ネギアザミウマ農薬ローテーション効果と防除方法

ネギアザミウマの防除に農薬のローテーション散布は本当に効果的なのでしょうか?薬剤抵抗性を防ぎ、確実な効果を得るための系統別散布方法や最適な散布間隔、発生初期の対応について詳しく解説します。あなたの防除計画は適切ですか?

ネギアザミウマ農薬ローテーション防除法

同じ系統の農薬を2世代続けると抵抗性が発達します


📌この記事の3つのポイント
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ブロック式ローテーションが基本

害虫の1世代ごとに異なる系統の農薬を使用することで、薬剤抵抗性の発達を効果的に抑制できます

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散布間隔は7〜10日が推奨

ネギアザミウマの世代交代速度に合わせた散布間隔で、発生密度を低く維持することが重要です

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発生初期からの防除が成功の鍵

密度が高くなってからでは防除が困難になるため、白いかすり状の食害痕を見つけたら即座に対応が必要です


ネギアザミウマのローテーション散布が必要な理由


ネギアザミウマは農薬に対する抵抗性が発達しやすい害虫として知られています。その背景には、この害虫の特殊な生態が大きく関わっているのです。


年間10回以上という驚異的な世代交代の速さが、抵抗性発達の主な原因となっています。ネギアザミウマは高温期であれば2〜3週間で1世代が完了し、施設内では年中繁殖を続けることが可能です。これは他の多くの害虫と比較しても極めて速いペースです。


この速い世代交代により、同じ系統の農薬を繰り返し使用すると、抵抗性を持つ個体が急速に増加してしまいます。


つまり農薬が効かなくなるということですね。


実際に全国各地で、ピレスロイド系やネオニコチノイド系など、かつて高い効果を示していた農薬が効きにくくなっている報告が相次いでいます。


特に北海道では、ピレスロイド剤が効かない「抵抗性ネギアザミウマ」が全道に広がっていることが、遺伝子診断法によって明らかになりました。このような状況下では、農薬のローテーション散布が防除成功の絶対条件となります。


ローテーション散布とは、作用機構(系統)の異なる農薬を計画的に使い分ける方法です。害虫に対して常に異なる作用の農薬を使うことで、特定の薬剤への抵抗性発達を遅らせることができます。


農家webのアザミウマ防除解説には、具体的なローテーション散布の組み立て方が詳しく紹介されています。IRAC(殺虫剤抵抗性管理委員会)のコード番号を参考にした薬剤選択が基本となります。


ネギアザミウマに有効な農薬系統とIRACコード

農薬のローテーション散布を実践するには、まずIRACコード(作用機構分類)を理解する必要があります。IRACコードは、農薬がどのように害虫に作用するかを分類した国際的な番号体系です。


同じIRACコードの農薬は作用機構が同じであるため、連続使用すると抵抗性が発達しやすくなります。逆に異なるコードの農薬を交互に使えば、抵抗性の発達を効果的に抑制できるということですね。


ネギアザミウマに登録のある主な農薬系統は以下の通りです。


有機リン系(IRACコード1B)
スミチオン乳剤、ダイアジノン粒剤などが代表的です。古くから使用されている系統で、地域によっては抵抗性が発達している場合があります。定植時や土寄せ時の株元散布に粒剤が使われることが多く、ある程度の残効性が期待できます。


ネオニコチノイド系(IRACコード4A)
モスピラン水溶剤、ダントツ水溶剤、アクタラ顆粒水溶剤、スタークル顆粒水溶剤などが含まれます。浸透移行性があり、葉の隙間に潜むネギアザミウマにも効果が届きやすい特徴があります。ただし、この系統も使用頻度が高いため、地域によっては感受性の低下が報告されています。


スピノシン系(IRACコード5)
ディアナSC、スピノエース顆粒水和剤が該当します。比較的新しい系統で、多くの地域で高い防除効果が確認されています。特にディアナSCは京都府の試験でも高い殺虫効果を示しました。


