トマト栽培において、葉の異常は植物からの最初のアラートです。早期に正確な診断を下すことが、収益を守るための絶対条件となります。ここでは、現場でよく見られる症状とその原因となる病気を、視覚的な特徴に基づいて分類・解説します。特に「斑点の形状」「色の変化」「カビの有無」の3点に着目して観察してください。
タキイ種苗:トマトの生理障害と病害虫の症状写真・解説
生理障害と病気の違いを写真で比較できるため、現場での一次診断に非常に役立ちます。
診断がついたら、即座に対策を講じる必要があります。症状が「黄色」か「黒色」かによって、選択すべき薬剤や対処法が大きく異なります。ここではプロの農家が実践すべき具体的な防除戦略を解説します。
葉が黄色くなる場合、カビ・ウイルス・生理障害の3つの可能性を疑います。
黒い斑点は主に糸状菌(カビ)や細菌が原因です。
| 病名 | 対策のポイント | 推奨される農薬系統の例 |
|---|---|---|
| 疫病 | 進行が極めて早いため、予防散布が基本。発病後は治療効果のある薬剤を即時散布。 | ・マンゼブ水和剤(予防)・アゾキシストロビン水和剤(予防・治療) |
| 葉かび病 | 耐性菌が発生しやすいため、同一系統の連用は厳禁。 | ・TPN水和剤(ダコニール等)・ポリオキシン剤 |
| 斑点病 | 黒褐色の小斑点。細菌性の斑点細菌病との区別が必要。 | ・銅剤(細菌にも効果あり)・カスガマイシン剤 |
重要な注意点:
農薬を使用する際は、必ず「トマト」での登録があるか、収穫前何日まで使用可能かを確認してください。また、展着剤を加えることで、ワックス層のあるトマトの葉への付着率を高め、効果を持続させることができます。
ダコニール倶楽部:トマトの病害図鑑と薬剤選び
各病気に特化した薬剤の選び方や、写真付きの詳細な図鑑があり、薬剤選定のミスを防げます。
「病気が出てから対処する」のではなく、「病気が出ない環境を作る」のがプロの農業です。特にトマトの病気の8割は、湿度管理と整枝作業の失敗に起因すると言っても過言ではありません。葉が枯れ始める前に実践すべき、環境制御による予防策を深掘りします。
多くの生産者は葉の病気を見ると「葉」に薬をかけますが、根本原因が地下部(根と土壌)にあるケースは意外と知られていません。地上部の葉に現れる症状は、実は根のストレスサインである場合が多いのです。ここでは、土壌微生物学の観点から、葉の病気を防ぐアプローチを解説します。
農林水産省:トマトの病害虫防除に関する技術資料
土壌伝染性病害と地上部の症状の関連性についても触れられており、根本的な防除体系を組むための信頼できる公的資料です。
病気の蔓延を防ぐ最後の砦は、人間の「目」によるモニタリングです。しかし、漫然と畑を歩いていても初期症状は見落とされます。ここでは、熟練農家が実践している「意識的なチェックリスト」と、伝染を物理的に断つための行動指針を紹介します。
トマトの葉は、言葉を持たない植物からのメッセージボードです。そのわずかな色の変化、斑点の形、しおれ具合を読み解くことで、農薬の使用量を減らしながら、最高品質のトマトを安定生産することが可能になります。毎日の観察眼を養い、早期発見・早期対処を徹底しましょう。