細菌性病害農薬の選び方と効果的防除法

細菌性病害の防除では農薬選びと散布タイミングが収量を大きく左右します。抗生物質・銅剤・オキソリニック酸剤の特性を理解し、耐性菌を防ぐ使い方を知っていますか?

細菌性病害農薬による防除

発病後の細菌病に農薬を散布しても効果は期待できません


この記事の3つのポイント
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細菌性病害に使える農薬は限られる

日本で報告される植物病害6,000種以上のうち、70%以上が糸状菌病で、細菌病に効く農薬は銅剤・抗生物質・オキソリニック酸剤など限定的です

予防散布が防除の基本

細菌は25℃以上で急激に増殖し、発病後の治療は困難なため、気温上昇前の予防的散布と耕種的防除の組み合わせが必須です

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耐性菌対策にローテーション散布

同じ系統の農薬を連用すると耐性菌が発生し効果が低下するため、作用機構の異なる薬剤を組み合わせた防除体系が重要です


細菌性病害に使える農薬の種類と特徴


植物病害全体の中で細菌性病害は約10%程度を占めますが、軟腐病や黒腐病、斑点細菌病など重要病害が多く含まれています。これらの細菌病防除に使用できる農薬は、糸状菌を対象とした殺菌剤に比べて非常に限定的です。実際に日本で正式に報告されている植物病害は6,000種以上ありますが、その70%以上が糸状菌による菌類病であり、市販されている殺菌剤の多くは「カビ」による病害を対象としているためです。


細菌性病害に効果を示す農薬は大きく分けて3つのグループに分類されます。


まず最も歴史が古いのが銅剤です。


塩基性硫酸銅や塩基性塩化銅などの無機銅剤、有機銅剤があり、細菌の細胞壁や細胞膜に作用して増殖を抑制します。銅剤は糸状菌病害から細菌性病害まで幅広い病害に有効で、野菜類登録を有しているなど多くの作物へ適用を持っています。ボルドー液やZボルドー、コサイドなどが代表的な製品です。予防効果が高い一方で、薬害のリスクがあるため使用時期や天候には注意が必要です。


次に抗生物質系の農薬があります。ストレプトマイシンやオキシテトラサイクリンなどが代表的で、細菌のタンパク質合成を阻害することで殺菌効果を発揮します。ストレプトマイシンは広範囲のグラム陽性菌や陰性菌に殺菌効果があり、野菜や果樹などの細菌性病害に優れた効果を示します。アグリマイシンやアグレプト液剤などがこのグループに含まれます。銅剤との混合剤も多く開発されており、予防と治療の両面で効果を発揮する製品もあります。


第三のグループがオキソリニック酸剤です。スターナ水和剤が代表的な製品で、細菌のDNA複製を阻害する作用機構を持ちます。既存剤とは異なる作用性を持つため、銅剤や抗生物質に耐性を持つ細菌にも効果が期待できます。馬鈴薯や野菜類の軟腐病に優れた効果を発揮し、病原細菌の増殖抑制効果が主体となっているため予防的な使用が推奨されます。発病初期であれば治療効果も期待できる場合があります。


これらの農薬以外に、抵抗性誘導剤と呼ばれる薬剤もあります。プロベナゾール粒剤などが該当し、植物自身の抵抗性を高めることで病害の発生を抑制します。直接的な殺菌効果はありませんが、薬剤耐性菌の発生リスクが極めて低いという利点があります。


つまり選択肢が限られるということですね。


細菌性病害の防除では、これらの薬剤の特性を理解し、適切に使い分けることが重要です。


日本曹達株式会社による植物細菌病と抗生物質に関する詳細な技術資料(PDF)


細菌性病害の農薬散布タイミングと予防の重要性

細菌性病害防除で最も重要なポイントは「発病前の予防散布」です。発病してからの治療効果はほとんど望めないと考えた方がよいほどで、これが糸状菌病害との大きな違いです。なぜ予防が重要なのか、細菌の増殖特性を理解すると明確になります。


