キャベツ育て方と時期や肥料で結球させるコツと害虫対策

初心者からプロまで役立つキャベツ栽培の決定版。植え付け時期の選定から、結球を成功させる肥料のタイミング、意外と知らない葉の枚数と収穫の関係まで徹底解説します。甘くて高品質なキャベツを作る準備はできていますか?

キャベツの育て方

キャベツ栽培の要点
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栽培カレンダー

春まき、夏まき、秋まきの3パターンがあり、初心者は夏まき秋冬収穫が最も管理しやすくおすすめ。

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肥料管理

外葉を大きく育てることが結球への近道。定植後と結球開始期の2回の追肥が品質を左右します。

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防虫対策

アオムシやコナガは大敵。植え付け直後からの防虫ネット被覆と、コンパニオンプランツの活用が鍵。

キャベツ育て方の時期と植え付けのポイント

 

キャベツの栽培において、最も重要な第一歩は「品種選び」と「植え付け時期」のマッチングです。キャベツは冷涼な気候を好みますが、品種によって耐暑性耐寒性が大きく異なります。一般的に、家庭菜園や小規模農業で最も成功率が高いのは「夏まき秋冬収穫」の作型です。これは、害虫の活動が低下する時期に結球期を迎えられるため、農薬の使用を抑えつつ高品質なキャベツを収穫できるからです。

 

土作りの科学とpH調整
キャベツは根が深く伸びる性質があるため、深く耕された土壌を好みます。しかし、それ以上に重要なのが土壌酸度(pH)の調整です。キャベツは酸性土壌を極端に嫌い、pHが低いと「根こぶ病」などの深刻な土壌病害が発生しやすくなります。

 

  • 適正pH: 6.0~6.5
  • 石灰の施用: 植え付けの2週間前には苦土石灰を施用し、土壌を中和しておくことが必須です。1平方メートルあたり100g~150gが目安です。
  • 完熟堆肥: 根張りを良くするために、牛糞堆肥などの完熟堆肥をたっぷりと入れます。

植え付け時の「活着」テクニック
苗を植え付ける際、単に穴を掘って埋めるだけでは不十分です。「活着(かっちゃく)」と呼ばれる、苗の根が畑の土に馴染み、水を吸い上げ始めるプロセスをスムーズにする必要があります。プロの農家が実践しているのは、植え穴にたっぷりと水を注ぎ、水が引いてから苗を植える「水極め」という手法です。これにより、根と土の間の隙間がなくなり、初期生育が圧倒的に良くなります。

 

  • 苗の選び方: 本葉が5~6枚で、節間が詰まってガッシリしているものを選びます。ヒョロヒョロと徒長している苗は、その後の結球が悪くなるため避けてください。
  • 栽植密度: 株間は40cm~45cm確保します。狭すぎると風通しが悪くなり、病気の温床となります。

タキイ種苗の公式サイトでは、地域ごとの詳細な栽培カレンダーや品種の選び方が掲載されており、作型選定の参考になります。

 

タキイ種苗:キャベツの品種特性と作型表

キャベツ育て方で重要な肥料と追肥のタイミング

キャベツは別名「肥料食い」と呼ばれるほど、多くの養分を必要とする野菜です。特に窒素分は葉や茎を大きくするために不可欠ですが、与えるタイミングを間違えると、逆に結球しなくなったり、病害虫を呼び寄せたりする原因になります。肥料管理の極意は、「外葉(そとば)をいかに大きく育てるか」にかかっています。

 

なぜ外葉が重要なのか
私たちが食べる丸まった部分(結球部分)は、光合成を行いません。結球部分に養分を送っているのは、外側に広がっている大きな「外葉」です。つまり、結球が始まる前に外葉をどれだけ大きく、かつ枚数を確保できるかが、キャベツの大きさや重さを決定づけます。

 

追肥のゴールデンタイミング
追肥は漫然と与えるのではなく、キャベツの生育ステージに合わせて行います。

 

追肥の回数 タイミング 目的 ポイント
1回目 定植から約2~3週間後 初期生育の促進 本葉が10枚程度になり、新しい葉が勢いよく伸び始めた頃。株元に軽く土寄せも行う。
2回目 結球開始期(芯葉が立ち始めた頃) 結球の充実 株の中心の葉が立ち上がり、巻き始めたサインを見逃さないこと。ここで遅れると玉が締まらない。
3回目 2回目の追肥から約3週間後 玉の肥大促進 晩生種(収穫まで期間が長い品種)の場合のみ行う。早生種では不要な場合が多い。

