チアメトキサム農薬の特性と正しい使い方ガイド

チアメトキサム農薬の効果・作用機序・注意点を農業従事者向けに解説。浸透移行性の高さや後作物への残留リスク、ミツバチへの影響など、知っておかないと損する情報を網羅。あなたは正しく使えていますか?

チアメトキサム農薬の特性と正しい使い方

農薬を散布した28日後でも、ミツバチの死亡率が70%に達することがあります。


チアメトキサム農薬 ── 3つのポイント
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浸透移行性が高い

土壌・葉面どちらから処理しても植物全体に成分が行き渡り、アブラムシ・コナジラミなど広範な害虫を4〜5週間抑制します。

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後作物への残留リスク

前作で使用した成分が土壌に残り、後作のシュンギクなど葉物野菜で残留基準値を超える事例が報告されています。

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ミツバチへの影響に注意

EUでは2018年にチアメトキサムを含むネオニコチノイド3種の屋外使用が原則禁止。花粉媒介昆虫を導入している圃場では使用時期に特に注意が必要です。

チアメトキサム農薬の作用機序と浸透移行性の仕組み


チアメトキサムはネオニコチノイド系殺虫剤に分類され、昆虫中枢神経系のニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)に作用します。 神経伝達を阻害することで、害虫は数時間以内に症状を示し、通常24〜48時間以内に死亡します。


つまり即効性と残効性を両立した薬剤です。


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既存のネオニコチノイド系農薬イミダクロプリドなど)がクロルピリジン環を持つのに対し、チアメトキサムはクロロチアゾール環を持つ「チアニコチニル」と呼ばれる独自構造です。 この構造上の違いが、より広範な害虫種への高い活性を生み出しています。アブラムシ・コナジラミ・アザミウマといった半翅目だけでなく、甲虫目(コガネムシ類)や双翅目(ハモグリバエ類)にも実用的な効果が確認されています。


参考)https://jppa.or.jp/archive/pdf/56_04_25.pdf


また、土壌処理・茎葉処理のどちらでも植物体への浸透性と移行性に優れます。これは有機リン系・カーバメート系・ピレスロイド系薬剤とは作用点が異なるため、これらに抵抗性を獲得した害虫にも交差抵抗性を示さないという大きなメリットがあります。 抵抗性が出てきたと感じたら試す価値があります。


参考:チアメトキサムの化学特性・作用機序の詳細
新殺虫剤チアメトキサム剤の特性と使い方|日本植物防疫協会

チアメトキサム農薬の主な適用害虫と使用できる作物

チアメトキサムが効果を発揮する害虫の範囲は非常に広く、実用面で大きな強みです。


害虫グループ 代表的な害虫名 主な対象作物
半翅目 アブラムシ類、コナジラミ類ウンカ類ツマグロヨコバイ 野菜全般、水稲果樹
アザミウマ目 ミナミキイロアザミウマネギアザミウマ ナス、ネギ、カンキツ
甲虫目 コガネムシ類(幼虫)、イネミズゾウムシ サツマイモ、水稲
双翅目 ナモグリバエマメハモグリバエ レタス、マメ類
鱗翅目 ミカンハモグリガコナガモモハモグリガ カンキツ、キャベツ、モモ

代表的な登録製品は「アクタラ顆粒水溶剤」(10%)と「アクタラ粒剤5」(0.5%)の2種類です。 顆粒水溶剤は散布処理、粒剤は定植時の植え穴処理や土壌混和処理として使い分けます。


使い分けが基本です。



参考)アクタラ顆粒水溶剤|シンジェンタジャパンの農業用製品(殺虫剤…


注意点として、チアメトキサムはハマキガ類や大型ヤガ類の幼虫には効果がありません。 これらとの同時防除が必要な場合は、別の薬剤との組み合わせを検討してください。


参考:アクタラ顆粒水溶剤の登録情報・使用方法
アクタラ顆粒水溶剤 製品情報|シンジェンタジャパン

チアメトキサム農薬を使った後作物への残留リスク

前作にチアメトキサムを処理した場合、その成分が土壌を介して後作の作物に残留しやすいという問題があります。


これは見落とされやすいリスクです。



参考)https://hyogo-nourinsuisangc.jp/archive/3-k_seika/hygnogyo/197/09.pdf


特に注意が必要なのは作期の短い葉物野菜です。兵庫県農林水産技術総合センターの調査では、前作での土壌処理によって後作として栽培したシュンギクに残留が確認された事例が報告されています。 シュンギクは種まきから収穫まで40〜50日程度と短い作期のため、土壌中の成分が十分に分解される前に吸収される可能性があります。はがきの横幅(約10cm)ほどの苗でも吸収は起こります。


