黒星病薬剤選び効果と散布時期

黒星病対策には予防剤と治療剤の使い分けが重要です。同じ薬剤を使い続けると耐性菌が発生し、防除失敗につながります。効果的な薬剤選択と散布タイミングを知れば、あなたの作物を守れるのではないでしょうか?

黒星病薬剤の基本

同じ薬剤を3回以上続けて使うと効かなくなります。


この記事の3つのポイント
💊
予防剤と治療剤の違い

黒星病には症状が出る前に使う予防剤と、感染初期に効く治療剤があり、使い分けが防除成功の鍵です

🔄
耐性菌対策のローテーション

同じ系統の薬剤を連続使用すると耐性菌が発生するため、3種類以上の薬剤を組み合わせた散布計画が必須です

散布間隔と時期の重要性

梅雨時期や秋雨期は7~10日間隔での散布が基本で、散布が10日以上空くと防除効果が大幅に低下します


黒星病薬剤の予防剤と治療剤の違い


黒星病の薬剤には予防剤と治療剤の2つのタイプがあり、それぞれ作用する仕組みが根本的に異なります。予防剤は病原菌が植物の表面に付着して細胞内に侵入する前に効果を発揮する薬剤で、植物の表面に保護膜を形成することで菌の侵入を物理的に防ぎます。具体的には、ダコニール1000やマネージ、バイコラールなどが代表的な予防剤として広く使用されており、健全な状態の葉に対して定期的に散布することで高い防除効果を得られます。


一方、治療剤は病原菌が既に細胞内に侵入した後でも効果を発揮する薬剤です。ただし重要な点として、肉眼で黒い斑点が確認できる段階では既に治療は困難になっています。サプロール乳剤やラリー乳剤が治療剤として知られていますが、これらは発病した葉そのものを治すのではなく、発病葉の周囲にある健全に見えるものの感染の疑いがある葉に対して効果を発揮する薬剤です。つまり感染初期の目に見えない段階で作用するということですね。


予防剤が効果を発揮する期間は薬剤の種類や天候条件によって異なりますが、一般的には7~14日程度です。雨が多い時期には薬剤が流れ落ちやすいため、散布間隔を短くする必要があります。雨時期であれば10日に1回、通常期であれば2週間に1回程度の散布が目安となります。


治療剤の使用タイミングは予防散布よりもシビアです。降雨後に黒星病の感染リスクが高まったと判断される場合、予防剤に治療剤を混用して散布する方法が効果的です。ただし治療剤だけに頼る防除は現実的ではなく、予防散布を基本としながら必要に応じて治療剤を組み合わせる戦略が推奨されます。


黒星病に感染した葉は最終的に黄変して落葉します。特に四季咲きバラのように枝の伸びが遅い植物では、葉を失うことによる成育障害が深刻になります。りんごや梨などの果樹においても、葉の減少は光合成能力の低下を招き、果実の品質や収量に直接的な影響を与えるのです。だからこそ症状が出る前の予防散布が最も効果的な防除方法となります。


果樹栽培ナビ - 黒星病殺菌剤の予防剤と治療剤


黒星病薬剤の効果的な選び方

黒星病対策で薬剤を選ぶ際には、作物の種類と発生時期に応じた適切な薬剤選択が不可欠です。バラ向けの薬剤とりんご・梨などの果樹向けの薬剤では、登録されている有効成分や使用基準が異なるため、必ず作物名を確認してから購入する必要があります。


バラの黒星病対策では、手軽に使えるスプレータイプの「ベニカXファインスプレー」や「マイローズ殺菌スプレー」が初心者向けとして人気です。これらは殺虫成分も含まれているため、害虫対策も同時に行えます。ただしスプレータイプは割高なので、株数が多い場合は希釈タイプの薬剤を噴霧器で散布する方がコストパフォーマンスに優れています。


果樹向けの予防剤では、ダコニール1000(TPN剤)やマンゼブ水和剤、ジチアノン水和剤などが基幹薬剤として使用されます。これらは保護殺菌剤と呼ばれ、植物表面に膜を作って菌の侵入を防ぐタイプです。特にダコニールは春秋の冷涼な季節に高い効果を発揮しますが、高温期には薬害のリスクがあるため注意が必要です。


夏場に適した予防剤としてはマネージやフルピカが推奨されます。フルピカは最新の薬剤で非常に高い予防効果を持ち、全生育期間を通して使用できる信頼性の高い選択肢です。価格は高めですが、効果の確実性を重視するなら検討する価値があります。


治療剤を選ぶ場合、DMI剤(ジフェノコナゾール、フェンブコナゾールなど)とQoI剤(アミスター、ストロビーなど)が主要な選択肢となります。ただし後述するように、これらの薬剤には耐性菌発生のリスクがあるため、使用回数を厳密に管理する必要があります。DMI剤は年間2~3回以内、QoI剤は年間2回以内に制限することが推奨されています。


