農業試験場で働く公務員は、多くの自治体で「農業職」「農学職」「農業技師」といった技術系区分で採用され、農業試験研究を担当する部局に配置されます。
採用案内では、農業・園芸・畜産・農業経済など農学系全般を対象としつつ、配属先として「農業試験場」「畜産試験場」「農業技術センター」などが明記されていることが多く、試験場勤務は採用時点から主要なキャリアの一つとして位置づけられています。
国家公務員としては、農林水産省や農研機構などが農業研究職を採用しており、研究所勤務に近い働き方になりますが、この記事では特に地方公務員としての県等の農業試験場職員に焦点を当てます。
農業職の採用試験は、一般行政職と同様に教養試験・専門試験・論文・面接などで構成されますが、農業職向けには作物学・土壌肥料・植物保護・農業経済などの専門科目が課されるケースが一般的です。
参考)農業職・農業技術職の公務員採用試験日程・求人情報
一方で、近年はSPI型の適性検査や総合問題型の出題に移行している自治体もあり、専門教科を深く問うよりも「基礎学力+論理的思考+コミュニケーション力」を重視する流れも見られます。
参考)職員採用/農学職
募集要項では、学歴不問としつつも「農学系学部卒が望ましい」などの記載がある自治体もあり、現場農家からの転職で受験を考える場合は、受験資格の要件を丁寧に確認しておくことが重要です。
参考)農業試験場への就職について。私は今、国立大学農学部の一年生で…
農業試験場に限定した採用試験というより、県全体の農業職として採用され、その後に「試験研究」「普及指導」「農業行政」へローテーションしていく仕組みが多くの県で採用されています。
参考)農学
宮崎県や福井県などの採用案内・先輩職員の声では、最初の数年間を試験場で研究補助や試験区管理に携わり、その後本庁や農業改良普及センター等に異動していくキャリアパスが紹介されています。
参考)福丸 晴菜|仕事の紹介|宮崎県職員採用案内
そのため、「一生研究だけをやる」というより、研究・普及・行政を一通り経験しながら、最終的には企画立案やマネジメントも担う中堅・管理職を目指す長期的な視野が求められます。
都道府県の農業試験場では、作物別・技術分野別に部や研究室が分かれており、たとえば水稲・野菜・果樹・畜産飼料・環境保全・病害虫防除などのテーマごとに研究チームが編成されています。
各チームは新品種の育成、栽培体系の改善、施設園芸の省エネ技術、病害虫や雑草の総合的管理技術(IPM)の開発など、農業現場の課題に直結した試験研究を数年単位の計画で進めています。
研究テーマは、国や県の農業振興計画、現場からの要望、JAなど関係機関との協議の中で設定されるため、単なる基礎研究ではなく「数年後に農家が実際に使える技術」を目標にしている点が特徴です。
一日の業務は季節によって変動が大きく、栽培シーズンには圃場での管理作業やデータ採取が増え、オフシーズンには室内での解析・報告書作成・論文執筆・次年度計画づくりに時間を多く割きます。
参考)農学職 - 和歌山県職員採用情報サイト
典型的な一日は、朝のミーティングで天候と作業計画を確認し、その後圃場での調査や管理(播種、定植、追肥、病害虫調査など)を行い、午後は測定データの整理や統計処理、報告資料の作成を進める流れです。
夕方には天候記録や作業日誌をまとめ、必要に応じて農家や普及員との打合せ、試験圃場の見学受け入れなどを行うこともあり、単に研究だけでなくコミュニケーションの機会も少なくありません。
あまり知られていない点として、農業試験場の公務員は「研究発表会」「成果展示圃」「現地検討会」などの場で、一般農家やJA担当者を対象にした説明役を務めることが多く、プレゼン能力や分かりやすい表現力も評価されます。
参考)職員採用試験受験者のための滋賀県職員(農業職)仕事紹介|滋賀…
また、国の研究機関や大学との共同研究プロジェクトに参画するケースもあり、現場に近い立場でありながら、統計解析ソフトやリモートセンシングなど高度な研究手法を学ぶ機会が得られるのも特徴です。
参考)2025年新卒募集要項
地方によっては、試験場内に附属の加工施設や品質評価装置が整備されており、新品種の加工適性評価や食味官能試験など、商品化を意識した研究にも深く関わることがあります。
参考)農業 - 栃木県職員募集案内
農業試験場の公務員は、地方自治体の技術系職員として位置づけられるため、給与水準は一般行政職とほぼ同じであり、経験年数に応じて安定的に昇給していきます。
農業土木職の公務員の平均年収は約650万~660万円とされ、農学系の農業職も同程度のレンジで推移する例が多く、長期勤務を前提とすれば民間農業関連企業と比べても遜色ない水準です。
初任給は大学卒で20万円台前半~後半程度ですが、地域手当や扶養手当、住居手当などが加算されるため、トータルでは地域の一般的な生活水準を維持しやすい待遇となっています。
働き方の面では、試験場は農繁期に残業や休日出勤が増える傾向がある一方、オフシーズンには比較的落ち着いた勤務となり、年間を通してみるとワークライフバランスを取りやすい職場と評価されることが多いです。
近年は労働時間管理が厳格化されており、時間外勤務の削減や休暇取得の促進が進んでいる自治体も多く、「昔は夜遅くまで研究室に残るのが当たり前だった」という世代からの働き方改革が進行中です。
女性職員の比率もじわじわと増加しており、育児休業や短時間勤務制度を活用しながら研究と家庭を両立している事例が採用案内の「先輩職員メッセージ」に掲載されるなど、多様な働き方が現実的な選択肢になりつつあります。
