納豆菌の作り方は簡単!砂糖とペットボトルで培養液を成功させる

納豆菌の培養液を自作すれば、農業や家庭菜園のコストを大幅に削減できることをご存知ですか?この記事では、ペットボトルと砂糖を使った最も簡単な作り方と、効果を最大化するプロのコツを解説します。あなたの畑の土は健康ですか?

納豆菌の作り方は簡単

納豆菌培養液の作り方ガイド
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材料はシンプル

納豆1パック、砂糖、水、ペットボトルがあれば誰でもすぐに培養を開始できます。

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温度と酸素が鍵

納豆菌は好気性菌です。空気を入れ、温かい場所で管理することで爆発的に増殖します。

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農業への多大なメリット

土壌改良、うどんこ病などの病気予防、成長促進など、低コストで高い効果が期待できます。

納豆菌(Bacillus subtilis var. natto)は、日本人にとって馴染み深い食品である納豆を作るための菌ですが、実は農業分野においても非常に強力な資材として注目されています。市販の微生物資材は高価なものが多い中、納豆菌培養液は身近な材料で、しかも驚くほど低コストで自作することが可能です。「菌の培養」と聞くと、専門的な知識や特別な設備が必要なように感じるかもしれませんが、納豆菌は非常に生命力が強く、繁殖旺盛な菌であるため、家庭にあるペットボトルを利用して簡単に増やすことができます。

 

農業の現場では、土壌の団粒化促進、有機物の分解促進、そして植物の病気予防など、多岐にわたる効果が期待されています。特に、化学農薬の使用を減らしたいと考えている農家や、コストを抑えつつ収量を上げたいと考えている生産者にとって、自家製の納豆菌液は最強の味方となるでしょう。この記事では、失敗しないためのポイントや、効果をさらに高めるための工夫を交えながら、誰でも実践できる具体的な手順を深掘りしていきます。

 

納豆菌培養に用意する砂糖と水とペットボトル

 

納豆菌培養液を作るために必要な材料は、驚くほどシンプルで、どこの家庭やスーパーでも手に入るものばかりです。しかし、それぞれの材料には「なぜそれを選ぶのか」という理由があり、選び方を間違えると培養の成功率が下がってしまうこともあります。ここでは、最適な材料の選び方について詳しく解説します。

 

  • 納豆(市販のパック納豆):

    最も手軽な種菌の入手源です。粒の大きさは問いませんが、ひきわり納豆は表面積が大きく菌の活性が高い傾向にあります。高価な納豆を用意する必要はなく、スーパーで売られている一番安いもので十分です。賞味期限が近いものや、少し過ぎてしまったものでも、菌が生きていれば培養可能です。1リットルの培養液を作るのに、数粒から1パック程度あれば十分な菌数を確保できます。

     

  • 砂糖(エサとなる糖分):

    納豆菌が増殖するためのエネルギー源(炭素源)として必須です。上白糖でも培養は可能ですが、三温糖、黒糖、きび砂糖などのミネラル分を含んだ砂糖の使用を強く推奨します。精製度の低い砂糖に含まれるミネラルは、納豆菌の酵素活性を高め、より強力な培養液を作る助けとなります。特に黒糖は、微量要素が豊富で、農業用微生物の培養において「培地」として非常に優秀です。コストを抑えたい場合は白砂糖でも構いませんが、効果を追求するなら茶色い砂糖を選びましょう。

     

  • 水(カルキ抜きしたもの):

    水道水をそのまま使うのは避けてください。水道水に含まれる塩素(カルキ)は殺菌作用があり、増やそうとしている納豆菌にダメージを与えてしまいます。汲み置きして1日天日干しするか、一度沸騰させて冷ました水、あるいは浄水器を通した水を使用してください。井戸水や雨水も使用可能ですが、雑菌の混入リスクを減らすためには、一度沸騰させた水を使うのが最も安全で確実です。

     

  • ペットボトル(500ml〜2L):

    培養容器として使用します。炭酸飲料が入っていた丸い形状のボトルや、厚手のボトルがおすすめです。培養中にガスが発生して内圧が高まることは稀ですが、振って攪拌する際に丈夫な容器の方が扱いやすいです。使用前には必ず中をきれいに洗い、可能であれば熱湯ですすぐなどして簡易的に殺菌しておくと、カビなどの雑菌汚染(コンタミネーション)を防ぐことができます。

     