薬剤の形状も選択のポイントです。水和剤は水に溶かして使うタイプで経済的ですが、粉末のため計量や溶解に手間がかかります。フロアブル剤は液体状で水に溶けやすく扱いやすいですが、やや価格が高くなります。粒剤タイプの「ベニカXガード粒剤」は土に撒くだけで根から吸収され、散布作業が不要という利点があります。ただし効果が現れるまで時間がかかるため、予防的な使用に限られます。


薬剤選びで見落としがちなのが展着剤の併用です。展着剤は薬剤の付着性や浸透性を高める補助剤で、黒星病対策では特に重要な役割を果たします。アビオンEやスカッシュなどの皮膜形成タイプの展着剤を予防剤に混用すると、雨で失われた葉の保護膜を補い、菌の侵入を効果的に防げます。展着剤のコストは1回あたり数十円程度なので、防除効果を高めるための投資として考えるべきでしょう。


住友化学園芸 - 黒星病の防除方法と有効薬剤


黒星病薬剤のローテーション散布方法

同じ薬剤を連続して使用すると、病原菌が薬剤に対する耐性を獲得して効果が低下する現象が起こります。


これが薬剤耐性菌の発生です。


黒星病対策では、この耐性菌発生を防ぐために複数の薬剤をローテーション(輪番)で使用する散布計画が必須となります。


ローテーション散布の基本は、作用機序の異なる薬剤を3種類以上用意し、それらを順番に使っていくことです。薬剤にはFRAC(殺菌剤耐性対策委員会)が定めた作用機序分類があり、同じグループに属する薬剤は耐性菌発生のリスクを共有します。例えばDMI剤はFRACコード3、QoI剤はFRACコード11に分類されており、これらは異なる作用機序を持つため、交互に使用することで耐性菌の発生を遅らせることができます。


具体的なローテーション例として、5~7月の梅雨期を想定した散布計画を示します。1回目にダコニール1000(保護剤)、2回目にサプロール乳剤(DMI剤)、3回目にマネージ(保護剤)、4回目にストロビードライフロアブル(QoI剤)という順序で散布し、この4種類のサイクルを繰り返します。このように保護剤と治療剤を組み合わせ、さらに治療剤の中でも系統を変えることで、耐性菌発生のリスクを最小限に抑えられます。


りんごや梨の黒星病では、特にDMI剤とQoI剤の耐性菌が全国的に問題となっています。長野県や青森県では、DMI剤が効かない耐性菌が確認されており、これらの地域ではDMI剤の使用を開花期間中の1回限りに制限する対策が取られています。QoI剤についても、単剤での使用は避け、必ず保護殺菌剤(オーソサイド水和剤やベルクートフロアブルなど)を加用することが推奨されています。


耐性菌が既に発生している地域では、より厳格な薬剤管理が必要です。耐性菌が高頻度に確認された地域では、その系統の薬剤を黒星病防除から完全に除外し、代替薬剤による防除体系に切り替えることが求められます。このような状況を避けるためにも、耐性菌が発生していない段階からローテーション散布を徹底することが重要なのです。


ローテーション散布を実践する上で、散布記録をつけることをおすすめします。いつどの薬剤を散布したかを記録しておけば、同じ薬剤を続けて使ってしまうミスを防げますし、年間の使用回数管理も容易になります。スマートフォンのメモアプリやカレンダーアプリを活用すれば、手軽に記録を残せるでしょう。


住友化学園芸 - 殺菌剤の作用性とローテーション散布の重要性


黒星病薬剤の散布時期と間隔

黒星病の薬剤散布で最も重要なのは、散布のタイミングと間隔です。黒星病は降雨によって感染するため、雨の前後が最も効果的な散布時期となります。理想的には降雨の前日までに予防剤を散布しておくことで、菌の侵入を効果的に防げます。しかし天候は予測が難しいため、実際には降雨後の散布になることも多いでしょう。


降雨後に散布する場合は、感染リスクが高まっていると考えられるため、予防剤に治療剤を混用する方法が有効です。雨で葉の保護膜が失われ、菌が既に付着している可能性を考慮して、初期感染を抑える治療剤を加えることで、より確実な防除効果が期待できます。ただし散布直後に再び雨が降ると薬剤が流れてしまうため、天気予報を確認して少なくとも散布後6時間以上は雨が降らない時間帯を選ぶことが大切です。


散布間隔については、季節や天候条件によって調整する必要があります。梅雨時期や秋雨期など雨の多い時期は、7~10日間隔での散布が基本となります。特に開花期前後から落花20日後までは黒星病の重要防除時期とされており、この期間は散布間隔を10日以上空けないことが推奨されています。りんご黒星病の優良防除事例では、この重要防除時期に散布回数を増やして対応することが成功の鍵とされています。


逆に少雨の夏場や乾燥した時期には、散布間隔を2週間程度まで延ばすことも可能です。黒星病は葉が濡れることで感染するため、降雨や夜露が少ない時期には感染リスクが低下するからです。ただし台風の接近時には、強風によって広範囲に菌が飛散するため、台風の前後は感染リスクが高まります。台風通過後は通常より早めに散布を行うことが望ましいでしょう。


