コナガはアブラナ科作物を好むチョウ目害虫で、成虫は体長約5~6mmと小型ですが、幼虫が葉を食害して網目状や穴あきの被害を生じさせます。 卵から成虫までの世代交代が約2~3週間と非常に早く、年間10世代以上を繰り返す地域もあり、放置すると短期間で密度が急増します。
卵は葉裏に単独~数個ずつ産み付けられ、5~7日ほどで孵化し、若齢幼虫は葉肉を食べてウスジミ状の被害を、終齢幼虫は葉を貫通する穴あき被害をもたらします。 成虫が飛来し始めてから2週間ほど経つと次世代幼虫が一斉に現れ、収穫前のキャベツやブロッコリーが一夜で商品価値を失うケースもあり、発生初期からのモニタリングと早期防除が重要です。
参考)コナガ被害の対策【卵・幼虫・成虫の生態 農薬による駆除方法も…
コナガは有機リン剤やピレスロイド剤など従来の化学農薬に対して抵抗性を発達させやすく、同一系統の薬剤を連用すると効果低下が急速に進むことが各地の試験で報告されています。 そのため、防除では有機リン系・ネオニコチノイド系・ジアミド系など薬剤の作用機構が異なるものをローテーションしながら、世代ごとに系統を切り替えることが推奨されています。
生物農薬であるBT剤はチョウ目幼虫のみに選択的に効く微生物殺虫剤で、特に化学農薬抵抗性コナガに安定した効果を示す製剤が複数市販されています。 BT生菌剤は毒性が低く有機JASでも使用可能な天敵等生物農薬として位置付けられており、Cryタンパクのタイプが異なる菌株(kurstaki系・aizawai系など)を使い分けることで、BT剤自体への抵抗性発達を抑えながら連用できる点も現場では大きな利点です。
参考)農薬ガイドNO.89_b
BT剤は「食べさせて効く」薬剤のため、若齢幼虫期に葉全面にムラなく散布することが重要で、夜間に摂食が活発になる習性を踏まえて、夕方の散布で効果が安定しやすいとする報告もあります。 一方、強い日射や大雨で薬剤が分解・流亡すると効果が落ちるため、散布後数日は極端な天候を避け、必要に応じて再散布を計画することが、安定した駆除成績につながります。
参考)エコマスターBT│園芸/殺虫剤│農薬製品│クミアイ化学工業株…
農薬メーカーのBT剤技術資料で、登録作物・希釈倍数・使用時期(発生初期散布)・総使用回数などが詳細に示されているので、栽培作物と地域の防除暦に合わせて活用すると、無駄のない防除体系を組み立てやすくなります。
参考)https://www.greenjapan.co.jp/ipm_cabbage.htm
BT生菌剤の登録内容や使用時期が詳しい技術資料
エコマスターBT│園芸 - 農薬製品
コナガの成虫飛来そのものを抑える物理防除として、防虫ネットや被覆資材の活用は、農薬に頼り過ぎない防除体系の基盤になります。 目合い0.6~1.0mm程度の防虫ネットで圃場全面をトンネルまたはべたがけし、畝端や裾をしっかり埋めることで、成虫がアブラナ科幼苗に産卵する機会を大幅に減らすことができます。
ただし、コナガ成虫は非常に小型で、被覆の隙間から侵入しやすいので、支柱との接点や灌水口など「虫の出入り口」になりやすい箇所を事前に点検することが重要です。 ネットの内側にすでに卵や幼虫が入り込んでいると逆に密度が高まりやすいため、定植前に苗の葉裏を確認して卵をふき取る、あるいは育苗段階から防虫ネットや寒冷紗で被覆しておくといった、前工程でのチェックが効いてきます。
参考)コナガの被害と対策・駆除方法
家庭菜園レベルでは、コナガ幼虫は見つけ次第指でつぶす、ピンセットで除去する、バケツの水に落とすなどの手取り駆除も有効で、卵の段階で潰すことで薬剤散布回数を1~2回減らせたという事例も報告されています。 生産規模が大きい圃場では、黄色や白色の粘着トラップを圃場の上に設置し、成虫の飛来ピークを視覚的に把握することで、殺虫剤散布やBT剤散布のタイミングを逃さず設定できます。