これらの基本材料に加えて、さらに発酵を促進させるための「添加物」として、無調整豆乳やイースト菌を加えるレシピもありますが、まずはこの3つ(納豆、砂糖、水)だけで十分に高品質な納豆菌液が作れることを覚えておいてください。

 

納豆菌培養液 - CAINZ DIY Square
参考)納豆菌培養液

参考リンク:ホームセンターのカインズが運営するコミュニティサイトで、実際のユーザーが砂糖と納豆と水だけで培養に成功している様子や、黒糖の使用が推奨されている点が確認できます。

 

納豆菌液の作り方と失敗しない発酵手順

材料が揃ったら、実際に納豆菌液を作っていきましょう。手順は非常にシンプルですが、「温度管理」と「酸素供給」という2つの重要なポイントを押さえておく必要があります。これらを怠ると、納豆菌が増えずに腐敗してしまう可能性があります。

 

【手順1:下準備と混合】
まず、カルキ抜きをした水を用意します。水をペットボトルの容量の7〜8割程度入れます。満タンに入れないことが重要です。納豆菌は「好気性細菌」といって、増殖に酸素を必要とする菌です。ボトル内に空気のスペースを十分に残しておくことで、振った時に酸素が液体に溶け込みやすくなります。

 

次に、砂糖を入れます。水の量に対して約3%〜5%が目安です。例えば500mlの水なら15g〜25g(大さじ1〜2杯)程度です。糖度が高すぎると浸透圧で菌が増えにくくなることがありますが、少なすぎるとエサ不足になります。

 

最後に納豆を投入します。そのまま粒を入れても良いですが、ネットに入れて潰したり、お茶パックに入れたりすると、後で散布機器(噴霧器)を使う際にノズルが詰まるのを防げます。種菌として使うだけなら、納豆のネバネバが付いた容器を水で洗った「洗い水」を入れるだけでも十分な菌数が確保できます。

 

【手順2:培養(保温と撹拌)】
混合液ができたら、キャップをしっかり閉めて、直射日光の当たらない暖かい場所に置きます。納豆菌が最も活発に増殖する温度は30℃〜40℃前後です。

 

  • 春・秋: 暖かい部屋の窓際(直射日光は避ける)や、冷蔵庫の横などの放熱する場所。
  • 夏: 常温で十分に発酵します。高温になりすぎないよう注意が必要です。
  • 冬: こたつの中や、ヒーターの近く、またはお風呂の残り湯に浮かべて温めるなどの工夫が必要です。

そして、毎日1回〜2回、ペットボトルを激しく振ってください(シェイク)。これは、液体の中に沈殿した菌を拡散させると同時に、ボトル内の新鮮な酸素を液体中に溶け込ませるためです。振った後にキャップを少し緩めて、「プシュッ」とガスが抜けることがありますが、これは発酵が進んでいる証拠です(ただし、納豆菌単体ではガスはあまり出ないため、イースト菌などが混ざっている場合に起こりやすい現象です)。

 

【手順3:完成の見極め】
早ければ2〜3日、冬場なら1週間〜10日程度で培養液が完成します。

 

成功のサインは以下の通りです。

  1. 液の色: 透明だった水が、白く濁った色(カルピスを薄めたような色)や、砂糖の色が混じった茶褐色に変化します。
  2. 香り: キャップを開けた時に、納豆特有の匂い、あるいは甘酸っぱい発酵臭がします。腐ったような悪臭(硫黄のような臭い)がした場合は失敗ですので、廃棄してください。
  3. 膜: 液面に薄い白い膜が張ることがあります。これは納豆菌が形成したバイオフィルム(菌膜)ですので、成功の証です。

完成した培養液は、冷蔵庫で保存すれば1ヶ月程度は品質を保てますが、菌の活性を考えると、できれば2週間以内に使い切るのが理想です。

 

The easiest way to make natto culture liquid. Use it when ...
参考リンク:農業系YouTubeチャンネルによる解説で、ペットボトルを振って酸素を供給することの重要性や、温度管理についての具体的な実践方法が紹介されています。

 

納豆菌の効果を高める豆乳と温度管理

基本的な作り方に慣れてきたら、より農業利用に適した「強力な納豆菌液」を作るための応用テクニックを試してみましょう。ここでは、検索上位の一般的な記事にはあまり詳しく書かれていない、プロ農家や菌の専門家が実践するテクニックを紹介します。特に「初期温度」と「タンパク質源」の追加は、菌の密度と純度を劇的に高めます。

 

