糸状菌病の症状と防除対策

農作物の収量を大きく左右する糸状菌病について、発生のメカニズムから効果的な予防・防除方法まで詳しく解説します。湿度管理や薬剤ローテーションなど、実践的な対策を知りたくありませんか?

糸状菌病の症状と防除対策

同じ薬剤を3回続けて散布すると防除効果が半減します


この記事の3つのポイント
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糸状菌病は農作物の約75%の病害の原因

カビによる病気で、うどんこ病や灰色かび病など多様な種類があり、湿度90%以上で急速に増殖します

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薬剤耐性菌の発生を防ぐローテーション散布が重要

同じ作用機構の薬剤を連用すると効果が低下するため、3種類以上の異なる系統の薬剤を交互に使用する必要があります

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太陽熱消毒で土壌中の病原菌を効果的に除去

7月中旬~8月下旬に透明マルチで20~30日間処理すると、土壌伝染性の糸状菌病を大幅に減らせます


糸状菌病の主な種類と発生しやすい作物


糸状菌病とは、一般的に「カビ」と呼ばれる糸状菌が原因で発生する植物の病気の総称です。農作物に発生する病害の約4分の3を占めており、農業経営に大きな影響を与える重要な病害となっています。病原菌は胞子を形成して風や雨、灌水によって伝播し、適切な環境条件が整うと急速に増殖します。


代表的な糸状菌病には、葉の表面が白い粉をまぶしたようになる「うどんこ病」、灰色のカビが発生する「灰色かび病」、葉に黄色や褐色の病斑が現れる「べと病」、黒褐色の病斑を形成する「炭疽病」などがあります。これらの病気は多犯性で、トマトキュウリ、イチゴ、ナスなど多くの野菜類、果樹類、花卉類に発生します。


つまり多くの作物が影響を受けるということですね。


イチゴでは灰色かび病と炭疽病が特に問題となり、果実に灰色のカビが発生して商品価値を失わせます。トマトでは疫病や葉かび病が発生しやすく、葉に褐色の病斑が広がり、最終的には株全体が枯死することもあります。キュウリではべと病とうどんこ病が主要な病害で、葉の光合成能力が低下して収量が大幅に減少します。


ウリ科作物全般では、高温多湿期にべと病が多発しやすく、雨時期は特に注意が必要です。ナス科作物では疫病や青枯病などの土壌伝染性病害が問題となり、連作によって被害が拡大する傾向があります。アブラナ科では根こぶ病や黒腐病が発生し、根に不整形のコブを形成したり、葉脈に沿って黒変したりします。


発生しやすい作物を把握しておけばOKです。


病害虫・雑草の情報基地では、野菜病害の見分け方について詳しい写真と解説が掲載されています


糸状菌病が発生する環境条件と温度・湿度管理

糸状菌病の発生には、温度と湿度という2つの環境要因が密接に関係しています。多くの糸状菌は15℃から30℃の範囲で活発に活動し、特に20℃から25℃が最適な発育温度となります。この温度帯は春と秋の気候条件と一致するため、これらの時期に病害が多発する傾向があります。


湿度については、90%以上の高湿度条件で糸状菌の胞子形成と侵入が促進されます。葉の表面に露(水滴)が生じると、胞子が発芽して菌糸を伸ばし、植物体内に侵入しやすくなります。施設栽培では、夜間の保温によって湿度が上昇しやすく、朝方に結露が発生することで病害リスクが高まります。


高湿度環境でリスクが増大します。


例えば、灰色かび病の病原菌は温度20℃、湿度90%以上で最もよく発生し、潜伏期間は約2週間です。この期間中は症状が現れないため、気づいたときには既に広範囲に広がっていることが多いのが特徴です。一方、べと病は4月から7月、9月から10月の湿度が高く温暖な時期に発生しやすく、特に梅雨時期に多発します。


施設栽培での対策として、日中の換気と夜間の保温のバランスを取ることが重要です。密植を避けて風通しを良くし、葉の表面に水滴が長時間付着しないよう管理します。整枝や摘葉を適切に行い、株間の通気性を確保することで、湿度を下げることができます。また、朝方の結露を防ぐため、夜間の温度管理にも注意を払う必要があります。


