ベノミル農薬の使い方と登録失効リスクを知る

ベノミル(ベンレート)は国内で今も使える殺菌剤ですが、米国・EUでは登録失効済み。使用回数や残留規制を知らないまま使うと、輸出停止や法的リスクに直結します。正しく使えていますか?

ベノミル農薬の正しい使い方と知っておくべきリスク

ベノミルを正しく使っているつもりでも、実は使用回数オーバーで農薬取締法違反になっている場合があります。


🌾 この記事の3つのポイント
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米国・EUでは登録失効済み

ベノミルは日本国内では有効な農薬ですが、米国やEUではすでに登録が失効しており、国際環境認証(MPS-ABC)では使用禁止農薬に指定されています。

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土壌中に最大2年間残留する

ベノミルは土壌中でカルベンダジムに分解され、3ヶ月〜2年ほど残留します。水生生物への毒性も強く、土壌微生物にも悪影響があります。

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作物ごとに使用回数の上限が異なる

ベンレート水和剤はかんきつ・稲・野菜など作物別に使用回数が細かく定められており、「ベノミルを含む農薬の総使用回数」として管理が必要です。

ベノミル農薬の基本情報と商品名(ベンレート)


ベノミルはベンゾイミダゾール系殺菌剤で、デュポン社が開発し、日本では1971年4月21日に初めて農薬登録を受けました。 現在は住友化学が生産・販売しており、家庭園芸用は住友化学園芸が販売しています。商品名として広く知られているのが「ベンレート水和剤」です。


参考)ベノミル - Wikipedia


作用機構はチューブリンという細胞内構造体に結合し、病原菌の有糸分裂を阻害することで殺菌活性を発揮します。 つまり、菌の細胞分裂そのものを止める仕組みです。


参考)https://www.env.go.jp/content/900544349.pdf


植物体内に浸透移行する性質を持つため、散布後に雨が降っても効果が持続しやすい点が農業現場で支持されてきた理由の一つです。


浸透移行性は使えそうです。


ただし、この特性が残留リスクとも表裏一体であることを忘れてはいけません。


参考)https://www.prtr.env.go.jp/factsheet/factsheet/pdf/1-360.pdf


ベノミル農薬が効く病害と主な適用作物

ベノミル(ベンレート水和剤)が効果を発揮する病害と作物の範囲は非常に広いです。


代表的な適用例を以下に整理します。




  • 🍎 リンゴ・ナシ・ブドウ:うどんこ病黒星病

  • 🍊 柑橘類:そうか病、青カビ病(貯蔵時)

  • 🌾 稲:種子病(種子消毒)

  • 🌱 テンサイ:褐斑病

  • 🥜 らっかせい:褐斑病、黒渋病、茎腐病

  • 🫘 だいず:菌核病、紫斑病

  • 🥬 葉菜類:炭疽病、白斑病(収穫21日前まで)

貯蔵時の病害防除にも使われることが特徴的です。 収穫後にも使用できる点は農業経営上のメリットになり得ますが、残留農薬基準との兼ね合いが重要になります。


作物によって収穫前の使用制限日数が大きく異なります。 たとえばだいずは「収穫前日まで」使用可能な一方、葉菜類(みずなを除く)は「収穫21日前まで」と、3週間前に使用を止めなければなりません。


作物ごとの確認が原則です。



参考)https://www.kumiai-chem.co.jp/data/app_197.pdf


ベノミル農薬の使用回数と農薬取締法の注意点

見落としがちなのが「ベノミルを含む農薬の総使用回数」という概念です。 ベンレート水和剤だけでなく、ベノミルを含む他の農薬と合算してカウントする必要があります。


これが条件です。



たとえばベンレート水和剤をかんしょ(さつまいも)に使う場合、植付前の処理は1回以内、植付後は3回以内で合計4回以内という制限があります。 これを超えると農薬取締法違反となり、生産物の出荷停止や行政指導の対象になるリスクがあります。


参考)https://www.sankei-chem.com/info/file/?id=469amp;file=%E8%BE%B2%E8%96%AC%E7%99%BB%E9%8C%B2%E6%83%85%E5%A0%B1%EF%BC%9A%E3%83%99%E3%83%B3%E3%83%AC%E3%83%BC%E3%83%88%E6%B0%B4%E5%92%8C%E5%89%A4%EF%BC%9A%EF%BC%92%EF%BC%91%EF%BC%90%EF%BC%97%EF%BC%92%EF%BC%91.pdf



