殺ダニ剤一覧と効果的な選び方

農業従事者向けの殺ダニ剤一覧と選び方を解説します。ハダニ防除に有効な薬剤の種類や特徴、抵抗性回避のためのローテーション防除の実践方法を詳しく紹介。効果を最大化する散布タイミングとは?

殺ダニ剤一覧と効果的な選び方

同じ殺ダニ剤を2年連続で使うと抵抗性が付きやすくなります


この記事の3ポイント要約
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殺ダニ剤の系統と特性を理解

IRAC作用機構分類で25以上の系統があり、卵・幼虫・成虫への効果がそれぞれ異なります

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抵抗性回避のローテーション防除

同一系統の薬剤は年1回使用に限定し、異なる作用機構の薬剤を組み合わせることが必須です

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ハダニのステージ別散布適期

発生初期の成虫密度が低い時期に殺卵効果の高い薬剤を使用すると残効性が向上します


殺ダニ剤の主要系統と作用機構の違い


殺ダニ剤には化学構造や作用性が全く異なる多数の系統が存在し、それぞれ特有の効果を発揮します。IRAC(殺虫剤抵抗性対策委員会)では、殺ダニ剤をハダニの生物学的ターゲット別に作用機構を分類しており、現在25以上のコードが割り当てられています。神経・筋肉系に作用する6種、呼吸系に作用する5種、成長・発育に作用する薬剤など、多岐にわたる系統が開発されているのが特徴です。


同じ系統内の薬剤を使い続けると、交差抵抗性と呼ばれる現象が発生します。これは作用点が同じ酵素などを阻害する殺ダニ剤の場合、一つの剤が効果がなくなったとき、別の剤でも作用点が同じ剤が効果がなくなってしまう現象です。そのため、殺ダニ剤のラベルに記載されているIRACコードを必ず確認し、異なるコードの薬剤でローテーションを組む必要があります。


代表的な系統には以下のようなものがあります。METI剤(21A)は呼吸系に作用し、サンマイト、ダニトロン、ピラニカなどが該当します。アベルメクチン系(6)はアグリメック、アファームなどがあり、神経伝達を阻害する作用を持ちます。ミルベマイシン系(6)のコロマイトも同様の作用機構です。


β-ケトニトリル誘導体(25A)に分類されるスターマイトやダニサラバは、比較的新しい作用機構を持つ薬剤で、既存の殺ダニ剤に抵抗性を持つハダニにも効果を発揮します。カルボキサニリド系(25B)のダニコングも新規作用性を有し、既存殺ダニ剤抵抗性個体群に対して有効であることが確認されています。


つまり選択肢は多様です。


ピレスロイド系(3A)のアーデントやロディーは即効性がありますが、成虫への効果が高い一方で殺卵効果は期待できません。テトロン酸及びテトラミン酸誘導体(23)のダニエモン、ダニゲッター、モベントは卵から成虫まで幅広いステージに効果を示すのが特徴です。


これは使えそうです。


気門封鎖剤と呼ばれるアカリタッチ、エコピタ、サンクリスタル、粘着くん、マシン油は、化学的な毒性ではなく物理的にダニの気門を封鎖して窒息死させる作用を持ちます。抵抗性が発達しにくいという大きなメリットがあり、IPM(総合的病害虫管理)体系に組み込みやすい薬剤です。ただし卵には効果がないため、5~7日間隔での連続2回散布や他剤とのローテーション散布が推奨されています。


IRAC作用機構分類体系の詳細(PDF)では、殺ダニ剤の作用機構による分類が網羅的に解説されています


殺ダニ剤の卵・幼虫・成虫への効果の違い

殺ダニ剤を選択する際に最も重要なのが、ハダニのどのステージ(発育段階)に効果があるかを理解することです。剤によって殺卵効果、殺幼虫効果、殺成虫効果が大きく異なるため、散布時期やハダニの発生状況に応じて適切な薬剤を選ぶ必要があります。大阪府が公開している主要殺ダニ剤の特性一覧によれば、各薬剤のステージ別効果は明確に区別されています。


殺卵効果が高い薬剤には、サンマイト、ダニトロン、ピラニカなどのMETI剤系統、スターマイトやダニサラバなどのβ-ケトニトリル誘導体系統があります。これらの薬剤は雌成虫が産んだ卵を孵化させない効果があるため、成虫の密度が低い時期に散布すると優れた残効性を示します。具体的には、1葉当たり成虫が1~5頭の発生初期に散布することで、次世代のハダニ発生を効果的に抑制できます。


ニッソランやバロックは殺卵・殺幼虫効果は高いものの、殺成虫効果が弱く遅効性という特性を持ちます。そのため成虫が多発した状態では効果が実感しにくく、誤ってまき直しなどをしないよう注意が必要です。これらの薬剤はハダニの発生初期に散布むらのないようていねいに散布することで、その特性を最大限に活かせます。