散布時刻も考慮すべきポイントです。早朝や夕方の涼しい時間帯に散布することで、薬害のリスクを減らせます。特に夏場の高温時に日中散布すると、薬液が葉の表面で急速に乾燥して薬害を引き起こす可能性があります。風の強い日も避けるべきで、風速3メートル以上の日は薬液が飛散して周囲に影響を与える恐れがあります。


散布方法では、葉の表面だけでなく裏側にもしっかりと薬液をかけることが重要です。黒星病は葉裏の気孔からも侵入するため、下から上に向けて噴霧することで葉裏にも十分に薬液を付着させます。特に新芽や若葉は水をはじきやすいため、展着剤を必ず混用して付着性を高めることが効果を左右します。


年間を通じた防除スケジュールの例として、バラの場合は3月下旬の芽吹き期から11月までの期間、月に2~4回程度の散布が目安となります。りんごや梨では、開花期前後の4~5月と、梅雨期の6~7月、さらに収穫後の9~11月が重点散布時期です。冬期には石灰硫黄合剤を散布することで、越冬している菌を殺菌し、翌年の発生源を減らす効果が期待できます。


黒星病薬剤散布で失敗しないコツ

黒星病の薬剤防除で失敗する最大の原因は、散布ムラと散布間隔の乱れです。散布ムラとは、株全体に均一に薬液がかかっていない状態を指します。特に大きく成長した株や、つるバラのように高い位置に葉がある場合、上部の葉に薬液が十分に届かないことがあります。散布時には株の周囲を移動しながら、あらゆる角度から薬液をかける必要があります。


薬液の濃度管理も失敗を防ぐ重要なポイントです。濃すぎると薬害が発生し、薄すぎると効果が得られません。水和剤やフロアブル剤を希釈する際は、必ず計量カップやメスシリンダーを使用して正確に計量しましょう。目分量での希釈は濃度のばらつきを生み、安定した防除効果が得られない原因となります。1リットルの水に対して薬剤を何グラムまたは何ミリリットル加えるかは、製品ラベルに明記されています。


展着剤の添加順序も見落としがちな注意点です。薬液を調製する際は、まず水を入れてから展着剤を加え、その後に殺菌剤を加える順序が基本です。展着剤には製剤を水中で分散しやすくする作用があるため、最初に入れることで薬剤の溶解が促進されます。ただし一部の展着剤では添加順序が異なる場合もあるため、必ず製品ラベルの注意事項を確認してください。


複数の薬剤を混用する場合、混用の可否を事前に確認することが必須です。殺菌剤と殺虫剤を同時散布すると作業効率が上がりますが、薬剤の組み合わせによっては化学反応を起こして効果が失われたり、薬害が発生したりすることがあります。各メーカーのウェブサイトや農協の資料で混用可否表を確認するか、不明な場合は単剤での散布を選ぶ方が安全です。


噴霧器の選び方と手入れも防除の成否に影響します。小規模な栽培であれば手動式の蓄圧式噴霧器で十分ですが、株数が多い場合は電動式や背負い式の噴霧器を検討する価値があります。噴霧器は使用後に必ず水で十分に洗浄し、薬剤の残留を防ぎます。特にノズル部分は詰まりやすいため、分解して洗浄することで次回の散布時にトラブルを避けられます。


薬剤の保管方法にも注意が必要です。開封後の薬剤は直射日光を避け、冷暗所に保管します。高温多湿な場所では薬剤が変質して効果が低下する可能性があります。また、子供やペットの手の届かない場所に施錠して保管することは、安全管理の基本です。使用期限が過ぎた薬剤は効果が保証されないため、期限内に使い切るか、自治体の指示に従って適切に廃棄しましょう。


散布時の安全装備も忘れてはいけません。マスク、ゴーグル、手袋、長袖長ズボンを着用することで、薬液の吸入や皮膚への付着を防ぎます。散布後は手足を石鹸でよく洗い、衣服も洗濯します。特に夏場は暑くて装備を省略したくなりますが、健康を守るためには必ず着用してください。


最後に、防除記録をつけることの重要性を再度強調します。散布日、使用薬剤名、希釈倍率、散布量、天候、その後の効果などを記録しておくことで、次回以降の散布計画に役立ちます。特に耐性菌対策では、特定の薬剤を何回使ったかを把握することが不可欠です。スマートフォンで写真を撮っておくと、症状の変化を視覚的に記録できて便利です。


姫野ばら園八ヶ岳農場 - 黒星病への対処方法




【セット買い】住友化学園芸 殺菌剤 家庭園芸用トップジンMゾル 30ml 園芸 植物 病気 薬 + 殺菌剤 STサプロール乳剤 30ml + 殺虫剤 GFオルトラン液剤 100ml 浸透移行性 木 樹木 チャドクガ