微生物農薬一覧と種類、効果、使い方

微生物農薬にはどんな種類があり、どのような効果が期待できるのでしょうか。本記事では微生物農薬の一覧をはじめ、導入のメリット・デメリット、使用上の注意点を詳しく解説します。あなたの圃場にも活用できる情報が満載ですので参考にしてみませんか?

微生物農薬の種類と効果

露地栽培では微生物農薬が土着微生物に駆逐されて効果が出ないことがあります。


この記事の3つのポイント
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微生物農薬の主要な種類

BT剤、バチルス剤、ボーベリア剤など殺虫・殺菌に使われる微生物農薬の特徴と適用対象を一覧で把握できます

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導入時のデメリットとコスト

化学農薬より高価で保管期限が短いなど知っておくべき課題と、温度・湿度管理の重要性を解説します

有機栽培への活用法

有機JAS認定で使用可能な微生物農薬と、化学農薬との併用による効果的な防除プログラムを紹介します


微生物農薬の主な種類と商品一覧


微生物農薬は大きく分けて微生物殺虫剤と微生物殺菌剤の2種類に分類されます。これらは自然界に存在する有用な微生物を活用した生物農薬で、化学合成農薬とは異なる作用メカニズムで病害虫を防除します。


微生物殺虫剤の代表格はBT剤(バチルス・チューリンゲンシス菌)です。BT剤はチョウ目害虫の幼虫に対して選択的に効果を発揮し、アオムシ、ヨトウムシコナガなどの防除に広く使用されています。主な商品名としてはエスマルクDF、デルフィン顆粒水和剤、バシレックス水和剤などがあります。これらは有機栽培でも使用が認められており、化学農薬に抵抗性を持つ害虫にも有効です。


つまりBT剤は選択性が高いということですね。


ボーベリア剤は糸状菌の一種であるボーベリア・ブロンニアティを利用した微生物殺虫剤で、コナジラミ類アザミウマ類に効果を示します。ボタニガード水和剤やマイコタールなどの商品があり、施設栽培での利用が中心となっています。ただし、これらの微生物農薬は温度18~28℃、湿度80%以上という環境条件を15時間以上維持する必要があり、散布後の環境管理が効果に大きく影響します。


微生物殺菌剤では、バチルス・ズブチリス菌を有効成分とする剤が主流です。ボトキラー水和剤、バイオキーパー水和剤、インプレッションクリアなどがあり、灰色かび病うどんこ病菌核病などの防除に使用されます。バチルス剤は病原菌に対する拮抗作用や抗生物質の生産により防除効果を発揮し、予防的な散布が基本となります。


バチルス剤は予防が基本です。


トリコデルマ菌を利用した剤もあり、土壌病害の防除に効果があります。これらの微生物殺菌剤は化学農薬と比較して即効性には劣りますが、繰り返し使用しても薬剤抵抗性が発達しにくいという大きなメリットがあります。保存安定性にも優れ、バチルス剤の多くは有効年限が3~4年と長期保存が可能です。


施設栽培では微生物農薬を暖房用ダクトに投入する「ダクト散布」という方法も普及しています。ダクト散布は水を使わないため湿度管理がしやすく、散布作業の省力化にもつながります。ボトキラー水和剤やエコショットなどがダクト散布対応の製品として販売されており、夜間に7日間隔で3~4回散布することで安定した予防効果が得られます。


グリーンジャパンの微生物防除剤一覧では、作物別・病害虫別に使用できる微生物農薬が整理されており、圃場での導入検討に役立ちます。


微生物農薬の効果と作用メカニズム

微生物農薬の効果は化学農薬とは異なる複数のメカニズムによって発揮されます。単純に病原菌や害虫を殺すだけでなく、競合や寄生、抗生物質の生産など多様な作用で防除効果を実現しているのが特徴です。


