天敵導入 失敗で農薬費と収量を守る実践知識

天敵導入 失敗を防ぎつつ農薬費と収量を両立させる具体策を整理します。思い込みで損している落とし穴に心当たりはありませんか?arystalifescience+3

天敵導入 失敗の原因と損失回避のポイント

一度の天敵導入ミスで、あなたの圃場は3年連続で赤字になることがあります。

天敵導入 失敗で陥る典型パターン
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薬剤と天敵の相性軽視による全滅

収穫直前の殺虫剤1回散布が、10万円分の天敵昆虫を一晩で無駄にするケースがあります。

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害虫密度の読み違いによる収量ロス

害虫が多すぎても少なすぎても天敵は機能せず、10aあたり数十万円の収量損失につながることがあります。

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コスト計算不足で「減農薬なのに赤字」

化学農薬費を8万円から1万8千円に減らしても、天敵費用11万5千円を見落として赤字になる事例があります。

天敵導入 失敗と「一度きり大量放飼」が招く高額損失

多くの農業者は、「害虫が増えてから一度きり大量に天敵を放せば一気に片づく」と考えがちです。 しかし実際には、例えばハウス10aでアザミウマコナジラミが葉裏一面に広がった段階で、10万円分の天敵を一度に導入しても食べきれず、被害は止まりません。 ハガキの横幅くらいの葉1枚に20頭以上の害虫が付いているレベルになると、天敵の捕食スピードより害虫の産卵スピードの方が圧倒的に速く、結果として防除失敗となり、収量が2~3割落ちることもあります。 つまり「一度で決める大量放飼」は、害虫密度が高い場面では最も危険な選択ということですね。
この失敗は、お金と時間の両方を奪います。10aのピーマンやナスで収量が2割落ちれば、出荷単価にもよりますが1シーズンで数十万円の売上減となり、さらに被害後に慌てて化学農薬を追加散布すれば、作業時間も薬剤費も二重に発生します。 害虫の初期発生時(1葉あたり1~2頭程度)の段階から、少量の天敵を複数回に分けて導入し、密度を抑え込む方が、トータルのコストと労力は小さくて済みます。 結論は「早め・小分け・繰り返し」が基本です。zero-agri+2
このリスクへの対策としては、圃場ごとに「害虫密度の目安表」を作っておくのが有効です。例えば「葉20枚を見て合計10頭以下なら天敵追加、30頭を超えたら薬剤併用を検討」といった簡単な基準を決め、週1回だけでも見回りのたびに記録すれば、感覚に頼らない判断ができます。 こうした観察と組み合わせて、スマートフォンで部位別の写真を残すだけでも、翌年の判断材料になります。つまり数分の記録が、数十万円の損失回避につながるということです。smartagri-jp+1

天敵導入 失敗と「害虫が少なすぎる圃場」での定着ゼロ問題

「害虫は少ないほど良い」と考え、ほぼ無害レベルの圃場に天敵を入れてしまうケースもあります。 ところが、天敵にとっては餌となる害虫がいないと、生きていけません。葉1枚あたり0~1頭程度の超低密度の状態で高価な天敵昆虫を導入すると、1週間も経たないうちに圃場から飛び去るか餓死してしまい、10万円前後の投資がほぼゼロの効果で終わることがあります。 つまり害虫が少なすぎると、天敵導入費の“丸損”ということですね。
この定着ゼロ問題は、特に温室ナスやイチゴなど、害虫の発生時期が年によって前後しやすい作物で起こりやすいと言われています。 実験レベルでも、餌となる害虫密度が一定以下だと、天敵の定着率が大きく落ちることが確認されており、結果として追加の天敵導入や化学農薬の散布が必要になり、年間の防除コストは想定より膨らみます。 結論は「害虫ゼロ近くの圃場に高額な天敵を入れるのはダメ」です。smartagri-jp+2
このリスクに対しては、「補助餌」や「天敵温存植物」をうまく使う方法があります。例えばソルガムなどに無害なアブラムシを意図的に発生させておき、そこを餌場として天敵を維持しつつ、隣の野菜圃場へ少しずつ移動させる手法です。 東京ドーム5つ分の面積があるような大規模産地でなくても、ハウスの端に2~3m幅の帯を設けて温存植物を植えるだけで、定着率は大きく変わります。 温存植物の選定や配置については、地域の普及センターや資材メーカーの技術資料も役立ちます。


参考)https://www.dainihon-noukai.or.jp/library/61bc776bb57d7bf14fe411a4/63450f865ada04b310842a71.pdf


