ツマグロヨコバイの害虫対策と防除で稲を守る方法

ツマグロヨコバイは水稲に深刻な被害をもたらす害虫です。直接吸汁害だけでなく、イネ萎縮病・黄萎病のウイルスを媒介する恐ろしい側面も。正しい発生時期の把握と農薬選択で収量を守れるのでしょうか?

ツマグロヨコバイの害虫被害と効果的な防除策

農薬を毎年散布しているのに、ツマグロヨコバイによるウイルス病の被害が出ることがあります。


ツマグロヨコバイ 害虫対策の3つのポイント
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直接被害だけじゃない

吸汁による生育障害に加え、イネ萎縮病・黄萎病などのウイルス・ファイトプラズマを媒介。 間接被害のほうが深刻なケースも多い。

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防除の適期を逃さない

7月下旬〜8月上旬が基幹防除の適期。出穂期に成幼虫30頭/株を超えたら即対応が必要。

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耐虫性品種+農薬の組み合わせ

「彩のかがやき」などの耐虫性品種の活用と苗箱処理剤を組み合わせると、農薬使用量の削減にもつながる。

ツマグロヨコバイの特徴と生態を正しく理解する


ツマグロヨコバイ(学名:Nephotettix cincticeps)は、カメムシ目ヨコバイ科に属する昆虫で、体長は雄で4〜5mm、雌で約6mmとはがき1枚の厚みにも満たない極めて小さな害虫です。 体色は黄緑色で、雄は翅先が黒く「ツマグロ(端黒)」の名の由来となっています。pref.gifu+1
卵は長さ約1mmのバナナ型をしており、孵化直後の幼虫は淡黄色、成長するにつれ褐色がかってきます。 幼虫は成虫と外見は似ていますが、翅を持たないため飛翔はできません。 つまり幼虫のうちに防除できれば、ほ場外への拡散を抑えられるということです。pref+1
年間の世代数は地域によって異なり、西日本では年4世代、北関東など東日本では年3世代程度発生します。 4月下旬から越冬世代の成虫が動き始め、6月下旬〜10月上旬にかけて第1〜第4世代が順に発生します。 特に8〜9月の高温条件下で第3世代が多発しやすいため、要注意時期です。boujo+1
移動距離が短い点も特徴の一つです。 つまり、前年に多発したほ場で翌年も再発生しやすい傾向があります。 早期に発生ほ場を把握し、翌年の防除計画に活かすことが収量を守る第一歩です。


参考)https://www.ja-shika.jp/pdf/R02kome03.pdf


ツマグロヨコバイが引き起こすイネへの直接被害と間接被害

ツマグロヨコバイの被害には「直接被害」と「間接被害」の2種類があります。 直接被害とは、成虫・幼虫がイネの茎や葉に口吻を差し込んで養分を吸汁し、生育や稔実を阻害するものです。 密度が高くなると虫の排泄物でイネがべとべとし、すす病を併発することもあります。nogyo.tosa.pref.kochi+1
実際の農業現場では、直接吸汁による被害よりも、ウイルス・ファイトプラズマの媒介による間接被害のほうが深刻とされています。 具体的には「イネ萎縮病(Rice Dwarf Virus/RDV)」「イネ黄萎病」「イネ萎縮病」などのウイルス性・ファイトプラズマ性病害を媒介します。pref.gifu+1
RDVを保毒したツマグロヨコバイの越冬幼虫が翌春に羽化し、苗代や田植え直後のイネに吸汁して感染させます。 感染したイネは潜伏期間を経て株が萎縮し、分げつが増加して葉が黄化します。 生育初期に感染すると株が萎縮して出穂しない場合もあり、後期感染でも稔実不良につながります。jppn.ne+1
意外なのは、1970年代以降は病原体の保有率が以前ほど高くなくなったという指摘があることです。 しかし現在でも毎年のように多発している地域があり、油断は禁物です。


これは注意が必要ですね。


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ツマグロヨコバイの発生を見極める防除の目安と適期

防除タイミングを正確に把握することが、被害を最小化するための鍵です。 出穂期において成虫・幼虫合計で株あたり30頭を超えた場合が、茎葉散布による防除の目安とされています。 この数字はおよそ「1株に小指の爪ほどの虫が30匹集まっている」状態をイメージすると分かりやすいでしょう。boujo+1
基幹防除の適期は7月下旬〜8月上旬です。 この時期を逃すと第3世代の多発につながり、出穂後の稔実期にダメージを受けます。 また、暖冬の年は越冬中の幼虫の死亡率が低くなるため、翌春からの発生量が増える点にも注意が必要です。ja-shika+1