BT剤の作用メカニズムは非常に特徴的です。バチルス・チューリンゲンシス菌が生産する結晶性タンパク質(デルタエンドトキシン)が、チョウ目害虫の幼虫の消化管内でアルカリ性条件下で溶解し、活性化されます。この活性化された毒素が腸管細胞に結合して細胞膜に穴を開け、幼虫は摂食を停止して数日以内に死亡します。人間や哺乳類の消化管は酸性であるため、この毒素は活性化されず、極めて高い安全性を持っています。


これは安心できる仕組みですね。


微生物殺菌剤の作用はさらに多様です。バチルス・ズブチリス菌は、病原菌の細胞壁を溶かす溶菌酵素を分泌したり、抗生物質を生産して病原菌の増殖を抑制します。また、作物の葉面や根圏で素早く増殖して病原菌の定着スペースを奪う「競合作用」も重要なメカニズムです。トリコデルマ菌は病原菌の菌糸に巻き付いて寄生し、直接的に病原菌を破壊する作用を持っています。


ボーベリア剤などの昆虫病原性糸状菌は、害虫の体表に付着した分生子(胞子)が発芽し、クチクラ層を貫通して体内に侵入します。体内で菌糸が増殖し、害虫は5~7日程度で死亡します。死亡した害虫の体表から再び分生子が形成され、周囲の害虫に感染が広がる「二次感染」も期待できます。


二次感染が起こることが重要です。


微生物農薬の効果を最大限に引き出すには、散布タイミングが極めて重要です。化学農薬のように発生してから散布しても即効性がないため、病害虫の発生初期または発生前の予防散布が基本となります。特に微生物殺菌剤は、病原菌が作物に侵入する前に微生物を定着させることで高い予防効果を発揮します。


温度と湿度の管理も効果に直結します。多くの微生物農薬は20~30℃の温度帯で最も活性が高く、低温では効果が大幅に低下します。ボーベリア剤の場合、散布後15時間以上にわたって湿度80%以上を維持することが分生子の発芽と害虫への感染に不可欠です。施設栽培では環境制御が可能なため、露地栽培よりも安定した効果が得られやすいのです。


露地栽培では土着微生物との競合により、散布した微生物が定着できずに効果が発揮されないケースがあります。土壌中や葉面には多様な微生物が既に存在しており、導入した微生物が生存競争に負けてしまうのです。これが露地栽培で微生物農薬の普及が遅れている大きな理由の一つとなっています。


微生物農薬導入のメリットとデメリット

微生物農薬を導入することで得られるメリットは多岐にわたります。最も注目されるのは薬剤抵抗性の発達を回避できる点です。化学農薬を長期間繰り返し使用すると、害虫や病原菌が抵抗性を獲得し、徐々に効果が低下していきます。微生物農薬は複数の作用メカニズムで効果を発揮するため、抵抗性が発達しにくく、作期を通じて安定した防除効果が期待できます。


化学農薬の使用回数を削減できることも大きなメリットです。特別栽培農産物の認証や輸出向け農産物の生産では、化学農薬の使用回数制限が厳しく設定されています。微生物農薬は多くの場合、化学農薬の使用回数にカウントされないため、慣行栽培から特別栽培へ移行する際の重要なツールとなります。


これは経営上も有利ですね。


有機JAS認証を取得する際にも微生物農薬は有効です。有機農業では原則として化学合成農薬の使用が禁止されていますが、BT剤をはじめとする多くの微生物農薬は有機JAS規格で使用が認められています。有機農産物として高付加価値販売を目指す農業経営者にとって、微生物農薬は必須の防除手段となっています。


環境への負荷が少ないことも重要なポイントです。微生物農薬は自然界に存在する微生物を利用するため、残留性がなく、水系や土壌への悪影響がほとんどありません。ミツバチやマルハナバチなどの有用昆虫への影響も軽微で、受粉昆虫を利用する施設栽培では安心して使用できます。


ただし、微生物農薬にはデメリットも存在します。


最大の課題はコストの高さです。


化学農薬と比較して製造コストが高く、販売価格も割高になる傾向があります。ある果樹園での事例では、化学農薬での防除コストに比べて微生物農薬の方が明らかに高額になったと報告されています。経営規模が大きい農家ほど、このコスト差は無視できない金額になります。