【裏技1:熱湯ショックで雑菌を淘汰する】
納豆菌は「芽胞(がほう)」という耐久性の高い殻を作る能力を持っています。この芽胞は100℃の熱湯にも耐えることができますが、他の多くの雑菌(カビや腐敗菌)は熱で死滅します。

 

この性質を利用し、培養のスタート時に60℃〜80℃程度のお湯を使用する、あるいは沸騰させたお湯を少し冷ましてから納豆菌(納豆)を投入するという方法があります。

 

これにより、水や容器に含まれていた雑菌を殺菌し、納豆菌だけが生き残る環境(選択培地)を人工的に作り出すことができます。また、熱ショックを与えることで、休眠状態だった納豆菌の芽胞が目覚め、発芽・増殖が促進されるというメリットもあります。

 

※注意:プラスチックのペットボトルは熱に弱いものがあるため、耐熱容器で混合してから移し替えるか、耐熱性のボトルを使用してください。

 

【裏技2:豆乳(タンパク質)の添加】
砂糖だけの培養液でも納豆菌は増えますが、納豆菌は本来、大豆タンパク質を分解する酵素(プロテアーゼ)を出す能力に長けています。エサとして砂糖(炭素)だけでなく、無調整豆乳を少量添加することで、菌の栄養バランスが整い、増殖スピードと菌の「強さ」が増します。

 

目安としては、水500mlに対して豆乳を大さじ1〜2杯(約15〜30ml)程度加えます。豆乳を入れると液が白濁し、発酵が進むとヨーグルトのように少しとろみがついたり、分離したりすることがありますが、これはタンパク質が分解されている証拠です。豆乳入り培養液は栄養価が高いため、葉面散布した際に、植物へのアミノ酸肥料としての効果(味の向上、生育促進)も期待できます。

 

【温度管理の徹底】
納豆菌の培養に最適な温度は40℃付近ですが、農業用ハウスの中など、日中高温になる場所に置いておくのも有効です。ただし、50℃を超え続けるとさすがに菌が弱るため、真夏は日陰で管理します。逆に温度が低すぎると増殖が止まってしまいます。特に冬場に作る場合は、電気毛布で包む、発泡スチロール箱にお湯を入れたペットボトルと一緒に入れるなどして、24時間30℃以上をキープできれば、わずか24時間〜48時間で濃厚な培養液が完成します。

 

Probiotic properties of Bacillus subtilis DG101 isolated from the traditional Japanese fermented food nattō
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10569484/

参考リンク:納豆菌(Bacillus subtilis natto)の特性に関する科学論文で、菌の生存能力やプロバイオティクスとしての強力な性質について詳述されており、熱耐性などの根拠となります。

 

納豆菌の希釈と野菜への散布方法

苦労して作った納豆菌培養液も、使い方を間違えると効果が出なかったり、最悪の場合「肥料焼け」のような障害を起こしたりする可能性があります。農業現場での適切な希釈倍率と、効果的な散布タイミングについて解説します。

 

【基本の希釈倍率】
完成した納豆菌培養液は「原液」です。非常に濃度が高く、また糖分や酸も含まれているため、そのまま植物にかけるのは厳禁です。必ず水で薄めて使用します。

 

使用目的 推奨希釈倍率 頻度 散布方法
土壌改良堆肥 50倍 〜 100倍 定植前、月1回 ジョウロで土にたっぷりと灌注する
病気予防(葉面散布) 500倍 〜 1000倍 週1回 〜 2週に1回 噴霧器で葉の表裏に霧状に散布する
苗の植え付け時 100倍 〜 200倍 植え付け時のみ 植え穴に灌注するか、根を浸漬する
残渣(収穫残)分解 10倍 〜 50倍 栽培終了後 残渣の上から散布し、土にすき込む

【効果的な散布のポイント】

  1. 葉面散布は「予防」が基本:

    納豆菌液は、うどんこ病や灰色かび病などの「糸状菌(カビ)」由来の病気に強い効果を発揮します。これは、納豆菌が葉の表面を先に占領してしまい、病原菌が取り付く場所をなくす(先住効果)ためです。また、納豆菌が分泌する抗菌物質(イチュリンやサーファクチン)が病原菌を攻撃します。したがって、病気が出てから散布するよりも、病気が出る前や、雨上がりなど病気が広がりやすいタイミングで予防的に散布するのが最も効果的です。

     

  2. 展着剤の使用:

    葉面散布をする際は、市販の展着剤(または少量の食器用洗剤一滴)を混ぜると、液が葉にはじかれずに定着しやすくなります。特にネギやキャベツなど、水を弾きやすい作物には必須です。

     

  3. 目詰まり対策:

    自作した培養液には、納豆のカスや溶け残りが混ざっていることがあります。噴霧器を使う場合は、必ずストッキングや細かい目の茶こし、不織布などで濾過(ろか)してからタンクに入れてください。ノズルが詰まると作業が中断し、非常にストレスになります。

     

  4. 散布の時間帯:

    納豆菌は紫外線に弱い面があります。真昼の炎天下での散布は避け、夕方や曇りの日に散布すると、夜間の湿度が保たれた環境で菌が定着しやすくなります。

     

家庭菜園で人気の納豆菌培養液|簡単な作り方と効果
参考)家庭菜園で人気の納豆菌培養液|簡単な作り方と効果|家庭菜園&…

参考リンク:具体的な希釈倍率(土壌用100-300倍、葉面用1000倍など)や、使用頻度についてわかりやすくまとめられており、実践的なマニュアルとして参考になります。

 

納豆菌による土壌改良と農業での成功事例

最後に、納豆菌培養液を継続的に使用することで、土壌と作物にどのような変化が訪れるのか、具体的な成功事例やメカニズムについて触れておきます。単なる「病気予防」だけでなく、土そのものを変える力が納豆菌にはあります。

 

【土壌改良のメカニズム:フカフカの土へ】
納豆菌は有機物の分解能力が非常に高い菌です。畑に残った野菜の根や茎、投入した堆肥(牛糞や鶏糞)などの有機物を強力に分解し、植物が吸収しやすいアミノ酸やミネラルに変えます。

 

また、納豆菌が増殖する過程で出す粘着物質(ポリグルタミン酸など、あのネバネバ成分)は、土の粒子同士を適度にくっつける「接着剤」の役割を果たします。これにより、土の中に適度な隙間ができ、水はけと通気性が良い「団粒構造(だんりゅうこうぞう)」の土が形成されます。団粒構造の土は「フカフカ」しており、根が深く張りやすく、作物の生育が劇的に良くなります。

 

【農業での成功事例】

  • キュウリ・カボチャ農家:

    うどんこ病に悩まされていた農家が、週に1回の納豆菌液(500倍希釈)の葉面散布を徹底したところ、化学農薬の使用回数を半分以下に減らすことができた事例があります。完全に病気をゼロにするわけではありませんが、発病を遅らせ、被害を最小限に抑える効果が確認されています。

     

  • 水稲(お米)栽培:

    稲刈り後の田んぼに、納豆菌液を散布してワラをすき込むことで、冬の間にワラの分解が進み、翌年のガス湧き(未熟有機物の腐敗によるガス害)が減少。根張りが良くなり、倒伏しにくい丈夫な稲が育ったという報告があります。

     

  • 連作障害の軽減:

    同じ場所で同じ野菜を作り続けると発生する連作障害。その原因の一つは、土壌中の微生物バランスの崩れ(特定の病原菌の増加)です。納豆菌という強力な善玉菌を定期的に大量投入することで、土壌微生物の多様性が保たれ、特定の病原菌が暴れるのを抑える「拮抗作用」が働き、連作障害が出にくい土壌環境が作られます。

     

このように、納豆菌培養液は単なる「手作り資材」の枠を超え、持続可能な農業を実現するための強力なツールとなり得ます。コストは水と砂糖代だけで、ほぼタダ同然。リスクも極めて低いため、まずは家庭菜園プランターひとつ、畑の畝一本からでも試してみる価値は十分にあります。あなたの畑で、納豆菌の驚くべきパワーを実感してください。

 

Investigation of the Microbial Diversity in the Oryza sativa Cultivation Environment...
参考)https://www.mdpi.com/2309-608X/10/6/412/pdf?version=1717675925

参考リンク:稲わらの分解と土壌微生物叢の改善に関する研究論文で、微生物移植(ここでは納豆菌などの有用菌の活用を含む概念)が持続可能な農業に寄与することを示唆しています。

 

現役JICA海外協力隊員が教える!身近なもので作れる有機肥料 ...
参考)現役JICA海外協力隊員が教える!身近なもので作れる有機肥料…

参考リンク:開発途上国など資源の限られた環境でも実践されている技術として紹介されており、納豆菌液の普遍的な効果と低コストな利便性を裏付けています。

 

 


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