農薬を毎年散布しているのに、ツマグロヨコバイによるウイルス病の被害が出ることがあります。
ツマグロヨコバイ(学名:Nephotettix cincticeps)は、カメムシ目ヨコバイ科に属する昆虫で、体長は雄で4〜5mm、雌で約6mmとはがき1枚の厚みにも満たない極めて小さな害虫です。 体色は黄緑色で、雄は翅先が黒く「ツマグロ(端黒)」の名の由来となっています。pref.gifu+1
卵は長さ約1mmのバナナ型をしており、孵化直後の幼虫は淡黄色、成長するにつれ褐色がかってきます。 幼虫は成虫と外見は似ていますが、翅を持たないため飛翔はできません。 つまり幼虫のうちに防除できれば、ほ場外への拡散を抑えられるということです。pref+1
年間の世代数は地域によって異なり、西日本では年4世代、北関東など東日本では年3世代程度発生します。 4月下旬から越冬世代の成虫が動き始め、6月下旬〜10月上旬にかけて第1〜第4世代が順に発生します。 特に8〜9月の高温条件下で第3世代が多発しやすいため、要注意時期です。boujo+1
移動距離が短い点も特徴の一つです。 つまり、前年に多発したほ場で翌年も再発生しやすい傾向があります。 早期に発生ほ場を把握し、翌年の防除計画に活かすことが収量を守る第一歩です。
参考)https://www.ja-shika.jp/pdf/R02kome03.pdf
ツマグロヨコバイの被害には「直接被害」と「間接被害」の2種類があります。 直接被害とは、成虫・幼虫がイネの茎や葉に口吻を差し込んで養分を吸汁し、生育や稔実を阻害するものです。 密度が高くなると虫の排泄物でイネがべとべとし、すす病を併発することもあります。nogyo.tosa.pref.kochi+1
実際の農業現場では、直接吸汁による被害よりも、ウイルス・ファイトプラズマの媒介による間接被害のほうが深刻とされています。 具体的には「イネ萎縮病(Rice Dwarf Virus/RDV)」「イネ黄萎病」「イネ萎縮病」などのウイルス性・ファイトプラズマ性病害を媒介します。pref.gifu+1
RDVを保毒したツマグロヨコバイの越冬幼虫が翌春に羽化し、苗代や田植え直後のイネに吸汁して感染させます。 感染したイネは潜伏期間を経て株が萎縮し、分げつが増加して葉が黄化します。 生育初期に感染すると株が萎縮して出穂しない場合もあり、後期感染でも稔実不良につながります。jppn.ne+1
意外なのは、1970年代以降は病原体の保有率が以前ほど高くなくなったという指摘があることです。 しかし現在でも毎年のように多発している地域があり、油断は禁物です。
これは注意が必要ですね。
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防除タイミングを正確に把握することが、被害を最小化するための鍵です。 出穂期において成虫・幼虫合計で株あたり30頭を超えた場合が、茎葉散布による防除の目安とされています。 この数字はおよそ「1株に小指の爪ほどの虫が30匹集まっている」状態をイメージすると分かりやすいでしょう。boujo+1
基幹防除の適期は7月下旬〜8月上旬です。 この時期を逃すと第3世代の多発につながり、出穂後の稔実期にダメージを受けます。 また、暖冬の年は越冬中の幼虫の死亡率が低くなるため、翌春からの発生量が増える点にも注意が必要です。ja-shika+1
| 発生時期 | 世代 | 主な防除タイミング |
|---|---|---|
| 4月下旬〜5月上旬 | 越冬世代成虫 | 苗代・田植え直後の確認 |
| 6月下旬〜7月中旬 | 第1〜第2世代 | 苗箱処理剤の効力確認 |
| 7月下旬〜8月上旬 | 第2〜第3世代 | 🔴 基幹防除(最重要適期) |
| 8月中旬〜9月 | 第3〜第4世代 | 多発時は2〜3回追加防除 |
春先の一斉防除も効果的です。 越冬後の雑草地やレンゲ畑でのツマグロヨコバイの飛来数を確認することで、その年の発生量をある程度予測することが可能です。
早めの発生予察が原則です。
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ツマグロヨコバイの防除には、育苗箱処理と本田散布の2つのアプローチがあります。 播種時から移植時にかけて苗箱処理剤を施用することで、幼虫期の増殖を初期段階から抑えられます。 幼虫は農薬に弱く、この段階での防除が最もコスト効率に優れています。
代表的な農薬としては以下のものがあります。
耕種的防除と農薬防除を組み合わせることで、薬剤耐性の進行を抑えながら持続可能な害虫管理が実現できます。 これが総合的病害虫管理(IPM)の考え方であり、農林水産省も推進している方向性です。maff+1
以下のリンクでは、ツマグロヨコバイの生態・被害・防除方法について農試の研究データが詳しく掲載されています。薬剤選択や耐虫性品種の利用を検討する際の参考として役立ちます。
水稲の抵抗性を利用したツマグロヨコバイ管理技術に関する研究(農研機構):薬剤耐性発達の背景と、抵抗性品種を活用したIPMの詳細なデータが掲載
https://www.naro.go.jp/publicity_report/publication/archive/files/hokoku-15-2.pdf
愛知県病害虫図鑑 ツマグロヨコバイ:県別の被害特性・防除タイミングの解説が充実しており、地域に応じた防除の参考に最適
https://www.pref.aichi.jp/site/byogaichu/tumaguro.html
農薬を散布しているのに被害が出る状況の多くは、適期を外した防除か薬剤耐性の発達が原因です。 発生予察情報を活用し、耐虫性品種・耕種的防除・農薬ローテーションを組み合わせることが、長期的にツマグロヨコバイの被害を抑える最も確実な方法です。hokuriku-byochu.sakura+2