石灰をちゃんと入れているのに、トマトの実が腐り始めたら約3割の収量が失われる可能性があります。
カルシウム欠乏症とは、植物体内でカルシウム(Ca)が必要量を下回り、組織の壊死や変形などの生育障害が発生する状態を指します。窒素・リン酸・カリの三大栄養素に次いで多量に必要とされる栄養素であり、農業現場では古くから大きな問題となってきました。
カルシウムは植物体の乾物中に約0.1〜5%ほど含まれており、その大部分は細胞壁に存在します。細胞壁の構成成分であるペクチンと結合して骨格を安定させる役割を担っており、これが不足すると細胞そのものが脆くなり崩壊します。
これが欠乏症の根本的なメカニズムです。
重要なのが、カルシウムは他の栄養素と大きく異なる「難移動性」という性質を持つ点です。窒素やリン酸は植物体内の師管(しかん)を通じて必要な部位に再分配できますが、カルシウムは師管を移動できません。道管(どうかん)の水の流れに乗って一方向にしか移動できないため、一度吸収されても体内での再利用・再分配がほとんど行われません。
これが条件です。カルシウムは常に根から新たに吸収し続ける必要があるということです。
参考:植物体内でのカルシウムの働きや移動メカニズムについて詳しく解説されています。
カルシウム欠乏症とは?その原因と予防方法を解説します(セイコーステラ エコロジア)
カルシウム欠乏症の症状が現れる場所には、特定のパターンがあります。蒸散量が少なく水の流れが弱い部位、つまり生長点・新芽・若い葉・肥大中の果実に症状が出やすいのです。
葉に現れる場合は、若葉や上位葉の先端・縁が褐色に変色し、やがて枯死します。症状はチップバーン(葉先枯れ症)と呼ばれ、イチゴやレタス、ハクサイで頻繁に見られます。カルシウム欠乏が悪化すると、若葉だけでなく中位葉・下位葉へと拡大し、最終的には株全体の商品性が失われます。
果実に現れる代表例が、トマトやピーマンの「尻腐れ症」です。果実の先端(おしり)部分の組織が壊死して黒く変色し、市場に出せない状態になります。タキイ種苗の記録によれば、土壌中に十分なカルシウムがあっても尻腐れ症は発生するという事実が確認されており、単純な土壌カルシウム不足ではなく複合的な要因が絡んでいることがわかります。
以下に作物別の主な欠乏症状をまとめました。
| 作物 | 欠乏症状の名称 | 主な発症部位 |
|------|--------------|------------|
| トマト・ピーマン | 尻腐れ症 | 果実先端 |
| イチゴ・レタス・ハクサイ | チップバーン | 葉先・葉縁 |
| キュウリ | 落下傘葉 | 上位葉 |
| キャベツ・チンゲンサイ | 芯腐れ症 | 生長点付近 |
| メロン | 発酵果 | 果実内部 |
| リンゴ | ビターピット(苦痘病) | 果実表面 |
特にカルシウムの要求度が高い作物としては、果菜類ではトマト・イチゴ・ナス・ピーマン、葉菜類ではコマツナ・タマネギ・ハクサイ・レタス、根菜類ではカブ・ジャガイモ・ダイコン・ニンジンなどが挙げられます。これらを栽培している農業従事者は、特に注意が必要です。
参考:作物別のカルシウム欠乏症の症状写真と詳細な解説が確認できます。
カルシウムが欠乏する根本的な理由は、その「難移動性」にあります。
根から吸収されたカルシウムは道管を通って水とともに移動しますが、移動先は蒸散量の多い場所に集中します。成熟した葉は蒸散が活発なのでカルシウムが届きやすい一方、生長点・新芽・果実などは細胞分裂が盛んでありながら蒸散量が少ないため、カルシウムが届きにくい構造になっています。
これが欠乏症の基本原因です。
もうひとつ重要なのが「過旺盛な生育が欠乏症を引き起こす」という逆説的な事実です。生育が盛んなほど、成熟した葉へのカルシウム集中度が高まり、生長点付近の相対的な不足が深刻になります。タキイ種苗の研究によれば、球根重が大きく生育旺盛な株ほど葉焼け症が重くなることが確認されており、元気に育てているつもりが欠乏症を引き起こす一因になっているケースがあります。
意外ですね。生育がよい株ほどカルシウム欠乏が起きやすいということです。