意外な点として、農業試験場の研究成果がヒット品種や高付加価値ブランドに結びついた場合、自治体全体の農業産出額の押し上げや地域イメージ向上に直結し、その功績が表彰や表彰休暇などの形で評価されることもあります。
また、一部の試験場では特許出願や品種登録に関わる機会もあり、知的財産の管理・ライセンス契約など、通常の農家目線では触れることの少ない業務に携わることで、農業ビジネスの新しい側面を学べる点も見逃せません。
ただし、公務員としての身分である以上、副業や営利企業との利害関係には厳格な制約があり、現場の経験を活かしたコンサル業や農産物販売を個人で行う際には、地方公務員法や所属自治体の倫理規程を十分確認する必要があります。
参考)地方公務員です。大卒程度の農業職で入りましたが、試験場勤務が…
農業従事者としての経験を持つ人が農業試験場の公務員になると、圃場の細かな違いに対する感度や、農家が本当に困っているポイントへの理解の深さが、研究テーマの設定や実証試験の設計に活かされます。
たとえば、マニュアル通りの試験設計では見落としがちな「作業労力」「機械の通行性」「出荷規格へのフィット感」といった現場のリアリティを、研究計画の早い段階から組み込むことで、より採用されやすい技術提案を作りやすくなります。
普及員やJA職員との打合せでも、自分自身が農家として経験してきた繁忙期のスケジュール感やリスク感覚を共有できるため、研究成果の導入スケジュールや実証圃の設置計画を現実的な形で詰めることができます。
一方で、意外なギャップとして、農家出身者が試験場に入ると「研究計画や統計解析、報告書作成の比重が想像以上に大きい」と感じるケースもあり、パソコン作業やデータ整理に慣れるまで苦労することがあります。
研究成果は、県の内部資料だけでなく学会発表や論文として外部に公表されることも多く、文献調査や論理的な文章作成、図表作成のスキルは、民間農業の現場ではあまり要求されないがゆえに「盲点」になりがちなスキルです。
このギャップを乗り越えるには、自分の現場感覚を強みとして活かしつつ、統計解析ソフトの基礎や報告書の書き方を早めに習得し、研究者としてのスキルと農家としての経験の両輪で価値を出していく視点が重要になります。
独自の視点として、農業試験場の公務員経験を経て、将来的に地域農業法人の技術責任者や、農業系スタートアップの研究開発担当として転身する例も少しずつ増えています。
参考)農林水産省の平均年収は?初任給や年齢別年収、キャリアパスを解…
公務員として培った試験設計能力・データ分析力・公的支援制度の知識は、民間側から見ると非常に価値が高く、「公的研究の目線」と「収益性を重視する民間の目線」を橋渡しできる人材として重宝されます。
参考)農業土木職の公務員の仕事内容や平均年収・給与
農業従事者がこのキャリアパスを念頭に置くなら、在職中から地域の農業法人や企業との連携プロジェクトに積極的に関わり、人脈形成と実績づくりを意識しておくことが、中長期的な選択肢を広げるうえでのポイントとなるでしょう。
農業試験場の公務員を目指す場合、まずは志望する都道府県や政令市の「職員募集案内」「農業職・農学職の仕事紹介」を読み込み、試験区分・出題科目・求められる人物像を把握することが重要です。
栃木県や滋賀県、福井県などの仕事紹介ページでは、農業施策の企画立案、新品種および農業生産技術の開発、普及指導など、農業職の業務全体像がコンパクトに整理されており、面接での志望動機づくりにも役立ちます。
また、先輩職員のメッセージ欄は、どのようなきっかけで農業職を志望したのか、試験場勤務と普及・行政の違いは何かといった、生の声を知るうえで貴重な情報源になります。
筆記試験対策としては、教養試験向けに一般的な公務員試験教材を使用しつつ、専門科目については農学系の大学教科書レベルの内容を一通り復習しておくのが基本です。
特に、作物生理・土壌肥料・病害虫・雑草学・農業経営の基礎などは、試験だけでなく入庁後の業務にも直結するため、ただ解答パターンを暗記するのではなく、現場での応用をイメージしながら理解を深めておくと役立ちます。
参考)農業|職種紹介|神奈川県職員採用案内
畜産分野を志望する場合は、飼養管理、飼料作物、家畜衛生などの分野も押さえる必要があり、畜産職の公務員向けのガイド記事も参考にしながら、自分の専門分野と試験範囲の重なりを確認すると良いでしょう。
参考)畜産職の公務員の仕事内容とは?倍率や参考書、勉強方法も理解し…
面接では、「なぜ一般行政職ではなく農業職なのか」「なぜ民間企業ではなく公務員として農業に関わりたいのか」といった質問が頻出であり、農業試験場での研究が自分のキャリア観とどう結びつくのかを、自分の言葉で語れるかどうかが問われます。
また、「失敗から何を学んだか」「チームで困難を乗り越えた経験」など、研究や現場作業でありがちなトラブルを題材にエピソードを整理しておくと、試験場勤務との親和性をアピールしやすくなります。
すでに農業に従事している人が受験する場合は、自身の営農経験の中で感じた課題を、試験場の研究や技術開発とどうつなげたいのかを具体的に語ることで、「現場の声を研究に反映できる人材」として強い説得力を持たせることができます。
参考になる採用情報の詳細と仕事内容の整理が掲載されているページ(採用試験対策・業務理解に有用)
栃木県職員募集案内「農業」職種紹介
滋賀県における農業職の仕事紹介で、試験場・普及・行政の具体的な業務内容がまとまっているページ(仕事内容理解と志望動機作成の参考)
滋賀県職員(農業職)仕事紹介
福井県の農学職の業務紹介ページで、農業試験研究・普及指導・行政の三本柱が整理されている(農業試験場公務員の位置づけ把握に有用)
福井県職員募集案内「農学」