土壌微生物種類と役割!細菌糸状菌放線菌の働きと増やし方

土づくりに欠かせない土壌微生物の種類や働きを知っていますか?細菌、糸状菌、放線菌の特徴から、連作障害を防ぐバランスの整え方まで徹底解説します。あなたの畑の土は健康ですか?

土壌微生物の種類と役割

土壌微生物の基礎知識
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3大微生物の特徴

細菌・糸状菌・放線菌のそれぞれの得意分野と働き

⚖️
菌のバランス管理

多様性を高めて病原菌の独占を防ぐメカニズム

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団粒構造と活性化

有機物を分解し、根が呼吸しやすい土を作る方法

土壌微生物種類:細菌・糸状菌・放線菌の違いと働き


農業において「良い土」を作るためには、土壌1グラム中に数億から数十億個存在すると言われる土壌微生物の正体を理解することが第一歩です。これらは単に「菌」と一括りにされがちですが、大きく分けて細菌(バクテリア)、糸状菌(カビ)、放線菌の3つの主要なグループに分類され、それぞれが全く異なる役割と分解能力を持っています。これらを適切に使い分けることで、作物の生育スピードや品質をコントロールすることが可能になります。


まず、細菌(バクテリア)は土壌微生物の中で最も数が多く、増殖スピードが非常に速いのが特徴です。単細胞生物であり、水分の多い環境を好みます。彼らの最大の役割は、糖類やタンパク質など、分解しやすい有機物を素早く無機化することです。これにより、作物が即座に利用できるアンモニア態窒素や硝酸態窒素が生成されます。


特に重要な細菌には以下のものがあります。

  • 納豆菌枯草菌):有機物の分解能力が高く、病原菌の抑制効果も期待できる最強の善玉菌の一つです。
  • 乳酸菌:土壌のpHを一時的に下げ、悪玉菌の繁殖を抑えるほか、有機酸を生成して土壌ミネラルを可溶化します。
  • 根粒菌:マメ科植物の根に共生し、空気中の窒素を固定して植物に供給する特殊な能力を持ちます。

次に、糸状菌(カビ)です。彼らは「菌糸」と呼ばれる長い糸を伸ばして生活しています。細菌が苦手とする、セルロース(植物の繊維)やリグニン(木質成分)といった硬くて分解しにくい有機物を分解するスペシャリストです。堆肥を作る際、初期段階で発熱しながらワラや落ち葉をボロボロにするのは主に彼らの仕事です。


また、糸状菌の菌糸は土壌粒子同士を物理的に結びつける「糊」の役割も果たし、後述する団粒構造の形成に大きく貢献します。ただし、フザリウム菌やリゾクトニア菌など、農業における深刻な病原菌の多くもこの糸状菌のグループに属しているため、管理には注意が必要です。


最後に、放線菌です。細菌と糸状菌の中間のような性質を持ち、放射状に菌糸を伸ばすことからこの名がつきました。森の土の香ばしい匂い(ゲオスミン)は放線菌が出しているものです。


放線菌の最大の特徴は、カニの殻などに含まれる「キチン質」を分解する能力に長けていることです。多くの植物病原菌(糸状菌)やセンチュウの卵の殻はキチン質でできているため、放線菌が豊富な土壌では、これら病害虫の増殖が抑制される傾向があります。また、抗生物質(ストレプトマイシンなど)を生成する種も多く、土壌の「天然の農薬」としての役割も果たします。


微生物の種類 主な特徴 得意なエサ(分解対象) 農業でのメリット
細菌
(バクテリア)
増殖が速い、水が好き 糖、アミノ酸、タンパク質
(柔らかいもの)
初期生育の促進
肥料効果の発現が早い
糸状菌
(カビ)
菌糸を伸ばす、乾燥に強い セルロース、リグニン
(硬い繊維質)
堆肥化の促進
団粒構造の骨格形成
放線菌 土の匂いの元、成長は遅め キチン質、難分解性有機物 病害虫(センチュウ等)の抑制
抗生物質の生成

農林水産省の以下のページでは、土壌微生物の機能と土づくりに関する基礎的な指針が詳しく解説されています。


農林水産省:地力増進基本指針における土壌微生物の役割について

土壌微生物種類と善玉菌・悪玉菌のバランス管理

「良い土」とは、特定の強力な善玉菌だけがいる土ではありません。実は、多種多様な土壌微生物がひしめき合い、互いに牽制し合っている「バランスの取れた状態」こそが最強の土壌環境です。農業現場では便宜上「善玉菌」「悪玉菌」と呼びますが、土壌中にはどちらにも属さない、あるいは環境によって態度を変える「日和見菌(ひよりみきん)」が圧倒的多数を占めています。