夏の高温期も大きなリスク要因です。高温時は蒸散が激しくなり、成熟した葉へのカルシウム集中が加速します。同時に、根の活力が落ちやすい夏場は吸収力そのものも低下しがちで、二重の意味でカルシウム欠乏が起きやすくなります。
カルシウム欠乏症が発生した際に農業経営に与えるダメージは、思いのほか大きいものです。
トマトの尻腐れ症が発生した果実は、たとえ外観の一部が正常でも市場出荷に適さないケースがほとんどです。尻腐れ症が出た果実は商品にならないため、直接的な収量ロスとなります。ハウストマト栽培の現場では、高温期を中心に発生率が高まり、適切な対策なしでは収穫物の相当割合が廃棄対象になることもあります。
葉菜類でのチップバーンや芯腐れ症も、商品価値に直結します。レタスやハクサイで芯腐れが発生すると、見た目が著しく損なわれ出荷できなくなります。消費者が気づく前に収穫してしまえばよいという考えは危険で、出荷後にクレームに発展するリスクもあります。
さらに見落とされがちな影響として、カルシウム欠乏は「病害虫への抵抗性低下」をもたらす点があります。カルシウムは細胞壁を強化することで物理的なバリアを形成し、病原菌や害虫の侵入を抑制する役割を持っています。欠乏状態が続くと、この防御機能が低下し、軟腐病や灰色かび病などの二次的な病害が発生しやすくなります。カルシウム管理は単なる生理障害対策にとどまらず、総合的な病害虫対策にも深く関わっているのです。
結論はカルシウム管理が収益を守ることにもつながるです。
「石灰はたくさん入れているのに、なぜ欠乏するのか?」という疑問は、多くの農業従事者が感じる最大の謎です。
答えは、カルシウムは「土壌に存在しているかどうか」よりも「植物が吸収できる状態かどうか」が重要だからです。タキイ種苗の農業専門誌によれば、土壌中に十分なカルシウムがあるにもかかわらず欠乏症が発生したケースが、現場の事例として複数記録されています。
土壌中のカルシウム吸収を妨げる要因は主に3つあります。
1つ目が塩類集積(土壌EC上昇)です。施肥の蓄積などにより土壌EC(電気伝導度)が高くなると、カルシウムが土中に存在していても根から吸収されにくくなります。施設栽培(ビニールハウス)での連作圃場で特に起こりやすい問題です。
2つ目がカリウム・マグネシウムの過多による拮抗作用です。カルシウム・カリウム・マグネシウムはいずれも土壌に陽イオンとして吸着されますが、吸着できる量(CEC)には限界があります。カリウムやマグネシウムが増えすぎると、カルシウムの吸着・吸収の割合が相対的に低下します。地力増進法の基本方針では、Ca:Mg:Kの適正比率は「(65〜70):(20〜25):(2〜10)」とされており、覚えやすい目安として「5:2:1」が広く使われています。
バランスが原則です。
3つ目がアンモニア態窒素の過剰施用です。アンモニア態窒素も陽イオンであるため、土壌中でカルシウムと場所の取り合いになります。蒸気消毒後の土壌ではアンモニア態窒素が急増することがあり、その時期に欠乏症が発生しやすくなるケースも確認されています。
参考:土壌の塩基バランスとカルシウム吸収の関係について詳しく解説されています。
カルシウム欠乏症(Ca欠乏症)- 島根県生理障害データベース
pH管理は、カルシウム欠乏症を防ぐ上で外せない基本事項です。
土壌がpH6.0〜6.5程度の弱酸性〜中性の状態では、カルシウムは根から吸収されやすい形で存在しています。しかし、酸性に傾きすぎると(pH5.5以下など)、陽イオンのカルシウムが雨や灌水によって流亡しやすくなり、土壌保持量が低下します。日本の気候では雨が多く土壌微生物の活動も活発なため、放置すると土壌は自然に酸性化していく傾向があります。
逆に、石灰を過剰施用してアルカリ性に傾けすぎるとどうなるか。pH7.5以上になると、リン酸・鉄・マンガン・ホウ素などが吸収されにくくなり、別の生理障害を引き起こすリスクが高まります。石灰ならたくさん入れればよいというわけではありません。
これは使えそうです。「石灰はほどほどに」が、実はカルシウム欠乏症を防ぐ正解なのです。
pHの定期的な測定は、欠乏症予防の第一歩です。農業試験場や県の農業センターでは土壌診断を受け付けており、圃場ごとのpH値と塩基バランスを確認できます。pH測定は市販の試験紙(500〜1,000円程度)でも簡易的に確認できますが、正確な施肥設計には土壌診断依頼をおすすめします。