肥料過多のリスク
「大きくしたい」という思いから肥料を与えすぎると、以下の弊害が発生します。

 

  • アブラムシ誘引: 窒素過多になると植物体内のアミノ酸濃度が高まり、害虫にとって「美味しい」状態になります。
  • 裂球(れっきゅう): 収穫間際まで肥料が効きすぎていると、内部の成長圧に外側が耐えきれず、キャベツが割れてしまいます。
  • 苦味の増加: 硝酸態窒素が残留し、えぐみや苦味の原因となります。

JAグループの園芸ページでは、肥料の種類や成分比率についての基礎知識が解説されており、適切な肥料選びの参考になります。

 

JAグループ:野菜の育て方(肥料の基本と施肥設計)

キャベツ育て方における害虫対策と虫除けネット

キャベツ栽培における最大の敵は、間違いなく「害虫」です。アブラナ科の野菜は昆虫にとって非常に魅力的であり、無防備な状態で放置すれば、数日で葉脈だけを残して食べ尽くされてしまいます。農薬を減らして栽培するためには、物理的な防御と生物学的な防御を組み合わせる「IPM(総合的病害虫・雑草管理)」の考え方が重要です。

 

主要な害虫とその対策

  1. アオムシ(モンシロチョウの幼虫)
    • 最もポピュラーな害虫です。葉を食害するだけでなく、糞によってキャベツを汚します。
    • 対策: 産卵を防ぐことが第一です。苗を植え付けたら、その日のうちに必ず防虫ネット(目合い1mm以下)をトンネル掛けします。隙間があるとそこから侵入するので、裾は土に埋めるかピンでしっかり固定します。
  2. コナガ
    • 薬剤抵抗性を持ちやすく、プロの農家でも手を焼く害虫です。成長点が食害されると、キャベツは結球できなくなってしまいます。
    • 対策: 目の粗いネットではすり抜けてしまうため、0.6mm~0.8mm目合いのネットを使用します。また、黄色い粘着シートを設置するのも成虫の捕獲に有効です。
  3. ヨトウムシヨトウガの幼虫)
    • 「夜盗虫」の名の通り、昼間は土の中に隠れており、夜になると出てきて葉を暴食します。
    • 対策: 昼間に株元の土を浅く掘り返して捕殺します。また、米ぬかなどの誘引剤を使っておびき寄せる方法もあります。

コンパニオンプランツの活用
農薬に頼らない補助的な手段として、相性の良い植物を混植する「コンパニオンプランツ」が有効です。

 

  • キク科植物(レタス、春菊など): キク科の独特な香りは、モンシロチョウやコナガが嫌うため、キャベツの株間や周囲に植えることで忌避効果が期待できます。
  • ハーブ類(ミント、カモミール): 強い芳香が害虫の探索行動を撹乱します。ただし、ミントは地下茎で爆発的に増えるため、鉢植えを近くに置く程度に留めるのが賢明です。

農林水産省の病害虫防除に関するページでは、登録農薬の情報や防除指針が確認でき、安全な薬剤使用の参考になります。

 

農林水産省:農薬の適正使用と病害虫防除情報

キャベツ育て方で結球しない原因と葉の枚数の関係

多くの栽培者が直面する最大の悩み、それは「葉は茂っているのに、いつまで経っても玉が巻かない(結球しない)」という現象です。実は、キャベツが結球するには、植物生理学的な条件が厳密に決まっています。このメカニズムを理解することが、成功率を飛躍的に高めます。

 

「外葉20枚」の法則
キャベツが結球を開始するためには、一定枚数以上の外葉が必要です。一般的に、外葉が17枚〜20枚展開した時点で、中心部の葉が立ち上がり、結球モードにスイッチが入ります。

 

これは単なる目安ではなく、植物ホルモン(オーキシン)の働きによるものです。葉の裏側の細胞が表側よりも盛んに増殖することで、葉が内側へ向かって湾曲し、重なり合っていくのです。したがって、生育初期に害虫被害や肥料不足で外葉の枚数を確保できなかった場合、物理的に結球スイッチが入らない状態に陥ります。

 