露地栽培では、高畝にして排水を良くし、過湿状態を避けることが基本となります。マルチ栽培を行うことで、降雨時の泥はねによる病原菌の拡散を防ぐことができます。灌水は早朝に行い、日中に葉が乾燥するようにタイミングを調整することが効果的です。


環境管理が第一の防除法です。


糸状菌病の予防散布と早期発見の重要性

糸状菌病の防除において最も重要なのは、発病前からの予防散布です。糸状菌は一度植物体内に侵入すると、菌糸を組織内に広げて増殖するため、発病後の治療は非常に困難になります。予防的な薬剤散布によって、胞子の発芽や侵入を防ぐことが、最も効果的な防除方法となります。


発病してからでは手遅れになります。


発病初期の早期発見も重要なポイントです。毎日の巡回によって、葉の表面の異常な斑点や変色、カビ状の付着物などを見逃さないようにします。発病株を発見したら速やかに摘み取り、ビニール袋に入れてほ場外で適切に処分します。この初期対応によって、周囲への伝染を大幅に抑えることができます。


特に施設栽培では、発病の早期発見によって被害の拡大を防ぐことが可能です。例えば、イチゴの灰色かび病では、開花期から果実肥大期にかけて定期的に株を観察し、花弁や幼果に異常がないか確認します。トマトの疫病では、下葉から発生することが多いため、株元の観察を重点的に行います。


薬剤散布のタイミングは、気象条件を考慮して決定します。降雨前や曇天が続く前に散布することで、感染リスクの高い時期をカバーできます。特に梅雨入り前や台風接近前には、予防的な散布を徹底します。散布間隔は薬剤の残効期間を考慮し、通常は7日から10日間隔で実施します。


適期散布が防除の基本です。


発病初期であれば、発病部位を除去した後に薬剤散布を行うことで、被害の拡大を抑えられる場合があります。ただし、症状が進行してしまった株については、伝染源となるため速やかに抜き取って処分することが推奨されます。処分した株は、ほ場に放置せず適切に廃棄することで、再感染のリスクを減らします。


BASFのミノラスでは、イネの苗立枯病から水稲を守る病原菌別の症状と防除対策について詳細な情報が掲載されています


糸状菌病の薬剤防除と耐性菌対策のローテーション散布

糸状菌病の薬剤防除では、同じ薬剤を連続して使用することで「薬剤耐性菌」が出現するリスクが高まります。耐性菌とは、特定の薬剤に対して抵抗性を持ち、その薬剤が効きにくくなった病原菌のことです。同じ作用機構の薬剤を3回以上連続使用すると、耐性菌の割合が急速に増加し、防除効果が著しく低下することが報告されています。


この問題を回避するための方法が「ローテーション散布」です。ローテーション散布とは、作用機構の異なる複数の薬剤を予め用意し、散布の度に異なる系統の薬剤を使用する方法です。最低でも3種類以上、できれば4種類から5種類の異なる系統の薬剤を準備して、計画的に交互使用することが推奨されます。


3種類以上の準備が条件です。


薬剤の作用機構は、FRAC(殺菌剤耐性菌対策のための国際組織)が定めるコード番号で分類されています。例えば、ベンゾイミダゾール系、DMI系、QoI系などの系統があり、それぞれ異なる作用点で病原菌に作用します。薬剤のラベルや説明書には、この作用機構に関する情報が記載されているため、購入時に確認することが重要です。


具体的なローテーション例として、灰色かび病の防除では、まず保護殺菌剤である銅剤やマンゼブ剤で予防散布を行い、次にベンゾイミダゾール系の浸透移行性殺菌剤、その次にジカルボキシイミド系の殺菌剤を使用するといった方法があります。この際、同じ系統の薬剤は最低でも2回から3回の散布を空けてから再使用します。