pH管理が基本です。
カルシウムの移動は水の動きそのものです。
これが基本です。
根から吸収されたカルシウムは、道管の水流に乗って植物体の上部に運ばれます。したがって、土壌が乾燥して水の流れが滞ると、カルシウムの供給もほぼ止まってしまいます。夏の高温・乾燥期に尻腐れ症やチップバーンが多発するのは、このメカニズムによるものです。
灌水量を意識するだけで、カルシウム欠乏症を大幅に抑制できるケースがあります。農文協の事例報告によれば、夏秋トマト栽培においてかん水量を1.5倍に増やしたところ、尻腐れの発生率が著しく低下したという事例も紹介されています。
🌊 かん水と尻腐れ発生の関係(実践例より)
- 通常かん水量 → 尻腐れ発生率:高め
- かん水量1.5倍 → 尻腐れ発生率:大きく低下
ただし、多灌水は根腐れや塩類の溶脱を招くリスクもあります。根圏の湿度を保ちつつ過湿にならない管理が理想です。敷き藁・マルチングを活用して土壌水分を保持することも、カルシウム欠乏症予防の実践的な方法として有効です。
マルチングが条件となる対策のひとつです。
参考:かん水量とトマト尻腐れの関係について実践報告が掲載されています。
夏秋トマト かん水量1.5倍で尻腐れがガクンと減った(農文協)
カルシウム欠乏症が発生しやすいかどうかは、作物の種類によって大きく異なります。
植物は大きく「好石灰植物」と「好ケイ酸植物」に分かれます。イネ科(コムギ・イネ)はケイ素を多く吸収し、カルシウム含有率が比較的低い「好ケイ酸植物」です。一方、多くの双子葉植物(トマト・ナス・レタス・ハクサイなど野菜類の多く)はカルシウムを多く吸収する「好石灰植物」に分類され、欠乏症リスクが高い傾向があります。
特にハイリスクな作物を覚えておくだけでOKです。
以下の表を参考にしてください。
🍅 カルシウム欠乏症リスクが高い主な作物
- 果菜類:トマト・ミニトマト・ピーマン・パプリカ・ナス・イチゴ
- 葉菜類:レタス・ハクサイ・キャベツ・コマツナ・タマネギ・ネギ
- 根菜類:カブ・ダイコン・ニンジン・ジャガイモ
- 花卉類:カーネーション・キク・トルコギキョウ・ユリ
タキイ種苗の事例研究では、ユリ(オリエンタル系)の葉焼け症について、球根が重い(つまり生育旺盛な)株ほど欠乏症が重症化することが報告されています。花卉農家にとっても、カルシウム管理は品質に直結する重要事項です。
また、リンゴに発生する「ビターピット(苦痘病)」は、果実表面に陥没した斑点が生じる障害で、カルシウム欠乏が原因のひとつとされています。果実の外観を損ない商品価値を下げるため、果樹農家にとっても軽視できない問題です。
参考:作物別のカルシウム欠乏症状と発生しやすい条件が詳しく掲載されています。
生理障害の対策|カルシウム欠乏症の症状と発症させない方法(アグリピック)
カルシウム欠乏症への対策は、大きく「土壌からのアプローチ」と「緊急時の葉面散布」に分けられます。
まず土壌改良の基本から解説します。
土壌へのカルシウム補給には、主に以下の資材が使われます。
🪨 代表的な石灰系資材の種類と特徴
- 苦土石灰(苦土含有石灰):カルシウムとマグネシウムを同時補給できる。
最もよく使われる。
過剰施用でpHが急上昇するリスクあり。
- 炭酸カルシウム(炭カル):緩効性で土壌pHが安定しやすい。
- 石膏(硫酸カルシウム):pHをあまり変えずにカルシウムを補給したい場合に向く。
石灰資材は作付けの2〜3週間前に施用し、土壌とよく混和することが基本です。施用後すぐに定植すると、植物根に悪影響を与えることがあります。
石灰を施用する前に土壌診断を受けることが強く推奨されます。土壌のpH・交換性カルシウム(置換性Ca)・CEC(陽イオン交換容量)を把握した上で施用量を決めれば、過剰施用による他要素欠乏のリスクを防げます。タキイ種苗のデータによれば、置換性カルシウムが土壌100g当たり100mg以下になった場合には「カルシウム不足」と判断できる目安とされています。
これが数字の基準です。