コストは慎重に検討すべきです。


保存性の問題も重要です。バチルス剤は比較的保存安定性に優れ有効年限3~4年の製品が多いですが、ボーベリア剤などの糸状菌製剤は有効年限が1年程度と短く、冷暗所(約5℃)での保管が必須です。ボタニガード水和剤の場合、入手後は冷凍を避け、約5℃の冷暗所に密封保管する必要があります。保管条件を守らないと微生物が死滅し、効果が失われてしまいます。


即効性に欠ける点もデメリットです。化学農薬は散布後数時間から1日程度で効果が現れますが、微生物農薬は効果発現まで3~7日程度かかります。害虫や病害の発生を確認してから散布しても手遅れになるケースが多く、予防的な散布計画を立てる必要があります。発生初期を逃すと、化学農薬で一度防除してから微生物農薬に切り替えるという手間も発生します。


防除対象の範囲が狭いことも課題です。化学農薬は一つの剤で複数の病害虫に効果を示す場合が多いですが、微生物農薬は対象が限定的です。圃場で複数の病害虫が同時発生している場合、微生物農薬だけでは全てに対応できず、複数種類の資材を組み合わせる必要があります。これが資材管理の煩雑さとコスト増につながっています。


微生物農薬の使用方法と注意点

微生物農薬を効果的に使用するには、正しい希釈倍率と散布タイミングの遵守が不可欠です。化学農薬以上に使用方法を厳密に守る必要があり、ラベルに記載された内容を必ず確認してから使用します。


希釈倍率は製品ごとに設定されており、濃すぎても薄すぎても効果に影響します。例えばボタニガード水和剤は500倍希釈が標準で、マイコタールは1000倍希釈が推奨されています。10a当たりの散布量も150~300Lと幅がありますが、対象害虫の生息場所である葉裏まで十分に薬液が到達するよう、丁寧に散布することが重要です。


葉裏への散布がポイントです。


散布のタイミングは早朝または夕方の気温が低い時間帯が基本です。これは微生物の活性維持と薬液の乾燥防止のためです。日中の高温時に散布すると、葉面の薬液が急速に乾燥し、微生物が活動を開始する前に死滅してしまう可能性があります。特に気温が30℃以上になる時間帯の散布は避けるべきです。


散布間隔も重要で、多くの微生物農薬は7~10日間隔で2~3回の散布が推奨されています。1回の散布では十分な防除効果が得られず、継続的に微生物を葉面や根圏に定着させることで予防効果を高めます。ボトキラー水和剤のように、夜間のダクト散布で7日間隔、計3~4回散布するプログラムが効果的な製品もあります。


化学農薬との混用や近接散布には注意が必要です。多くの殺菌剤は微生物農薬の有効成分である微生物に対しても殺菌作用を示すため、混用すると微生物農薬の効果が失われます。ベノミル剤、EBI剤、チオファネートメチル剤などとの混用は避けるべきとされています。ただし、BT剤は細菌病防除殺菌剤との混用試験が実施されており、特に問題がないことが確認されている組み合わせもあります。


混用は慎重に判断すべきです。


化学農薬を散布した後に微生物農薬を使用する場合は、散布間隔を十分に空ける必要があります。殺菌剤の種類によっては、葉面に残留した成分が数日間にわたって微生物農薬の効果に影響を与えるケースがあります。研究報告では、殺菌剤散布後の経過日数や散布間隔によって、葉面上の微生物農薬成分菌の生存率が変化することが確認されています。


保管方法も効果維持に直結します。バチルス剤は直射日光を避けた涼しい乾燥した場所での保管が基本で、40℃以上になる場所や火気の近くは避けます。ボーベリア剤などの糸状菌製剤は必ず冷暗所(約5℃)で保管し、冷凍は避けます。開封後は吸湿や品質劣化が進むため、密閉して保管し、できるだけ早く使い切ることが推奨されます。