土壌微生物の世界は、まさに陣取り合戦です。特定の病原菌(悪玉菌)が増殖して作物が病気になるのは、その菌が強すぎるからではなく、対抗する他の菌が少なくなってしまった「空白地帯」ができた時に起こります。これを「一般静菌作用」と呼びます。


連作障害もこのメカニズムで説明がつきます。同じ作物を植え続けると、その作物の根から出る特定の分泌物を好む特定の微生物だけが増え、バランスが崩壊します。結果として、特定の病原菌が爆発的に増える隙を与えてしまうのです。


バランス管理の指標として、近年注目されているのが「土壌微生物多様性・活性値」という概念です。


  • 多様性:どれだけ多くの種類の微生物がいるか。種類が多いほど、環境変化への適応力が高く、病原菌の突出を防げます。
  • 活性:微生物がどれだけ元気に活動しているか。有機物の分解速度や地温の安定に関わります。

理想的なバランスを保つためには、以下の対策が有効です。

  1. エサの種類を変える:完熟堆肥だけでなく、緑肥(ソルゴーや燕麦など)をすき込むことで、異なる種類の微生物を呼び寄せます。
  2. C/N比(炭素率)の調整:炭素率が高い資材(もみ殻、ワラ)ばかりだと窒素飢餓になり、逆に低い資材(鶏糞、油粕)ばかりだと腐敗しやすくなります。バランスよく投入することが多様性維持の鍵です。
  3. 太陽熱消毒後のケア:病気を防ぐために土壌消毒を行うことがありますが、これは善玉菌も一緒に殺してしまい、土を「無菌状態(リセット状態)」にします。消毒後は必ず良質な堆肥や微生物資材を投入し、善玉菌を先に定着させることが不可欠です。

環境省の資料では、土壌汚染対策の文脈ですが、微生物の分解作用とそのバランスについての科学的な知見が整理されています。


環境省:微生物による浄化作用と土壌環境の相互作用に関する技術資料

土壌微生物種類が形成する団粒構造と有機物分解

農業従事者が最も欲する土の状態、それが「団粒構造(だんりゅうこうぞう)」です。水はけが良いのに水持ちも良い、作物の根がスルスルと伸びるふかふかの土。この構造を作り出している真の主役こそが、土壌微生物たちです。物理的に耕すだけでは、一時的に柔らかくなってもすぐに固まってしまいますが、微生物が作った団粒構造は雨が降っても壊れにくいという特徴があります。


団粒構造が形成されるメカニズムは非常に精巧です。


まず、糸状菌が物理的に土の粒子を抱き込みます。そして、細菌たちが有機物を分解する過程で、粘着性のある多糖類(バイオフィルムや粘液)を分泌します。これが天然の「糊」となり、砂や粘土の微粒子を接着させます。


さらに、近年注目されているのが、アーバスキュラー菌根菌などが生成する「グロマリン」という糖タンパク質です。この物質は非常に強力な接着作用を持ち、しかも分解されにくいため、長期間にわたって安定した団粒構造を維持するのに貢献しています。


有機物分解のプロセスと団粒化はセットで進みます。

  • 第一段階(粗大有機物の分解):落ち葉や残渣などの大きな有機物を、小動物や糸状菌が細かく砕きます。この段階で土の中に隙間が生まれます。
  • 第二段階(腐植の生成):細かくなった有機物を細菌や放線菌がさらに分解し、最終的に黒色の「腐植(フミン酸など)」に変えます。腐植は保肥力(CEC)を高める重要な物質です。
  • 第三段階(団粒化の完成):微生物が出す粘着物質と腐植が、土の粒子を団子状に固めます。この団子の隙間に空気や水が蓄えられ、植物の根にとって最高のベッドが完成します。

逆に、化学肥料や農薬の過剰投入によって土壌微生物が激減した土(単粒構造の土)では、雨が降ると土の粒子が泥状になって隙間を埋め、乾燥するとカチカチに固まります。これを防ぐには、「微生物のエサ」となる有機物を定期的に補給し続けるしかありません。土づくりとは、すなわち「微生物の住居とエサづくり」に他ならないのです。


土壌微生物種類を活性化させる資材と増やし方

土壌微生物を増やすために、高価な微生物資材(バイオ資材)を投入する農家さんも多いですが、実はそれだけでは効果は限定的です。なぜなら、投入した菌がその土地の環境に馴染んで定着できるとは限らないからです。最も確実でコストパフォーマンスが高いのは、「土着菌(元々その畑にいる菌)」を活性化させ、爆発的に増やすというアプローチです。