日本国内では各都道府県の農業試験場・農業センターが土壌診断サービスを提供しており、費用は数百円〜数千円程度です。年に1回定期的に診断を受けることで、施肥設計の精度が大幅に上がります。
カルシウム欠乏症の症状がすでに現れている場合や、急を要する場面では、葉面散布が有効です。
葉面散布は植物の葉面から直接カルシウムを吸収させる手法です。根からの吸収が間に合わない場合や、土壌改良の効果が出るまでの緊急措置として使われます。
速効性がある点が最大のメリットです。
ただし、カルシウムの難移動性という性質は葉面散布でも変わりません。散布された葉にしかカルシウムは届かず、他の部位への移動はほとんど期待できません。つまり、症状のある部位にピンポイントで散布する必要があり、株全体にまんべんなく、かつ継続的に散布することが求められます。
島根県農業技術センターでは、欠乏を確認した際の緊急対応として「1%の硝酸カルシウム水溶液または市販のカルシウム入り葉面散布剤を数日おきに数回散布」することを推奨しています。散布は温度の高い日中を避け、早朝や夕方に行うことで濃度障害リスクを下げられます。
🌿 葉面散布を行う際のチェックポイント
- 散布時間は早朝か夕方(日中の強い日差しは避ける)
- 希釈倍率は必ずラベルを確認する(過濃は葉焼けを招く)
- 1回だけでなく、数日おきに複数回継続する
- 果実・茎・葉すべてにまんべんなく散布する
葉面散布用のカルシウム液肥としては、硝酸カルシウム水溶液の他に、市販の「塩化カルシウム0.3〜0.5%溶液」も使われます。塩化カルシウムは安価で入手しやすい一方、塩素イオンの蓄積が気になる場合は硝酸カルシウムが選ばれます。
参考:カルシウム葉面散布の方法と注意点が詳しく解説されています。
カルシウム欠乏症(Ca欠乏症)- 島根県農業技術センター 生理障害データベース
カルシウム欠乏症を防ぐには、窒素肥料の「種類」にも注意が必要です。
これは見落とされがちなポイントです。
窒素には大きく「アンモニア態窒素(NH₄⁺)」と「硝酸態窒素(NO₃⁻)」があります。アンモニア態窒素は陽イオンであり、土壌の陽イオン交換サイトでカルシウムと競合します。アンモニア態窒素が多い土壌環境では、カルシウムの吸着・吸収が阻害されやすくなります。
一般的な野菜の多くは硝酸態窒素を好んで吸収します。硝酸態窒素は陰イオン(NO₃⁻)であるため、カルシウムとの拮抗作用がなく、一緒に施用しても吸収を妨げません。このため、カルシウム欠乏症が懸念される圃場では、アンモニア態窒素の割合を減らし、硝酸態窒素主体の肥料に切り替えることが効果的です。
ただし、硝酸態窒素は土壌から流亡しやすいというデメリットがあります。適切な量を適切なタイミングで施用する、少量多回施肥が基本です。
💡 施肥設計の改善ポイントまとめ
- アンモニア態窒素含有肥料の過剰施用を控える
- 硝酸態窒素主体の肥料に変更することを検討する
- 少量多回施肥で根への過負荷を防ぐ
- 土壌診断でCa:Mg:Kのバランス(理想比率:5:2:1)を確認する
蒸気消毒後の圃場では、土壌中のアンモニア態窒素が急激に増加することが確認されています。チンゲンサイの芯腐れ症がこのパターンで多発した事例もあるため(タキイ種苗 農業専門誌より)、消毒後は数週間待って土壌のアンモニア態窒素が落ち着いてから定植するのが安全です。
あまり知られていない予防法として、「通風を利用した蒸散促進」によるカルシウムの体内輸送コントロールがあります。
カルシウムは蒸散の多い部位ほど豊富に届きます。この性質を逆手に取り、生長点・新芽付近の蒸散量を積極的に増やすことで、欠乏しやすい部位へのカルシウム供給を促す方法が研究・実践されています。
タキイ種苗の農業専門誌に掲載された研究では、トマトやハクサイで不要な葉を一部除去することで、残った生長点付近の蒸散が増加しカルシウムの分配が改善したと報告されています。ハクサイでは下葉を取り除くこと、トマトでは小葉を一部取り除くことが有効とされています。
また、ハウス内の換気や送風ファンの活用も効果的です。施設栽培では外気が遮断されているため蒸散が抑制されがちです。特に湿度が高い梅雨〜夏の時期は、強制換気で葉の蒸散を促すことがカルシウム欠乏症の予防につながります。