原則は発生初期です。


ピレスロイド系のアーデントやロディーは成虫に対して速効的な殺ダニ効果を示しますが、卵には効果がありません。大量発生時に成虫を速やかに減らしたい場合には有効ですが、卵が残るため数日後に再び幼虫が発生する可能性があります。このため、成虫を叩いた後に殺卵効果のある薬剤でフォローするという2段階の防除戦略が有効です。


結論は組み合わせです。


ダニサラバフロアブルは卵~成虫まで全ステージに効果を示す特性があり、特に幼虫に高感受性を示します。散布3日後に幼虫致死率95%以上、卵・成虫にも70~85%の効果が確認されているため、どのステージのハダニが混在していても対応できる汎用性の高い薬剤といえます。


コロマイト乳剤やアグリメック乳剤などのアベルメクチン系薬剤は、幼虫・成虫に対して高い効果を示しますが殺卵効果は限定的です。ただし薬液に接触した雌成虫が産下した卵に対する孵化抑制効果が認められるため、実質的には次世代抑制につながります。残効性に優れており、圃場での防除効果は長期間持続する特徴があります。


ハダニは25℃前後の条件下では約10日で世代交代し、一年に10回以上の世代を重ねます。卵から成虫までの発育期間が約2週間と短いため、散布タイミングを逃すと瞬く間に密度が上昇します。そのため、発生初期に適切なステージ効果を持つ薬剤を選択することが、防除成功の鍵となるのです。


殺ダニ剤の抵抗性発達とローテーション防除の必要性

ハダニ類は化学合成殺ダニ剤に対する薬剤抵抗性が発達しやすい害虫として知られており、すでに薬剤抵抗により効果が大きく低下した薬剤も多数確認されています。抵抗性の発達速度は極めて速く、新しく開発された殺ダニ剤でも数年で効果がなくなる場合があります。


これがハダニ防除の最大の難関です。


抵抗性が発達する理由は、ハダニの生態的特性に起因します。ハダニは繁殖が旺盛で、一年に10~12世代以上を繰り返すため、薬剤による淘汰圧が短期間に何度も加わります。当初はごくわずかに存在する薬剤が効きにくい個体が、同じ系統の殺ダニ剤を連用することで世代交代のたびに選抜されて増えていき、やがてはまったくその系統の殺ダニ剤が効かなくなってしまうのです。


痛いですね。


山形県全農が公開している資料によると、殺ダニ剤は抵抗性回避のため各薬剤とも年1回使用に厳守することが強く推奨されています。仮に2回以上使った場合、薬害が発生するわけではありませんが、薬剤抵抗性がついたハダニは防除がさらに困難になるため、長期的な防除体系が崩壊するリスクがあります。


年1回が条件です。


ローテーション防除では、異なる作用機構の薬剤を交互に使用することが基本原則です。例えば、春先にMETI剤(21A)のサンマイトを使用した場合、次回はアベルメクチン系(6)のコロマイト、その次はβ-ケトニトリル誘導体(25A)のダニサラバというように、IRACコードが異なる薬剤で組み立てます。同じコードの薬剤は年間を通じて1回のみの使用に抑えるのが鉄則です。


興味深いことに、使用を控えれば抵抗性が消失することも報告されています。俵養蜂場の資料によると、アピスタンや農薬マブリックの使用を3年程度控えることで、ダニ類は容易に獲得した薬剤抵抗性の消失も意外に早く、一定期間使用を控えれば効力を回復するとされています。ただし、抵抗性発達後の感受性復元には数年を要するため、最初から抵抗性を発達させない防除戦略が最も重要です。


果樹のハダニ防除では、「w天防除体系」と呼ばれる天敵カブリダニを主体とした防除方法が推進されています。この体系では殺ダニ剤の使用を年1回以内に抑えることで、ハダニ類の薬剤抵抗性の発達を抑制し、殺ダニ剤の薬効の維持・延命効果が期待できるとされています。殺ダニ剤の隔年使用体系も有効な手法として注目されています。


岩手県農業研究センターの研究では、殺ダニ剤の隔年使用体系によるハダニ類抵抗性管理の有効性が詳しく報告されています


殺ダニ剤と天敵の併用によるIPM防除体系

近年の農業現場では、化学殺ダニ剤だけに頼らず、天敵生物を活用したIPM(総合的病害虫管理)防除体系が広がっています。特にカブリダニ類は、ハダニ類に対する主要な天敵として、果樹やイチゴ、施設野菜での利用が進んでいます。カブリダニ類はハダニ類と同じダニの一種ですが、ハダニ類を捕食する肉食性のダニです。


殺ダニ剤と天敵は相互補完的な関係にあり、相性は悪くありません。殺ダニ剤の即効性は天敵にはない長所であり、ハダニが増えすぎた場合のレスキュー防除として殺ダニ剤を使用し、その後は天敵に防除を任せるという組み合わせが効果的です。逆に散布後の残効性や持続的な密度抑制効果は天敵が得意とする分野です。