アベルメクチン系(IRACコード6)
アファーム乳剤、アグリメック乳剤などです。接触毒と食毒の両方の作用を持ち、速効性があります。


ただし残効期間はやや短めです。


IGR剤(IRACコード14)
カスケード乳剤が代表例です。幼虫の脱皮を阻害する作用があり、成虫には効果がありませんが、幼虫密度を長期間抑制できます。


ジアミド系(IRACコード28)
ベネビアOD、ベリマークSCが該当します。新しい作用機構を持ち、高い効果と2〜3週間の長い残効性が特徴です。薬液のかかりにくい葉の隙間に潜む害虫にも効果を発揮します。


メタジアミド系(IRACコード30)
グレーシア乳剤がこの系統です。京都府の薬剤感受性試験では最も高い殺虫効果を示しました。


これらの系統を組み合わせることで、効果的なローテーション防除が可能になります。地域の防除暦や予察情報を参考にして、すでに抵抗性が発達している系統は避けることが重要です。


ネギアザミウマのブロック式ローテーション実践法

効果的なローテーション散布には「ブロック式ローテーション(世代間ローテーション)」という考え方が推奨されています。これはIRAC(殺虫剤抵抗性管理委員会)が提唱する方法で、害虫の1世代を1つのブロック期間として捉えるものです。


ネギアザミウマの場合、夏期の高温時には約2週間で1世代が完了します。つまり2週間を1ブロックと考えて、その期間内では同じ系統の農薬を使用せず、次のブロックでは必ず異なる系統に切り替えるということですね。


具体的な組み立て方を見てみましょう。例えば6月から8月にかけての防除計画では、以下のような構成が考えられます。


第1ブロック(6月上旬):IRACコード28のベネビアODを散布
第2ブロック(6月中旬):IRACコード5のディアナSCを散布
第3ブロック(6月下旬):IRACコード30のグレーシア乳剤を散布
第4ブロック(7月上旬):IRACコード6のアファーム乳剤を散布
第5ブロック(7月中旬):IRACコード4Aのモスピラン水溶剤を散布


このように異なる系統を順番に使うことで、同じ作用機構の農薬が連続しないようにします。ポイントは隣り合うブロックで必ず異なるIRACコードを選ぶことです。


散布間隔については、長ネギでは7日間隔、玉ねぎでは10日間隔が基本とされています。北海道の研究では、抵抗性ネギアザミウマに対しても7日間隔の防除で高い効果が確認されました。


ただし発生密度が高い時期や、圃場外からの飛び込みが多い7月下旬から8月下旬は、7日間隔で特に効果の高い薬剤(IRACコード28や30など)を優先的に使用することが推奨されます。


散布のタイミングを逃さないために、防除カレンダーを作成しておくと便利です。エクセルなどで散布日と使用農薬のIRACコードを記録しておけば、次回どの系統を使うべきか一目で分かります。


北海道立総合研究機構の抵抗性ネギアザミウマ防除資料には、作型別の詳細な防除体系が図解されています。長ネギ、玉ねぎ、キャベツそれぞれの推奨防除方法が確認できます。


ネギアザミウマの発生初期防除と密度管理のコツ

ローテーション散布の効果を最大化するには、発生初期からの防除開始が絶対条件となります。ネギアザミウマの防除で最も重要なのは「圃場の害虫密度を常に低く維持する」ことです。


密度が高くなってから慌てて農薬を散布しても、すでに手遅れというケースが少なくありません。増殖が極めて速いため、少数の成虫があっという間に大発生につながってしまいます。


発生初期を見逃さないためには、定期的な観察が欠かせません。ネギの葉に白いかすり状の食害痕が現れたら、すぐに防除を開始してください。この段階ではまだ虫の姿が見えにくいかもしれませんが、被害痕が出た時点で既に寄生が始まっています。


特に注意すべき時期は5月から6月です。気温が上昇し始めるこの時期に初発があり、その後密度が急上昇します。5月上旬頃から圃場の観察を強化し、食害痕を発見したら即座に第1回目の薬剤散布を実施しましょう。