  • 📌 「本剤の使用回数」と「ベノミルを含む農薬の総使用回数」は別カウント

  • 📌 種子粉衣は別途「1回以内」とカウントする作物が多い

  • 📌 使用時期(収穫○日前まで)は作物ごとに必ずラベルで確認する

農薬ラベルに記載された使用回数を超えた場合、農薬取締法第16条の違反となり、最悪の場合は罰則の対象になります。


痛いですね。


農薬購入時はラベルと農林水産省の農薬登録情報データベース(FAMIC)を必ず照合する習慣をつけましょう。


農林水産省が公開している農薬登録情報の確認はこちらから。
農林水産消費安全技術センター(FAMIC)農薬登録情報提供システム

ベノミルが土壌・水生生物に与える影響(残留リスク)

ベノミルは土壌中でカルベンダジム(MBC)とイソシアン酸ブチルに加水分解されます。 このカルベンダジムが土壌中に3ヶ月〜2年ほど残留する点が、重要な環境リスクです。


カルベンダジムは2010年度のPRTRデータで、農薬使用に伴う環境中への排出量が約110トンに達していました。 東京ドームに換算するとピンとこないかもしれませんが、110トンという数字は環境中に積み重なっていく量として決して小さくありません。


水生生物への毒性が強く、土壌中の有益微生物にも悪影響を与えるため、植物の生育を妨げることもあります。 水田周辺の排水路や小川が近い圃場では特に注意が必要です。



  • 🌊 水路・河川に隣接する圃場では使用後の排水管理を徹底する

  • 🪱 土壌微生物への影響を考慮し、連用を避けて他剤とローテーションする

  • 🌿 散布後は周辺環境への飛散防止(ドリフト軽減ノズル使用など)を心がける

ドリフト軽減ノズルについては、農研機構の「農薬飛散低減技術」資料が参考になります。
農研機構:農薬飛散低減(ドリフト低減)技術のまとめ(PDF)

ベノミル農薬と国際認証・輸出における注意点(独自視点)

日本国内では合法なのに、輸出先では農薬残留違反になるケースがあります。 これは農業経営に直結する損失リスクです。


参考)MPS-ABCで禁止されている農薬『ベイミル(ベンレート)』…


ベノミルは米国(EPA)およびEUではすでに農薬登録が失効しており、使用が認められていません。 さらに国際環境認証であるMPS-ABC(花きを中心とした農業向けの持続可能性認証)では、ベノミルは使用も保管も禁止されるブラックリスト農薬に指定されています。


国内の農産物を海外バイヤーや輸出業者に販売しようとしている農業者にとって、これは大きなデメリットです。 MPS認証を取得している場合は、ホームセンターで手軽に買えるベンレート水和剤を「うっかり使用」しただけで認証取り消しのリスクがあります。


代替剤として同系統(ベンズイミダゾール系・FRAC分類1)のチオファネートメチル(商品名:トップジンM)があります。 萎凋病への適用など一部異なる点はありますが、ベノミルの代替として検討できる薬剤です。ただし、耐性菌リスクを避けるため、同系統への単純置き換えではなく、異なる作用機構の剤とのローテーションを農業改良普及センターに相談することをおすすめします。


MPS-ABCの禁止農薬リストの詳細はこちら。
MPS Japan:MPS-ABCで禁止されている農薬『ベノミル(ベンレート)』と代替方法

ベノミル農薬の毒性データとADI(一日許容摂取量)の見方

ベノミルのADI(一日許容摂取量)はFAO/WHOの合同残留農薬専門家会議(JMPR)により、体重1kgあたり1日0.1mgと算出されています。 体重60kgの成人であれば1日6mgが許容上限の目安となります。


動物実験では、イヌに2年間ベノミルを混餌投与した実験で、雄にコレステロールやアルカリフォスファターゼの変動が観察されており、NOAELは体重1kgあたり12.5mg/日とされています。


NOAELが条件です。


この数値をもとにADIが設定されています。


さらに注目すべき知見として、ベノミルがアロマターゼ活性を増加させる(男性ホルモンを減少させ、女性ホルモンを増加させる可能性がある)という研究報告があります。 農薬散布時の防護装備(マスク・手袋・防護服)の着用は、農薬取締法上の義務であるだけでなく、健康保護の観点からも非常に重要です。


参考)https://www.id.yamagata-u.ac.jp/EPC/13monndai/18hormon/horwadai/011021.html



  • 🧤 農薬散布時は必ず不浸透性手袋・マスク・長袖・防護眼鏡を着用する

  • 🚿 散布後は速やかに手洗い・洗顔・うがいを行う

  • 📦 保管は農薬専用の施錠できる保管庫に入れ、子供やペットの手の届かない場所に置く

農薬の安全使用に関する基礎知識は、環境省のPRTRファクトシートでも確認できます。
環境省 PRTRファクトシート:カルベンダジム(ベノミルの代謝物)(PDF)




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