砂土の土壌改良に堆肥と粘土の効果的な投入方法と緑肥

砂土の土壌改良は保水性と保肥力がカギですが、具体的に何をどれだけ投入すれば良いのでしょうか?堆肥や粘土の投入方法から、緑肥や最新の微生物活用まで、砂土を豊かな団粒構造に変えるための方法を解説します。

砂土の土壌改良

砂土の土壌改良のポイント
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保水性・保肥力の向上

粘土鉱物や有機物を投入してCEC(陽イオン交換容量)を高める

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腐植の継続的な投入

堆肥や緑肥を活用し、土壌粒子を結びつける「糊」を補給する

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団粒構造の形成促進

微生物(菌根菌)の働きを利用して、崩れにくい土を作る

砂土の土壌改良で堆肥と有機物を投入してCECを高める理由

 

砂土(砂質土)は、直径2mm~0.02mmの粗い粒子が主体の土壌であり、水はけが良い反面、作物の生育に必要な水分や肥料成分を保持する力が極端に弱いという特徴があります。この「肥料を保持する力」を数値化したものがCEC(陽イオン交換容量)です。一般的な畑(黒ボク土など)のCECが20~30meq/100g程度であるのに対し、砂土はわずか2~5meq/100g程度しかありません。この数値を改善するために不可欠なのが、堆肥や有機物の投入です。

 

有機物が分解されてできる「腐植」は、マイナスの電気を帯びています。一方、アンモニアやカリウム、カルシウムなどの肥料成分はプラスの電気を帯びています。腐植が増えることで、土の中に「肥料成分を吸着する手」が増え、雨や灌水による肥料の流亡を防ぐことができます。

 

ただし、砂土では有機物の分解が非常に速いため、ただ堆肥を入れるだけでは効果が長続きしません。以下のポイントを意識して投入計画を立てる必要があります。

 

  • 分解の遅い資材を選ぶ: 完熟堆肥だけでなく、バーク堆肥や剪定枝堆肥など、リグニンを多く含むC/N比(炭素率)の高い資材を混ぜることで、土壌中の有機物残存率を高めます。
  • 分割施用: 一度に大量に投入しても保持しきれないため、作付けごとの施用はもちろん、栽培期間の長い作物では追肥と合わせて有機質肥料を少しずつ補うことが重要です。

農林水産省:Ⅱ 土壌改良の目標(地力増進基本指針における土壌の性質の改善目標)
参考:農林水産省の資料では、砂質土における腐植の目標値を1.5~2.0%程度、CECの改善には有機物だけでなく粘質土の投入も推奨しています。

 

砂土の土壌改良に効果的な粘土客土とベントナイトの使い分け

有機物だけでCEC(保肥力)を上げるには限界があり、分解によって消失してしまうため、恒久的な対策として「粘土」そのものを土に加える方法(客土)が非常に有効です。特に「ベントナイト」や「ゼオライト」といった粘土鉱物資材は、砂土改良の切り札となります。

 

これらは、どちらも高いCECを持っていますが、性質が異なるため目的に応じて使い分ける必要があります。

 

資材名 主成分・特徴 CEC (meq/100g) 主な効果 注意点
ベントナイト モンモリロナイト(粘土鉱物) 80~150 保水性の大幅向上肥料保持力の強化 水を含むと強く膨張するため、入れすぎると排水性が悪化する恐れがある。
ゼオライト 沸石(多孔質鉱物) 150~180 保肥力の強化アンモニア吸着能が高い 膨張性がないため、排水性を維持したまま保肥力を上げたい場合に適する。

一般的に、「水持ちが悪すぎて作物がすぐに萎れる」場合はベントナイトを、「水はけは維持したいが、肥料切れが早い」場合はゼオライトを選択します。

 