微生物を活性化させるための3つの要素は、「エサ」「水分」「空気」です。


1. エサの選び方(資材の選定)
微生物の種類によって好むエサが異なります。狙った効果に合わせて資材を選びましょう。


  • 米ぬか:リン酸やミネラルが豊富で、細菌・糸状菌・放線菌のすべてが好む万能エサです。分解が早く、爆発的に菌が増えますが、やりすぎると虫が湧く原因にもなります。
  • 糖蜜(モラセス):即効性のエネルギー源です。特に細菌類の活性を短時間で高めたい時に有効で、水に溶かして散布します。
  • カニ殻・エビ殻:キチン質を含み、放線菌を選択的に増やすのに最強の資材です。フザリウム病やセンチュウ被害が出ている畑には特におすすめです。
  • 木炭・もみ殻燻炭:これらはエサというより「住処」です。多孔質構造が微生物の隠れ家となり、特に糸状菌や菌根菌の定着を助けます。pH調整の効果もあります。

2. 水分コントロール
土壌微生物も生き物なので、水が必要です。カラカラに乾いた土では活動を停止し、休眠状態(胞子など)になります。逆に、水没状態では酸欠になり、多くの有用菌が死滅し、代わりに腐敗菌(嫌気性菌)が増えて根腐れの原因になります。


活性化に最適な水分量は、手で土を握ると団子ができ、指で押すとほろっと崩れる程度(pF値1.5〜2.0程度)です。


3. カルスの活用と耕し方
市販の複合微生物資材(カルスNC-Rなど)を使用する場合でも、生の有機物(残渣や米ぬか)と一緒にすき込むことが必須です。微生物資材は「種火」、有機物は「薪」です。両方が揃って初めて燃え上がります。


また、耕しすぎは禁物です。特に糸状菌はせっかく伸ばした菌糸ネットワークを寸断されるのを嫌います。菌が増えてきたら、耕起の頻度を減らすか、浅く耕す(不耕起栽培や省耕起)へ移行することも、微生物叢を安定させるテクニックの一つです。


国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)の研究成果では、有機物施用が土壌微生物バイオマスに与える影響について、詳細なデータが公開されています。


農研機構:有機物連用による土壌微生物バイオマスの変動と窒素無機化

土壌微生物種類:アーバスキュラー菌根菌とバイオスティミュラントの活用

これは一般的な「土作り」の解説ではあまり触れられませんが、最先端の農業技術において、肥料の効率を劇的に高める鍵として注目されているのが「アーバスキュラー菌根菌(AM菌)」バイオスティミュラントの活用です。これらは従来の「分解者」としての微生物とは一線を画す、独自の機能を持っています。


アーバスキュラー菌根菌(AM菌)の凄さ
AM菌は、地球上の陸上植物の約80%と共生関係にあるカビの一種です。この菌は植物の根の中に侵入して共生し、根からさらに細い菌糸を土壌中に張り巡らせます。


  • リン酸の収集:リン酸は土壌中で移動しにくく、植物が吸収するのが苦手な栄養素です。AM菌の菌糸は、植物の根が届かない微細な隙間からリン酸を集め、宿主である植物に直接供給します。これにより、リン酸肥料の減肥が可能になります。
  • 耐乾性の向上:菌糸は水分も効率よく集めるため、乾燥ストレスに強い作物になります。
  • 作物の味への影響:ミネラル吸収が促進されることで、作物の糖度や風味成分が向上するという報告も増えています。

AM菌を増やすには、過剰なリン酸施肥を控える(リン酸が多いと植物が菌を必要とせず、共生関係が成立しない)ことと、殺菌剤の使用を最小限に抑えることが重要です。また、ヒマワリやマメ科などの緑肥作物を栽培することで、土着のAM菌密度を高めることができます。


バイオスティミュラント(生物刺激資材)との相乗効果
バイオスティミュラントとは、肥料でも農薬でもなく、植物や土壌微生物の生理学的プロセスを刺激して活性化させる資材のことです。例えば、海藻エキス、フミン酸、アミノ酸などが該当します。


これらは直接的な栄養にはなりませんが、土壌微生物に対して「シグナル」として働きます。


  • 非生物的ストレスの緩和:高温、低温、塩害などのストレス環境下でも、微生物群集の活性を維持させる効果があります。
  • 根圏(こんけん)の強化:植物の根の周り(根圏)に集まる微生物(PGPR:植物生育促進根圏細菌)の活動をブーストさせ、植物ホルモンの生成を促します。

これからの農業は、単に「堆肥を入れて菌を増やす」という段階から、特定の機能を持つ微生物(AM菌など)をターゲットに、バイオスティミュラントを使って「微生物の機能をデザインする」段階へと進化しています。土壌分析で化学性(NPK)だけでなく、生物性(微生物の活性)を診断し、これらの新しい知見を取り入れることが、収量アップとコスト削減の両立につながります。


日本土壌肥料学会では、こうした最新の微生物資材や菌根菌に関する学術的な知見を発信しています。


日本土壌肥料学会:土壌微生物と植物の共生に関する最新研究動向




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