後作物への残留を防ぐには、以下の点を確認することが重要です。


  • 前作での使用から後作の播種・定植までの間隔を十分に確保する
  • 水田・圃場での使用後、隣接する葉物野菜の圃場への流入を防ぐ
  • 後作として栽培する作物の残留基準値(MRL)をあらかじめ確認する

残留基準値の確認は、農林水産省の農薬登録情報システム(FAMIC)を利用すると作物別に調べられます。リスクを知っておけば対策は難しくありません。


参考:後作物への残留に関する調査データ
殺虫剤成分チアメトキサムの後作物への残留|兵庫県農林水産技術総合センター

チアメトキサム農薬とミツバチへの影響および法的規制

チアメトキサムを2,000倍液で散布した場合、処理28日後でもミツバチの死亡率は70%に達することが室内試験で確認されています。 散布後42日が経過して初めて死亡率が0%になる結果が得られており、安全導入日数は42日と判断されています。


痛いですね。



EUでは2018年に、チアメトキサムを含むネオニコチノイド系農薬3種(チアメトキサム・イミダクロプリド・クロチアニジン)の屋外使用が原則禁止となりました。 世界各地のミツバチ大量失踪(CCD:蜂群崩壊症候群)の原因の一つと疑われていることが背景にあります。花粉媒介者は農業経済そのものを支えているため、影響は農業従事者にとっても他人事ではありません。kenko-kenbi+1
日本国内での現時点の対応と注意事項は以下のとおりです。


  • 花粉媒介昆虫(ミツバチ・マルハナバチ)を施設に導入している圃場では、チアメトキサム処理後42日以上経過してから導入する
  • マルハナバチについては、粒剤処理21日後以降であれば安全に導入できることが確認されている
  • 農薬容器のラベルに記載されたミツバチに関する注意事項を必ず確認する

    参考)No.306 農林水産省によるミツバチ被害事例調査の報告


  • 近隣に養蜂農家がいる場合は、散布前に情報共有を行うことが推奨される

ミツバチリスクの最新評価情報は農林水産省の農業資材審議会でも継続的に審議されています。


参考:農薬のミツバチへの影響評価(農林水産省資料)
農業資材審議会農薬分科会 農薬蜜蜂影響評価部会資料|農林水産省

チアメトキサム農薬の独自視点:代謝物クロチアニジンへの変換と追加リスク

あまり語られていない点として、チアメトキサムは植物体・土壌中で代謝される過程でクロチアニジンに変換されることがあります。


これが意外な落とし穴になり得ます。



参考)中央環境審議会土壌農薬部会農薬小委員会(第51回)議事録


環境省の専門家審議では、「チアメトキサムが全量クロチアニジンに変化したとしても環境予測濃度(PEC)を下回る」とされています。 ただし、クロチアニジン自体もネオニコチノイド系農薬であり、ミツバチへの毒性が指摘されている物質です。つまり、チアメトキサムを使用することは実質的にクロチアニジンも圃場に導入していることと同義になる側面があります。チアメトキサムだけを管理するだけでは不十分な場合があるということですね。


農業従事者が具体的に取れる対策は次の通りです。


  • 土壌処理後の圃場では、散布直後の水系への流出を防ぐため、降雨前日の処理を避ける
  • 代謝物クロチアニジンの残留も含めた総合評価をするために、専門機関への土壌分析依頼を検討する(農業改良普及センターに相談窓口がある)
  • ネオニコチノイド系全体の使用回数をラベルに記載された「総使用回数」の範囲内で管理する

また、輸入農産物の検査事例では、チアメトキサムによる基準値超過違反が中国産タマネギやショウガで多く報告されており、その原因として「土壌に残留していた農薬由来」と推定されています。 これは国内の生産者が輸出や有機JAS認証を目指す際にも参考になる事例です。


残留管理の徹底が条件です。



参考)残留農薬の輸入時検査と違反事例 - 一般財団法人 東京顕微鏡…


参考:残留農薬の輸入検査と違反事例(東京顕微鏡院)
残留農薬の輸入時検査と違反事例|一般財団法人 東京顕微鏡院


以下に記事を出力します。




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