梅のかいよう病は、葉・枝・果実に病斑を作り、果実では表面がかさぶた状になって商品価値を大きく落とします。特に果実に病斑が残ると、加工用でも選果で弾かれることがあり、収量だけでなく単価が下がるタイプの病害です。
伝染の軸は「雨」と「傷」です。雨で病原が運ばれ、春の新梢・若葉など柔らかい時期に侵入が起きやすく、強風雨の後に発生が増えやすいとされています。実際の現場では、風当たりが強い園・谷筋で湿りやすい園・樹勢が暴れて新梢が伸び続ける園ほど、同じ散布回数でも差が出やすいです。
見落としやすいのが「二次感染の連鎖」です。最初の少数病斑を放置すると、春〜梅雨に若葉へ次々と感染が進み、後追いで散布しても追いつきにくくなります。したがって、症状を見てから動くより、症状が出やすい条件(雨・風・新梢)を見て先回りする発想が重要になります。
梅のかいよう病は、薬剤防除だけで完全に止めるのが難しい年がある一方、薬剤の当て方で被害レベルを大きく下げられます。和歌山県の資料では、かいよう病は「強風雨で発病が助長される細菌性の重要病害」で、有効資材が乏しく多発年に防除が難しいこと、そこで銅剤を活用した新しい防除体系を検討していることが示されています。
和歌山県の成果情報(「コサイド3000」など銅剤の生育期散布・混用試験の要点):
https://www.pref.wakayama.lg.jp/prefg/070100/070109/gaiyou/011/gaiyou/011/seika/sassi_index_d/fil/12.pdf
薬剤の大枠は、現場では「銅剤」と「抗生物質剤」を軸に組むことが多いです。和歌山県の成果情報では、登録拡大された銅剤(コサイド3000)を硬核期まで散布できる点に触れ、さらに銅剤(コサイド3000)にクレフノンを加用し、マイコシールドと混用した試験で、防除効果向上の傾向と、果実薬害が実用上問題ない程度だったことが示されています(葉に赤点が出ることはあり得るが、果実は少ない/薬斑もごく少数)。
ここで重要なのは「薬剤名の丸暗記」ではなく、組み方の考え方です。銅剤は予防的に効かせやすい一方で、条件によっては薬害(特に葉への影響)が出ることがあります。抗生物質剤は細菌病に効く資材として使われますが、これも散布タイミングが遅いと期待値が下がります。
運用のコツは、以下のように“役割”で整理することです。
そして必ず守るべきは、登録内容(適用作物・希釈倍数・散布回数・収穫前日数)です。防除は「効いた/効かない」だけでなく、出荷できるかどうかが最終結果になります。
散布時期は、かいよう病の防除成否をほぼ決めます。農家webの解説では、春梢に対する初期防除を徹底すること、発芽前〜生育期の化学的防除が大事なこと、梅雨は被害が拡大しやすいので降雨前の防除をしっかり行うこと、さらに春期から梅雨明けまで徹底できると果実被害がかなり抑えられることが述べられています。
また、現場の動きとして実用的なのが「雨量・予報に合わせて前倒しする」という考え方です。同じく農家webでは、天気予報やアメダス、雨量計などを使い、雨が少ないなら散布を遅らせたり、台風前には散布したり、雨が多い時は前倒しで散布するなど、雨量を考慮した防除が勧められています。
実務に落とすなら、次の“判断フレーム”が使えます(園の発生履歴で強度を変える)。
注意点として、散布は「カレンダー通り」ではなく「樹の生育ステージ+天気+園の多発履歴」で最適解が変わります。特に大阪近郊のように春の雨の入り方が読みにくい年は、予報の精度が上がる直前(48〜72時間)に前倒し判断できる体制(薬剤・水・機械段取り)を作っておくと、結果が安定します。
薬剤の話だけで終わると、翌年も同じ悩みを繰り返しがちです。実は「病原を園から減らす」「感染の入口(傷)を減らす」ほうが、農薬の効きを底上げします。広島県のIPM資料では、うめのかいよう病の耕種的防除として、冬期剪定時に枝病斑を除去すること、防風垣を設置することが挙げられています。
このIPM資料の中で、特に現場で効くのに軽視されやすいのが「器具消毒」と「処分の徹底」です。資料には、剪定鋏・鋸を介して感染が拡がるため樹ごとにアルコールで消毒すること、感染した枝葉は伝染源なので除去後にほ場外へ持ち出し処分すること、剪定傷口からの感染を防ぐため塗布剤を塗ること、防風垣を設置することが明記されています。
ここを“独自視点”として、経営と作業設計の観点で具体化します。
参考:うめのかいよう病(剪定・防風垣などIPMの耕種的防除)
https://www.pref.hiroshima.lg.jp/uploaded/attachment/523268.pdf