保護殺菌剤と浸透移行性殺菌剤の使い分けも重要なポイントです。保護殺菌剤は植物の表面に付着して病原菌の侵入を防ぐタイプで、耐性菌が発生しにくい特徴があります。一方、浸透移行性殺菌剤は植物体内に吸収されて効果を発揮するため、既に侵入した病原菌にも作用しますが、耐性菌が発生しやすい傾向があります。


発病初期は浸透移行性、予防段階では保護殺菌剤を中心に使用するのが効果的です。特に発病リスクの高い時期には、保護殺菌剤を基本として定期散布を行い、発病が確認された場合のみ浸透移行性殺菌剤を使用するという方針が、耐性菌対策として有効です。


また、薬剤の散布濃度や散布量を適切に守ることも重要です。規定濃度より薄く散布すると、病原菌を完全に死滅させることができず、生き残った菌が耐性を獲得する可能性が高まります。逆に濃すぎると薬害が発生するリスクがあるため、ラベルに記載された使用基準を厳守することが必要です。


使用基準の厳守が原則です。


KINCHO園芸では、殺菌剤の作用性とローテーション散布の重要性について、具体的な薬剤例とともに詳しく解説されています


糸状菌病の土壌消毒と太陽熱利用による防除法

土壌伝染性の糸状菌病に対しては、土壌消毒による防除が効果的です。土壌中には、作物の根を侵す寄生性の糸状菌や細菌が生息しており、これらが原因で立枯れや萎凋、根腐れなどの症状が発生します。特に連作を続けると、土壌中の病原菌密度が高まり、被害が年々拡大する傾向があります。


太陽熱消毒は、薬剤を使用しない環境に優しい土壌消毒法として注目されています。この方法は、夏季の高温期に土壌表面を透明なビニールフィルムで被覆し、太陽熱によって土壌温度を40℃から50℃に上昇させ、病原菌を熱で死滅させる技術です。7月中旬から8月下旬の最も暑い時期に、20日から30日間処理を継続することが効果的です。


20~30日間の処理期間が必要です。


太陽熱消毒の具体的な手順として、まず土壌に十分な水分を含ませることが重要です。土壌が乾燥していると熱伝導率が低く、十分な地温上昇が得られません。灌水または降雨後に、土壌水分が飽和状態に近い状態で処理を開始します。次に、透明マルチフィルムを隙間なく土壌表面に密着させて被覆し、フィルムの端をしっかりと土で押さえて密閉します。


処理中は、地温計を使用して土壌温度を定期的に測定します。深さ10cmから20cmの作土層で40℃以上の温度が10日間以上維持されることが、十分な消毒効果を得る目安となります。この条件を満たすためには、最低でも平均気温30℃以上の晴天が4日間以上続く時期を選んで実施することが推奨されます。


薬剤による土壌消毒も選択肢の一つです。クロルピクリン剤やD-D剤などの土壌くん蒸剤は、土壌中に注入後、ビニールフィルムで被覆して成分を土壌中に拡散させます。これらの薬剤は高い殺菌効果を持ちますが、使用には農薬取締法に基づく適切な資格や手続きが必要で、環境への影響も考慮する必要があります。


土壌消毒後の再汚染を防ぐため、使用する農機具や資材を清潔に保つことも重要です。トラクターやクワなどの農機具に付着した土壌が、病原菌の運搬源となることがあります。作業前に農機具を洗浄し、異なるほ場間での病原菌の持ち込みを防ぎます。また、苗や種子も病原菌の侵入経路となるため、健全な種苗を使用することが基本となります。


清潔な資材使用が再発防止につながります。


輪作も土壌伝染性病害の防除に有効な手段です。異なる科の作物を順番に栽培することで、特定の病原菌が増殖する機会を減らすことができます。例えば、ナス科作物の後にマメ科やイネ科作物を栽培することで、ナス科特有の病原菌の密度を低下させることができます。最低でも2年から3年の輪作期間を設けることが推奨されます。


マイナビ農業では、白絹病の原因や症状、太陽熱消毒など再発を防ぐ土壌消毒方法について実践的な解説が掲載されています




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