天敵導入 失敗と「隣接圃場・周辺環境」を無視した結果起きる再発生

天敵導入の成否を、自分のハウスの中だけで完結すると考えるのも危険です。 例えば、隣接する慣行防除のハウスや露地圃場から、アザミウマやコナジラミが「飛び込み」で次々と入ってくる場合、いくら自分のハウス内で天敵を維持していても、防除が追いつきません。 実際に、隣の圃場との境界から幅1~2mのエリアだけで、害虫密度が中央部の2倍以上になっていたという報告もあります。 境界条件を無視すると、天敵導入は「穴の開いたバケツに水を注ぐ」状態になるということですね。
この問題が厄介なのは、天敵が効いているように見えても、周りからの飛び込みで被害が徐々に増えるため、「原因がよく分からない失敗」として処理されやすい点です。 実際、隣接圃場の農薬散布が天敵にも悪影響を与え、ハウスの風下側だけ天敵が減るケースもあります。 結論は「周辺圃場を含めた“地域単位”で天敵戦略を考えることが原則です。」arystalifescience+1
対策としては、まず簡単な地図を書き、半径100m以内にどんな圃場と作物があるかを整理することから始めるのが現実的です。特に、害虫が集まりやすい雑草地や、殺虫剤散布が多い圃場の位置を押さえ、その風向きやハウスの開口部の位置関係を確認します。 そのうえで、境界付近に黄色粘着トラップを多めに設置したり、防虫ネットの目合いを細かくするなど、飛び込みを減らす工夫を優先的に行うと、天敵が働きやすい環境をつくれます。 つまり周辺環境の「見える化」だけ覚えておけばOKです。arystalifescience+1

天敵導入 失敗と「数字を無視したコスト計算」が生む赤字経営

「減農薬だから経営的にもメリットがあるはずだ」と、ざっくりとした期待だけで天敵導入を始めると、思わぬ赤字に陥ることがあります。 ある試算では、10aあたり化学農薬だけで防除していた場合、殺虫剤・殺菌剤で8万円の費用がかかっていたのに対し、天敵を導入して化学農薬を減らすと、農薬代は1万8千円まで減る一方で、天敵費用が11万5千円かかり、合計コストはかえって増加した例が示されています。 一見すると環境に良い取り組みでも、数字を並べてみると「高くつく」ケースがあるということですね。
ただし、この試算には「急な農薬散布による収穫ロス」などの隠れたコストは含まれていません。繁忙期に急に防除作業が必要になると、収穫や出荷の段取りが崩れ、その機会損失は10aあたり数万円単位になることもあります。 天敵利用によって防除作業の突発性が減れば、作業計画を組みやすくなり、結果的に労務コストや精神的負担の軽減という「見えにくいメリット」も生まれます。 結論は「天敵導入の損得は、目先の農薬代だけで判断してはダメ」です。


実務的には、1シーズン分の「防除にかかったお金と時間」を記録しておくことが重要です。薬剤費、天敵費、散布回数、防除に使った延べ時間、繁忙期に発生した臨時防除の回数などを、簡単な表か家計簿アプリでも良いので残しておきましょう。 そのデータが1~2年分たまると、「天敵を増やした年」「減らした年」で、どのくらい経営指標が変わったかを客観的に比較できます。


結論は「数字で比べれば迷いは減る」です。



天敵導入 失敗を減らす独自視点:天敵の“性格”とあなたの作業スタイルを合わせる

ここからは、検索上位にはあまり出てこない、少し違った視点の話に触れます。天敵昆虫にも、実は「性格」のような違いがあると考えられており、「餌場をすぐに諦めて移動するタイプ」と、「粘り強く探索を続けるタイプ」で、定着率が変わるという研究があります。 例えば、餌がなかなか見つからなくても探索を続ける系統を選抜した天敵は、普通系統に比べて圃場内にとどまりやすく、結果として導入の成功率が上がる可能性が示唆されています。 つまり「天敵の性格」と「圃場環境」の相性も、失敗・成功を分ける要因ということですね。
この視点を踏まえると、あなた自身の作業スタイルとの相性も無視できません。毎日こまめにハウスを見回れる人と、週1回しか見回り時間が取れない人では、向いている天敵のタイプや導入方法が変わって当然です。こまめに観察できるなら、定着しやすいがやや高価な天敵に投資し、細かく追加放飼する運用がしやすい一方で、見回り頻度が低い場合は、粘り強く餌を探すタイプや、温存植物と組み合わせて「放しっぱなしでも効き続ける」設計を優先した方が現実的です。 どういう作業ペースなら無理なく続けられるかが条件です。smartagri-jp+1
このような「性格×スタイル」の相性を探るには、メーカーの技術資料や試験場のリーフレットを読み、どの天敵がどの害虫に対してどのくらい移動性や探索性をもつかを把握しておくと役に立ちます。 さらに、1種類だけに頼らず、行動特性の違う天敵を組み合わせることで、害虫の発生パターンが読みにくい年でも、防除失敗を減らせます。


これは使えそうです。


zero-agri+2
天敵導入に関する技術的な基礎や経営評価の考え方を詳しく知りたい場合は、以下の資料が役立ちます。


天敵利用を基幹としたIPMの経済性や、土着天敵誘引方法の詳細解説。


天敵利用を基幹としたIPMを農業経営に取り込む(日本農業普及学会資料)
天敵導入の歴史や、害虫密度と天敵効果の関係、生物的防除の位置づけなどの基礎知識。


参考)#防除について③ ー生物的防除での天敵利用ー - ゼロアグリ


防除について③ ー生物的防除での天敵利用ー(ゼロアグリ)
温室内での天敵導入の試験例と、悪条件を無視した導入が失敗する事例の解説。


参考)農薬ガイドNO.76_d


天敵の上手な使い方 オンシツツヤコバチについて
天敵の「粘り強い探索行動」を高める研究の概要と、定着失敗のメカニズムに関する新しい知見。


参考)昆虫を用いた「天敵農薬」新時代 〜餌探しを「あきらめない」天…


餌探しを「あきらめない」天敵昆虫の先にある未来(SMART AGRI)