グロマリンと菌根菌で土壌団粒と炭素貯留を!肥料削減の切り札

グロマリンと菌根菌を活用して、土壌団粒の形成や炭素貯留、肥料コストの削減を実現する方法を解説します。あなたの畑でも、この見えない「土の糊」の力を借りてみませんか?
グロマリンと菌根菌
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菌根菌の分泌物

グロマリンはアーバスキュラー菌根菌が出す糖タンパク質で、土壌粒子の「糊」となる。

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最強の団粒構造

水に溶けにくい性質を持ち、長期間安定した土壌団粒を維持し、物理性を劇的に改善する。

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成長促進とコスト減

リン酸吸収を助けるだけでなく、植物ホルモン様の作用で発根を促し、肥料代も節約できる。

グロマリンと菌根菌

グロマリンとは?菌根菌が分泌する奇跡の糖タンパク質


農業の現場で近年注目を集めている「グロマリン(Glomalin)」という物質をご存知でしょうか。これは、作物の根に共生するアーバスキュラー菌根菌(AM菌)が、その菌糸や胞子の表面から分泌する特殊な糖タンパク質のことです 。1996年にアメリカ農務省(USDA)のサラ・ライト博士によって発見された比較的新しい物質ですが、その機能は「土壌の糊(接着剤)」として非常に重要な役割を果たしていることがわかってきました 。


参考)https://www.mdpi.com/2571-8789/5/1/4/pdf

通常、植物の根や微生物が出す粘液物質は、土壌中では微生物によって比較的早く分解されてしまいます。しかし、このグロマリンは非常に分解されにくい「難分解性」という特徴を持っています 。熱や酸にも強く、土壌中で数年から数十年、条件によっては40年以上も安定して存在し続けることができます 。なぜこれほど頑丈なのかというと、グロマリンは土壌中の「鉄」と強固に結合する性質があるためです 。鉄のコーティングをまとうことで、微生物による分解から自身を守り、長期間にわたって土壌に残存するのです。


参考)「土・牛・微生物」を読んで環境再生型農業を始めようと思いまし…

この「消えない糊」であるグロマリンは、菌根菌が活発に活動している土壌ほど多く蓄積されていきます。つまり、菌根菌と作物の共生関係が良好であればあるほど、畑の土にはこの天然の土壌改良資材が無料で供給され続けることになるのです。多くの生産者が目指す「地力のある土」の正体の一つが、実はこのグロマリンの蓄積量にあると言っても過言ではありません。


菌根菌は、植物から光合成産物(糖)をもらう代わりに、土壌中のリン酸やミネラル、水を植物に供給するという「相利共生」の関係にあります 。この交換のプロセスにおいて、菌糸を土壌中に張り巡らせるための構造材や潤滑剤として機能しているのがグロマリンなのです。目には見えませんが、このタンパク質が土壌環境を劇的に変える力を持っています。


参考)アーバスキュラー菌根共生における共生シグナルとしてのストリゴ…

農研機構によるアーバスキュラー菌根菌の解説ページです。


アーバスキュラー菌根菌(AM菌)の基礎知識と農業利用
参考)https://www.naro.go.jp/publicity_report/publication/files/harc20141104_kinkonkinp.pdf

グロマリンが作る団粒構造と驚きの炭素貯留

グロマリンの最大の功績は、土壌の「団粒構造」を強力に形成・維持することにあります。土の粒子(粘土、シルト、砂)同士を接着剤のようにくっつけ、小さな団粒(ミクロ団粒)を作り、さらにそれらをまとめて大きな団粒(マクロ団粒)へと成長させます 。


参考)No.247 アーバスキュラー菌根菌と有機農業

一般的な堆肥や有機物由来の団粒形成物質は、雨や灌水によって流亡したり、微生物分解ですぐになくなってしまったりすることが多いのですが、グロマリンは「水に溶けにくい(疎水性)」という性質を持っています 。この疎水性のおかげで、水に濡れても団粒が崩れにくくなります(耐水性団粒)。豪雨が降っても土がドロドロにならず、水はけと水持ち(保水性)の両方が良い「ふかふかの土」が維持されるのは、このグロマリンのコーティング作用によるところが大きいのです。