天敵と併用できる殺ダニ剤は限られており、カブリダニ類に影響が少ない選択性殺ダニ剤を選ぶ必要があります。石原バイオサイエンスが公開しているカブリダニ類への各種薬剤の影響表によれば、気門封鎖型薬剤のアカリタッチや、カネマイトフロアブル、ダニコングなどが天敵への影響が少ない薬剤として挙げられています。


これが基本です。


気門封鎖型薬剤は物理的作用でダニを窒息死させるため、抵抗性が発達しにくく、IPM体系に最も適した薬剤といえます。ただし卵には効果がなく残効期間が短いため、ハダニの発生状況をモニタリングしながら必要に応じて再散布する必要があります。天敵導入前にハダニを徹底防除する際には、天敵への影響日数が短い殺ダニ剤で対応することが推奨されています。


和歌山県農業試験場の研究では、2種のカブリダニと殺ダニ剤の併用でハダニ類の防除効果が安定することが実証されています。天敵だけでは密度抑制に時間がかかる場合や、急激にハダニが増加した場合に、選択性殺ダニ剤を補助的に使用することで、天敵個体群を維持しながら効果的な防除が可能になります。


イチゴ栽培での事例では、2017年の定植後(年内)のハダニ防除回数が43回であったのに対し、天敵や炭酸ガス燻蒸の導入により2019年はハダニ防除回数が11回に減少しました。防除回数が約4分の1に減少したことで、農薬コストの削減だけでなく、労働時間の大幅な削減にもつながっています。


いいことですね。


天敵を活用する際の注意点として、天敵導入前に合成ピレスロイド剤や広範囲に効く殺虫剤を使用すると、天敵が一掃されてしまいます。天敵に影響が少ない薬剤であっても、散布直後は一時的に影響が出る場合があるため、バンカシート設置前または設置後2週間以内の使用は避けるなど、使用タイミングにも配慮が必要です。


千葉県のニホンナシにおける天敵カブリダニ類を主体としたハダニ防除マニュアル(PDF)では、実践的なIPM防除体系が詳しく解説されています


殺ダニ剤の散布時期と薬害リスクの回避方法

殺ダニ剤の効果を最大化するためには、適切な散布時期を守ることが不可欠です。薬剤の種類によって推奨される散布適期が異なるため、ラベルに記載された使用時期を確認することが第一歩となります。多くの殺ダニ剤は発生初期の成虫密度が低い時期の散布が推奨されており、具体的には1葉当たり成虫が1~5頭の段階が目安です。


厳しいところですね。


ダニゲッターフロアブルの散布適期は、カンザワハダニの雌成虫が休眠から覚め産卵を開始する一番茶萌芽前とされています。この時期の散布により、本剤の特長である殺卵・殺幼虫効果が最大限に発揮され、年1回の散布で1年程度発生を抑えることができます。


つまり適期が決定的です。


一方で、殺ダニ剤には薬害リスクが伴う場合があります。特に高温時の使用で薬害が発生しやすい薬剤があるため、注意が必要です。オマイト水和剤は早い時期に使用すると若い葉に焼けたような薬害が生じるため、7月下旬までの使用を避けることが推奨されています。8月以降でも、衰弱樹や曇天・降雨・日照不足が続いた後の散布は薬害リスクが高まります。


かんきつ類では、オマイト水和剤は新葉(芽)に薬害を生ずるおそれがあるため、幼木では新芽の生育期間、成木では春芽が硬化するまでの期間は使用を避ける必要があります。また果実の肥大期~着色初期の散布も薬害のリスクがあるため、使用時期の制限を守ることが重要です。


これは必須です。


かき(刀根早生など)の着色期にMETI剤系統の殺ダニ剤を散布すると薬害を生じる恐れがあるため、使用を避けることが明記されています。作物の生育ステージと薬剤の特性を照合し、薬害が発生しやすい時期を避けた散布計画を立てることが求められます。


散布方法にも注意点があります。多くの殺ダニ剤は植物体への浸透移行性がないため、散布液が直接害虫にかからないと効果がありません。かけむらのないよう丁寧に散布し、特に葉の裏表に十分に散布することが効果発現の条件となります。ハダニは葉裏に寄生することが多いため、葉裏への散布を意識することが防除成功の鍵です。


雨の前後の散布タイミングも考慮が必要です。雨の前に散布すると農薬が流されてしまう可能性がある一方、殺菌剤は雨の前に散布した方が病気予防効果が高いとされています。殺ダニ剤の場合は残効性のある薬剤を選択し、雨による流亡を最小限に抑える工夫が求められます。薬剤の残効期間を把握し、次回散布までの間隔を適切に設定することで、安定した防除効果が得られます。




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