ユリの球根栽培では、10℃の低温で4週間前後貯蔵してから定植することで、定植後に根の発達が促進されカルシウム吸収力が高まるという知見もあります(タキイ種苗 農業専門誌)。
花卉農家ならば知っておくべき手法です。
🌬️ 通風・蒸散コントロールの具体的な方法
- ハウス内の換気扇・サーキュレーターを活用して空気を動かす
- 生育の旺盛な株では不要葉の適度な除去を検討する
- 施設内の温度・湿度管理を適切に行い過湿を避ける
- 早朝の換気でハウス内のCO₂と湿度をコントロールする
これは使えそうです。薬剤コストゼロで、管理方法の工夫だけでカルシウム欠乏症を予防できる可能性があります。
圃場で欠乏症の症状を発見した場合、素早い対応が被害を最小限に抑えるカギです。
慌てずに手順を踏むことが大切です。
ステップ1:症状の発生部位と拡がり具合を確認する
上位葉・生長点・果実のどこに症状があるか記録します。新葉に限定した初期症状なのか、中・下位葉にまで広がっているのかで、対応の優先度と緊急度が変わります。
ステップ2:土壌の乾燥状態を確認し、灌水を行う
土壌が乾燥していれば、まず適切な灌水を行います。カルシウムの移動は水に依存しているため、乾燥状態の解消が最初の処置として有効です。
ステップ3:カルシウム液肥の葉面散布を開始する
1%硝酸カルシウム水溶液か市販のカルシウム系葉面散布剤を準備します。早朝か夕方に、症状のある葉および株全体に丁寧に散布します。数日おきに3〜5回継続することが推奨されています。
ステップ4:施肥・pH状況を見直す
可能であれば土壌診断を行い、塩基バランスやpHを確認します。カリウム・マグネシウムの過多が疑われる場合は、それらの追肥を一時中止します。アンモニア態窒素主体の肥料を使用している場合は、硝酸態窒素主体へ変更します。
ステップ5:症状のひどい部位・果実は早めに除去する
発症した果実や壊死した葉は回復しません。回復を期待して放置すると、栄養分の無駄な消費と見た目の悪化につながります。早めに除去して、残りの健全な部位に栄養を集中させることが賢明です。
発症部位の除去が原則です。
最も効果的なカルシウム欠乏症対策は、症状が出てから慌てて対処するのではなく、作付け前からの計画的な予防です。
作付け前(定植2〜3週間以上前)
土壌診断を受けてpH・Ca・Mg・Kのバランスを確認します。pHが5.5以下の酸性土壌では、苦土石灰または炭酸カルシウム資材を施用して6.0〜6.5に調整します。施用後は十分にすき込み、pH変化を安定させてから定植します。
定植後〜生育初期
灌水管理を徹底し、根圏を適切な水分状態に保ちます。特に高温・乾燥期は灌水頻度を増やす準備をしておきます。マルチングや敷き藁で地温・水分を保持するのも効果的な手段です。
開花・着果・果実肥大期(高リスク期)
カルシウム要求量が急増するこの時期は最も注意が必要です。週1〜2回を目安に、予防的なカルシウム液肥の葉面散布を行うことで、発症リスクを大幅に下げられます。
この時期の管理が収量を左右します。
収穫後・作物残さの処理
前作の残さを適切に処理し、翌作前に土壌診断を再度行います。施設栽培では作付け間に一度土をリセットするイメージで、塩類集積の解消(降雨や灌水による洗い流し)も検討します。
📅 カルシウム欠乏症予防の年間スケジュール概要
| 時期 | 主な対策 |
|------|---------|
| 定植2〜3週前 | 土壌診断・石灰資材施用・pH調整 |
| 定植〜活着期 | 適正灌水・マルチング設置 |
| 生育期〜着果期 | 定期的な葉面散布開始 |
| 高温期(夏) | 灌水量増加・換気強化 |
| 収穫後 | 残さ処理・次作に向けた土壌分析 |
カルシウム欠乏症は複合要因で起きる障害であり、単一の対策では防ぎきれません。土壌管理・水分管理・施肥設計・環境管理を組み合わせた総合的な圃場管理が、安定した収量と品質を守る最も確実な方法です。
参考:土壌のpH・ECの測定方法と各種要素欠乏への対策が体系的に解説されています。
土壌改良対策:要素欠乏・過剰症の見分け方と対策(群馬県農業情報センター)

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