モモハモグリガの生態と発生時期・防除のポイント

モモハモグリガはモモ栽培に大きなダメージを与える害虫です。年に5〜7回発生し、幼虫が葉に潜って食害します。その生態・越冬の仕組み・適切な防除タイミングを知っていますか?

モモハモグリガの生態と発生時期・防除のポイント

モモハモグリガは年に5〜7回も発生する害虫なのに、農薬を年2回しか使わないと収量が半分以下になることがあります。


モモハモグリガの生態まとめ
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形態と発育段階

成虫は体長約3mmの銀白色の細長い蛾。 幼虫は淡緑色・偏平で老熟すると5〜6mm。 卵→幼虫(3齢)→蛹→成虫のサイクルを年5〜7回繰り返す。

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加害の特徴

幼虫が葉肉に潜行して線状の「絵描き症状」を残す。多発すると全葉落葉することもあり、樹勢低下につながる。

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越冬の仕組み

成虫のまま幹・枝の隙間や建造物の中で越冬。晩秋の越冬成虫は全体が黒化するため、外見から季節を判別できる。

モモハモグリガの形態と幼虫の特徴

モモハモグリガ(学名:Lyonetia clerkella)の成虫は体長約3mm、銀白色の細長いガです。 幼虫は淡緑色で偏平な形をしており、老熟すると体長5〜6mmほどに成長します。 はがきの短辺(約10cm)の約16分の1という、非常に小さな虫です。


参考)島根県:モモハモグリガ(トップ / しごと・産業 / 農林…


発育段階は「卵→幼虫(3齢)→蛹→成虫」という完全変態型です。 加害部位は葉のみで、幼虫が葉肉に潜り込んで食べ進む「潜葉性害虫」に分類されます。 つまり、葉の外から農薬をかけるだけでは幼虫に届きにくいということです。pref.wakayama+1
初夏から秋に発生する成虫は前翅の斑紋を除きほぼ全体が白色ですが、晩秋に発生する越冬成虫は全体が黒化するという興味深い特徴があります。 黒化した越冬型の成虫を春先に見つけた場合、それはすでに越冬を終えた「第1世代の親」であるため、すぐに防除を開始するサインと受け止めるのが有効です。


参考)https://www.fmc-japan.com/wiki/citrus/butterfly/lyonetia-clerkella


モモハモグリガの発生回数と発生時期

年間の発生回数は5〜7回と非常に多いです。 4月下旬に落葉下や雑草の中で越冬した成虫がモモに飛来して産卵し、10月ごろまで継続して成虫が観察されます。pref.shimane+2
多い年と少ない年の差が大きく、「例年被害はそれほど多くないが、年により大発生することがある」という特性を持ちます。 これが油断を生みやすい害虫でもある理由です。


参考)https://www.pref.fukuoka.lg.jp/uploaded/life/788880_62649455_misc.pdf


第2世代の幼虫については、平年の防除適期が6月10日ごろとされていますが、年によって発生が早まることがあります。 発生が早い年には適期を見逃すリスクが高まるため、交信かく乱剤のトラップなどを活用して発生動向を事前に把握するのが有効です。jppa.or+1

  • 第1世代:4月下旬〜5月(越冬成虫が飛来・産卵)
  • 第2世代:6月上〜中旬(防除の重要な山場)
  • 第3世代以降:7月〜10月(継続的に発生)

参考:交信かく乱剤「コンフューザーMM」を用いた発生予察の試験報告
交信かく乱剤でモモハモグリガの発生を調べる(日本植物防疫協会)

モモハモグリガの越冬生態と潜伏場所

越冬形態は「成虫」です。 幼虫でも卵でもなく、成虫のまま冬を越すという点が、他の多くの害虫と異なります。


意外ですね。



参考)https://www.pref.wakayama.lg.jp/prefg/070100/070109/gaiyou/kakimomo/kakimomo/byotyu/index_d/fil/hamoguri.pdf


越冬場所は樹の幹や枝の間隙だけでなく、農作業小屋や資材置き場などの建造物の隙間も利用します。 これはつまり、圃場外の建物にも越冬個体が潜んでいる可能性があるということです。冬に農機具小屋の隙間を確認することが、翌春の被害軽減につながる場合もあります。


春になると越冬成虫が展開した葉に産卵を始めます。 産卵後、幼虫は葉肉に潜行して成長し、成熟すると葉の外に出てハンモック状の白い繭を作り蛹化します。 この繭は葉裏や幹のくぼみに見られるため、圃場巡回時に注意して探すと発生早期の確認に役立ちます。pref+1
参考:島根県農業技術センターによる生態・防除の解説
虫害名:モモハモグリガ(島根県)

モモハモグリガの食害症状と落葉リスク

食害痕は最初、葉に「線状の絵描き症状」として現れます。 幼虫が葉肉の中を蛇行しながら食べ進むため、葉の表面に白〜黄色の蛇行した線が見えるようになります。


その後、食害痕の一部に穴が開き、被害葉は早期に落葉しやすくなります。 多発生した場合には全葉が落葉することもあるため、樹勢の著しい低下・翌年の着果量への悪影響が懸念されます。


  • 🌿 初期症状:葉に細い線状の白い蛇行痕
  • 🕳️ 進行症状:食害痕の一部が穴あき状になる
  • 🍂 最終症状:被害葉が早期に落葉、多発時には全落葉

全葉落葉は収量・品質の両面で壊滅的なダメージになります。落葉が起きてからの防除では手遅れになりやすく、早期発見・早期防除が原則です。


参考:FMC害虫Wikiによる詳細解説
モモハモグリガの特徴と防除方法・効果的な農薬(FMC害虫Wiki)

モモハモグリガの防除タイミングと農薬選択の実践的ポイント

防除の最重要ポイントは「発生世代に合わせた適期防除」です。 幼虫は葉肉の中に潜んでいるため、葉に浸透移行性のある薬剤を選ぶことが重要になります。


参考)https://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/attachment/574138.pdf


防除適期は第1世代・第2世代の幼虫発生期がもっとも効果的です。 具体的には、交信かく乱剤のトラップで羽化初期を確認してから散布するか、防除暦の指定日(第2世代は平年6月10日ごろ)を目安にします。 発生が早い年は防除暦より1〜2週間前倒しする必要があります。ja-f-mirai+2
また、加害作物はモモだけでなく、なし・すもも・うめ・かき・くりにも寄生します。 複数の果樹を栽培している農家では、それぞれの園地を個別に確認する必要があります。


  • ✅ 浸透移行性のある農薬を選ぶ(葉肉内の幼虫に届く)
  • ✅ 交信かく乱剤トラップで羽化確認後に散布
  • ✅ 第1・第2世代の幼虫期を防除の軸にする
  • ✅ 発生が早い年は防除時期を前倒しする
  • ✅ なし・うめなど複合栽培の場合は園地ごとに確認

モモハモグリガに登録のある農薬として、エクシレル®SE(5000倍散布)は対照薬剤と比較して防除効果が高いことが確認されています。 また、サムコル®フロアブル10は第1世代防除だけでなく、ハマキムシ類シンクイムシ類の同時防除が可能なため、防除回数の削減に役立ちます。


参考:福島県による薬剤散布時期と薬剤選択の指導資料
モモハモグリガ被害の増加を防ぐための薬剤防除(福島県)