参考)コナガ|被害の特徴・生態と防除方法
コナガは世界的にも農薬抵抗性が問題となっている害虫で、国内外の調査でも、有機リン系・カーバメート系・ピレスロイド系など複数系統に対する感受性低下が報告されています。 そのため、化学的防除・物理的防除・生物的防除・栽培管理を組み合わせた総合的病害虫管理(IPM)を導入することが、長期的な駆除効果と持続的な栽培を両立させる鍵になります。
IPMでは、まず発生予察を重視し、フェロモントラップや粘着トラップで成虫の飛来状況を把握しながら、発生初期にBT剤や作用機構の異なる低毒性殺虫剤を用いたスポット防除を行います。 発生が拡大した局面では、圃場全体への薬剤散布を実施しつつ、その世代の中で同一系統薬剤を連用しないよう注意し、次世代に入る前に作用機構を切り替えることで、抵抗性個体だけが選抜されて残る事態を避けます。
参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjpestics/38/1/38_W12-38/_pdf
IPMの一環として、天敵保護も重要です。寄生バチ類やクモなどの天敵は、BT剤や選択性の高い殺虫剤では比較的残りやすく、多様な天敵相を維持することで、コナガ密度の自然抑制が期待できます。 小規模圃場では、薬剤散布の際に圃場外縁部を無処理帯として残し、天敵の避難場所を確保することで、圃場中心部に天敵が徐々に再侵入し、密度抑制に寄与したという事例も紹介されています。
薬剤抵抗性管理のガイドライン案では、コナガのような抵抗性発達が速い害虫に対して、地域単位で薬剤ローテーションを調整し、同じ成分を多くの農家が同時期に使い続けないよう調整することの重要性が指摘されています。 産地全体で防除暦を共有し、BT剤・フェロモン剤・性誘導撹乱剤・防虫ネットなど非化学的手段を組み合わせることで、単独の圃場では難しい「地域IPM」を実現しやすくなります。
参考)コナガの生態と農作物への被害、対策方法について - 農業メデ…
薬剤抵抗性管理とIPMの考え方を整理した技術資料
薬剤抵抗性農業害虫管理のためのガイドライン案
コナガの卵や若齢幼虫は、激しい降雨や散水によって葉から洗い流されることがあり、多雨年には発生が抑制される傾向があることが指摘されています。 実際に、夜間にスプリンクラーで15分間の散水を2回行うことで、約8割の幼虫を駆除できたという報告があり、薬剤に頼らない追加的防除手段として注目されています。
この「散水防除」は、コナガ幼虫の行動特性を利用したものです。若齢幼虫は葉面に浅く潜っているものの、強い水流には弱く、繰り返しの散水で地表に落ちた幼虫は、その後の天敵や乾燥によって死亡しやすくなります。 一方で、水耕栽培や排水不良圃場、病害の多発圃場では過度な散水が別のリスクになるため、作型・土壌条件・作物の生育ステージを考慮して取り入れる必要があります。
散水による駆除は、BT剤や化学農薬との併用で相乗効果が期待できます。たとえば、散水で葉裏の糞やほこりを洗い流してからBT剤を散布すると、葉面への付着が良くなり、薬剤の摂食量が増えて防除効果が安定するケースもあります。 また、定期散水を導入すると、作物体の表面温度が下がり、真夏の高温期にコナガの発生ピークがわずかにずれるといった報告もあり、気候変動下のリスク分散手段としても検討する価値があります。
家庭菜園では、夕方にホースで葉裏を重点的に洗い流すだけでも、目視で確認できる幼虫数が減り、その後の手取り作業が大幅に楽になるという声が多く聞かれます。 大規模圃場でも、既存の灌水設備を上手に使えば、追加コストを抑えながら「もうひと押し」の防除ができるため、薬剤散布と散水を組み合わせた自分なりのパターンを試験的に組んでおくと、異常発生年の備えになります。
コナガの発生と散水の効果について言及している解説ページ
コナガの生態と無農薬で防除する方法