粘土客土を行う場合、耕盤層(深さ20~30cm程度)までしっかりと混和させることが重要です。単に表面に撒くだけでは、水を含んだ粘土が膜を作ってしまい、逆に水の浸透を阻害して表面流出(エロージョン)を引き起こす可能性があるためです。また、粘土資材はアルカリ性を示すものが多いため、投入後のpH調整には注意が必要です。

 

カサネン工業:ベントナイト・天然ゼオライトを知っていますか?
参考:ベントナイトとゼオライトの物理的特性(膨潤性や多孔質構造)の違いや、土壌改良における具体的な使い分けについて詳しく解説されています。

 

砂土の土壌改良で団粒構造を作るための緑肥活用法

「砂土はサラサラして団粒化しにくい」というのは定説ですが、適切な緑肥(りょくひ)を作付体系に組み込むことで、砂土でも物理性の改善が可能です。特にイネ科の緑肥は、その根の量と働きによって土壌粒子を物理的に締め付け、団粒形成を促します。

 

砂土の改良におすすめの緑肥は以下の通りです。

 

  • ソルゴー(ソルガム): 根量が圧倒的に多く、深くまで根を張ります。枯れた根が有機物として土中に残り、通気性と保水性のバランスが良い孔隙(すきま)を作ります。
  • ヘアリーベッチ: マメ科の緑肥で、空気中の窒素を固定して地力を高めます。地表面を被覆することで、砂土特有の乾燥や風食(風で土が飛ばされること)を防ぐ効果も高いです。
  • エンバク(オーツ麦): 比較的短期間で育ち、有機物補給源として優秀です。線虫対策としても有効な品種があります。

緑肥をすき込む際は、完全に枯れる前、あるいは出穂前の茎葉が柔らかいうちに土に混ぜ込むのが基本ですが、砂土の場合は分解が早いため、あえて少し硬くなるまで育ててからすき込み、リグニンやセルロースなどの難分解性有機物を土に残すというテクニックもあります。これにより、粗大な有機物が物理的な障害物となって水分の急激な移動を抑え、保水性の向上に寄与します。

 

タキイ種苗:緑肥の効果について
参考:イネ科作物の根系発達による物理性向上効果や、各種緑肥作物の特性について、種苗メーカーの視点から解説されています。

 

砂土の土壌改良とアーバスキュラー菌根菌が作る「天然の糊」

これはあまり知られていない事実ですが、砂土の団粒化において、実は菌根菌(きんこんきん)というカビの一種が決定的な役割を果たしています。最新の研究では、アーバスキュラー菌根菌が生成する「グロマリン(Glomalin)」という糖タンパク質が、砂の粒子同士を強力にくっつける「天然の耐水性接着剤」として機能することが分かってきました。

 

砂土は粘土分が少ないため、電気的な結合(イオン結合)による団粒化が起きにくい土壌です。しかし、菌根菌を活性化させることで、生物的な力で構造を作ることができます。

 

  • 菌根菌を増やす方法: 殺菌剤の使用を控え、菌根菌と共生しやすい作物(ネギ、トウモロコシ、マメ類、ソルゴーなど)を積極的に栽培します。逆に、アブラナ科ダイコンキャベツなど)は菌根菌と共生しないため、これらばかりを連作すると土壌中の菌根菌密度が低下し、砂土がよりサラサラに崩れやすくなってしまいます。
  • 耕起・省耕起の検討: 頻繁なロータリー耕耘は、せっかく伸びた菌糸ネットワーク(菌糸体)を切断してしまいます。砂土改良の段階では、緑肥を栽培した後に過度な耕耘を避け、根と菌糸のネットワークを維持したまま次の作物を植えるような工夫も、土壌物理性の安定には効果的です。

単に「有機物を入れる」だけでなく、「菌根菌の住処を守る」という視点を持つことで、砂土の改良スピードは格段に上がります。

 

農林水産省:菌根菌による二次代謝物の生成(PDF)
参考:グロマリンが土壌団粒化の主要構成物質であることや、菌根菌が土壌構造の安定化に果たす役割について、学術的な視点で解説されています。

 

 


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