参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10180894/

さらに、この機能は地球環境レベルでの「炭素貯留」にも直結しています。グロマリン自体が炭素の塊であり、土壌有機炭素のなんと約27%(場合によってはそれ以上)を占めているという報告もあります 。土壌は地球上で最大の陸域炭素プールですが、グロマリンは分解されにくいため、一度土壌に取り込まれた炭素を大気中に二酸化炭素として放出することなく、長期間地中に閉じ込めておくことができます。これは「カーボンファーミング(炭素農業)」の観点からも極めて重要視されており、農業が環境再生に貢献できる大きな要素の一つです 。


参考)https://regenerationinternational.org/wp-content/uploads/2015/11/Kittridge-Japanese.pdf

つまり、グロマリンを増やすことは、単に作物の生育環境を良くするだけでなく、温室効果ガスの削減にも貢献するという一石二鳥の効果があるのです。団粒構造が発達した土壌では、根が呼吸しやすくなり、酸素供給もスムーズになります。これにより、作物は深くまで根を張ることができ、干ばつや過湿といった環境ストレスに対する抵抗性(レジリエンス)も向上します 。


参考)https://www.m-rloji.co.jp/pages/59/

アメリカ農務省の研究者によるグロマリンと土壌炭素の関係についての解説記事(翻訳)です。


土壌炭素の修復とグロマリンの役割

グロマリンとリン酸吸収で肥料コストを削減

現代農業において、肥料コストの高騰は深刻な課題ですが、グロマリンを生み出す菌根菌の働きを最大化することで、特に「リン酸肥料」の大幅な削減が可能になります。日本の農地、特に黒ボク土などはリン酸吸着係数が高く、施肥したリン酸の多くがアルミニウムや鉄と結合して「難溶性」となり、作物に吸収されないまま土壌に蓄積されています 。


参考)ミネラル第6回 植物と鉄

菌根菌は、根が届かないような微細な土壌の隙間にまで菌糸を伸ばし、この利用されにくいリン酸を溶解・吸収して作物に直接運び込みます 。この時、グロマリンは菌糸の表面を覆い、土壌粒子との密着性を高めることで効率的な養分吸収をサポートしていると考えられています。研究によると、菌根菌が十分に定着している場合、リン酸施肥量を通常よりも大幅に(例:3分の1程度まで)減らしても、作物は健全に生育できることが示されています 。


参考)肥料を節約できる菌とは? リン酸資源の枯渇に福音か|マイナビ…

また、グロマリン自体にも土壌中の重金属(銅、鉛など)を吸着して無毒化したり、過剰な塩類ストレスから根を守ったりする機能があることが示唆されています 。これにより、作物はより少ないエネルギーで健全な状態を保つことができるようになり、結果として肥料効率が向上します。

さらに、肥料を減らすことは、過剰施肥による河川への流出や環境汚染を防ぐことにもつながります。菌根菌とグロマリンの力を活用した「減肥栽培」は、コスト削減と環境保全を両立させる、まさに持続可能な農業の鍵となる技術です。最近では、高濃度の菌根菌資材も開発されており、育苗期に接種することで定植後の活着促進や初期生育の安定化を図る技術も普及し始めています 。


参考)菌根菌が作物に与える3つの効果とは? 菌根菌由来のバイオステ…

長野県における菌根菌活用による肥料削減と環境型農業への取り組み事例です。


化成肥料を削減し環境面・コスト面で貢献する菌根菌利用
参考)化成肥料を削減し環境面・コスト面で環境型アグリビジネスを牽引…

グロマリンの意外な効果?植物ホルモンと成長促進

ここまでは「土壌改良」や「養分吸収」といった物理的・化学的な側面を見てきましたが、最新の研究ではグロマリン(およびそれに関連する土壌タンパク質:GRSP)が、植物の生理機能に直接働きかける「バイオスティミュラント(生物刺激資材)」のような作用を持つ可能性が示されています。これは従来の検索上位記事ではあまり深く語られていない、独自の視点です。


ある研究では、抽出したグロマリン関連タンパク質(EE-GRSP)を作物の根に外的に与えたところ、根のオーキシン(植物ホルモンの一種で、発根や成長を促す物質)の合成に関わる遺伝子の発現が上昇し、実際に根の成長が促進されたという結果が出ています 。オーキシンは側根の発生や根毛の形成に不可欠なホルモンです。つまり、グロマリンは単なる「糊」ではなく、植物に対して「もっと根を伸ばして!」というシグナルを送ったり、ホルモンバランスを調整したりして、根系の発達を積極的に後押ししている可能性があるのです。


