タマネギの除草剤は、「散布した瞬間に生えている雑草を枯らす」タイプだけでなく、「これから発生する雑草の芽を止める」土壌処理剤が主役になります。土壌処理剤の多くは、雑草が出てからでは効きが落ちやすいので、“雑草発生前〜発芽始め”に合わせるのが基本です。
実務で重要なのは「定植後すぐの一手」です。東北地域の春まき栽培の技術資料では、定植時処理としてモーティブ乳剤(ジメテナミドP・ペンディメタリン乳剤)やゴーゴーサン乳剤(ペンディメタリン乳剤)を例示し、処理時期は“定植後1週間以内を目安”と明記しています。定植から日数が空くほど、雑草の先行発生で取り返しがつきにくくなります。
ただし「早ければ早いほど良い」わけでもありません。圃場の状態が極端に乾いていて処理層が作れない、逆に泥濘でムラ散布になる、強風で飛散する、といった条件では効果が不安定になりやすいです。散布は、圃場が落ち着いたタイミングで、均一に“処理層”を作る意識が失敗を減らします。
現場の確認ポイント(入れ子にせずに整理)
雑草が多い圃場では、1回の土壌処理だけでシーズンを通し切るのは難しいことがあります。そこで現場で採用されるのが、複数剤を「時期でつなぐ」体系防除です。福島県の現地実証では、定植後・雑草発生前(定植30日後まで)にジメテナミドP・ペンディメタリン乳剤、次いで3月中旬(収穫90日前まで)にシアナジン水和剤、4月中旬(収穫45日前まで)にプロスルホカルブ乳剤を散布する体系が示されています。
この体系の狙いはシンプルで、抑草の“切れ目”を作らないことです。実証資料では、対照区(体系なし)ではシロザやメヒシバが発生した一方、体系防除区ではメヒシバ・シロザの発生を5月下旬まで抑制したと報告されています。つまり、雑草が本格的に競合してくる前に、複数の「発生波」を先回りで潰していく設計です。
ここで注意したいのが「同じ有効成分の重複」と「使用回数・総使用回数」です。例えばペンディメタリンは複数製剤に含まれることがあり、知らずに重ねると“総使用回数”に抵触する可能性があります。農研機構のマニュアルでも、使用前に登録情報(ラベル等)で「たまねぎ・春まき移植栽培・地域」で使用可能か確認するよう記載されています。
体系防除を組むときの現場向け発想(失敗しにくい順番)
除草剤の相談で最も多いのが「効かなかった」より「タマネギが弱った(薬害っぽい)」です。農研機構の春まきタマネギ栽培マニュアルでは、除草剤はタマネギでも生育抑制などの薬害が起こり得ること、薬害回避の基本として“散布濃度や水量を守る(重ねがけを極力避ける)”“砂土での使用を避ける”“他剤や葉面散布肥料との混用をせず単用で散布”“高温時の使用を避ける”といった注意点を挙げています。
薬害が出やすい典型パターンは、だいたい「条件の複合」です。たとえば、雑草が目立って焦って濃くする→高温の日に散布→畝の一部が砂っぽい→散布ムラ、という流れは危険です。逆に言えば、ラベル通りにやったのに出た薬害は、土質差・局所的な水たまり・風の影響など“ムラの原因”を疑うと原因究明が早いです。
薬害を疑ったときのチェック(入れ子なし)
そして、忘れがちで効くのが「畝肩の雑草」です。畝肩は処理層が薄くなりやすく、雑草が残ると後半に収穫機械へ絡み、作業効率を落とす原因になります(マニュアルでも“通路を含めて丁寧に散布”の重要性が述べられています)。
「効く体系」を考える前に、必ず最初にやるべきことがラベル確認です。福島県の実証資料でも、活用上の留意点として“農薬の使用に当たっては、農薬のラベルを必ず確認すること”および“除草剤は収穫前日数が長いため、収穫開始日を考慮して散布すること”が明確に書かれています。
現場でズレやすいのが、収穫予定日の変更(天候・病害・市場都合)です。除草剤は散布できる最終時期が早いものが多く、予定が後ろ倒しになったからといって「ついでに散布しておく」ができないケースがあります。散布計画は、収穫を“最も早くなる可能性”側に寄せて組むと安全です。
また、地域・作型で登録が異なる点も盲点です。春まき・秋まき、移植・直播、東北・関東以南などで適用が変わる場合があるため、同じ製品名でも“その圃場条件で使えるか”を毎回確認してください(農研機構マニュアルでも登録情報の確認を強調しています)。
参考リンク(農薬の登録・適用条件を検索するための公式窓口)
農薬の登録情報(作物・適用・使用時期・回数など)を検索できる
検索上位で語られやすいのは「薬剤名」と「散布時期」ですが、意外に効くのが“圃場づくりで除草剤の成功率を上げる”視点です。土壌処理剤は「処理層が均一であるほど効く」ので、砕土が粗い圃場や凹凸の大きい畝は、それだけでムラの温床になります。農研機構のマニュアルでも、施肥後の耕起は丁寧に行い砕土率を高めること、さらに水田転換畑では砕土率を高める工夫(ロータリの車速、アップカットロータリ等)に触れています。
ここが“省力”に直結するのが面白いところです。除草剤の選定や散布技術を頑張っても、処理層がムラなら、後から手取りが増えて結局しんどくなります。逆に、定植前の砕土・均平を一段上げると、除草剤の効きが安定し、追加散布や手取りの発生率が下がります。
現場で実装しやすい工夫(薬剤名に頼り過ぎない)
こうした“土と作業の整備”は、除草剤を増やすより安全で、しかも再現性が高いのが利点です。薬剤の話題だけで終わらせず、圃場条件を整えて「同じ散布で効きが上がる」状態を作ると、収量だけでなく作業時間の圧縮にもつながります。