細菌の増殖速度は糸状菌に比べて圧倒的に速いという特徴があります。例えば大腸菌は約30分で細胞分裂し、個体数が2倍になります。一方、真菌(カビ)の一種であるモナスクス属は360分、つまり6時間かけてようやく2倍になります。この増殖速度の差が防除の難しさに直結しています。仮に増殖に適正な条件下で12時間経過した場合、細菌は約1,600万倍に増殖する計算になりますが、真菌は16倍程度にしかなりません。


厳しいところですね。


細菌の増殖には温度、水分、栄養という3つの条件が必要ですが、特に温度の影響が大きく、25℃を超えると劇的に増殖速度が上がります。国の推奨する衛生基準HACCPでは、細菌が増殖する危険な環境を室温25℃以上かつ湿度80%以上と記載しています。植物に感染する細菌も同様で、圃場の気温が上昇し植物内や地温が25℃に到達すると、潜伏していた細菌が一気に増殖して発病します。


近年の温暖化により、細菌病の発生時期が早まっている傾向があります。北海道美瑛地区での調査データによると、1995年から2000年の平均と比較して2010年から2017年の平均気温は0.7℃上昇し、最高気温は1.5℃上昇していました。細菌病の発生が活発になる25℃に到達する時期を比較すると、過去は7月12日頃だったのが近年では6月28日と、14日も早まっていることが示されています。


つまり防除開始時期も前倒しが必要です。


予防散布の具体的なタイミングとしては、病害が発生する前、つまり気温や湿度などの気象条件から発生が予想される時期に行うことが基本です。地域の防除暦を参考にしつつ、最高気温が25℃に近づく時期を目安に散布を開始します。


特に雨時期や降雨前の散布が効果的です。


雨の後に散布する方もいますが、病原菌の多くが雨を契機として活動を始めるため、雨の前に殺菌剤で作物を保護する方が予防効果は高くなります。


散布間隔については、使用する薬剤の残効性や天候によって調整が必要ですが、一般的には7日から10日間隔での定期防除が推奨されます。ただし降雨が続く場合や気温が高い場合は、より短い間隔での散布が必要になる場合もあります。発病を見たら直ちに防除することも重要ですが、すでに発病している部分の治療は困難なので、周辺への蔓延を防ぐという考え方で対応します。


散布時間帯にも注意が必要です。できるだけ気温が低い早朝や夕方に散布することが推奨されています。日中の高温時に散布すると、葉の表面についた薬液の水分が蒸発し高濃度の薬剤が残ることで薬害が発生しやすくなります。特に銅剤を使用する場合は、この点に十分注意してください。


結論は予防散布です。


JAcom(農業協同組合新聞)による細菌病の防除タイミングに関する専門記事


細菌性病害農薬の耐性菌対策とローテーション散布

同じ農薬を使い続けると、その農薬に対して抵抗性を持った耐性菌が発生し、防除効果が低下してしまう問題があります。細菌性病害においても薬剤耐性菌の発生は深刻な課題です。特にストレプトマイシン剤に対する耐性菌は各地で報告されており、例えばモモのせん孔細菌病菌ではストレプトマイシン剤耐性菌に対してストレプトマイシン剤の防除効果が低かったという調査結果があります。


耐性菌が発生する仕組みを理解することが対策の第一歩です。病原菌の集団の中には遺伝子の変異により、もともと特定の薬剤が効きにくい個体が少数存在しています。同じ作用機構の農薬を繰り返し使用すると、感受性のある菌は死滅しますが、耐性を持つ菌だけが生き残り増殖します。この結果、圃場内の病原菌集団における耐性菌の比率が高まり、その農薬が効かなくなってしまうのです。


いいことですね。


耐性菌の発生を防ぐためには、異なる作用機構を持つ薬剤をローテーション散布することが最も効果的です。具体的には、銅剤、抗生物質、オキソリニック酸剤、抵抗性誘導剤など、作用機構の異なる薬剤を組み合わせて使用します。例えば1回目の散布で銅剤を使用したら、次回はストレプトマイシン剤、その次はオキソリニック酸剤というように、系統を変えながら散布していきます。