参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC8488200/

また、柑橘類の研究では、グロマリンの処理によって根の水チャネルタンパク質(アクアポリン)の発現が調節され、水分の吸収効率が最適化されたという報告もあります 。これは、グロマリンが植物の水ストレス耐性(乾燥への強さ)を、遺伝子レベルで強化していることを示唆しています。


参考)https://www.mdpi.com/2223-7747/12/16/2955/pdf?version=1692150768

さらに、グロマリンに含まれる鉄分が病原菌に対する防御壁として機能し、植物の免疫力をサポートしている可能性も指摘されています 。このように、グロマリンは土壌環境を整えるという「間接的な効果」だけでなく、植物の代謝やホルモン系に働きかける「直接的な成長促進効果」も秘めています。この「ホルモン様作用」は、今後農業資材としてのグロマリンの価値をさらに高める重要なファクターになるでしょう。


参考)http://agroecology.seesaa.net/article/483233189.html

グロマリン関連タンパク質の外的投与が植物のオーキシン変化と成長に与える影響についての論文(英語)です。


Exogenous Glomalin-Related Soil Proteins Regulate Auxin Changes

グロマリンを増やすための具体的な農法と資材

では、この有用なグロマリンを畑で増やすにはどうすればよいのでしょうか。答えはシンプルで、「菌根菌が住みやすい環境を作ること」に尽きます。菌根菌は「絶対共生菌」であり、生きた植物の根がないと生きていけません 。したがって、休閑期を作らずに常に何らかの植物を植えておくことが重要です。


参考)https://www.tohoku-hightech.jp/file/seminar/r6_241028_3.pdf

  1. 耕起栽培・最小耕起(No-till / Min-till):

    菌根菌の菌糸ネットワークは物理的な破壊に弱いため、激しい耕起(ロータリー耕など)を行うと、せっかく形成された菌糸網が寸断され、グロマリンの生産工場が破壊されてしまいます 。耕起の頻度や深さを減らす「不耕起栽培」や「簡易耕起」は、菌根菌の密度を高め、グロマリン濃度を上昇させる最も有効な手段の一つです。

  2. カバークロップ(緑肥)の活用:

    主作物の収穫後、休耕期間に麦類(ムギ)やヘアリーベッチ、クローバーなどの「カバークロップ」を栽培することで、菌根菌に宿主(宿り主)を提供し続けます。特にイネ科やマメ科の多くは菌根菌と相性が良く、土壌中の菌密度を維持・増加させるのに役立ちます(※アブラナ科など一部の作物は菌根菌と共生しないため注意が必要です)。


    参考)土壌微生物を増やす4つの方法|働きやメリットについて解説|マ…

  3. 過剰なリン酸施肥を避ける:

    土壌中のリン酸濃度が高すぎると、植物は自力でリン酸を吸収できると判断し、コストのかかる菌根菌との共生(糖の受け渡し)を拒否してしまいます 。土壌診断に基づき、リン酸施肥量を適正化(減肥)することで、植物が菌根菌を必要とする環境を作り、共生を促進させることができます。

  4. 炭(バイオ炭)の利用:

    炭(木炭や竹炭など)を土壌に混和することで、菌根菌の共生率が向上し、作物の生育が良くなるという研究結果があります 。炭の多孔質な構造が微生物の隠れ家となり、菌根菌の活動をサポートすると考えられています。


    参考)菌根菌とは?菌根菌の利用方法や増やし方について解説 | コラ…

  5. 殺菌剤の使用を控える:

    土壌消毒剤や一部の殺菌剤は、病原菌だけでなく有用な菌根菌も死滅させてしまいます。可能な限り化学農薬の使用を抑え、土着の微生物相を豊かに保つことが、結果としてグロマリンの豊富な「病気に強い土」を作ることにつながります。


これらの方法は、環境保全型農業有機農業の基本技術とも重なります。グロマリンという視点を持つことで、なぜこれらの農法が土づくりに効果的なのか、そのメカニズムがより深く理解できるはずです。


環境再生型農業における不耕起やカバークロップの重要性とグロマリンについての解説です。


「土・牛・微生物」環境再生型農業とグロマリン




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