドローンを活用する:大規模な圃場では、無人航空機による散布が効率的です。ただし、風に流されて隣接する作物に飛散(ドリフト)しないよう、風の弱い日を選ぶなど細心の注意を払いましょう。
- 展着剤を適切に使う:農薬のラベルを確認し、必要であれば展着剤を加用します。展着剤は、薬液が葉や穂の表面に均一に広がり、付着しやすくなる効果があり、雨による流亡を軽減することも期待できます。
散布作業を行う際は、防護マスク、ゴーグル、長袖の作業着などを着用し、農薬を吸い込んだり皮膚に付着したりしないよう、安全管理を徹底してください。
ごま葉枯病は農薬だけじゃない!総合的防除と予防策
ごま葉枯病の対策は、農薬散布だけに頼るべきではありません。農薬の効果を最大限に活かし、かつ環境への負荷を減らすためには、日々の栽培管理を通じた「総合的病害虫管理(IPM)」の考え方が非常に重要です。ここでは、農薬以外の予防策や耕種的防除について紹介します。
1. 健全な種もみを使う
ごま葉枯病は種子伝染する病気のため、全ての対策は健全な種もみから始まります 。
- 採種圃で病気が発生していない、健全な種もみを選びましょう。
- 塩水選を適切に行い、充実した重い種子だけを選抜します。
- 農薬による種子消毒を徹底し、種もみに付着している病原菌を死滅させます。
2. 抵抗性品種を導入する
ごま葉枯病に対して比較的強い「抵抗性品種」を作付けすることも有効な対策の一つです 。例えば、「Tadukan」という品種は、ごま葉枯病への強い抵抗性を持つことが知られています 。近年では、この抵抗性遺伝子を利用した新しい品種の開発も進められています。毎年ごま葉枯病の発生に悩まされている圃場では、地域の気候や栽培体系に合った抵抗性品種の導入を検討する価値は十分にあります。
3. 栽培環境を整える(耕種的防除)
病原菌が活動しにくい環境を整えることも重要です。
- 稲わらの適切な処理:病原菌の越冬場所となる稲わらは、圃場に残さないことが基本です。すき込みを行う場合は、早期に、かつ深くすき込むことで、わらの分解を促進し、病原菌の密度を下げることができます。
- 適切な施肥管理:生育期間中に窒素が過剰になったり、逆に不足したりすると稲が軟弱になり、病気にかかりやすくなります。土壌診断に基づいた適切な施肥設計を心がけましょう。
- 輪作:可能であれば、イネ科以外の作物(大豆など)との輪作を取り入れることで、土壌中の病原菌の密度を効果的に下げることができます 。
これらの対策を組み合わせることで、農薬への依存度を減らし、より持続可能で安定した稲作経営を目指すことができます。
【独自視点】ごま葉枯病と土壌管理の密接な関係とは?
多くの生産者がごま葉枯病の対策として農薬散布に注目しがちですが、実はこの病気の発生は、土壌の状態と非常に密接に関わっています。農薬はあくまで対症療法であり、根本的な解決を目指すなら、土壌そのものを見直すことが不可欠です。ここでは、あまり語られることのない「土壌」という視点から、ごま葉枯病の発生メカニズムと対策を深掘りします。
「隠れ栄養失調」が病気を招く
ごま葉枯病が多発する圃場の土壌を分析すると、特定のミネラルが欠乏しているケースが非常に多く見られます。特に重要なのが「鉄」「マンガン」「ケイ酸」「カリウム」です 。
- 鉄・マンガン:これらは稲の生体内で、病原菌の侵入に対抗するための防御反応に深く関わっています。鉄やマンガンが不足すると、稲は病原菌に対する抵抗力が弱まり、容易に感染してしまいます。特に、水はけが良すぎる砂質土壌や、有機物の投入が少ない「痩せた土地」では、これらの微量要素が欠乏しがちです 。
- ケイ酸:ケイ酸は稲の細胞壁を構成する重要な成分です。ケイ酸を十分に吸収した稲は、葉や茎の組織が硬く、物理的に病原菌が侵入しにくくなります。いわば、植物の「鎧」の役割を果たすのです。
- カリウム:カリウムは根の活力を高め、養分の吸収を助ける働きがあります。カリウムが不足すると根腐れが起きやすくなり、稲全体の活力が低下。結果として病気にかかりやすくなります 。
窒素・リン酸・カリの三大要素だけでなく、こうした微量要素のバランスが崩れた「隠れ栄養失調」の状態が、ごま葉枯病の引き金になっています。
土壌診断から始める根本対策
根本的な対策の第一歩は、ご自身の圃場の状態を正確に知ること、つまり土壌診断です 。
- 土壌診断の実施:地域の農業技術センターやJAに依頼し、土壌の化学性を分析してもらいましょう。特に、pH、EC、そして遊離酸化鉄、易還元性マンガン、可給態ケイ酸、交換性カリウムの数値は必ずチェックすべき項目です。
- 診断結果に基づく土壌改良:診断結果に基づき、不足している成分を補給します。
- 鉄やマンガンが不足している場合:鉄資材やマンガン資材を投入します。一時的な対策としてマンガン質肥料の施用も有効です 。
- ケイ酸が不足している場合:ケイ酸カルシウムなどのケイカル資材を投入します。
- カリウムが不足している場合:塩化カリウムや硫酸カリウムを施用します。
- 地力の向上:完熟堆肥や緑肥を投入し、土壌の有機物含量を高めることも非常に重要です。有機物は土壌の保肥力を高め、微量要素が流亡するのを防ぎます。また、土壌微生物の多様性を豊かにし、病原菌が優勢になるのを抑える効果も期待できます 。
農薬による防除は重要ですが、それはあくまで「守り」の対策です。「攻め」の対策である土壌管理を徹底し、稲が本来持つ抵抗力を最大限に引き出すことこそが、ごま葉枯病に負けない強い稲を作るための最も確実で持続可能な道筋と言えるでしょう。
土壌診断や施肥設計については、各都道府県の農業関係機関が詳しい情報を提供しています。
農研機構>研究所・センター
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