サビダニに気づいた時、実は被害を自分で広げているかもしれません。
サビダニ類は、ダニ目フシダニ科に属する植物寄生性のダニです。 農業害虫としてハダニ類に次ぐ重要ダニとして位置づけられており、日本国内では51種のフシダニ科ダニが記録され、そのうちサビダニの名前がつく種は25種にのぼります。
参考)https://www.syngenta.co.jp/cp/articles/20030221
一般的なダニといえば8本脚をイメージしますが、サビダニ類は脚が4本しかありません。これは意外な特徴で、ハダニや他のダニとは一目で区別できます。 体はクサビ形(楔形)をしており、体長は0.1〜0.3mm、体幅は約0.05mmと針の先ほどの大きさです。
農業現場で特に問題となる代表種は以下のとおりです。
参考)サビダニ類
参考)ブドウ新短梢栽培 ワクワク奮闘記(11)害虫とのたたかい サ…
チューリップやトマトのサビダニは、国内に持ち込まれた侵入害虫という点が見落とされがちです。それだけに、苗の持ち込みルートに注意することが最初の防衛線になります。
サビダニ類は高温乾燥条件を好み、特に7〜8月の梅雨明け後から密度が急上昇します。 ミカンサビダニであれば多発時期は7〜8月の高温乾燥時で、梅雨明け直後の薬剤散布が特に効果的とされています。
トマトサビダニは施設栽培で多く、露地では発生が少ない傾向があります。 25℃における卵から成虫までの発育期間はわずか6〜7日と非常に短く、発生すると短期間で爆発的な高密度になります。 東京ドーム1個分(約46,755㎡)のハウス全体に広がるまで、条件が整えば1〜2週間もかかりません。sanatech-seed.co+1
農業従事者が見落としやすい拡散ルートがあります。体長0.2mmのサビダニは体に付着しても気づくことができません。 被害株に触れた後、そのまま圃場内を移動することで、自分自身が拡散源になってしまうのです。
参考)憎っくきトマトサビダニ! (農業)|農業大好き❗ 小川隆宏
これは特に注意が必要です。
被害が数本の段階であれば、その株を圃場の外に抜き取って処分することが有効です。 数十本〜数百本に広がっている場合は、即座にダニ剤の散布に切り替える判断が必要になります。
つまり「初発時の迅速な対処」が原則です。
サビダニ類の被害は、発生初期には病気と見間違えることが多くあります。 被害が出て気づいた時には既にダニが他の部位へ移動していることもあり、病気として対処されてしまう例が後を絶ちません。
被害症状は種類と加害時期によって異なります。
| 種類 | 主な被害部位 | 症状の特徴 |
|---|---|---|
| ミカンサビダニ | 果実・葉 | 青い時期の加害→収穫時に灰色、着色期加害→茶褐色に変色 |
| トマトサビダニ | 葉・茎・果実 |
葉裏が褐変して光沢、茎も褐変、果実表面が灰褐色でひび割れ |
| ブドウサビダニ | 葉 | 葉が赤黒く変色、生育不良 |
ミカンサビダニによる被害果は、味・栄養価・保存性などの内容品質には全く影響がなく、人体への影響もありません。 しかし見た目だけで商品価値が大きく下がるため、農家にとっては収入に直結する深刻な問題です。見た目の問題、と甘く見ると痛い損失になります。
参考)https://ameblo.jp/studio-ma/entry-12225511986.html
早期発見には10倍程度のルーペが有効です。 葉の裏面や茎の下部など、被害が出始める場所を重点的にチェックする習慣をつけることが大切です。スマートフォン用のマクロレンズ(1,000〜2,000円程度)を活用すれば、ルーペ不要で手軽に確認できます。
参考)ダニ目に見える?種類別の判別法と確認手順で今すぐ安心【見分け…
参考リンク(フシダニ科・サビダニ類の生態と症状について、シンジェンタジャパンの技術顧問による詳細解説)。
フシダニ科(フシダニ、サビダニ類)の特徴と防除対策 | シンジェンタジャパン
サビダニ類の防除で最も重要なのは、同一系統の農薬を連続使用しないことです。 ダニは生長サイクルが早いため抵抗性を持ちやすく、同じ農薬を使い続けると効果がゼロになる抵抗性個体が急速に増えます。
ローテーション防除とは、RACコード(作用機構の分類番号)の異なる農薬を順番に使う方法です。
代表的な系統は以下のとおりです。
これが基本のローテーション設計です。
ミカンの柑橘園では、4月のマシン油乳剤、7月の殺虫剤、9月の殺ダニ剤という3段階の散布体系が標準的です。 前年に多発した圃場では梅雨前の予防散布も有効とされています。pref+1
農薬の最新の登録情報と使用回数は必ずラベルと農林水産省の農薬登録情報提供システムで確認してください。 作物によって登録内容が異なるので注意が必要です。
参考リンク(トマトサビダニに効く農薬の系統別一覧とIPM活用法について)。
トマトサビダニにおすすめの農薬について | のうかweb
化学農薬に頼り続けるだけでは、抵抗性を持つサビダニが増え、長期的に防除コストが上昇するリスクがあります。 IPM(Integrated Pest Management:総合的害虫管理)という概念では、化学農薬・生物的防除・耕種的管理を組み合わせます。
ミカンサビダニに対しては、土着天敵を活用した防除体系が静岡県農業試験場などで研究されています。 土着天敵の密度が高い4〜6月は天敵に影響の少ない農薬を選択し、7月以降は通常の防除へ切り替えるという体系です。
これは使えそうです。
参考)https://www.pref.shizuoka.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/054/613/669.pdf
一方、トマトサビダニについては現時点では有望な天敵は確認されていないのが実状です。 マルハナバチや天敵を使用するハウスでは逆に薬剤使用が減るため、トマトサビダニが発生しやすくなるという皮肉な側面もあります。
IPMの実践で押さえるポイントをまとめます。
参考)トマト トマトサビダニ : こうち農業ネ…
IPMが条件です。コスト削減と薬剤抵抗性の両方を同時に防ぐ、農業現場で最も現実的なアプローチになります。
参考リンク(静岡県農業試験場によるミカンサビダニの土着天敵活用と総合防除体系の技術情報)。
土着天敵を活用したミカンサビダニの総合的防除体系 | 静岡県