初期防除のタイミングが遅れると、その後どれだけ農薬を散布しても密度を下げるのが困難になります。例えば玉ねぎでは、7月の寄生量が収穫時の被害程度と強く相関することが分かっています。つまり7月に密度を低く抑えられれば、その後の被害も軽減できるということですね。


定植時の予防的処理も効果的です。定植前にダイアジノン粒剤やダントツ粒剤などを株元に処理しておくと、初期の密度上昇を抑制できます。キャベツの結球部被害を防ぐ場合は、定植前の灌注処理と7日間隔の散布を組み合わせた体系が推奨されています。


圃場周辺の雑草管理も見落とせません。ネギアザミウマは非常に広範な植物に寄生するため、圃場周辺の雑草が発生源となります。可能な限り除草を行い、発生源を減らすことが予防につながります。


発生密度のモニタリング方法として、黄色粘着トラップの設置も有効です。トラップに捕獲される成虫数を定期的にチェックすることで、発生動向を把握できます。密度が上昇傾向にあれば、散布間隔を短くするなどの対応が取れます。


ネギアザミウマ防除で避けるべき失敗パターン

実際の現場では、ローテーション散布の考え方を知っていても、実践で失敗してしまうケースがあります。よくある失敗パターンを知っておくことで、効果的な防除につなげられます。


最も多い失敗は「商品名だけで判断して、実は同じ系統を連続使用していた」というケースです。例えばモスピラン水溶剤とダントツ水溶剤は商品名が違いますが、どちらもIRACコード4Aのネオニコチノイド系です。このような組み合わせでは、ローテーション効果が得られません。


農薬を購入する際は、必ずラベルやカタログでIRACコードを確認する習慣をつけましょう。最近の農薬ラベルには、IRAC・FRAC・HRACコードが記載されているものが増えています。


次に多いのが「散布間隔が空きすぎる」失敗です。農薬の残効期間を過信して10日以上間隔を空けてしまうと、その間に密度が急上昇してしまいます。特に高温期の7〜8月は世代交代が速いため、7日間隔を守ることが重要です。


逆に「効果の高い薬剤ばかりを頻繁に使う」のも問題です。例えばグレーシア乳剤やベネビアODなど、現時点で高い効果を示す薬剤でも、使用頻度が高ければいずれ抵抗性が発達します。効果の高い薬剤は密度が上がりやすい時期に限定して使い、それ以外の時期は他の系統でカバーするバランスが大切です。


展着剤を加用しない」ことも防除効果を下げる原因になります。ネギの葉は表面がワックス状で薬液が弾かれやすく、さらにネギアザミウマは葉の隙間に潜む習性があります。展着剤を適切に加用することで、薬液の付着性と浸達性が向上します。


薬剤の希釈倍率や散布液量も重要なポイントです。「もったいないから薄めに使う」という判断は、効果不足を招くだけでなく、中途半端な濃度が抵抗性発達を促進する可能性があります。必ずラベルに記載された希釈倍率と散布液量を守ってください。


地域の予察情報を無視するのも失敗の元です。各都道府県の病害虫防除所や農業改良普及センターは、地域ごとの発生状況や薬剤感受性の変化を調査して情報提供しています。自分の地域でどの系統に抵抗性が出ているかを把握した上で、使用する薬剤を選ぶことが成功への近道です。


最後に「単一の防除手段に頼る」ことも避けるべきです。農薬だけでなく、赤色防虫ネットやシルバーマルチ、天敵利用など、複数の手段を組み合わせた総合的防除(IPM)の考え方が、長期的には最も安定した効果をもたらします。赤色光はネギアザミウマが嫌う波長で、赤色LED防虫灯や赤色ネットの展張により活動を抑制できることが分かっています。


これらの失敗を避け、計画的なローテーション散布を実践することで、ネギアザミウマの安定した防除が実現できます。日々の観察と記録を丁寧に行い、地域の情報を活用しながら、あなたの圃場に最適な防除体系を確立していきましょう。


Please continue.




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