農薬のラベルに記載されているRACコード(Resistance Action Committee Code)を確認することで、作用機構の違いを判別できます。RACコードは殺菌剤の作用機構を分類したもので、同じコードの薬剤は同じ作用機構を持つため、連続使用は避けるべきです。異なるRACコードの薬剤を選択することで、効果的なローテーション散布が可能になります。


これは使えそうです。


混合剤の活用も耐性菌対策として有効です。作用機構の異なる成分を配合した混合剤は、一方の成分に耐性を持つ菌がいても他方の成分で防除できるため、耐性菌の発生リスクを低減できます。例えばナレート水和剤は軟腐病などの細菌病に優れた効果を示すオキソリニック酸と広範囲の病害に有効な有機銅の2成分を含有しており、作用性の異なる成分を配剤しているため既存の薬剤耐性菌にも安定した効果を示します。


登録内容の遵守も極めて重要です。希釈倍率や投下量を変更すると、薬害リスクだけでなく耐性菌獲得リスクも高くなります。不十分な濃度での散布は、中途半端に菌を刺激して耐性菌の出現を促進する可能性があります。逆に過剰な濃度での散布は作物に薬害を与えるリスクがあります。農薬のラベルに記載されている使用方法を必ず守ってください。


抵抗性誘導剤の利用も耐性菌対策として注目されています。プロベナゾール粒剤などの抵抗性誘導剤は、植物自身の防御機構を活性化することで病害抵抗性を高めるため、これまで耐性菌問題を引き起こしていません。化学合成農薬との組み合わせで使用することで、薬剤使用回数を減らしつつ安定した防除効果を得ることができます。


薬剤耐性菌対策が原則です。


細菌性病害防除における耕種的対策の実践

細菌性病害の防除は農薬散布だけでは不十分で、耕種的防除との組み合わせが必須です。耕種的防除とは、作物の栽培方法や環境の整備によって病害虫の発生を未然に抑える技術のことで、農薬に依存せず環境に優しくコストも比較的低いという利点があります。


圃場衛生の管理が耕種的防除の基本です。罹病植物や残渣は病原菌の越冬場所となるため、できるだけ速やかに取り除き、肥料袋などに密閉して嫌気発酵させるか、完全に堆肥化して処分します。そのまま圃場に放置すると翌年の伝染源となってしまいます。また長靴や農機具、資材などを介して病原菌が伝播することも多いため、これらを洗浄や消毒して清潔に保つことが重要です。


意外ですね。


排水対策も細菌性病害の発生を抑える上で極めて重要です。細菌の増殖には水分が不可欠で、圃場が過湿状態になると発病リスクが高まります。特に軟腐病は湿度が高い環境で多発する傾向があります。明渠暗渠を整備して圃場の排水性を改善し、降雨後に水が溜まらないようにすることで、細菌の増殖に適した環境を作らないようにします。畝を高くする高畝栽培も排水性向上に効果的です。


作物に傷をつけないことも重要な対策です。細菌性病害の多くは作物の傷口から侵入して感染します。害虫による食害痕、芽かき摘芯などの作業による切り口、強風や降雹による傷などがすべて侵入口となります。害虫防除を徹底することで食害による傷を減らし、芽かきや切り花などの作業はできるだけ乾燥した天気の良い日に行って傷口がすぐ乾くようにします。また防風ネットの設置で強風による傷を防ぐことも有効です。


栽培環境の管理では、風通しを良くして湿度を下げることが効果的です。株間や条間を適切にとり、混み合った部分は間引きを行います。施設栽培では換気を十分に行い、雨よけ栽培を導入することで降雨による病原菌の飛散を防げます。雑草は病原菌の宿主となったり害虫の発生源となったりするため、圃場内および周辺の雑草管理も徹底します。