使用後の廃液処理にも配慮が必要です。微生物農薬は生きた微生物を含むため、使用済み廃液を適切に処理しないと環境中に意図しない微生物を放出することになります。ボトキラー水和剤などでは、専用廃液処理剤(商品名:イレート)を用いた適正処理が推奨されています。


子供や使用者以外の人が触れないよう、保管場所には必ず鍵をかけることも重要です。微生物農薬は毒性が低いとはいえ、農薬取締法に基づく農薬であり、適切な管理が求められます。食品と区別して保管し、誤飲や誤使用を防ぐ対策を講じます。


微生物農薬を活用した総合的病害虫管理

微生物農薬は単独で使用するよりも、化学農薬や他の防除手段と組み合わせた総合的病害虫管理(IPM)プログラムの一部として活用することで、その真価を発揮します。完全に化学農薬を排除するのではなく、両者の長所を活かした戦略的な使い分けが現実的です。


IPMプログラムの基本は、病害虫の発生状況をモニタリングしながら、複数の防除手段を組み合わせることです。発生初期段階では微生物農薬で予防的防除を行い、発生が拡大した場合には化学農薬で速やかに密度を下げ、その後再び微生物農薬で管理するという流れが効果的です。


発生初期の対応が分かれ目です。


化学農薬への抵抗性を持つ害虫に対して、微生物農薬は重要な役割を果たします。コナガやハスモンヨトウなど、従来のBT剤では防除が困難だった害虫に対しても、デルフィン顆粒水和剤のように活性タンパク質の量が多い製品は高い効果を示します。抵抗性害虫が問題となっている圃場では、微生物農薬の導入により防除プログラム全体の効果を回復できる可能性があります。


施設栽培では微生物農薬の活用範囲が広がっています。温度管理が可能で300㎥以上の規模があれば、天敵昆虫と微生物農薬を組み合わせた生物的防除体系を構築できます。導入適温は20~30℃で、東京では5~9月が適した時期とされています。低温期は効果が低下するため、化学農薬との併用が必要になります。


ダクト散布技術の導入により、散布作業の省力化と効果の安定化が実現しています。和歌山県の事例では、微生物農薬のダクト内投入により、化学農薬使用回数を削減しながら予防効果を発揮できることが報告されています。暖房用ダクトを利用するため、水を使わずに済み、湿度管理も容易になります。


これなら労力も減らせそうです。


有機農業への移行を検討している場合、微生物農薬は段階的導入のカギとなります。いきなり全面的に化学農薬を排除すると、病害虫の大発生により収量が大幅に減少するリスクがあります。まず化学農薬の一部を微生物農薬に置き換え、栽培技術や管理方法を習得しながら徐々に化学農薬の使用を減らしていく方が現実的です。


微生物農薬の効果を高めるには、土づくりや栽培環境の改善も並行して進めることが重要です。健全な土壌では有用微生物が活発に活動し、導入した微生物農薬も定着しやすくなります。堆肥施用による土壌改良、適切な施肥管理、排水対策などの基本的な栽培管理を徹底することで、微生物農薬の効果が安定します。


地域全体での取り組みも効果的です。周辺圃場で同時に微生物農薬を導入することで、害虫の移動による再侵入を抑制できます。特に施設栽培が集中している地域では、地域単位でのIPMプログラム導入により、個々の農家が単独で取り組むよりも高い防除効果が得られます。


コスト面での課題に対しては、化学農薬の使用回数削減による資材費の節減効果を考慮する必要があります。微生物農薬自体は高価ですが、化学農薬の散布回数を減らせれば、トータルの資材費は抑えられる可能性があります。また、特別栽培や有機栽培として高付加価値販売できれば、増加した資材費を販売価格に反映できます。


今後も新しい微生物農薬の開発が進んでおり、効果の安定性向上やコスト低減が期待されています。農業現場での実証試験を通じて、各地域の気候条件や栽培体系に適した使用方法が確立されつつあります。微生物農薬を活用した持続可能な農業生産体系の構築は、環境保全と経営安定を両立させる重要な選択肢となっています。




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