結球しない主な3つの要因

  1. 植え付け遅れによる低温
    • キャベツは一定の積算温度に達しないと成長しません。特に秋植えの場合、植え付けが1週間遅れるだけで、寒くなる前に十分な外葉枚数(20枚)を確保できず、結球しないまま冬を迎えてしまうことがあります。これを防ぐには、適期を逃さず、場合によってはビニールトンネルで保温して生育を促進させる必要があります。
  2. 日照不足と密植
    • 光合成不足は致命的です。株間が狭すぎて隣の葉と重なり合っていると、下葉に光が当たらず、外葉が十分に育ちません。また、日陰の多い場所での栽培も結球不良の典型的な原因です。
  3. 微量要素の欠乏(ホウ素欠乏など)
    • 窒素・リン酸・カリウムの三大要素は足りていても、微量要素である「ホウ素」が欠乏すると、成長点が壊死したり、茎が空洞化したりして結球が阻害されます。特に雨が多い年は土壌中のホウ素が流亡しやすいので、専用の微量要素肥料を補うことがプロのテクニックです。

トウ立ち(抽苔)との戦い
結球せずに花が咲いてしまう「トウ立ち」も問題です。キャベツはある程度の大きさの苗が低温に遭遇すると、花芽分化(花を作る準備)を起こします。これを「春化バーナリゼーション)」と呼びます。

 

  • 秋まき栽培の注意点: 秋に種をまき、大きな苗の状態で真冬の寒さに当たると、春になって結球する前に花茎が伸びてしまいます。これを避けるには、冬越しさせる際の苗の大きさを調整するか、「トウ立ちしにくい品種(晩抽性品種)」を選ぶことが不可欠です。

キャベツ育て方の収穫時期と冬越しの注意点

手塩にかけて育てたキャベツの収穫は、栽培のクライマックスです。しかし、収穫のタイミングを見誤ると、味が落ちたり、裂球して売り物にならなくなったりします。また、冬場に畑に残して甘みを増すテクニックについても解説します。

 

収穫適期の見極め方
キャベツの収穫時期は、見た目だけでなく「触感」で判断します。

 

  • 手で押してみる: 結球した玉の上部を軽く手で押してみて、硬く締まっている感触があれば収穫適期です。ふわふわとして弾力があるうちは、まだ中身が詰まっていません。
  • 外葉の様子: 外葉の緑色が少し薄くなり、光沢が出てきた頃が完熟のサインです。
  • 収穫方法: 球を斜めに倒し、包丁やナイフで株元の茎を切り取ります。残った根は病気の温床になるので、すぐに掘り上げて処分しましょう。

冬越しの極意「寒締め(かんじめ)」
冬に収穫する寒玉キャベツは、寒さに当たることで糖度が増します。これを「寒締め」と呼びます。植物は凍結を防ぐために、細胞内の水分を減らし、代わりに糖分を蓄積して凝固点を下げる性質があります。この生理現象を利用することで、驚くほど甘いキャベツになります。

 

  • 注意点: ただし、氷点下が続くような極寒地では、凍結による腐敗リスクがあります。外葉を紐で縛って玉を覆うように結束することで、霜や寒風から守ることができます。

収穫後の保存テクニック
家庭菜園では一度に食べきれないことも多いでしょう。収穫したキャベツの鮮度を保つプロの技を紹介します。

 

  • 成長点を破壊する: キャベツの芯(茎の切り口)に爪楊枝を3本ほど深く刺すか、ナイフで十字に切り込みを入れます。これにより成長点が破壊され、収穫後も葉が成長しようとして養分を消費するのを防げます。
  • 冷蔵保存: 新聞紙やキッチンペーパーで包み、ポリ袋に入れて冷蔵庫の野菜室に立てて保存します。これで2週間〜1ヶ月は鮮度を維持できます。

裂球のリスク管理
春キャベツなどは、収穫適期を過ぎて畑に置いておくと、雨が降った後に急激に水を吸い上げて「裂球」しやすくなります。

 

  • 根切り処理: もし収穫を遅らせたい場合は、スコップを株の周囲に差し込み、根の一部を切断します。こうすることで水分の吸収が抑制され、裂球を防ぎながら畑で保存することが可能になります。

キャベツ栽培は、種まきの時期から収穫後の管理まで、植物の生理生態を理解することで劇的に品質が向上します。ただ漫然と育てるのではなく、「なぜ肥料が必要なのか」「なぜ結球するのか」という理屈を知ることで、トラブルが起きた際も冷静に対処できるようになるはずです。今回紹介したテクニックを駆使して、ぜひ最高に美味しいキャベツを育ててください。

 

 


【電子分冊版】図解だからわかりやすい 野菜の育て方のコツ②葉菜編