発生時期 世代 主な防除タイミング
4月下旬〜5月上旬 越冬世代成虫 苗代・田植え直後の確認
6月下旬〜7月中旬 第1〜第2世代 苗箱処理剤の効力確認
7月下旬〜8月上旬 第2〜第3世代 🔴 基幹防除(最重要適期)
8月中旬〜9月 第3〜第4世代 多発時は2〜3回追加防除

春先の一斉防除も効果的です。 越冬後の雑草地やレンゲ畑でのツマグロヨコバイの飛来数を確認することで、その年の発生量をある程度予測することが可能です。


早めの発生予察が原則です。


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ツマグロヨコバイの防除農薬の選択と使い方

ツマグロヨコバイの防除には、育苗箱処理と本田散布の2つのアプローチがあります。 播種時から移植時にかけて苗箱処理剤を施用することで、幼虫期の増殖を初期段階から抑えられます。 幼虫は農薬に弱く、この段階での防除が最もコスト効率に優れています。


代表的な農薬としては以下のものがあります。



農薬は毎年同一系統のものだけに頼ると薬剤耐性が生じやすくなります。 福井県での調査では、地域によってマラソン剤に対して5.0以上の耐性比を示した個体群が確認されています。

ローテーション散布が基本です。


参考)https://hokuriku-byochu.sakura.ne.jp/apph/files/articles/19/1997100.pdf

収穫前の散布には使用制限があるため、使用する農薬ごとの「収穫前何日前まで」という記載を必ず確認してください。エクシードフロアブルは収穫7日前まで、散布回数は3回までと定められています。 これは守らないと出荷停止につながるリスクがある重要なルールです。

ツマグロヨコバイに強い品種選択と耕種的防除の活用


農薬だけに頼らない防除体系として、耐虫性品種の活用が注目されています。 ツマグロヨコバイに対する抵抗性遺伝子(Grh1〜Grh3など)を持つ品種は、幼虫の生存率を低下させ、発育を遅延させることが研究で確認されています。

これは使えそうです。

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代表的な耐虫性品種としては「彩のかがやき」が挙げられます。 また、農業・食品産業技術総合研究機構(NARO)が育成した「中母農5号」は、抵抗性強品種として2齢幼虫まで発育した個体が認められなかったという研究結果が報告されています。naro.go+1
耕種的防除として特に重要なのが秋起こし(秋耕)です。 収穫後の再生株(ひこばえ)や稲わらを早めに鋤き込むことで、翌年の越冬源を大幅に削減できます。 また、水田周辺の雑草地を整備することで、越冬・増殖の場所を減らす効果も期待できます。chibanian+1

  • 🌾 秋起こし:越冬幼虫の生息場所(ひこばえ・稲わら)を減らす
  • 🌾 雑草管理:畦畔・休閑田の草刈りで越冬源を断つ
  • 🌾 過密栽培の回避:換気をよくして虫の定着を防ぐ
  • 🌾 耐虫性品種の導入:薬剤使用量を減らしつつ安定収量を確保

耕種的防除と農薬防除を組み合わせることで、薬剤耐性の進行を抑えながら持続可能な害虫管理が実現できます。 これが総合的病害虫管理(IPM)の考え方であり、農林水産省も推進している方向性です。maff+1
以下のリンクでは、ツマグロヨコバイの生態・被害・防除方法について農試の研究データが詳しく掲載されています。薬剤選択や耐虫性品種の利用を検討する際の参考として役立ちます。


水稲の抵抗性を利用したツマグロヨコバイ管理技術に関する研究(農研機構):薬剤耐性発達の背景と、抵抗性品種を活用したIPMの詳細なデータが掲載
https://www.naro.go.jp/publicity_report/publication/archive/files/hokoku-15-2.pdf
愛知県病害虫図鑑 ツマグロヨコバイ:県別の被害特性・防除タイミングの解説が充実しており、地域に応じた防除の参考に最適
https://www.pref.aichi.jp/site/byogaichu/tumaguro.html
農薬を散布しているのに被害が出る状況の多くは、適期を外した防除か薬剤耐性の発達が原因です。 発生予察情報を活用し、耐虫性品種・耕種的防除・農薬ローテーションを組み合わせることが、長期的にツマグロヨコバイの被害を抑える最も確実な方法です。hokuriku-byochu.sakura+2




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