お金・時間・健康・法的リスクが条件です。


抵抗性品種の導入も長期的な対策として有効です。細菌性病害に対して抵抗性を持つ品種を選択することで、農薬使用量を減らしながら安定した生産が可能になります。ただし完全な抵抗性を持つ品種は少ないため、他の防除手段との組み合わせが基本となります。また同じ品種を長年栽培し続けると土壌中の病原菌密度が高まるため、可能であれば輪作を導入して連作障害を回避することも検討すべきです。


土壌消毒も病原菌密度を下げる有効な手段です。細菌性病害は土壌中での生存力が高く、残渣などから再発してしまう可能性があります。クロルピクリンなどを用いた土壌消毒で土壌中の病原菌密度を下げることは防除に有効です。ただし土壌消毒には時間とコストがかかるため、発生が激しい圃場に限定して実施するなど、計画的に取り組むことが現実的です。


発病前の耕種的防除が基本です。


細菌性病害の軟腐病に特化した農薬防除技術

軟腐病は野菜類で最も問題となる細菌性病害の一つで、キャベツハクサイダイコンジャガイモなど多くの作物で発生します。エルビニア属の細菌が原因で、発病すると組織が軟化して悪臭を伴いながら腐敗し、収穫量や品質に甚大な被害をもたらします。


軟腐病防除に効果がある農薬は複数ありますが、それぞれ特性が異なります。オリゼメート粒剤(プロベナゾール粒剤)は作物の抵抗性を誘導するタイプで、定植前の土壌混和や育苗期の施用により予防効果を発揮します。直接的な殺菌効果はありませんが、耐性菌の発生リスクが極めて低く、長期的な防除体系に組み込みやすい薬剤です。


カスミンボルドーやカッパーシン(カスガマイシン・銅水和剤)は、細菌性病害に効果が高いカスガマイシンと汎用性殺菌剤の銅剤を配合した製品です。予防にも発生後の抑制にも効果を発揮し、黒腐病や黒斑細菌病との同時防除も可能です。残効性も優れているため、定期的な散布により安定した防除効果が得られます。


アグリマイシン(オキシテトラサイクリン・ストレプトマイシン水和剤)は2種類の抗生物質を配合した製品で、軟腐病に高い効果を示します。ただし抗生物質は耐性菌の発生リスクがあるため、連続使用は避け他の系統の薬剤とローテーションで使用することが推奨されます。散布は1000倍希釈が基本で、発病前から予防的に散布することで効果を発揮します。


スターナ水和剤(オキソリニック酸水和剤)は細菌病専用防除剤で、既存剤とは異なる作用性を持ちます。馬鈴薯や野菜類の軟腐病に優れた効果を発揮し、病原細菌の増殖抑制効果が主体なので予防的に使用します。発病初期であれば治療効果も期待できますが、病徴が進展してからの散布では抑えきれません。


これは無料です。


バリダシン液剤5は本来イネ紋枯病などのリゾクトニア菌による糸状菌病害に使用される薬剤ですが、シュードモーナス属菌やエルビニア属菌などの細菌の増殖も著しく抑制することが判明しています。軟腐病を含む細菌性病害にも効果を示すため、選択肢の一つとして検討できます。


微生物農薬も軟腐病防除の選択肢です。バイオキーパー水和剤(非病原性エルビニア・カロトボーラ水和剤)は、軟腐病菌と同じエルビニア属の非病原性細菌を有効成分としています。病原菌の増殖を抑える拮抗作用により防除効果を発揮し、栽培時だけでなく収穫後や出荷後も発生を抑えることができる特徴があります。化学合成農薬に抵抗がある場合や、収穫直前まで使用したい場合に有用です。


軟腐病防除では、これらの薬剤を単独で使用するのではなく、耕種的防除と組み合わせることが不可欠です。特に排水対策、傷口管理、圃場衛生の徹底が重要で、薬剤防除だけでは十分な効果が得られないのが実情です。タマネギ軟腐病の防除試験では、バクテサイド水和剤の適切な散布タイミングによる処理区が無処理区に比べて収量が増える傾向が示されており、防除により植物が成長に特化できることが確認されています。


〇〇に注意すれば大丈夫です。


BASF農業ソリューションによるキャベツの軟腐病対策に関する詳細な解説記事




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